short.1
「サクラ、何やってんだ?」
演習後のお昼休み、サクラはすぐに弁当を食べ終えてカバンからいきなりナスとキュウリを取り出してそれに割り箸を差し出す。
「先生知らないの?お盆に飾るのよ」
サクラはこちらを見ながらまた割り箸を刺す。
お盆、ナス、キュウリ。
あぁ、精霊馬か。
「もうすぐお盆でしょ?どうせ3人とも飾らないと思って人数分買ってきたのよ」
はい、とサクラは出来た2つをオレに渡してきてまた作業に取りかかる。
こんな暑い中しなくてもいいだろう、とオレは苦笑する。
「いい?キュウリを先に飾って、お盆が終わるときにナスを飾るの」
「キュウリは早くこっちに帰ってきてもらうため、ナスはこの世をゆっくり見てもらいながらあの世に帰ってもらうため、だろ?」
「そうよ。知ってるじゃない」
「これでも無駄に歳は取ってないんでね」
オレはサクラが作ったキュウリを太陽にかざす。
「ちゃんと火も焚いてよ?」
サクラはそう言いながら完成したのをサスケとナルトにも渡しにいった。
****
それから数日後。
サクラに言われた通りにスーパーでおがらを買ってきて、アパートの玄関で焚く。
時折アパートの住人が通りかがり、謝りながら天へと昇る煙を眺める。
「あなたの家はここですよ、か」
オレはかつて父と過ごした実家を思い出す。
本来ならそっちでするのが道理なのだろうが。
放置されすぎて、あっちに帰ってもらうのは申し訳ない。
いつか忍を引退したときにあっちに帰るつもりだからもう少し我慢してくれ、と近くに置いたキュウリを突いた。
****
あれから数年。
オレは実家の玄関でおがらを焚いていた。
あの日と同じように天へと昇る煙を眺めていると。
「先生」
「サクラ」
後ろから声をかけられて振り返れば、愛しい人が立っていた。
サクラはオレの隣に座り、一緒に昇る煙を見る。
「身体冷やすぞ」
「大丈夫よ」
サクラは持ってきたブランケットを見た目はまだ分からないお腹にかける。
その左手の指には光る指輪。
数ヶ月前に幼少時過ごした実家に居住を移した。
サクラのお腹の子が伸び伸び過ごすにはこっちの方がいいだろうと話し合って。
微笑むサクラの肩をこちらに引き寄せて一緒に煙を見る。
「お義父さんとお義母さん、喜んでくれるかしら?」
サクラは自分のお腹を愛おしそうに撫でるので、オレもその手に自分の手を重ねる。
「喜ぶに決まってるだろ?」
「そっかぁ」
サクラは嬉しそうに笑うのでその可愛らしい唇に軽くキスをする。
「紅もアスマを出迎えてるだろうから、明日報告にしに行こう。きっと驚くぞ」
「ふふ!絶対茶化してきそうね。先生に父親が出来るとは思えねぇ、とか言って」
「言うだろうなぁ、アイツなら」
サクラはおかしそうに笑ってまた空を見るので、オレもそれに倣う。
数年前まで盆に死んだ仲間を思い出して笑うほどの余裕はなかった。
こうやって故人を懐かしむことを教えてくれたのはサクラだった。
オレは何回サクラに救われているんだろうか。
何年後、何十年後かにオレが死んだ時。
こうやってサクラは笑ってオレを出迎えてくれるんだろう。
その時は子供たちや孫の話をいっぱい聞かせてくれ。
そしていつの日か、一緒にこの家に帰ってこよう。
演習後のお昼休み、サクラはすぐに弁当を食べ終えてカバンからいきなりナスとキュウリを取り出してそれに割り箸を差し出す。
「先生知らないの?お盆に飾るのよ」
サクラはこちらを見ながらまた割り箸を刺す。
お盆、ナス、キュウリ。
あぁ、精霊馬か。
「もうすぐお盆でしょ?どうせ3人とも飾らないと思って人数分買ってきたのよ」
はい、とサクラは出来た2つをオレに渡してきてまた作業に取りかかる。
こんな暑い中しなくてもいいだろう、とオレは苦笑する。
「いい?キュウリを先に飾って、お盆が終わるときにナスを飾るの」
「キュウリは早くこっちに帰ってきてもらうため、ナスはこの世をゆっくり見てもらいながらあの世に帰ってもらうため、だろ?」
「そうよ。知ってるじゃない」
「これでも無駄に歳は取ってないんでね」
オレはサクラが作ったキュウリを太陽にかざす。
「ちゃんと火も焚いてよ?」
サクラはそう言いながら完成したのをサスケとナルトにも渡しにいった。
****
それから数日後。
サクラに言われた通りにスーパーでおがらを買ってきて、アパートの玄関で焚く。
時折アパートの住人が通りかがり、謝りながら天へと昇る煙を眺める。
「あなたの家はここですよ、か」
オレはかつて父と過ごした実家を思い出す。
本来ならそっちでするのが道理なのだろうが。
放置されすぎて、あっちに帰ってもらうのは申し訳ない。
いつか忍を引退したときにあっちに帰るつもりだからもう少し我慢してくれ、と近くに置いたキュウリを突いた。
****
あれから数年。
オレは実家の玄関でおがらを焚いていた。
あの日と同じように天へと昇る煙を眺めていると。
「先生」
「サクラ」
後ろから声をかけられて振り返れば、愛しい人が立っていた。
サクラはオレの隣に座り、一緒に昇る煙を見る。
「身体冷やすぞ」
「大丈夫よ」
サクラは持ってきたブランケットを見た目はまだ分からないお腹にかける。
その左手の指には光る指輪。
数ヶ月前に幼少時過ごした実家に居住を移した。
サクラのお腹の子が伸び伸び過ごすにはこっちの方がいいだろうと話し合って。
微笑むサクラの肩をこちらに引き寄せて一緒に煙を見る。
「お義父さんとお義母さん、喜んでくれるかしら?」
サクラは自分のお腹を愛おしそうに撫でるので、オレもその手に自分の手を重ねる。
「喜ぶに決まってるだろ?」
「そっかぁ」
サクラは嬉しそうに笑うのでその可愛らしい唇に軽くキスをする。
「紅もアスマを出迎えてるだろうから、明日報告にしに行こう。きっと驚くぞ」
「ふふ!絶対茶化してきそうね。先生に父親が出来るとは思えねぇ、とか言って」
「言うだろうなぁ、アイツなら」
サクラはおかしそうに笑ってまた空を見るので、オレもそれに倣う。
数年前まで盆に死んだ仲間を思い出して笑うほどの余裕はなかった。
こうやって故人を懐かしむことを教えてくれたのはサクラだった。
オレは何回サクラに救われているんだろうか。
何年後、何十年後かにオレが死んだ時。
こうやってサクラは笑ってオレを出迎えてくれるんだろう。
その時は子供たちや孫の話をいっぱい聞かせてくれ。
そしていつの日か、一緒にこの家に帰ってこよう。
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