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◯木ノ葉台風

「ぎゃあぁぁぁ!飛んでくってばよぉぉぉ!!」
「煩いぞウスラトンカチ!!」

今日の任務は小さい村の家の台風対策。
若者は成人して就職で村を出て行ったため、村には年寄りしか住んでいない。
今回の台風は近年で1番大きいらしく、窓ガラスが割れたり屋根の瓦が飛んでいかないように対策をしてほしいという村長からの依頼だった。
今日の夜には台風が接近するのでカカシも手伝って急いで任務を終わらせたのだが、帰る頃には強風域に入ってしまい、大人のカカシはまだしも子供たちは気を緩めたら一瞬で飛んでしまいそうだ。
ナルトはサスケに、サクラはカカシにしがみついて木ノ葉へと足を進める。
最初はナルトもカカシにしがみついていたのだが、2人にくっつかれて歩くのは面倒で、1人踏ん張って歩くサスケにナルトをなすり付けたのだ。
男たちがギャーギャー騒ぐ中、サクラは強風で目を開けられず、カカシの腰に思い切りしがみついて歩く。
カカシもサクラが飛んで行かないように肩に手を置いて、離れないように歩いていった。


いつもの倍の時間で里に帰還する。

「じゃあ今日は解散。各自気をつけて帰るよーに」
「うへー・・・疲れたってばよ〜・・・」
「疲れたのはオレだ、馬鹿」

2人は文句を言いながらさっきと同じようにナルトがサスケにしがみ付いて帰る。
ここは里だから知り合いに見られて揶揄われるなんて考えてないんだろうか。

「じゃあ、私も・・・」

サクラはカカシの服から手を離して帰ろうもするのでその手を掴む。

「サクラは先生が送ってくから」
「え、大丈夫よ」
「ちゃんと家まで見届けないと、もしかしたら飛んでって木の上で泣いてるんじゃないかって気になって寝れないよ」
「そんなことあるわけないじゃない!」
「分からないだろ?さ、行くよ」

カカシはサクラと手を繋いでサクラの家へと向かう。
台風がだんだんと近づいてきているから、いつもより人通りが少ない。
普段は里の中で手を繋ぐなんて恥ずかしいけど今日は誰かに見られることは少ない。
繋ぐ大きな手から少しずつ顔を上げていき、カカシの横顔を盗み見る。
いつもと同じ顔なのに、どんどん心臓が速くなる。
視線に気づいたカカシがサクラを見る。

「何?」
「う、ううん!」

首を思い切り横に振ると「そ?」と気にすることなくまた前を見て歩く。
そろそろ自分の家が見える。
そうなったらこの手を離さないといけない。
こんなにこの温かい手を離したくないと思ったのは初めてで。

この気持ちは台風のせい?






◯相合傘

「あ、雨」

任務が終わり木ノ葉の門をくぐって直ぐ、サクラが空を見ながらそう呟いた。
他の3人もサクラを真似て空を見れば、どんより雲から雫がどんどん落ちてくる。
これは家に帰り着く前に強くなりそうだ。

「お前ら傘持ってるか?」
「もちろん!天気予報で雨降るって言ってたもの」

サクラは鞄から折り畳み傘を取り出して誇らしい顔をする。
さすが女の子だ。
オレはサクラから男2人に目線を移すと、2人は微動だにしない。
つまり。

「・・・持ってないんだな」
「天気予報なんて見ねえってばよ!」
「これぐらい大したことない」

そうは言っても風邪を引かれたら明日の任務に影響が出る。
オレは自分の鞄から折り畳み傘を取り出して2人に差し出す。

「これ使え」
「「いらない」」
「使わない奴は明日から1週間、オレの代わりに報告書書かせるぞ」

そう言うと2人は奪い合うように傘を取る。
壊してくれるなよ。

「あ、風邪引いても同じだからな。仲良く同じ傘使えよー」

ギャーギャーと騒ぎながら傘を奪い合い去っていく2人を見届け、後ろにいるサクラを見る。

「というわけで、悪いんだけど傘入れて貰ってもいいか?アカデミーに行けば置き傘があると思うから」
「いいわよ?」

サクラが微笑んで傘を差し出してくるので、それを手に取って傘を開く。
ピンクの花柄が描かれた傘はサクラぽい。
それを使うのは恥ずかしかったが、背に腹はかえられない。
子供たちに風邪をひくなと言っておきながらオレがひいては示しがつかない。
それに──。


****


カカシ先生と同じ傘に入って隣を歩く。
肩がくっつきそうな程近い距離。
前までなら何てこと思わなかったけど、今はものすごい緊張してる。

私とカカシ先生は恋人同士だ。
周りには内緒で。
付き合ってるなんて知られたら生徒に手を出したと、先生が責められるに決まってるから。
先生は別に気にしないとは言ってくれたけど、私が許せない。
だから私がもう少し大人になるまでの秘密の関係。

傘を持ってゆっくり歩く人、傘がなくて雨の中ずぶ濡れになりながら走る人。
私たちは花柄の折り畳みの小さい傘に一緒に入ってアカデミーへと向かう。
くっつき過ぎたらバレるんじゃないかと思ってしまって、少しずつ距離を作る。

「サクラ」

名前を呼ばれながら肩を掴まれて引き寄せられる。

「せ、せんせ・・・」
「濡れるからもうちょっとこっちにおいで」

先生は私の肩が濡れないようにピッタリくっ付いて歩く。

「ダメ・・・誰かに見られてバレたら・・・」
「これぐらいでそんなこと思う奴いないよ。オレが傘を忘れてサクラの傘に入れてもらって、濡れないようにくっ付いてるだけ。でしょ?」

先生はふっ、と笑って見つめてくる。
私が過剰になってるだけって分かってる。
付き合い始めてから外でこんなふうに先生にくっ付くことが出来なくなった。
先生がそう言うなら、私は先生の腕に腕を絡めて甘える。


雨が好きになりそう。

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