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ヤキモチ焼いてよ

サクラはサスケを追いかけていたときは、どんなに謗られてもめげずにアプローチして他の女の子が近づいたら牽制もしていた。
特にいのちゃんとか。

だが、オレと付き合うようになったサクラはサスケのときとは真逆の反応だった。
イチャつこうとすればあしらわれ、明らかに好意を持ってオレに近づいてくる女にも反応しない。



ーー気に入らない



「だから、どうすればサクラがオレにヤキモチ焼いてくれると思う?」

オレが相談している相手は同僚で第八班の担当上忍をしている夕日紅。
任務の報告書を提出にくる紅を待ち伏せしてカフェに連れ込んだ。

「カカシ・・・なんで私に相談するのよ」
「そりゃ男よりサクラの気持ちが分かる女の方がいいに決まってるでしょ」

ーーまた変なことに巻き込まれたわ・・・
紅はため息をついて紅茶を飲んだので、オレも頼んだコーヒーを飲む。



「サクラちゃんって最初からそんな態度だったの?」
「んー、いや?最初は反応してくれてたけど、途中から今みたいになったなぁ」
「じゃあカカシに興味なくなったんじゃない?」

紅の言葉に口に含んだコーヒーを吹き出して咽せる。
正面に座ってた紅から怒号が聞こえたが、それどころじゃない。

「ゲホ・・・、いや、それはないでしょ!まだ付き合って半年も経ってないんだぞ!?」
「女の心は秋の空よ。あの年頃だったら、だらしないクズな男より素敵な男に目がいくものよ」

さりげなく罵倒されたが、オレの頭の中はサクラでいっぱいだ。


放心状態のオレから逃げようと静かに立ち上がり店から出ようとする紅にオレは慌てて追いかける。

「紅!オレどうしたらいいんだ!」
「知らないわよ。諦めて他の女にでもいけば?」
「そんなこと出来るわけないだろ!?」

紅の肩を掴み、店の前でいい大人の男女が騒いでいるのを通りかかる人々は遠巻きに見ていた。
ただ一部を除いて。




「何やってんだ、お前ら」


オレと紅は体を近づけたまま声の主を見ると、そこには髭面熊の猿飛アスマがタバコを咥えて怪訝そうな顔でこちらを見ていた。
その傍らにはオレの大事な人が。



「ーーサクラ」

なんでサクラがアスマと。
オレは口を開けてサクラとアスマを交互に見る。
見かねた紅がアスマに問いかける。

「そういう貴方達は珍しい組み合わせね。どうしたの?」

そう聞かれたアスマはチラッとサクラを見ると、サクラは眉を下げてアスマの腕を掴んでいた。
それを見た瞬間オレの心は騒ぐ。

「あー・・・ちょっとな」

アスマは頭を掻いて視線を逸らすと、紅は何を思ったのか惚けたオレに腕を絡ませてきた。

「私はカカシにお茶に誘われたのよ。これから2人で行く所もあって」

「は!?」

そんな話はしていない。
そんなことよりサクラを問い詰める方が重要だ。
そう思ってサクラを見ると、眉間に皺を寄せて絡ませている部分を凝視していた。
オレが見ていることに気づいたサクラは一瞬で笑顔になってアスマの腕を引っ張る。

「2人の邪魔しちゃ悪いですし行きましょう、アスマ先生」
「あ、ああ・・・」


「さ、サクラ!」

呼び止めるオレの声を無視して2人は離れていく。
呆然としているオレは、後ろで肩を震わせてる紅に気づかなかった。




それから紅と別れたオレは自分の部屋に戻ったが落ち着かなくてサクラの家へと向かった。
あれから1時間は経っていたからもう帰ってきてるだろうと思ってインターホンを鳴らしたらサクラのお母さんが出てきて、まだ帰ってきていないと告げられた。
オレはお礼を言ってサクラの家を後にしたが、心中は穏やかじゃない。


そのまま帰ることが出来ず、隠れてサクラが帰宅するのを待った。
すると、あれから1時間程でサクラが帰宅した。

オレの気配に気づかず家に入るサクラ。
だんだんオレの心が荒れてくる。
紅の言ったことは本当だったんだろうか。
もうサクラの心にオレはいないのだろうか。




****


アスマ先生と別れて家に帰ったら、お母さんからカカシ先生が来たと言われた。
ドキっとしたけど、明日の集合時間が早くなったという連絡をしに来ただけらしい。
それを聞いた私はいつもより早くベッドに入ったけど、あの光景が頭をから離れなくて寝付く頃には太陽が登り始めていた。




朝、いつもなら集合時間の30分前には着くようにしてるけど、寝不足の顔をナルトとサスケくんに見られるのが嫌で時間ギリギリに着いた。
でもそこには2人の姿はなくて、いつもはいない人が橋の柵にもたれかかっていた。


「カカシ先生・・・」
「おはよう」
「・・・おはようございます」

もたれて顔だけをこちらに向けてくる先生に、目を合わさず挨拶して横に立つ。


ーーなんでこんな日に限って早く来てるのよ・・・早く2人とも来なさいよ・・・

心の中で悪態をついていると、心の中を読んだのか先生は口を開いた。

「集合時間早まったって嘘だから。2人はまだ来ないよ」
「え!?」

驚いて今日初めて先生の顔を見ると、先生は怒っているように見える。


「昨日、何でアスマといたの」
「べ、別に。偶然会ったからお喋りしてたのよ・・・」

問い詰めるように聞いてくる先生が怖くて目線を逸らして下を向く。

「へぇ。偶然会って2時間もお喋りしてたんだ」
「何で知ってるのよ!まさか、覗いてたの!?」
「サクラの帰りが遅いから心配だったんだよ」

私が睨んでも痛くも痒くもない顔でこちらを見てくる。
私だけ責めるように言われ、イライラしてくる。


「カカシ先生だって紅先生といたじゃない。その後もデート楽しんでたんじゃないの」
「あれは紅の嘘だから。あの後すぐ別れたし」
「そんなの信じられるわけないでしょ」

自分から話を振ったのに泣きそうになって顔を逸らすと、私の顔を両手で掴まれて戻される。
驚いて先生の顔を見ると、先生も驚いた顔をしていた。


「サクラ・・・」
「な、なによ・・・」
「ヤキモチ焼いてるの?」

私の気持ちを当てられて顔が赤くなる。
すると、先生は今まで見たことないくらいの笑顔で私を抱きしめてきた。
力強く抱きしめてくるから苦しくて体を叩くが、緩むどころか更に抱きしめられる。

「せ、せん・・・くる・・・し・・・」

息も絶え絶えに言うと、ようやく解放してくれた。

「ごめん。嬉しくて」
「何がよ・・・」

肩で息をして涙を浮かべて睨むと、先生は嬉しそうにほほえんでくる。

「サクラがヤキモチ焼いてくれたことが」


ーーは?

ポカンと口を開ける私をまた抱きしめてくる。
さっきよりは弱い力で。



「オレさ、ずっと不安だったんだよ。サクラから何もしてくれないし、ヤキモチも焼いてくれないし。オレがしつこく告白したからサクラは嫌々付き合ってくれたんじゃないかってね」
「そんなことない!」

私は勢いよく顔をあげて否定すると、先生は嬉しそうに目を細めて笑いかけてくれる。

「うん。サクラもオレが好きなんだって分かった」

先生は私の額にキスをしてくれて、先生が話してくれたのが嬉しくて私も背伸びして頬に初めて自分からキスをすると先生はびっくりした顔をしていた。

今度は私が話す番。


「私・・・まだ子供だから。大人の先生と並んだら尚更幼く見えるし。先生に言い寄る女の人見ると嫌な気持ちになるけど、ヤキモチなんて子供っぽいし・・・」
「先生に釣り合える女性になるにはどうしたらいいかなって思って・・・それでアスマ先生に相談してたの」

そして昨日約束をしてたら4人が出くわしてしまったのだ。



ずっと言えなかったことを伝えると、私を包み込んでいた先生の体がズルズルと下がっていってしゃがみ込んでしまった。

「せ、先生?」

私は慌てて声をかけると、カカシ先生は大きくため息をついた。

「はー・・・俺ってバカだな」
「え?」

私も先生の前にしゃがんで顔を覗き込むと、先生は目を細めて軽く唇を合わせてきた。

「ちょっ!?」

慌てる私をよそに私の肩を引き寄せて抱きしめる。

「オレもさ、紅にサクラがどうやったらヤキモチ焼いてくれるか相談してたんだよ」
「え」

「嫌味しか言われなかったけどねー」と不貞腐れた声が聞こえた。
昨日2人が一緒に居た理由が分かって、やっとモヤモヤしてた気分が晴れてきた。

「そうなんだ・・・カカシ先生、私に飽きて紅先生のところに行くのかと思った・・・」
「んなわけないでしょ」

そう言って先生は体を離して私の顔を両手で挟んだ。
驚いていると額を合わせて至近距離に先生の瞳があって、恥ずかしくて顔が一瞬で真っ赤になる。



「オレはサクラが好きなんだよ。好きで、好きすぎて、サクラの近くに男がいるってだけで嫉妬でおかしくなる」
「先生・・・」

嘘のつけない距離の告白に嬉しくなって先生の顔がだんだん歪んでくる。

「サクラはそのままでいいんだ。無理に大人になろうとしないで。ヤキモチ焼いてほしい」
「うん」

うん、うんと私は泣きながら頷くしか出来ない。
先生は額を離して頬を流れる涙を舌で舐めとる。
私は恥ずかしくて体を離そうとするが先生の力に勝てるわけもなく、先生の唇はそのまま下がり首に到達した。
首元で軽く吸われた瞬間体が小さく跳ね、何を思ったのか先生は手を胸においた。


「ちょ、ちょっと先生!?何してんのよ!!」
「んー?サクラちゃんがオレの気持ち疑ったからちゃんと分からせようと思って」

先生は首元で喋るから息がかかりゾクゾクして小さく声が漏れた。
その声に心良くした先生は胸においた手を動かし始めたので、私は慌てて手を掴んで離そうとする。

「だ、ダメよ!いつ2人が来るか分からないし、てゆうかここ外!!」

顔を真っ赤にしてなんとか離そうとする私に、カカシ先生は私の耳元に口を寄せる。


「じゃあ、今日は任務辞めてオレの部屋に行こう?ナルトたちには影分身飛ばしとくから」

低く甘い声に身を預けそうになったがなんとか踏みとどまる。

「何・・・言ってんのよ・・・!そんなこと許されるわけないでしょ!!」
「えー?」
「もう!いい加減にしないと嫌いになるわよ!」

なんとかして離そうとすると、カカシ先生は「ちぇー」と言ってようやく離れてくれた。

真っ赤になって睨む私に先生はニヤニヤと笑ってくるから腹が立つ。
私はいつだってカカシ先生の手のひらで転がされているのだ。
悔しい。
悔しいから意地悪したくなる。


「私、暫くカカシ先生の部屋行かないから」
「え、なんでよ」

ヤキモチ焼いて欲しいというのなら、今まで溜まっていたものをぶちまけさせてもらおう。

「紅先生に腕絡まれたとき、胸が当たっても嫌そうにしてなかったじゃない」
「いや、あれは紅が勝手にくっ付いてるきただけでオレは別に・・・」
「満更でもなかったんでしょ。これだから男の人は!」

私は頬を膨らませて顔を逸らすと、先生が慌ててるのが分かって嬉しくなる。
するとカカシ先生は私の肩を抱き寄せて囁いてくる。

「大丈夫だよサクラ。オレがちゃんと紅くらいに大きく」



ドス。


先生の鳩尾に私の拳が思い切り入って、「うぐぅ」とカカシ先生が唸って蹲る。

「先生のおバカ!絶対行かないから!!」


私はドスドスと先生から離れるとタイミングよくナルトとサスケくんが現れたので、蹲まり唸る先生に訝しがる2人を引き連れて任務先へと向かう。
「サクラぁ・・・」と情けない声を無視して。


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