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「サクラが好きだ。付き合って欲しい」

カカシに呼び出されたと思えば突然の告白。
いつもの冗談かと思ったが、その瞳は真剣そのもので。
サクラは顔を真っ赤にして小さく頷くと、カカシは嬉しそうに笑ってサクラを抱きしめる。
こんなに近くに師の身体を感じたことがない。
サクラは自分も手を回した方がいいのか分からず、しばらく手が宙を彷徨い、結局背中ではなくベストを掴むしか出来なかった。
サクラは下忍時代とは違い、ずっと修行ばかりで恋をしてこなかった。
だから交際経験がない。
カカシに名前を呼ばれて顔を上げるとだんだん近づいてくる顔。
どうしたらいいのか分からず、ギュッと目を瞑ると気配が離れていくのが分かった。
恐る恐る目を開けると、困ったように笑うカカシ。

「ゆっくり進んでいこう。時間はこれからたくさんあるんだから」

カカシはコツンとサクラの額に自分のをくっつけて覗き込む。
サクラが小さく頷くと、カカシはサクラの可愛いおでこにキスをする。
そしてまた優しく包み込んでくれて今度は背中に腕を回すことが出来た。



****



それからサクラは自分のダメさに落ち込んだ。
カカシは火影になり、サクラも医療の中心になって一緒に任務に出ることはなくなっても会おうと思えば会える距離。
恋人になってからカカシは暇を見つけては医務室にやってきて駄弁って、呼びにきたシカマルに連れていかれるというのが日常茶飯事になった。
その間、カカシは一定の距離を保って触れてこない。
その優しさに嬉しくなりながらも辛くもなる。
自身の恋愛経験の無さからカカシに気を使わせてしまっていることが。
いのからしょっちゅうサイとの惚気話を聞かされ、側にいるだけでも幸せだと笑ういのの話を思い出す。

カカシは自分といて幸せなのだろうか、と。



****



この日もカカシがシカマルの目を盗んで医務室にやってきた時だった。

「サクラ、明後日休める?」
「明後日?たぶん大丈夫だと思いますけど」
「ならオレの部屋にお泊まりに来てよ」
「へ!?」

唐突なお誘いに顔が赤くなる。

「やっと仕事が一段落ついてね。シカマルからお休み言い渡されちゃって。サクラも休めそうなら一緒に過ごしたいなーって思ったんだけど、どう?」
「えっと・・・」

胸元を握って目を泳がせていると、カカシは不安そうな顔で見ていることに気づく。
でも泊まるということはそういうことをするかもしれないということで。
答えを出せないでいると。

「・・・ごめん、困らせたな。泊まりはまた今度でも」
「ううん!」

困ったように笑ったカカシが話をなかったことにしようとしていることに気づき、サクラは自分でも驚くぐらい大きな声で遮る。
カカシも目を丸くしている。

「お、お泊まりします」
「え、いいの?」
「うん・・・。明日早く終わるから、ご飯作って待ってても、いい・・・?」

恐る恐る聞くと、カカシは嬉しそうに笑う。

「もちろん。楽しみにしてる」

カカシの表情にサクラはほっとして、カカシが部屋を出て行ったあとは何を作ろうかとずっと考えてしまい仕事が手につかなかった。



****



次の日、仕事が終わって帰る前に執務室に寄って鍵を受け取り、スーパーに寄ってカカシの好きな茄子と魚と、きんぴらの材料を買ってカカシの家に向かう。
そしてカカシが帰ってくるまでに何とか料理を作り終える。
カカシと付き合うようになって料理の勉強を頑張ったのだ。
なかなかの出来栄えに満足しているとインターホンが鳴り急いで玄関に向かいドアを開ける。

「おかえりなさい、先生」

訪問者はやはりカカシで微笑みかけると、何故か目を丸くしている。
首を傾げるとカカシは嬉しそうに笑う。

「・・・ただいまサクラ」

そのままギューと抱きしめられ、サクラは動揺する。

「せんせ・・・!?」
「んー・・・20年ぶりのおかえりが嬉しくなってね・・・」

カカシはサクラの髪に顔を埋める。
サクラはその言葉に胸が締め付けられる。
カカシは幼少期に両親を亡くしてずっと1人だったと聞いた。
サクラはその冷えきった心を暖めてあげたくなり、カカシの背中に腕を回す。
そのまま2人は玄関で抱きしめ合う。

「・・・そろそろご飯食べようか」
「うん」

2人は体を離して微笑み合い、一緒にリビングへと向かった。



****



「ご馳走様でした。美味しかったよ」
「お粗末様です」

2人一緒に手を合わせてお皿を持ってキッチンへ。
カカシがお皿を洗い、サクラが拭く係になって並んで片付ける。

「まさかサクラがこんな料理上手になってるとは思わなかったよ」
「何それ。どういう意味?」
「だって昔、家事代行の任務の時のサクラひどすぎてサスケに怒られてたじゃない」
「あ、あれは・・・!と、とにかく、あれから料理の勉強頑張ったの!先生に美味しいって思ってほしくて・・・」
「サクラ・・・」

耳が熱い。
恥ずかしくて俯くと、頭に先生の唇が落ちる。

「そんな可愛いこと言われたら我慢出来ないでしょ・・・。お皿洗い終わるまで待ってね」

カカシは少しだけ目を細め、手に持っていたスポンジを泡立てお皿を洗い始める。
サクラはというと、耳だけじゃなく頸まで真っ赤になってお皿を磨いていた。



****



「おいで」

片付けが終わり、カカシはサクラの手を引いて歩く。
その行き先が寝室だと分かり、サクラの心臓は口から出そうなほど飛び跳ねている。
カカシはベッドに腰掛け、サクラは前に立ち、いつもとは違ってサクラがカカシを見下ろしながら手を繋ぐ。
カカシの指がサクラの甲を撫で、ビクッと揺れる。
サクラの反応にカカシは苦笑し、手を離そうとするのをサクラは慌てて掴む。
カカシは目を見開き、サクラは口を一文字に結んで顔を真っ赤にしている。
サクラは息を吸い込み。

「せ、先生はさ・・・」
「うん」
「私といて、幸せ?」
「え?」

サクラの問いかけにまたカカシの目が丸くなる。

「だって私、少し触られただけでもこんなんだし・・・つまらないでしょ?」
「そんなことないよ」
「・・・どうして?」

カカシはベッドから立ち上がり、さっきまでとは逆にカカシがサクラを見下ろす。

「好きな子を自分色に染めれるって嬉しくない?」

カカシはサクラの頬に手を添えて、今までサクラが感じたことのない男を出し始める。
それだけでサクラの心臓はまた早鐘を打つ。
カカシは小さく笑って指をサクラの唇にぷにっと当てて。


「サクラはどんなふうに染まっていくのかな」


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