short.1
やってしまった。
俺たちにとって大事な日に寝坊した。
3時間も。
慌てて待ち合わせ場所に行くとサクラはもちろんいて、俺の気配を感じて顔を上げた彼女の瞳は涙で溢れていた。
すぐに頭を下げて謝罪したけどサクラからの反応がなくて、頭を上げた瞬間に頬に力強い平手打ちを食らった。
よろめいたものの転ばずにはすんだのだが、その時のサクラの顔が悲痛に歪んでて言葉を失った。
『先生なんて大っ嫌い!!!!』
そう言って彼女は走り去り、周りの注目を浴びていたが、俺は追いかけることも出来ずにその場から動けなかった。
暫くして水が頭に落ちる。
その水はだんだん強さを増し雨となり俺を濡らす。
人々は建物に避難したり傘をさしている中、俺はその場から動かず空を見上げていた。
そんな俺に上忍だからなのか、ただならない雰囲気だからなのか声をかける人はいなかった。
(サクラは雨に濡れないですんだだろうか・・・)
先程怒らせてしまった愛しい人を想う。
走っていたし、ここからサクラの家まではそこまで離れてはいない。
だが。
恐らくサクラは家には帰っていない。
昔からサクラは落ち込んだときはある場所に行く。
俺はようやくその場から離れた。
傘をさす人々の中、手には途中で買った折り畳まれた傘を持ってその場所へと歩く。
そこはサクラが勤める病院の裏庭。
中央には春には綺麗な桜を咲かせる大木がある。
日中は入院患者の子供などが遊ぶ場所になっているが、雨のせいでいつもの賑やかさはなかった。
その桜の木の根本に、季節外れの桜色をした少女が蹲っていた。
気配を消さずに歩いてきたからか、近づいて傘を差し出しても何も反応がない。
緑色に姿を変えた葉のお陰でサクラは濡れてはいなかったが、そのままにしてはおけなかった。
お互い声をかけずサクラは蹲ったまま、俺はサクラに傘をさし出したまま、時間が止まったように動かなかった。
「・・・・・・ごめん」
俺は掠れた声で謝る。
それでもサクラはピクリとも動かない。
俺は傘をサクラの肩にかけ、葉が当たらないところまで歩き地面の上で土下座をする。
「本当にごめんなさい」
頭を雨でグシャグシャになった土に擦り付ける。
こんな姿誰かに見られたら上忍の面目か潰れるだろう。
だがそんなの関係ない。
どのくらい時間が経ったのだろう。
雨粒を全身に感じ服がどんどん重くなり体も冷えてくる。
暫くすると体に当たる雨が止んだ。
顔を上げると、傘を差し出してくる目を真っ赤にしたサクラが目の前に立っていた。
「もう・・・顔にも泥がついてる。せっかくのイケメンが台無し」
サクラは鞄からハンカチを取り出し俺の前にしゃがみ込み、髪と顔を拭いてくれた。
「・・・本当にごめん」
その言葉しか出てこなかった。
こんな日にまで寝坊をしてしまうなんて、きっと愛想を尽かされた。
頬を叩かれたときのサクラの言葉を思い出して胸が締めつけられる。
サクラの顔が見れなくて頭を下げていると、前からクスっと笑い声が聞こえた。
「色々言ってやろうって思ってたのになぁ・・・」
そう言って俺の頭を撫でてくるサクラに、俺は情けなくサクラを見つめる。
サクラの手は頭から頬へと下がる。
そして叩かれた頬とは反対の頬をつねられる。
「3時間もお店の前で待たされて、店員さんに可哀想な目で見られてたんだからね」
「・・・ごめん」
もう俺は謝ることしか出来ない。
「こんなにグチャグチャじゃ今日はお店に入れないわよ」
「うん・・・」
サクラは立ち上がって手を差し出してくる。
俺は手を取って立ち上がる。
「帰ろう、先生」
「うん」
俺たちは繋いだまま歩き出す。
「あれだけ待たされたんだから、指輪だけじゃなくてピアスとネックレスも買って貰うからね!」
「もちろん」
見上げてくるサクラに俺は微笑むと、サクラはニッと笑った。
白いドレスを身に纏うサクラに似合うものを選んであげたい。
今度の休みを楽しみに空を見上げると、雨はいつの間にか上がっていた。
俺たちにとって大事な日に寝坊した。
3時間も。
慌てて待ち合わせ場所に行くとサクラはもちろんいて、俺の気配を感じて顔を上げた彼女の瞳は涙で溢れていた。
すぐに頭を下げて謝罪したけどサクラからの反応がなくて、頭を上げた瞬間に頬に力強い平手打ちを食らった。
よろめいたものの転ばずにはすんだのだが、その時のサクラの顔が悲痛に歪んでて言葉を失った。
『先生なんて大っ嫌い!!!!』
そう言って彼女は走り去り、周りの注目を浴びていたが、俺は追いかけることも出来ずにその場から動けなかった。
暫くして水が頭に落ちる。
その水はだんだん強さを増し雨となり俺を濡らす。
人々は建物に避難したり傘をさしている中、俺はその場から動かず空を見上げていた。
そんな俺に上忍だからなのか、ただならない雰囲気だからなのか声をかける人はいなかった。
(サクラは雨に濡れないですんだだろうか・・・)
先程怒らせてしまった愛しい人を想う。
走っていたし、ここからサクラの家まではそこまで離れてはいない。
だが。
恐らくサクラは家には帰っていない。
昔からサクラは落ち込んだときはある場所に行く。
俺はようやくその場から離れた。
傘をさす人々の中、手には途中で買った折り畳まれた傘を持ってその場所へと歩く。
そこはサクラが勤める病院の裏庭。
中央には春には綺麗な桜を咲かせる大木がある。
日中は入院患者の子供などが遊ぶ場所になっているが、雨のせいでいつもの賑やかさはなかった。
その桜の木の根本に、季節外れの桜色をした少女が蹲っていた。
気配を消さずに歩いてきたからか、近づいて傘を差し出しても何も反応がない。
緑色に姿を変えた葉のお陰でサクラは濡れてはいなかったが、そのままにしてはおけなかった。
お互い声をかけずサクラは蹲ったまま、俺はサクラに傘をさし出したまま、時間が止まったように動かなかった。
「・・・・・・ごめん」
俺は掠れた声で謝る。
それでもサクラはピクリとも動かない。
俺は傘をサクラの肩にかけ、葉が当たらないところまで歩き地面の上で土下座をする。
「本当にごめんなさい」
頭を雨でグシャグシャになった土に擦り付ける。
こんな姿誰かに見られたら上忍の面目か潰れるだろう。
だがそんなの関係ない。
どのくらい時間が経ったのだろう。
雨粒を全身に感じ服がどんどん重くなり体も冷えてくる。
暫くすると体に当たる雨が止んだ。
顔を上げると、傘を差し出してくる目を真っ赤にしたサクラが目の前に立っていた。
「もう・・・顔にも泥がついてる。せっかくのイケメンが台無し」
サクラは鞄からハンカチを取り出し俺の前にしゃがみ込み、髪と顔を拭いてくれた。
「・・・本当にごめん」
その言葉しか出てこなかった。
こんな日にまで寝坊をしてしまうなんて、きっと愛想を尽かされた。
頬を叩かれたときのサクラの言葉を思い出して胸が締めつけられる。
サクラの顔が見れなくて頭を下げていると、前からクスっと笑い声が聞こえた。
「色々言ってやろうって思ってたのになぁ・・・」
そう言って俺の頭を撫でてくるサクラに、俺は情けなくサクラを見つめる。
サクラの手は頭から頬へと下がる。
そして叩かれた頬とは反対の頬をつねられる。
「3時間もお店の前で待たされて、店員さんに可哀想な目で見られてたんだからね」
「・・・ごめん」
もう俺は謝ることしか出来ない。
「こんなにグチャグチャじゃ今日はお店に入れないわよ」
「うん・・・」
サクラは立ち上がって手を差し出してくる。
俺は手を取って立ち上がる。
「帰ろう、先生」
「うん」
俺たちは繋いだまま歩き出す。
「あれだけ待たされたんだから、指輪だけじゃなくてピアスとネックレスも買って貰うからね!」
「もちろん」
見上げてくるサクラに俺は微笑むと、サクラはニッと笑った。
白いドレスを身に纏うサクラに似合うものを選んであげたい。
今度の休みを楽しみに空を見上げると、雨はいつの間にか上がっていた。
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