short.1
演習の休憩中、各々休んでいる中、サクラはカカシの隣に座り手鏡で確認しながら薄紅色の髪を櫛で整えていた。
「手入れ大変そうだね」
カカシは横目で見ながらそういうと、サクラはこちらをニンマリと笑う。
「当たり前よ。髪は女の命なんだから」
「髪長いと大変じゃない?切っちゃえば?」
「ダメ!サスケくんは髪が長いのが好きなのよ」
「へぇー」
本当女の子は大変だねぇ、とイチャパラに目を向けると、いきなりサクラが髪に手を伸ばす。
「先生髪ボサボサ!ちゃんと髪とかしてる?」
「うち櫛ないから」
「信じられない!私がしてあげる」
「いいって。この後も動くんだし」
「いいから!額当て取る!」
「はい・・・」
サクラの気迫に負けてカカシは額当てを取ると、サクラは自分の櫛でカカシの髪を梳き始める。
「先生の髪サラサラしてて綺麗なのね。勿体無いわよ」
「そう・・・」
カカシはこの状況に落ち着かない。
生まれてこの方、異性に髪をこんな風に触られたことがないからだ。
そんなカカシを他所にサクラは楽しそうしているから、カカシはまぁいいか、と諦めてサクラが満足するまで髪を触らせた。
****
あれから数日。
サクラは楽しくなったのか暇さえあればカカシの髪を梳くようになった。
ナルトも羨ましくなってサクラにお願いするも、触り心地が気持ち良くないとバッサリ断られる。
こっちをチラチラとサスケが見ていることにも気づかずサクラはカカシだけを見ている。
カカシは密かに優越感を持っていた。
いつも通り任務を終わらせ報告書を持ってアカデミーに向かっているとき、ふと、着物や和小物などを扱っているお店が目に入る。
店先に簪や櫛が飾っており、若い女の子から妙齢の女性でも使えるような幅広い品揃えだった。
櫛を見た時、サクラが使っている櫛が少しボロボロになことを思い出した。
毎日使う物だし、給金の少ない下忍では高いのは買えないだろう。
せっかくならお礼と任務や修行を頑張ってるご褒美に櫛を贈ろうと、店先に並ぶ櫛を見る。
今まで彼女なりオトモダチなりにプレゼントをしようなんて考えたことがなかった。
何がいいのか分からず腕を組んで唸っていると。
「あれぇ。カカシ先生、何してるんですか?もしかして女の人にプレゼント?」
「──サクラ」
後ろから声をかけられて振り返れば、まさかの悩ませている本人。
どうせならビックリさせたかったが、変に趣味じゃないのを選んでガッカリさせるよりかは選ばせた方がいいか。
「なぁ。サクラはこの中ならどれが良い?」
「え?」
カカシを弄ろうとニヤニヤしていたサクラは目を丸くする。
「う、うーん・・・これ好きかも」
サクラが様々な櫛を見て指差したのは、桜の形に彫られたつげ櫛だった。
サクラらしい櫛だった。
これをサクラが使っているのを見たくなり、奥にいた年配の店員を呼ぶ。
「これください。あ、プレゼント用で」
隣にいたサクラを見た店員はニコニコと笑い、櫛を手に奥へと戻る。
「ちょ、ちょっと先生!」
サクラはカカシに掴みかかり、店員に聞こえないように小さな声で詰め寄る。
「なに?」
「なに、じゃない!ここのお店高いのよ?私買えないわよ!」
「何言ってんの。先生からのプレゼント」
「な、なんで・・・」
「任務や修行頑張ってるからね」
店員が綺麗にラッピングされたのを持ってきて受け取り、それをその場でサクラに渡す。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう・・・」
サクラは受け取ると、嬉しそうにそれを握りしめる。
はにかむその表情が可愛くて、こっちも嬉しくてずっと見ていると、視線に気づいたサクラの頬が赤くなる。
目線が左右に泳ぎ、ジリジリと後ろに下がり出す。
「そ、それじゃまた!ありがとね、先生!」
「うん。それ使ってね」
「う、うん」
サクラは小さく手を振って走り去る。
それを見送り、待機所に向かう。
部屋に入ると珍しく紅しかおらず、その紅はカカシを見るなりニヤニヤと笑う。
「見たわよ」
「・・・何が」
ソファーに足を組んで座る紅の前に座る。
「あんた、サクラちゃんに櫛買ってあげてたでしょ」
「そうだけど?」
「ふ〜ん?あんた達ってそういう関係だったのね」
「はぁ?」
謂れのないことに眉間に皺を寄せる。
紅はそんなカカシを見て呆れたように笑う。
「そうよね。アンタが知るわけないわよね」
「だから、何が」
やれやれ、と笑う紅にだんだんと苛々してくる。
「昔、男が女に櫛を贈るのはプロポーズをする時なのよ」
「──は」
「色々諸説はあるみたいだけど『苦楽を死ぬまで寄り添い合って過ごそう』らしいわよ。今でも櫛を贈ってプロポーズをするロマンチストもいるんだって」
「・・・へぇ」
カカシは口布の上から手を口に当てて頭を悩ませる。
「・・・それ、サクラ知ってると思うか?」
「彼女読書家でしょ?知ってるんじゃない?」
カカシは最後のサクラを思い出す。
普段のサクラならプレゼントを貰ったら子供のように喜ぶだろう。
だがさっきのサクラは頬を染めて喜ぶ姿はとても子供には見えなくて・・・。
勘違いをさせてしまったのなら謝るべきなのだが、もしサクラを悲しませてしまったら、そんな顔を見るぐらいならもうこのまま本当のことにして──。
その考えに固まる。
そりゃサクラのことは大事な生徒で誰よりも大事で。
だがそれだけで結婚してもいいなんて思わないだろう。
それに今まで誰かにプレゼントを渡したいと思わなかった。
なのに櫛を見た時にサクラの喜ぶ顔を思い浮かべて見たいと思った。
それはつまり、そういうことで・・・。
ようやく気づいた自分の気持ちにどうしたらいいのか分からず頭を抱えるカカシを紅は暫く揶揄うネタに使ったのだった。
「手入れ大変そうだね」
カカシは横目で見ながらそういうと、サクラはこちらをニンマリと笑う。
「当たり前よ。髪は女の命なんだから」
「髪長いと大変じゃない?切っちゃえば?」
「ダメ!サスケくんは髪が長いのが好きなのよ」
「へぇー」
本当女の子は大変だねぇ、とイチャパラに目を向けると、いきなりサクラが髪に手を伸ばす。
「先生髪ボサボサ!ちゃんと髪とかしてる?」
「うち櫛ないから」
「信じられない!私がしてあげる」
「いいって。この後も動くんだし」
「いいから!額当て取る!」
「はい・・・」
サクラの気迫に負けてカカシは額当てを取ると、サクラは自分の櫛でカカシの髪を梳き始める。
「先生の髪サラサラしてて綺麗なのね。勿体無いわよ」
「そう・・・」
カカシはこの状況に落ち着かない。
生まれてこの方、異性に髪をこんな風に触られたことがないからだ。
そんなカカシを他所にサクラは楽しそうしているから、カカシはまぁいいか、と諦めてサクラが満足するまで髪を触らせた。
****
あれから数日。
サクラは楽しくなったのか暇さえあればカカシの髪を梳くようになった。
ナルトも羨ましくなってサクラにお願いするも、触り心地が気持ち良くないとバッサリ断られる。
こっちをチラチラとサスケが見ていることにも気づかずサクラはカカシだけを見ている。
カカシは密かに優越感を持っていた。
いつも通り任務を終わらせ報告書を持ってアカデミーに向かっているとき、ふと、着物や和小物などを扱っているお店が目に入る。
店先に簪や櫛が飾っており、若い女の子から妙齢の女性でも使えるような幅広い品揃えだった。
櫛を見た時、サクラが使っている櫛が少しボロボロになことを思い出した。
毎日使う物だし、給金の少ない下忍では高いのは買えないだろう。
せっかくならお礼と任務や修行を頑張ってるご褒美に櫛を贈ろうと、店先に並ぶ櫛を見る。
今まで彼女なりオトモダチなりにプレゼントをしようなんて考えたことがなかった。
何がいいのか分からず腕を組んで唸っていると。
「あれぇ。カカシ先生、何してるんですか?もしかして女の人にプレゼント?」
「──サクラ」
後ろから声をかけられて振り返れば、まさかの悩ませている本人。
どうせならビックリさせたかったが、変に趣味じゃないのを選んでガッカリさせるよりかは選ばせた方がいいか。
「なぁ。サクラはこの中ならどれが良い?」
「え?」
カカシを弄ろうとニヤニヤしていたサクラは目を丸くする。
「う、うーん・・・これ好きかも」
サクラが様々な櫛を見て指差したのは、桜の形に彫られたつげ櫛だった。
サクラらしい櫛だった。
これをサクラが使っているのを見たくなり、奥にいた年配の店員を呼ぶ。
「これください。あ、プレゼント用で」
隣にいたサクラを見た店員はニコニコと笑い、櫛を手に奥へと戻る。
「ちょ、ちょっと先生!」
サクラはカカシに掴みかかり、店員に聞こえないように小さな声で詰め寄る。
「なに?」
「なに、じゃない!ここのお店高いのよ?私買えないわよ!」
「何言ってんの。先生からのプレゼント」
「な、なんで・・・」
「任務や修行頑張ってるからね」
店員が綺麗にラッピングされたのを持ってきて受け取り、それをその場でサクラに渡す。
「はい、どうぞ」
「あ、ありがとう・・・」
サクラは受け取ると、嬉しそうにそれを握りしめる。
はにかむその表情が可愛くて、こっちも嬉しくてずっと見ていると、視線に気づいたサクラの頬が赤くなる。
目線が左右に泳ぎ、ジリジリと後ろに下がり出す。
「そ、それじゃまた!ありがとね、先生!」
「うん。それ使ってね」
「う、うん」
サクラは小さく手を振って走り去る。
それを見送り、待機所に向かう。
部屋に入ると珍しく紅しかおらず、その紅はカカシを見るなりニヤニヤと笑う。
「見たわよ」
「・・・何が」
ソファーに足を組んで座る紅の前に座る。
「あんた、サクラちゃんに櫛買ってあげてたでしょ」
「そうだけど?」
「ふ〜ん?あんた達ってそういう関係だったのね」
「はぁ?」
謂れのないことに眉間に皺を寄せる。
紅はそんなカカシを見て呆れたように笑う。
「そうよね。アンタが知るわけないわよね」
「だから、何が」
やれやれ、と笑う紅にだんだんと苛々してくる。
「昔、男が女に櫛を贈るのはプロポーズをする時なのよ」
「──は」
「色々諸説はあるみたいだけど『苦楽を死ぬまで寄り添い合って過ごそう』らしいわよ。今でも櫛を贈ってプロポーズをするロマンチストもいるんだって」
「・・・へぇ」
カカシは口布の上から手を口に当てて頭を悩ませる。
「・・・それ、サクラ知ってると思うか?」
「彼女読書家でしょ?知ってるんじゃない?」
カカシは最後のサクラを思い出す。
普段のサクラならプレゼントを貰ったら子供のように喜ぶだろう。
だがさっきのサクラは頬を染めて喜ぶ姿はとても子供には見えなくて・・・。
勘違いをさせてしまったのなら謝るべきなのだが、もしサクラを悲しませてしまったら、そんな顔を見るぐらいならもうこのまま本当のことにして──。
その考えに固まる。
そりゃサクラのことは大事な生徒で誰よりも大事で。
だがそれだけで結婚してもいいなんて思わないだろう。
それに今まで誰かにプレゼントを渡したいと思わなかった。
なのに櫛を見た時にサクラの喜ぶ顔を思い浮かべて見たいと思った。
それはつまり、そういうことで・・・。
ようやく気づいた自分の気持ちにどうしたらいいのか分からず頭を抱えるカカシを紅は暫く揶揄うネタに使ったのだった。
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