特別任務
──今度こそあの男をギャフンと言わせてやる!
第2回紅のくノ一特別任務
『変化がバレずに異性をナンパして成功させる』
****
「あの、すみません」
木ノ葉で質が良いとされる忍具屋の前で品物を見ていた長身の男に声をかける。
その男は他にも人がいるのに自分に声をかけてきたことに、いかにも怪しい人を見る目をする。
私は困ったように眉を下げて、すこしだけ顔を上げて見つめる。
「郵便局ってどちらですか?」
「すみません、助かりました」
「いいえ。里の外から来たらどこにあるか分からないですからね」
男はにこり、と人当たりが良さそうに笑う。
私も大人っぽく見えるように笑う。
「こんなに木ノ葉が広いと思いませんでした。町にいる家族に着いたと連絡しようにも郵便局が見つからなくて困っていたので。本当に助かりました」
「これぐらいお安い御用ですよ」
男はそれじゃ、と去ろうとするので、私は慌てて腕を掴むとビックリした顔をする男。
「あの、ご迷惑じゃなければ案内して貰えませんか?」
「え?」
「妹にお土産を買いたいんですけど、何がいいのか分からないので教えて欲しいんです。もしかして、お忙しい、ですか?」
「いや・・・」
男は顎に手を当てて宙を見ながら考えて。
「いいですよ」
「本当ですか!」
「えぇ。これでも里には詳しいので」
「ありがとうございます!」
私は両手を可愛く合わせ頬を染めてお礼を言う。
そして内なるサクラが「YES!」とガッツポーズをする。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
「あぁ、カカシです。はたけカカシ」
「カカシさん・・・」
私は俯いて名前を覚えるように繰り返し、頬を綻ばせる。
これも作戦だ。
「あなたは?」
「え?」
「名前、聞いても?」
しまった、考えてなかった。
私は自慢の頭脳を早いスピードで働かせて。
「ユキノです」
「ユキノさん。それじゃあ、行きましょうか」
「はい」
男は特に怪しむ様子もなく先を促し、後を着いて行く。
私はこっそり息を吐いた。
****
「じゃあカカシさんは下忍の先生をされてるんですか」
「えぇ、まぁ」
「どんな生徒さんか聞いてもいいですか?」
「そうですねぇ・・・」
先生はんー、と考えて。
「ものすごく元気で突っ走ってオレの話を聞かないやつと、仏頂面で生意気で、才能はあるけどこいつもオレの話を聞かない」
「大変そうですね・・・」
ため息を吐きながら愚痴を吐く先生に、私は何と言っていいのか分からない。
気苦労が絶えない先生のために、明日から労ってやろう。
「で、最後の1人が女の子なんですけど」
ドキッ。
「まー、この子も我儘で。頭がいいから大人ぶりたいのか小言が多いんですよね」
「へー・・・」
前言撤回。
明日からとことん我儘言って振り回してやる。
心の中で内なるサクラが暴れ回っていると。
「でも、それがまた可愛くて」
「へ?」
突然の褒め言葉に思わず素っ頓狂な声が出る。
「唯一の女の子ってのもあるんでしょうけど、気にかけちゃうんですよね。他の2人が特殊で平凡な自分に落ち込んでるんだけど、ちゃんと追いつけるように泥だらけになりながら、勇敢にも敵に立ち向かったり。優秀な忍になると思うんですよ」
先生は優しく笑って前を見て歩く。
私は溢れそうな涙を我慢するのに必死で。
先生はいつもナルトとサスケくんばっかりで、私に何も期待してなくて見てくれてないんだと思って1人で何回も泣いた。
でもちゃんと先生は見てくれてた。
たぶん本当のサクラには言わない本音を聞けてすごく、すごく嬉しかった。
「着きましたよ。その女の子が教えてくれたお店」
先生は暖簾を上げて入るように促す。
そこは若い子に人気の雑貨屋さん。
前に一緒に歩いてた時に見つけて、気になったアクセサリーを先生が買ってくれた。
私はそれを宝物にして大事なときに使うようにしている。
たった1回しか一緒に行ってないお店もちゃんと覚えてくれてるカカシ先生。
私は先生の生徒になれて良かったって、心の底から思えた。
****
「ふー・・・美味しかったです。ご馳走様でした」
「いーえ」
雑貨屋さんの後、甘味処に行って奢ってもらった。
私が大好きなお店に。
お腹も心もほっこりしていると。
「さて、これからどうする?サクラ」
「──え」
「あ」
ビックリして先生を見ると、先生はしまったといった顔をしている。
まさか。
「私って分かってたの!?」
「あはは、バレちゃった」
先生は眉を下げて笑いながら頭を掻く。
「何で!見た目も声を変えたのに!」
今の私は黒髪ロングで身長も10cmは高く、清楚系で私とは真反対だ。
声も紅先生の指導で子供のような声ではなく、落ち着いた声に仕上げてきた。
得意のチャクラコントロールで気配も微妙に変えている。
時々知り合いとすれ違った時もバレなかった。
「だって紅から任務内容聞いてたし。見た目は誤魔化せても、目は口ほどに物を言うぞ」
「ぐ・・・!」
先生は自分の目を指差して笑う。
先生を騙すためにギラついてたのがバレてた。
私もまだまだだわ。
「しかし、なんでまたオレんところ来たわけ?今回はナルトだったら簡単だっただろうに」
「前が悔しかったから見返してやろうと思ったのよ」
「なるほどね。今回も失敗だったけどな」
「〜〜〜〜!!!」
私は悔しくて先生をポカポカ叩く。
先生は笑いながら殴られている。
通りかがる人々は、女が上忍を殴り、男は笑っているから訝しんで見てくる。
先生が手を出してくるので、任務書を渡すとポケットからペンを取り出す。
失敗だったけど、一応完了のサインを書いてくれるのだろう。
「ねぇ、先生」
「んー?」
「何で茶番に付き合ったの?」
先生は私を見て宙を見る。
するとにっこりと笑って。
「サクラとデートしてみたかったからかな」
なんでそんな恥ずかしいセリフを言えるのか。
私は赤い顔を隠すように先生のお腹を思い切り殴った。
第2回紅のくノ一特別任務
『変化がバレずに異性をナンパして成功させる』
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「あの、すみません」
木ノ葉で質が良いとされる忍具屋の前で品物を見ていた長身の男に声をかける。
その男は他にも人がいるのに自分に声をかけてきたことに、いかにも怪しい人を見る目をする。
私は困ったように眉を下げて、すこしだけ顔を上げて見つめる。
「郵便局ってどちらですか?」
「すみません、助かりました」
「いいえ。里の外から来たらどこにあるか分からないですからね」
男はにこり、と人当たりが良さそうに笑う。
私も大人っぽく見えるように笑う。
「こんなに木ノ葉が広いと思いませんでした。町にいる家族に着いたと連絡しようにも郵便局が見つからなくて困っていたので。本当に助かりました」
「これぐらいお安い御用ですよ」
男はそれじゃ、と去ろうとするので、私は慌てて腕を掴むとビックリした顔をする男。
「あの、ご迷惑じゃなければ案内して貰えませんか?」
「え?」
「妹にお土産を買いたいんですけど、何がいいのか分からないので教えて欲しいんです。もしかして、お忙しい、ですか?」
「いや・・・」
男は顎に手を当てて宙を見ながら考えて。
「いいですよ」
「本当ですか!」
「えぇ。これでも里には詳しいので」
「ありがとうございます!」
私は両手を可愛く合わせ頬を染めてお礼を言う。
そして内なるサクラが「YES!」とガッツポーズをする。
「あの、お名前聞いてもいいですか?」
「あぁ、カカシです。はたけカカシ」
「カカシさん・・・」
私は俯いて名前を覚えるように繰り返し、頬を綻ばせる。
これも作戦だ。
「あなたは?」
「え?」
「名前、聞いても?」
しまった、考えてなかった。
私は自慢の頭脳を早いスピードで働かせて。
「ユキノです」
「ユキノさん。それじゃあ、行きましょうか」
「はい」
男は特に怪しむ様子もなく先を促し、後を着いて行く。
私はこっそり息を吐いた。
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「じゃあカカシさんは下忍の先生をされてるんですか」
「えぇ、まぁ」
「どんな生徒さんか聞いてもいいですか?」
「そうですねぇ・・・」
先生はんー、と考えて。
「ものすごく元気で突っ走ってオレの話を聞かないやつと、仏頂面で生意気で、才能はあるけどこいつもオレの話を聞かない」
「大変そうですね・・・」
ため息を吐きながら愚痴を吐く先生に、私は何と言っていいのか分からない。
気苦労が絶えない先生のために、明日から労ってやろう。
「で、最後の1人が女の子なんですけど」
ドキッ。
「まー、この子も我儘で。頭がいいから大人ぶりたいのか小言が多いんですよね」
「へー・・・」
前言撤回。
明日からとことん我儘言って振り回してやる。
心の中で内なるサクラが暴れ回っていると。
「でも、それがまた可愛くて」
「へ?」
突然の褒め言葉に思わず素っ頓狂な声が出る。
「唯一の女の子ってのもあるんでしょうけど、気にかけちゃうんですよね。他の2人が特殊で平凡な自分に落ち込んでるんだけど、ちゃんと追いつけるように泥だらけになりながら、勇敢にも敵に立ち向かったり。優秀な忍になると思うんですよ」
先生は優しく笑って前を見て歩く。
私は溢れそうな涙を我慢するのに必死で。
先生はいつもナルトとサスケくんばっかりで、私に何も期待してなくて見てくれてないんだと思って1人で何回も泣いた。
でもちゃんと先生は見てくれてた。
たぶん本当のサクラには言わない本音を聞けてすごく、すごく嬉しかった。
「着きましたよ。その女の子が教えてくれたお店」
先生は暖簾を上げて入るように促す。
そこは若い子に人気の雑貨屋さん。
前に一緒に歩いてた時に見つけて、気になったアクセサリーを先生が買ってくれた。
私はそれを宝物にして大事なときに使うようにしている。
たった1回しか一緒に行ってないお店もちゃんと覚えてくれてるカカシ先生。
私は先生の生徒になれて良かったって、心の底から思えた。
****
「ふー・・・美味しかったです。ご馳走様でした」
「いーえ」
雑貨屋さんの後、甘味処に行って奢ってもらった。
私が大好きなお店に。
お腹も心もほっこりしていると。
「さて、これからどうする?サクラ」
「──え」
「あ」
ビックリして先生を見ると、先生はしまったといった顔をしている。
まさか。
「私って分かってたの!?」
「あはは、バレちゃった」
先生は眉を下げて笑いながら頭を掻く。
「何で!見た目も声を変えたのに!」
今の私は黒髪ロングで身長も10cmは高く、清楚系で私とは真反対だ。
声も紅先生の指導で子供のような声ではなく、落ち着いた声に仕上げてきた。
得意のチャクラコントロールで気配も微妙に変えている。
時々知り合いとすれ違った時もバレなかった。
「だって紅から任務内容聞いてたし。見た目は誤魔化せても、目は口ほどに物を言うぞ」
「ぐ・・・!」
先生は自分の目を指差して笑う。
先生を騙すためにギラついてたのがバレてた。
私もまだまだだわ。
「しかし、なんでまたオレんところ来たわけ?今回はナルトだったら簡単だっただろうに」
「前が悔しかったから見返してやろうと思ったのよ」
「なるほどね。今回も失敗だったけどな」
「〜〜〜〜!!!」
私は悔しくて先生をポカポカ叩く。
先生は笑いながら殴られている。
通りかがる人々は、女が上忍を殴り、男は笑っているから訝しんで見てくる。
先生が手を出してくるので、任務書を渡すとポケットからペンを取り出す。
失敗だったけど、一応完了のサインを書いてくれるのだろう。
「ねぇ、先生」
「んー?」
「何で茶番に付き合ったの?」
先生は私を見て宙を見る。
するとにっこりと笑って。
「サクラとデートしてみたかったからかな」
なんでそんな恥ずかしいセリフを言えるのか。
私は赤い顔を隠すように先生のお腹を思い切り殴った。
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