short.1
「ねぇせんせ、お願いがあるんだけど」
中忍試験の前日、歩いていると後ろからサクラに呼び止められた。
サクラが試験に受けるかどうか悩んでいたのは知っていた。
だからきっとそのことだろうと思った。
「いいよ。なに?」
何故か周りを気にしている様子のサクラはしゃがむ様に手を動かす。
それに従って膝を付いてしゃがむと、サクラはオレの耳元に顔を寄せて。
「あのね、中忍になったらキスしてほしいの」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
後ろに下がると、サクラの表情は真剣そのもの。
「・・・どういうこと?」
「だから、キス、してほしいの」
周りに聞かれないようになのかキスの部分だけ小声になった。
「サクラ、サスケのこと好きなんだろ?」
「好きよ」
「だったら何で・・・」
「だって・・・」
サクラは頬を染めてモジモジして。
「──キスした時下手だったらガッカリされるでしょ?だから先生で練習させて?」
頭が痛い。
「・・・断る」
オレはスッと立ち上がりサクラから離れようとするとベストを掴んで引っ張ってくる。
「いいじゃない!減るもんじゃナシ!」
「オレの中の何かが減る。ていうか、オレとしたらサスケとするときファーストキスじゃなくなるよ?」
「そう、それが問題なのよね」
ベストを掴んだまた顎に手を当てて考えるサクラ。
このままなかったことになるかと思ったのだが。
「口布越しだったらノーカンにならないかしら」
この子の自慢の頭脳が無駄に使われている気がする。
「口布越しでも無しでもしません」
「先生のケチ!」
「ケチで結構。明日の試験のことだけを考えなさい。試験は簡単じゃないぞ」
「分かってるわよ・・・」
口を尖らせたサクラはベストから手を離す。
オレは苦笑して柔らかい薄紅色の髪を優しくポンと撫でる。
「明日の試験はサクラにとって大事なことだ。これから自分がどんな忍になりたいのか、ちゃんと考えて受けるかどうか考えなさいね」
「・・・はい」
素直に頷くサクラの頭から手を離し、今度こそサクラと別れた。
そしてサクラはちゃんと自分の意思で中忍試験を受けた。
が、この試験で大蛇丸が受験者を装いサスケに近づき呪印を植え付け。
そして大蛇丸は両腕を代償に三代目火影の命を奪った。
それから暫くして。
ナルトが急成長していることに焦ったサスケは大蛇丸の手を取り里を抜けた。
子供たちだけでサスケを取り戻しに行ったが叶わず、終末の谷でボロボロになっているナルトの姿に、師として何もすることが出来なかった自分に奥歯を噛みしめた。
それからナルトは自来也様と、残されたサクラも綱手様に師事を仰ぐことになり、オレは上忍として任務を行うことになった。
それから1年後。
サクラはいのとチョウジと共に中忍になった。
オレも任務で忙しくサクラと会う時間がなく、サクラも大人になったのかあの様なお願いを言うことはなかった。
遠くから綱手様のお使いで走り回る成長したサクラを見て微笑ましくもあり、少し寂しい気持ちを抱えた。
本当ならずっとオレの側で育ててあげたかったが。
今更そう思っててもしょうがない。
いつになるかは分からないがナルトが帰ってくればまた第七班が復活する。
そうすればまたあの時のように──。
****
「ねぇ先生、お願いがあるの」
命をかけた大戦が終わりを迎え、綱手様から火影を引き継いで暫く。
いつもの様にタワーのように積み上り終わらない書類にため息を吐いていると、新たにたくさんの書類を持ってきたサクラが唐突にそう話し出す。
「なぁに?」
徹夜続きで疲労困憊していたオレは働かない頭で書類に目を通しながら返事をする。
「今度、上忍試験があるでしょ?」
「うん」
上忍試験。
上忍から推薦をされた中忍が受ける試験が間近に控えている。
その準備のせいで、ただでさえ忙しいのに更に拍車がかかっている。
サクラはシズネから推薦を受け、他数名も受ける予定になっている。
「上忍になれたらキスして」
持っていたペンをポロッと落としてしまった。
目と口を思い切り開いていると惚けていると、サクラはおかしそうに笑う。
「してくれる?」
「え?あ、え?」
未だに頭が追いつかない。
その間、サクラはオレ返事を待っている。
働かない頭でも1つ確かめなきゃいけないことがあることは分かる。
「サクラは、オレのことが好きなのか?」
真剣な目で聞くと、サクラは曖昧に微笑む。
上忍になったらキスということは、まだ言うつもりはないということか。
本当、こうと決めたら譲らない頑固なところは変わらないらしい。
サクラがそうするならこちらも考えがある。
「いいよ、キス」
「・・・本当?」
「うん」
不安そうな顔のサクラに微笑みながら椅子から立ち上がり、サクラの前まで歩く。
「でも上忍になったら、じゃないけどね」
「え?」
見上げてくるサクラに意地悪く笑い、口布を下げて目を見開くサクラの唇を塞ぐ。
木ノ葉一の忍と言われた火影からのご利益付きの愛を込めたキスを。
中忍試験の前日、歩いていると後ろからサクラに呼び止められた。
サクラが試験に受けるかどうか悩んでいたのは知っていた。
だからきっとそのことだろうと思った。
「いいよ。なに?」
何故か周りを気にしている様子のサクラはしゃがむ様に手を動かす。
それに従って膝を付いてしゃがむと、サクラはオレの耳元に顔を寄せて。
「あのね、中忍になったらキスしてほしいの」
「は?」
思わず素っ頓狂な声が出た。
後ろに下がると、サクラの表情は真剣そのもの。
「・・・どういうこと?」
「だから、キス、してほしいの」
周りに聞かれないようになのかキスの部分だけ小声になった。
「サクラ、サスケのこと好きなんだろ?」
「好きよ」
「だったら何で・・・」
「だって・・・」
サクラは頬を染めてモジモジして。
「──キスした時下手だったらガッカリされるでしょ?だから先生で練習させて?」
頭が痛い。
「・・・断る」
オレはスッと立ち上がりサクラから離れようとするとベストを掴んで引っ張ってくる。
「いいじゃない!減るもんじゃナシ!」
「オレの中の何かが減る。ていうか、オレとしたらサスケとするときファーストキスじゃなくなるよ?」
「そう、それが問題なのよね」
ベストを掴んだまた顎に手を当てて考えるサクラ。
このままなかったことになるかと思ったのだが。
「口布越しだったらノーカンにならないかしら」
この子の自慢の頭脳が無駄に使われている気がする。
「口布越しでも無しでもしません」
「先生のケチ!」
「ケチで結構。明日の試験のことだけを考えなさい。試験は簡単じゃないぞ」
「分かってるわよ・・・」
口を尖らせたサクラはベストから手を離す。
オレは苦笑して柔らかい薄紅色の髪を優しくポンと撫でる。
「明日の試験はサクラにとって大事なことだ。これから自分がどんな忍になりたいのか、ちゃんと考えて受けるかどうか考えなさいね」
「・・・はい」
素直に頷くサクラの頭から手を離し、今度こそサクラと別れた。
そしてサクラはちゃんと自分の意思で中忍試験を受けた。
が、この試験で大蛇丸が受験者を装いサスケに近づき呪印を植え付け。
そして大蛇丸は両腕を代償に三代目火影の命を奪った。
それから暫くして。
ナルトが急成長していることに焦ったサスケは大蛇丸の手を取り里を抜けた。
子供たちだけでサスケを取り戻しに行ったが叶わず、終末の谷でボロボロになっているナルトの姿に、師として何もすることが出来なかった自分に奥歯を噛みしめた。
それからナルトは自来也様と、残されたサクラも綱手様に師事を仰ぐことになり、オレは上忍として任務を行うことになった。
それから1年後。
サクラはいのとチョウジと共に中忍になった。
オレも任務で忙しくサクラと会う時間がなく、サクラも大人になったのかあの様なお願いを言うことはなかった。
遠くから綱手様のお使いで走り回る成長したサクラを見て微笑ましくもあり、少し寂しい気持ちを抱えた。
本当ならずっとオレの側で育ててあげたかったが。
今更そう思っててもしょうがない。
いつになるかは分からないがナルトが帰ってくればまた第七班が復活する。
そうすればまたあの時のように──。
****
「ねぇ先生、お願いがあるの」
命をかけた大戦が終わりを迎え、綱手様から火影を引き継いで暫く。
いつもの様にタワーのように積み上り終わらない書類にため息を吐いていると、新たにたくさんの書類を持ってきたサクラが唐突にそう話し出す。
「なぁに?」
徹夜続きで疲労困憊していたオレは働かない頭で書類に目を通しながら返事をする。
「今度、上忍試験があるでしょ?」
「うん」
上忍試験。
上忍から推薦をされた中忍が受ける試験が間近に控えている。
その準備のせいで、ただでさえ忙しいのに更に拍車がかかっている。
サクラはシズネから推薦を受け、他数名も受ける予定になっている。
「上忍になれたらキスして」
持っていたペンをポロッと落としてしまった。
目と口を思い切り開いていると惚けていると、サクラはおかしそうに笑う。
「してくれる?」
「え?あ、え?」
未だに頭が追いつかない。
その間、サクラはオレ返事を待っている。
働かない頭でも1つ確かめなきゃいけないことがあることは分かる。
「サクラは、オレのことが好きなのか?」
真剣な目で聞くと、サクラは曖昧に微笑む。
上忍になったらキスということは、まだ言うつもりはないということか。
本当、こうと決めたら譲らない頑固なところは変わらないらしい。
サクラがそうするならこちらも考えがある。
「いいよ、キス」
「・・・本当?」
「うん」
不安そうな顔のサクラに微笑みながら椅子から立ち上がり、サクラの前まで歩く。
「でも上忍になったら、じゃないけどね」
「え?」
見上げてくるサクラに意地悪く笑い、口布を下げて目を見開くサクラの唇を塞ぐ。
木ノ葉一の忍と言われた火影からのご利益付きの愛を込めたキスを。
53/179ページ