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short.1

「はい、服脱いで」

ここは木ノ葉病院の病室。
任務が終わりいつも通りチャクラ切れで入院しているカカシの元にサクラが見舞いに訪れ、先程の発言である。

「えっと、サクラ・・・」
「なに。早くしてよ。これから師匠のところに行かないといけないんだから」

ベッドの上で上半身を起こして座って戸惑っているカカシにサクラは腰に手を当てて眉間に皺を寄せて仁王立ちしている。

「さすがにまだえっちするには明るいと思うんだよね。いや、オレはいいんだけど・・・ウブッ」

口元に手を当てて頬を染めるカカシの顔面にタオルを投げる。

「バカっ!体が動かせないから拭いてあげるって言ってるの!いいからさっさと脱ぎなさい!!」

サクラの短い堪忍袋が切れて無理やりカカシのアンダーシャツを剥ぐ。
カカシは上半身を剥かれ、サクラは持ってきたホットタオルでカカシの背中を拭く。
綱手の弟子入りをして病院勤務も行っているサクラは時々こんな風に動けない患者の体を拭いているのだろう。
ちょうど良い強さとタオルの温かさで気持ちよくなる。
しかし、複雑な気持ちも生まれるわけで。
恋人であるサクラとは14歳差。
必然的にカカシの方が早くおじいさんになるので、将来こんな風に介護される日が来るかもしれない。
恋人ではあるが元教え子。
シモの世話までされる日が来ると思ったら・・・。
そんなことを想像して少し涙目になっているカカシに気づかず、サクラはどんどん体を拭いていると左腕を拭いていた手が止まる。
そして二の腕の上にあるものを指でなぞる。

「これ・・・」
「ん?」
「痛かった?」

サクラは泣きそうな顔でそう聞きとカカシは微笑む。

「んー、どうだったかな」

カカシが暗部に入ったのはオビトとリンを失って暫くして、ミナトが火影に就任した後。
13ぐらいだったか。
あの頃のカカシはこの世の全てに絶望してただ冷血に任務をこなして。
今の緩み切った自分を見たら、あの頃の自分はどう思うだろうか。

「覚えてないの?」
「んー、色んなことあったからねぇ。先生もう30よ?」

はは、と自嘲気味に笑う。
いつもみたいにオジさんだと言われるかなと思ったのだが。

「その頃の先生に会いたかったな」
「へ」

突拍子のないことを言うサクラに素っ頓狂な返事をしてしまう。

「私の知らない先生がいるのが嫌」

なんだ、この可愛い生き物は。
口を尖らせてまた腕を拭き出すサクラを襲いたくなってしまう。
それに、とサクラは言葉を続ける。

「先生が辛い時、側にいたかった」
「サクラ・・・」

この子はなんでこんなに優しいんだろうか。
顔を緩めながら手招きするとサクラは顔を近づけ、その可愛らしい唇にキスをする。
いきなりキスをされて顔を真っ赤にして肩を叩いてくる。
ふくれたり顔を真っ赤にしたり、昔からコロコロ表情を変えるのはいつ見ても飽きない。

「今こうやって側にいてくれるだけですごく幸せだよ」
「・・・もう」

文句を言うも、嬉しそうなのが滲み出ている。
確かにあの頃は辛くていつ死んでも良いなんて思いながら任務をやってきた。
でも諦めてたらサクラにも2人にも会うことが出来なかった。
これも運命だったのだろう。


窓から見える雲ひとつない青空を見ながら、廊下から聞こてくる騒ぐ声とそれを注意する声を聞きながら頬を緩ませた。


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