トリックオアトリート
「カカシ先生、トリックオアトリート!」
魔女の格好をしたサクラが手のひらを上にしてこちらに出してくる。
「はい」
手にポンとお菓子を乗せると、つまらなさそうに頬を膨らませてリスのように食べるサクラ。
そんなサクラを見ながら先程からしている袋にお菓子を詰める作業に戻る。
今日はハロウィン。
里からの要請で下忍班の4組に仮装をしてお菓子を配ってほしいと言われた。
どうせなら女の子4人の方がいいだろうということになり、男たちはせっせと配るお菓子を準備する。
色々なカボチャの焼き菓子の匂いで作業をする部屋の中は甘い匂いでいっぱいになり、窓を開けていないと気分が悪くなりそうだ。
「しかし、女と子供は甘いのが本当好きだよな」
休憩がてら窓の外を見ていると隣からアスマが話しかけてくる。
その手には袋詰めされたお菓子。
「オレならトリックオアトリートって言われたら悪戯の方を願うけどな」
「それもとびきり美人の魔女に?」
「ちげえねぇ」
ははは、と2人で笑っていると。
「楽しいお話してる時に悪いんだけど、さっさと続きして貰えるかしら」
「「すみません」」
後ろから冷たい視線と地の底から聞こえたかのような紅の声にオレたちは作業に戻る。
「先生たちカッコ悪い」とナルトに可哀想な目で見られたが、マジ切れしている紅に逆らえるはずがないのだ。
そんな男たちを衣装を着て待機をしているいのは呆れたように見る。
「本当男って馬鹿よね」
「うん・・・」
サクラはカカシから貰ったお菓子を食べながら、こっそりカカシを盗み見て小さくため息を吐く。
****
それから里の広間で女子4人と紅先生とでお菓子を配る。
ひっきりなしに人が来るから休む暇がない。
それに子供とか女の人より男の人の方が多い気がする。
先生たちは甘いのが苦手って言ってたけど世の男の人は甘党が増えているのだろうか。
籠の中のお菓子が少なくなってきて補充の為に輪から抜けて一息つく。
在庫を持ってる先生たちの元に向かうと、可愛くらしく仮装している女の人達に囲まれていた。
何を話しているのか聞こえないけど楽しそうなのは分かる。
いつも以上に笑顔を振りまく先生にも腹が立つ。
「私たち里の外から来てて、良かったら案内して貰えません?」
「んー、生徒見てないといけないから」
「生徒?じゃあお兄さん先生なんだ」
「そ。あのピンクの髪の魔女さんのね」
先生がこっちを指差すのでドキッとする。
「あは、可愛いー!」
何を話してたのか分からないけどその声だけが聞こえてきてムッとする。
褒め言葉なのに全然嬉しくない。
だって子供に対する言葉だもの。
私はズカズカと先生に近づいてふくれっ面で先生に籠を差し出す。
「お、もう無くなったのか。サクラはすごいな」
籠の中を見た先生は追加のお菓子を入れて微笑んでくれたけど私は何も言わずにその場を去った。
また愛想を振りまいてお菓子を配る。
人の隙間からまだ女の人に囲まれてる先生が目に入ったけど気にしない。
「君、可愛いね」
「え?あ、ありがとうございます」
目の前に現れた男の人に驚きつつも微笑んでお菓子を渡そうとすると、お菓子ごと手をぎゅっと握られ、背中がゾワッとした。
「本当可愛いね。名前は何て言うの?良かったらこの後お茶一緒にしない?」
「い、嫌です!離して・・・!」
振り払いたいのに力が強くて離れない。
いのに助けを呼ぼうとしたけど見当たらない。
どうしよう、と焦っていると。
「オレの生徒に何してんの」
男の後ろからカカシ先生が肩に手を置いて、殺気を含んだ低い声とギリっと強く肩を捕まれ、驚いた男はやっと私から手を離してくれた。
周りも異変に気づいてざわつき始める。
「何かあるならオレが話聞くけど?」
「え!?あ、いや、大丈夫です!」
男の人は慌てたようにその場から逃げ去る。
「あ・・・」
男が去った方向を見ている先生にお礼を言おうとすると、「サクラー!」と遠くから走ってくるいのに遮られる。
「ちょっと大丈夫!?」
「うん・・・いのが先生呼びに行ってくれたんでしょ?ありがとう」
「え?違うわよ」
「え」
おかしそうに笑ういのに首を傾げる。
「アスマのとこにお菓子補充しに行ったらもうカカシ先生が居なくて、そしたら後ろから騒ぎが聞こえて見たらカカシ先生が男捕まえてたってわけ。あの先生、いつもボーとしてるのにちゃんと見てるのね」
「・・・うん」
いのの言葉に自然と頬が緩んだ。
****
「カカシ先生」
「ん?」
あれから男の件もあってすぐに撤収となった。
後片付けをしている先生の後ろから声をかける。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
「いーえ。先生だから生徒を助けるのは当たり前だよ」
話しながら後片付けをする先生にむっとする。
大事な生徒の危機を助けただけ。
それ以外の私情はないと言われた気がした。
それがつまらない。
この飄々として掴み所がない男が本気で驚くところを見てみたい。
もし私が先生のことが好きだと言ったらどんな反応をするだろうか。
「先生」
「んー?」
「トリックオアトリート」
手を出してそう言うと、先生は困ったように笑って振り返る。
「朝あげたでしょ。もうお菓子持ってないよ」
先生の言葉に私はニヤリと笑う。
「ならイタズラね」
「え」
私は目を丸くする先生の襟首を思い切り引き寄せてキスをした。
魔女の格好をしたサクラが手のひらを上にしてこちらに出してくる。
「はい」
手にポンとお菓子を乗せると、つまらなさそうに頬を膨らませてリスのように食べるサクラ。
そんなサクラを見ながら先程からしている袋にお菓子を詰める作業に戻る。
今日はハロウィン。
里からの要請で下忍班の4組に仮装をしてお菓子を配ってほしいと言われた。
どうせなら女の子4人の方がいいだろうということになり、男たちはせっせと配るお菓子を準備する。
色々なカボチャの焼き菓子の匂いで作業をする部屋の中は甘い匂いでいっぱいになり、窓を開けていないと気分が悪くなりそうだ。
「しかし、女と子供は甘いのが本当好きだよな」
休憩がてら窓の外を見ていると隣からアスマが話しかけてくる。
その手には袋詰めされたお菓子。
「オレならトリックオアトリートって言われたら悪戯の方を願うけどな」
「それもとびきり美人の魔女に?」
「ちげえねぇ」
ははは、と2人で笑っていると。
「楽しいお話してる時に悪いんだけど、さっさと続きして貰えるかしら」
「「すみません」」
後ろから冷たい視線と地の底から聞こえたかのような紅の声にオレたちは作業に戻る。
「先生たちカッコ悪い」とナルトに可哀想な目で見られたが、マジ切れしている紅に逆らえるはずがないのだ。
そんな男たちを衣装を着て待機をしているいのは呆れたように見る。
「本当男って馬鹿よね」
「うん・・・」
サクラはカカシから貰ったお菓子を食べながら、こっそりカカシを盗み見て小さくため息を吐く。
****
それから里の広間で女子4人と紅先生とでお菓子を配る。
ひっきりなしに人が来るから休む暇がない。
それに子供とか女の人より男の人の方が多い気がする。
先生たちは甘いのが苦手って言ってたけど世の男の人は甘党が増えているのだろうか。
籠の中のお菓子が少なくなってきて補充の為に輪から抜けて一息つく。
在庫を持ってる先生たちの元に向かうと、可愛くらしく仮装している女の人達に囲まれていた。
何を話しているのか聞こえないけど楽しそうなのは分かる。
いつも以上に笑顔を振りまく先生にも腹が立つ。
「私たち里の外から来てて、良かったら案内して貰えません?」
「んー、生徒見てないといけないから」
「生徒?じゃあお兄さん先生なんだ」
「そ。あのピンクの髪の魔女さんのね」
先生がこっちを指差すのでドキッとする。
「あは、可愛いー!」
何を話してたのか分からないけどその声だけが聞こえてきてムッとする。
褒め言葉なのに全然嬉しくない。
だって子供に対する言葉だもの。
私はズカズカと先生に近づいてふくれっ面で先生に籠を差し出す。
「お、もう無くなったのか。サクラはすごいな」
籠の中を見た先生は追加のお菓子を入れて微笑んでくれたけど私は何も言わずにその場を去った。
また愛想を振りまいてお菓子を配る。
人の隙間からまだ女の人に囲まれてる先生が目に入ったけど気にしない。
「君、可愛いね」
「え?あ、ありがとうございます」
目の前に現れた男の人に驚きつつも微笑んでお菓子を渡そうとすると、お菓子ごと手をぎゅっと握られ、背中がゾワッとした。
「本当可愛いね。名前は何て言うの?良かったらこの後お茶一緒にしない?」
「い、嫌です!離して・・・!」
振り払いたいのに力が強くて離れない。
いのに助けを呼ぼうとしたけど見当たらない。
どうしよう、と焦っていると。
「オレの生徒に何してんの」
男の後ろからカカシ先生が肩に手を置いて、殺気を含んだ低い声とギリっと強く肩を捕まれ、驚いた男はやっと私から手を離してくれた。
周りも異変に気づいてざわつき始める。
「何かあるならオレが話聞くけど?」
「え!?あ、いや、大丈夫です!」
男の人は慌てたようにその場から逃げ去る。
「あ・・・」
男が去った方向を見ている先生にお礼を言おうとすると、「サクラー!」と遠くから走ってくるいのに遮られる。
「ちょっと大丈夫!?」
「うん・・・いのが先生呼びに行ってくれたんでしょ?ありがとう」
「え?違うわよ」
「え」
おかしそうに笑ういのに首を傾げる。
「アスマのとこにお菓子補充しに行ったらもうカカシ先生が居なくて、そしたら後ろから騒ぎが聞こえて見たらカカシ先生が男捕まえてたってわけ。あの先生、いつもボーとしてるのにちゃんと見てるのね」
「・・・うん」
いのの言葉に自然と頬が緩んだ。
****
「カカシ先生」
「ん?」
あれから男の件もあってすぐに撤収となった。
後片付けをしている先生の後ろから声をかける。
「さっきは助けてくれてありがとうございました」
「いーえ。先生だから生徒を助けるのは当たり前だよ」
話しながら後片付けをする先生にむっとする。
大事な生徒の危機を助けただけ。
それ以外の私情はないと言われた気がした。
それがつまらない。
この飄々として掴み所がない男が本気で驚くところを見てみたい。
もし私が先生のことが好きだと言ったらどんな反応をするだろうか。
「先生」
「んー?」
「トリックオアトリート」
手を出してそう言うと、先生は困ったように笑って振り返る。
「朝あげたでしょ。もうお菓子持ってないよ」
先生の言葉に私はニヤリと笑う。
「ならイタズラね」
「え」
私は目を丸くする先生の襟首を思い切り引き寄せてキスをした。
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