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short.1

──後になってその大事さに気づくとはよくいったものだ。






ピンポーン




とある日の夕方。
一人暮らしをするサスケの部屋のインターホンが鳴る。
サスケが玄関を開けると。


「サスケ──」



バタン
ガチャ


ドンドンドンドン!!


「おいサスケ!開けろってばよ!!」

玄関を開けるとそこには黄色い髪の少年が立っていた。
サスケはすぐにドアを閉め鍵もかける。
短気のナルトはドアを激しく叩くもサスケはそれを無視して部屋の中に戻ろうとすると。



ガチャガチャ・・・・・・ガチャン


後ろから鍵が開く音が聞こえ振り返ると、ドアを開けてにこやかに笑う、顔の半分以上を隠した上司が立っていた。

「ひどいなーサスケ。せっかく会いに来たのに鍵閉めるなんて。先生ショックだぞ」
「おい・・・どうやって開けた」
「え?ピッキングだけど?」

カカシは当たり前のように手に持つ針金を見せる。
忍にとって任務で忍び込むのは当たり前。
エリート忍者のカカシにとっては朝飯前だ。
頭を抱えるサスケの耳に入る、2人より高い声。

「もう、カカシ先生!それ犯罪よ!」

サスケが顔を上げると、そこにはもう1人の班員である薄紅色の髪を持つ少女。

「ごめんなさいサスケくん、突然お邪魔して。もしかしてこれから用事とか、ある?」
「いや・・・」
「なら、みんなでサスケくんの誕生日パーティーしない?」

サクラの言葉に、今日が自分の誕生日だということを思い出す。
かの事件から誕生日を祝ってくれる家族はいなくなり、自然と目を背けていた。
サクラは微笑んで手に持つ袋を見せる。

「あのね、ご飯とケーキ作ってきたの。みんなで食べましょう」



****



「それじゃあナルトは飾り付け頼んだわよ」
「りょーかい!」
「あ、サスケくんは座って休んでて」
「・・・あぁ」

サクラはナルトに指示を出して自分はキッチンで料理の盛り付けを始める。
・・・隣にカカシを付けて。
指示がなかったカカシは料理と飾り付け、どちらにも対応が出来るにしているらしい。
高い位置が届かないナルトに呼ばれて窓枠に飾りをつけ、すぐにサクラの側に戻る。
時折サクラに味見を頼まれて口に運んで貰い、美味しいとサクラの頭を撫でる。
それを見ていたサスケは何故かイライラしていた。




それからサクラがお皿を並べて4人で床に座る。
様々な料理の真ん中に大きなチョコのホールケーキ。

「せーの!」

ナルトの音頭で3人がハッピーバースデーを歌い、サスケは居心地が悪そうだった。
歌い終わり、皆それぞれ好きなご飯を取って食べる。

「サスケが年上か・・・なんか負けた気分だってばよ」
「敬えよ」
「何でだよ!」
「もう!お祝いの席で喧嘩しないでよ!」

睨み合う2人を止めるサクラをただ見ているカカシ。
それが第七班。
憎まれ口を叩きつつも、サスケの中の凍りついた心がどんどん溶かされていくのを感じていた。



****



それからお喋りに花が咲き、3人がサスケの家を出る頃にはすっかり暗くなっていた。

「あー、楽しかったってばよ!」

たらふくご飯を食べたナルトは満足そうにお腹を叩く。

「次はカカシ先生ね」
「そっか!9月!」
「えー?いいよオレは」
「「なんで!!」」

カカシの言葉にオレンジとピンクの子供が頬を膨らませて睨む。

「大人だからもう祝われなくていいの。オレの分もナルトのやつ祝ってやってよ」

カカシの1月後に誕生日を迎えるナルトを親指で指差すと、今まで1人で誕生日を迎えてきたナルトは驚いた顔して、モジモジと頬を染める。

「それはちゃんと盛大にお祝いします。それとカカシ先生をお祝いしないのとは別よ!」
「いいって。この歳で祝われるなんて恥ずかし──」
「するの!!」

サクラは頬を膨らませて有無を言わさない顔にカカシは諦める。
それを側で見ていたサスケは、来年も騒がしい誕生日を迎えるのか、と諦めた顔をしながらどこか嬉しそうだった。



「それじゃ、そろそろ帰りますか」

カカシの言葉に2人が頷き、階段を降りようとすると、サスケがサクラの腕を引っ張る。
ビックリしているサクラにサスケは少し頬を染めて。

「・・・送る」
「え!い、いいわよ。サスケくんの家ここじゃない」
「いい」

まさかサスケがこんなことを言ってくれると思っていなかったサクラはドキドキしていると、その後ろから手が伸びてきてサクラの肩を掴み引き寄せる。

「残念。サクラを送る役目はオレだから」

カカシがサスケを挑発するように笑い、サスケはカチンとくる。

「なんでだ」
「なんでって、そりゃ・・・」

カカシは意味ありげにサクラを見て。

「これからサクラが帰るのはオレの家だからだよ」



「は?」
「な、何言ってんのよ先生!!」

サクラは顔を真っ赤にしてカカシの口を手で塞ぎ、目を見開くサスケにアワアワする。

「ち、違うのよ、サスケくん!先生が私が読みたい本持ってるって言うから借りにいくだけで、帰るわけじゃ!!」

まだ納得していないサスケにカカシはにっこり微笑む。
階段の下では2人を呼ぶナルトの声が響く。

「そういうわけだから。じゃあな」
「ま、また明日ね、サスケくん・・・」

顔を真っ赤にしてカカシに手を引っ張られて階段を降りていく2人をサスケは苦虫を噛み潰したような顔で立ち尽くしていた。




次の日の朝、サクラに手を引っ張られて遅れて集合場所に一緒に現れたのを見て、またサスケの胸がムカムカしていた。


何故こんな気持ちになるのか。
まだ幼いサスケは気づくことが出来なかった。



****



ピンポーン



「・・・はい」
「ハッピーバースデー、サスケ!!」

ドアを開けると同時にナルトがサスケに向けてクラッカーを鳴らす。
パラパラと色とりどりの紙テープが舞い、サスケの髪にも落ちる。

「・・・後で片付けとけよ」
「りょーかい、りょーかい」

サスケは諦めてナルトを部屋に入れる。

「あの2人はどうした」
「サクラちゃんが途中で気分悪くなったからカカシ先生が付き添ってる。オレもそうしようかと思ったけど、サスケが待ってるから先行っててってサクラちゃんにお願いされてさ」
「・・・待ってない」
「嘘つけよ〜。昔はすんなり部屋に入れてくれなかったくせに」

ナルトはサスケの肩をツンツンと突いてはたき落とされる。
やはりコイツは外に追い出すか、と思っているとまた部屋のインターホンが鳴る。

「・・・はい」
「あ、こんにちは。そして誕生日おめでとう、サスケくん」

あの頃よりだいぶ大人びた雰囲気になった少女、改め彼女は笑う。

「・・・あぁ、ありがとう」
「サスケおめでとー」

サクラの後ろに立つ昔から何も変わらない男のお祝いは無視して部屋に戻る。
後ろから「無視されたー」と「よしよし」とイチャつく2人の声も無視して。

「・・・大丈夫なのか」
「え?あぁ、うん!もう大丈夫よ。ちょっと暑さにやられたみたい」

サクラは心配そうにするサスケに元気よくその場で小さく跳ねるとバランスを崩してよろける。
サスケが腕を伸ばしサクラの腕を掴むと同時に、後ろにいたカカシがサクラの腰に腕を回して受け止める。

「こら」
「あ、あはは、ごめんなさい・・・サスケくんもありがとう」

照れたように笑うサクラから手を離して目を逸らす。
その時、細身の彼女には不釣り合いな大きなお腹が目に入る。

「・・・気をつけろ。もう1人の体じゃないだろ」



いつまで待ってもサクラの返答が聞こえず目を戻すと、サクラとカカシが同じ顔で止まっていた。
訝しんでいると、ナルトも同じ顔をしていた。

「なんだ」
「まさかサスケくんからそんな言葉が出てくると思わなかったから」
「明日、雹が降ってくるんじゃない?」
「いや、槍だな」
「・・・おい」

好き勝手言う3人を睨む。

「あはは、ごめんなさい。でも本当にビックリしたのよ。それと同時にサスケくんが柔らかくなってくれたことが嬉しくて」
「旅に出たお陰だな」
「ふん・・・」

気恥ずかしくて2人から離れると、ナルトが「サスケ照れてるのか」と冷やかしてくるので思い切り頭を叩いた。



****



それから少し食事をして、身重のサクラのことを考えてすぐに解散することに。

「お邪魔しました。来年もちゃんと帰ってきてね」
「あぁ」

サクラとサスケが話している間にナルトは階段を降り、カカシはサクラを支えるために後ろで待っている。

「そういえば、次はいつ旅に出るの?」
「明日には出るつもりだ。でもすぐ帰る」
「そうなの?」

サクラは嬉しそうに笑う。
大人になってもその表情は昔と変わらないな、とサスケは苦笑する。

「そいつが産まれる時には帰る。ナルトが煩いからな」

そいつ。
それはサクラのお腹に宿っているカカシとの子供。
あと2ヶ月したら出産予定だ。

「そっか・・・それじゃあ、その時にまた七班揃うのね」

サクラは嬉しそうにお腹を撫でて、後ろで待っているカカシを見る。
話を聞いていたカカシもサクラに微笑む。
幸せそうに笑う2人にサスケは目を落とす。

「サクラ」
「ん?」

サクラはカカシからサスケに顔を戻して微笑む。
昔はオレだけを見ていたのに。
ずっと、これからもオレだけを見ていると思っていたのに。
今更気づくサクラへの想い。
本当、今更だな。
あんなにも無碍に扱っていたのに、相手がいつまでも思ってくれていると考えていた自分に反吐が出る。
彼女は自分だけを想い守ってくれる大切な人を見つけたのだ。
なら、オレはその2人の子供を守るだけだ。
しかし簡単に諦めるのは癪に触る。


「カカシに嫌気がさしたら言え。オレが貰ってやる」
「え?」

珍しく微笑むサスケに、サクラはポカンとする。
するとサクラの後ろから腕が伸びてきて、サスケから離すように引き寄せる。

「ちょっと。人の奥さん口説くのやめて貰える?」
「捨てられないように気をつけろ」
「本当、お前は昔から生意気だよ」

呆れたようにため息を吐くカカシの後ろの階段の下から2人を呼ぶナルトの声が聞こえる。

「明日、見送りに行くから」
「いい。明け方に出る」
「そう・・・」

少し寂しそうにするサクラの頭を撫でる。

「少しは大人しくしてろ。カカシに迷惑かけるのはいいが、子供を大事にしろ」
「はーい」

素直に頷く嫁にカカシは情けなく笑い、サクラの腰に腕を回して階段を降りるよう促す。

「じゃあまたね、サスケくん」
「あぁ、また」

2人仲良く降りていく姿を見送る。
もし、あの時に素直にサクラの好意を受け取っていれば隣を歩くのは自分だったかもしれない。
そんなくだらない妄想をする自分に苦笑をする。
階段を降りた3人が手を振ってくるので小さく振り返し、角を曲がるのを見届けて自分も部屋に入る。


部屋に入ると、机の上に3人からの誕生日プレゼントが置かれている。
綺麗にラッピングされたサクラのを手に取り、もう届かぬ想いを込めてキスをした。


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