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「ん・・・」

鳥の声とカーテンの隙間から入る光で目を覚ます。
目を開けるとそこは知らない天井で。
ぼーとする頭で時間を確認しようと手を伸ばすも、そこにあるはずの目覚まし時計はない。
おかしい、と思い顔を横に動かすと。


「──っ!!」


至近距離に眠っているカカシ先生の顔があって思わず叫びそうになるのを既で止める。
先生はマスクを外して素顔を晒している。
いや、それだけじゃない。
毛布に隠れてはいるが、その下は裸。
私も恐る恐る自分の身体を確認する。
全身がスースーする。
それに股の部分が痛い。
事態の大変さに一気に冷や汗をかく。


──やばいやばいやばい。


私は気持ちよさそうに眠る先生を起こさぬようにベッドからそっと抜け出し、床に落ちている下着と服を着て。


先生の部屋を飛び出した。



****



私はそのまま家に帰ることも出来ず、フラフラと歩く。
何であんなことになったのか覚えていない。
でも2人とも裸でベッドに寝ていて、下半身が痛いということはやらかしている。
それに、うっすらと覚えている恍惚した表情で覆いかぶさる先生を思い出して身体が疼いて顔が赤くなる。
今日は任務は休みだけど明日からまた七班の任務が始まる。
そしたら先生と顔を合わせなきゃいけない。
どんな顔をすればいいんだ、と顔に手を当ててため息を吐く。


「あ、サクラちゃ〜ん・・・」

前から呼ばれて顔を上げると、腕を上げながらヘロヘロと歩いてくるナルト。
珍しく元気がない彼が心配になって駆け寄る。

「どうしたのよナルト。元気ないじゃない」
「うん・・・頭痛くて・・・」
「え、風邪?」
「そうかと思って綱手のバーちゃんとこ行ったら・・・二日酔いって言われた・・・」
「ふ、二日酔い?」

気怠く頷くナルト。
私たちは16になったがまだお酒を飲める年齢ではない。

「サクラちゃん、昨日依頼人に貰ったチョコ覚えてる?」
「え、あの高そうなチョコ?」

昨日、ヤマト隊長率いる七班で資産家の依頼をこなし、そのお礼に高そうな箱に入ったチョコを貰った。
それをみんなで分けて、1個余ったから私がカカシ先生に持っていくことになって。
先生の部屋に行って、それを一緒に食べて、それから──。

「あれ、お酒入りだったんだって。なんだっけ、ウイスキーぼんぼこりん?」
「ボンボンよ。・・・え、ウイスキーボンボン!?」

私は口を抑える。
ナルトの話が本当なら、私たちは知らぬ間にお酒を飲んでいたらしい。
しかも師匠にバレたということは、私にもキツイお灸が待っているだろう。
サクラはこの後の自分の身に起こることに悲観して肩を落とす。


すると。

「やぁ・・・君たち」

ナルトの後ろからヤマト隊長の顔がヌボォと現れ、私たちは悲鳴を上げる。

「や、ヤマト隊長、驚かすなってばよ!!」
「別にそこまで驚かなくても。てゆうか、騒がないでくれる?頭に響くから・・・」
「ヤマト隊長もなのね・・・」

ナルトの声に頭を抱える隊長に苦笑する。

「あれがあんなに強いお酒とは思わなかったよ・・・。サイも普段以上に顔色が悪かったからね・・・」

あの青白い空気の読めない班員もどうやらやられているらしい。

「いいかい。未成年に知らずとはいえお酒を飲ませたことがバレたら大変なことになるから、くれぐれも五代目には・・・」
「あ、そうそう。綱手のバーちゃんがヤマト隊長探して連れてこいって」
「遅かったか・・・」

ナルトの言葉に肩を落とす隊長。
そんな隊長の背中をナルトはバシバシ叩きながら2人は去っていった。
この里で最も恐ろしい人の元へ。



私はそんな2人を見送り、もう帰ろうかと歩き出したとき、路地裏から手が伸びてきて引き摺り込まれる。
突然のことに反応出来ず、私はそのままその人にぶつかる。
その時、朝嗅いだ匂いに肩が跳ね、恐る恐る顔を上げると。

「やぁ、サクラ」
「か、カカシ、せんせ・・・」

そこには師匠以上に会いたくない人物がにこやかに笑っていて、また冷や汗をかく。
先生が口を開こうとするので慌てて遮る。

「せ、先生は体調は大丈夫?」
「え?あぁ、酒入りだったって気づいた?サクラ1口食べただけで酔っ払って大変だったよ」
「それはご迷惑おかけしました・・・」

初めてのお酒でヤマト隊長ですら潰れる程の強いお酒だ。
そうなるのも無理はない。
恥ずかしくて俯いていると、ジーと先生の視線が突き刺さり顔を上げる。

「身体、大丈夫か」
「え、うん。二日酔いとかはないけど・・・」
「そうじゃなくて。昨日無理させたから」

先生が何を言いたいのかが分かり、顔に熱が集まる。
何となくそういうことをしたんだろうな、とは思っていたけど、ハッキリ言われてはもう逃げられない。
初めては痛いと周りから聞いていたけど、普通に過ごせているということは先生が優しくしてくれたということで。
だんだんと現実味が増してきて、先生の顔が見れない。

「せ、先生は、覚えてるのね・・・」
「まぁ、飲み慣れてるからね。あれ程度じゃ潰れないよ」
「ヤマト隊長は潰れてたみたいだけど・・・」
「アイツは弱いから。ところでサクラ。何でこっち見ないの」

明後日の方向を見ながら話していると、頬に手を添えられて無理やり目を合わせられる。
今日初めて真っ直ぐ見る先生の瞳に、昨日の熱と欲を含んだ雄の先生を思い出して顔から火が出そうになった。

「はは、真っ赤」
「!!離して!」
「ダメ」

揶揄われて逃れようとするも、それを許さない先生の手。

「起きたら隣にサクラいなくて寂しかったんだけど」
「う、だ、だって・・・」
「だって?」

顔を掴まれて動かせないから目が泳ぐ。
声色から絶対面白がってる。
悔しいけどこの人に勝てるわけがない。
抵抗するのを諦めると、なぜか頬やら髪を弄り始める先生。
先生の指が当たるたびに小さく体が跳ね、早くこの時間が終わってほしいと願う。


「責任、取らなきゃな」
「せ、責任?何の・・・」
「ん?サクラの初めて貰った責任」

目を細めて笑う先生に色気を感じて、一瞬息が止まる。
このまま先生に流されたらもっと大変なことになりそうで。
私は先生の胸を押して身体を離す。

「大丈夫だから!」

そう突き放して踵を返して大通りに出る。

「サクラどこ行くの」
「帰るのよ」
「あぁ。それなら御両親にご挨拶に・・・」
「やめて!付いてこないでよ!!」

後ろを付いて歩く先生を睨んでもニコニコ笑うだけで意味はなく。
木ノ葉一と称される忍を後ろに付けて歩くあの子は何者だ、という周りの好奇な視線が突き刺さる。

「付いてこないでってば・・・」
「付き合ってくれるなら」
「付き合わない・・・」
「なんで?」

その言葉に後ろを振り返ると、至近距離にカカシ先生の顔があって息を呑む。

「サクラも気持ちよかったでしょ?」

先生は微笑しながら顔を近づけてくる。
あと少しで唇が合わさる──。


べチン!!


私は顔を真っ赤にして思い切り先生の顔を叩く。

「先生の馬鹿!変態!!」

私はそう叫んで思い切り走った。





その場に置き去りにされたカカシは衆人の視線を集めながらおかしそうに笑う。

「はー・・・本当可愛いな」

カカシの顔はマスクを付けていても分かるぐらい破顔していた。



-------------
(おまけ)


「サクラ、大丈夫か?」
「ん〜〜?」

ヤマトを隊長に任務を行ったサクラたち。
その依頼人からお礼のチョコを貰って余ったからと持ってきたのが数分前。
チョコと合いそうなコーヒーも入れて食べると、中から度数の高いウイスキーが出てきた。
これはマズイとサクラを見ると、その手には半分だけ食べられたチョコレートがあり、サクラの目はふにゃりとなり顔は真っ赤になっていた。
これはヤマトの監督不行だな、と後で絞ることを考えながらサクラに飲ませる水を取りに行こうと立ち上がると、隣に座るサクラが掴む。

「せんせぇ・・・」

見上げてくるサクラの瞳は潤み、見たことのない表情に無意識に喉が鳴る。
オレはこの少女に好意を抱いている。
それは誰も知らないし、バラすつもりもない、のだが・・・。

「サクラ、離して・・・」

情けなく懇願するも、サクラはオレの体にしがみつき、嫌々と顔を横に振る。
その可愛らしい行動に胸が締め付けられてしょうがない。
この状況どうしようかと頭を悩ませていると、サクラは顔を上げて。

「せんせ、あつい・・・」

舌足らずの誘っているかのような発言に、オレの理性の糸がプチンと切れた。
オレはガバッとサクラを持ち上げ、ベッドの上に降ろす。

「もうどうなっても知らないからな・・・」

オレはサクラの潤んだ唇を塞いだ。


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