short.1
「そう言えばさ」
任務の帰り。
ナルトが唐突に喋り出す。
「チョージがスイカ農家の収穫の手伝いをした時にご褒美に大きいスイカ食べたんだって。その時にみんなでタネ飛ばし競争してチョージが勝ったって自慢されたんだ」
「あー、いのも言ってた。チョージとアスマ先生がどっちが遠くに飛ばせるか勝負してほとんどのスイカ食べちゃったって」
「あのさ、あのさ!オレもそのタネ飛ばししたいってばよ!」
ナルトがカカシ先生の腕を引っ張って強請る。
明らかに先生は面倒臭そうな顔をして。
「どこでそんなことするんだ。部屋の中じゃ出来ないぞ」
「先生の家に庭・・・」
「アパートだからありません」
「うちもないわよ」
ナルトはチラッと前を歩くサスケくんを見る。
確かサスケくんの家もアパートだったはず。
「ちぇー・・・オレもみんなでタネ飛ばししたかったってばよ・・・」
ナルトは肩を落としてしょぼくれて歩き出す。
私もスイカは好きだから食べたいって気持ちはある。
カカシ先生は息を吐いて、トボトボ歩くナルトの頭に手を置く。
「条件付きでタネ飛ばし出来るところはある。それをのむなら、今度の休みするか?」
「うん!うん!!」
ナルトは満面の笑みで頷く。
「お前らは?」
私も嬉しそうに頷き、サスケくんも小さく頷く。
「じゃあ、次の休み、橋の上に集合な」
****
休みの日、案の定遅れてきた先生に付いて行く。
そこは里の中心街から外れた、坂を登ったところにある平家の古民家。
「ここは?」
「オレの実家」
私が聞くと、先生はさらっとそう言って鍵を開ける。
滑りが悪くなったドアを横に開けると、入り込んだ風によって埃が舞う。
「うわ、きたねー・・・」
「そう。もう何年も放置されたオレの家だ。時々知り合いに掃除は頼んでたけどね。で、だ」
先生は私たちを見て、にっこりと笑う。
すごく嫌な予感がする。
「綺麗に掃除出来たらスイカ食べさせてやる」
****
「先生、終わったわよ〜・・・」
やつれた顔をして縁側にいる先生に声をかける。
「おー、ご苦労さん」
先生は縁側に寝そべるナルトとサスケくんを団扇で扇ぐ。
私はカカシ先生と家の中の埃取り。
平家でも充分広い家の溜まりに溜まった埃を取るのは疲れた。
でも私はいい方だ。
家が広いということは庭も広い。
そして放置されていたから草がボーボーだった。
今日は雲が一つない青空が広がる気持ちのいい天気。
炎天下の中、ナルトとサスケくんは草むしりをさせられへばっている。
「よし、じゃあスイカもいい具合に冷えたし」
先生の言葉に私たちは目を輝かせる。
この家に来る時に先生が八百屋で大きなスイカを丸々1個買ってくれた。
それを庭の水道でキンキンに冷やされていくのを私たちは喉を鳴らしながら掃除をしていたのだ。
私たちは疲れを忘れて今か今かと待っているのを、先生は面白そうに笑った。
「「いただきまーす!!」」
嬉しそうに声を上げて私たちはスイカに齧り付く。
「んーー!おいし〜!!」
スイカはすごく瑞々しくて甘い。
これならいくらでも食べれる。
「ん、当たりだったな」
先生は素顔を惜しげなく晒して、スイカの汁が口から溢れて舌で舐めとる。
何故かすごい色気があって真っ直ぐ見れない。
「カカシ先生!1人何個!?」
もう1個食べ終わったナルトが待ちきれないと言った顔で聞く。
サスケくんもナルトに負けじと平らげる。
「落ち着け。まだあるから」
呆れたように笑う先生は、前を向いて口に含んだスイカの種を庭を向かって吹き飛ばす。
「すげー!めっちゃ飛んだ!!」
先生が飛ばした種は庭の端まで飛んでいった。
「一番遠くまで飛んだ奴には帰りアイスを奢ってやろう」
「なに!やってやるってばよ!」
「私もやる!」
3人で張り切ってスイカを頬張り飛ばすが、なかなか思うように飛ばないのか悔しそうにする。
その様子を離れたところで壁にもたれかかり眺めるカカシ。
****
懐かしい夢を見た。
父さんがいて、休みの日に一緒に魚釣りに行って一緒に魚を捌いて食べて。
忍術修行をするのも好きだったけど、この親子の時間が好きだった。
母さんは物心付く頃にはいなかったから、オレには父さんがいればそれだけで良かった。
父さんがいなくなってミナト先生率いる班で活動するようになった頃。
休みの日、いつも川魚を釣りに行っていた。
1人の家に帰って魚を捌いていると、オビトとリンが家の中を覗いていて。
魚もあったし試作品を食べて欲しかったから料理を振る舞った。
それから2人はちょくちょく遊びにくるようになり、静かだった家はまた火が灯ったように賑やかになって。
こんな風に過ごすのもたまにはいいな、なんて思っていた。
「ん・・・」
ふ、と目を開けると、外はすっかりオレンジ色になっていた。
寝てしまったな、と大きく背伸びをすると、家の中が静かな事に気づいた。
寝てたから帰ったのか?、とまだ眠たい眼を擦っていると、何故か重たい足。
そこにはサクラがオレの足を枕にして寝こけていた。
その周りにナルトとサスケも畳の上で大の字になって寝ている。
子供たちを見ているとちょうど気持ち良い風が部屋の中に入ってきて、幸せそうに眠る3人はまだ起きそうにない。
こんな幸せな日々が続けばいいのに。
オレはサクラの頭を撫でながらそう思った。
任務の帰り。
ナルトが唐突に喋り出す。
「チョージがスイカ農家の収穫の手伝いをした時にご褒美に大きいスイカ食べたんだって。その時にみんなでタネ飛ばし競争してチョージが勝ったって自慢されたんだ」
「あー、いのも言ってた。チョージとアスマ先生がどっちが遠くに飛ばせるか勝負してほとんどのスイカ食べちゃったって」
「あのさ、あのさ!オレもそのタネ飛ばししたいってばよ!」
ナルトがカカシ先生の腕を引っ張って強請る。
明らかに先生は面倒臭そうな顔をして。
「どこでそんなことするんだ。部屋の中じゃ出来ないぞ」
「先生の家に庭・・・」
「アパートだからありません」
「うちもないわよ」
ナルトはチラッと前を歩くサスケくんを見る。
確かサスケくんの家もアパートだったはず。
「ちぇー・・・オレもみんなでタネ飛ばししたかったってばよ・・・」
ナルトは肩を落としてしょぼくれて歩き出す。
私もスイカは好きだから食べたいって気持ちはある。
カカシ先生は息を吐いて、トボトボ歩くナルトの頭に手を置く。
「条件付きでタネ飛ばし出来るところはある。それをのむなら、今度の休みするか?」
「うん!うん!!」
ナルトは満面の笑みで頷く。
「お前らは?」
私も嬉しそうに頷き、サスケくんも小さく頷く。
「じゃあ、次の休み、橋の上に集合な」
****
休みの日、案の定遅れてきた先生に付いて行く。
そこは里の中心街から外れた、坂を登ったところにある平家の古民家。
「ここは?」
「オレの実家」
私が聞くと、先生はさらっとそう言って鍵を開ける。
滑りが悪くなったドアを横に開けると、入り込んだ風によって埃が舞う。
「うわ、きたねー・・・」
「そう。もう何年も放置されたオレの家だ。時々知り合いに掃除は頼んでたけどね。で、だ」
先生は私たちを見て、にっこりと笑う。
すごく嫌な予感がする。
「綺麗に掃除出来たらスイカ食べさせてやる」
****
「先生、終わったわよ〜・・・」
やつれた顔をして縁側にいる先生に声をかける。
「おー、ご苦労さん」
先生は縁側に寝そべるナルトとサスケくんを団扇で扇ぐ。
私はカカシ先生と家の中の埃取り。
平家でも充分広い家の溜まりに溜まった埃を取るのは疲れた。
でも私はいい方だ。
家が広いということは庭も広い。
そして放置されていたから草がボーボーだった。
今日は雲が一つない青空が広がる気持ちのいい天気。
炎天下の中、ナルトとサスケくんは草むしりをさせられへばっている。
「よし、じゃあスイカもいい具合に冷えたし」
先生の言葉に私たちは目を輝かせる。
この家に来る時に先生が八百屋で大きなスイカを丸々1個買ってくれた。
それを庭の水道でキンキンに冷やされていくのを私たちは喉を鳴らしながら掃除をしていたのだ。
私たちは疲れを忘れて今か今かと待っているのを、先生は面白そうに笑った。
「「いただきまーす!!」」
嬉しそうに声を上げて私たちはスイカに齧り付く。
「んーー!おいし〜!!」
スイカはすごく瑞々しくて甘い。
これならいくらでも食べれる。
「ん、当たりだったな」
先生は素顔を惜しげなく晒して、スイカの汁が口から溢れて舌で舐めとる。
何故かすごい色気があって真っ直ぐ見れない。
「カカシ先生!1人何個!?」
もう1個食べ終わったナルトが待ちきれないと言った顔で聞く。
サスケくんもナルトに負けじと平らげる。
「落ち着け。まだあるから」
呆れたように笑う先生は、前を向いて口に含んだスイカの種を庭を向かって吹き飛ばす。
「すげー!めっちゃ飛んだ!!」
先生が飛ばした種は庭の端まで飛んでいった。
「一番遠くまで飛んだ奴には帰りアイスを奢ってやろう」
「なに!やってやるってばよ!」
「私もやる!」
3人で張り切ってスイカを頬張り飛ばすが、なかなか思うように飛ばないのか悔しそうにする。
その様子を離れたところで壁にもたれかかり眺めるカカシ。
****
懐かしい夢を見た。
父さんがいて、休みの日に一緒に魚釣りに行って一緒に魚を捌いて食べて。
忍術修行をするのも好きだったけど、この親子の時間が好きだった。
母さんは物心付く頃にはいなかったから、オレには父さんがいればそれだけで良かった。
父さんがいなくなってミナト先生率いる班で活動するようになった頃。
休みの日、いつも川魚を釣りに行っていた。
1人の家に帰って魚を捌いていると、オビトとリンが家の中を覗いていて。
魚もあったし試作品を食べて欲しかったから料理を振る舞った。
それから2人はちょくちょく遊びにくるようになり、静かだった家はまた火が灯ったように賑やかになって。
こんな風に過ごすのもたまにはいいな、なんて思っていた。
「ん・・・」
ふ、と目を開けると、外はすっかりオレンジ色になっていた。
寝てしまったな、と大きく背伸びをすると、家の中が静かな事に気づいた。
寝てたから帰ったのか?、とまだ眠たい眼を擦っていると、何故か重たい足。
そこにはサクラがオレの足を枕にして寝こけていた。
その周りにナルトとサスケも畳の上で大の字になって寝ている。
子供たちを見ているとちょうど気持ち良い風が部屋の中に入ってきて、幸せそうに眠る3人はまだ起きそうにない。
こんな幸せな日々が続けばいいのに。
オレはサクラの頭を撫でながらそう思った。
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