short.1
カカシ先生と付き合うようになって半年。
任務が立て続けに入りデートらしいデートもしたことがなかった。
それもようやく落ち着き、休みを取って2人で旅行に行くことに。
「わぁー!先生見てみて!庭すごい綺麗よ!」
「サクラ、少しは落ち着きなさいって」
女将に部屋を案内されて私はテンションが上がって部屋のあちこちを探索している。
そんな私を先生は呆れたように笑って、1人お茶を啜っていた。
「だってこんな高そうな旅館初めてだもの!本当に私、払わなくていいの・・・?」
こんな格式が高そうで綺麗なんだからきっと相当なお値段がするはず。
急に心配になっておずおずと聞くと。
「大丈夫だよ、そんなに高くないし。オレの方が年も階級も上なんだから、サクラは気にせず甘えなさい」
先生はそう言って手招きするので、私は思い切り先生の胸に飛び込む。
先生の膝の上に抱き抱えられ、館内マップを一緒に見る。
「そういえば紅葉がちょうど見頃だって女将さんが言ってたな」
「行ってみたい!」
キラキラした目で先生を見ると、先生は嬉しそうに笑って額にキスをする。
「じゃあ浴衣に着替えて行こうか」
****
お揃いの浴衣を着て下駄を履いて。
館内の中庭にある紅葉を見に行くと、そこには何組かの客も紅葉を愛でていた。
「すごい・・・」
「ね」
私は綺麗に真っ赤に染まった紅葉から目を離せずにいた。
すると、風に吹かれて1枚の紅葉が手元に落ちてくる。
「先生、これ!」
「記念に持って帰ったらいいよ」
「うん!」
それからまたテンションが上がって1人紅葉の絨毯を駆け回り、「先生」と呼ぶとゆっくり付いてくる先生が手を振ってくれる。
暫く1人で紅葉を堪能していると、気づいたら先生がすぐ隣に立っていて腰に手を回してくる。
顔を見上げるが、先生は別の方向を見ていた。
少し眉間に皺を寄せて。
私も同じ方向を見ると、近くにいた男の2人組が視線に気づいて背を向けて去っていった。
「先生?どうかした?」
「ん?いいや」
私が聞くと、先生は何事もなかったように笑いかけてくる。
そういえばさっきから他のお客さんから視線を感じていた。
駆け回って子供っぽかったからだろうか。
「私どこか変だった?時々視線を感じるの」
「特に何も・・・」
不安そうに見上げると、先生は空いてる片手を顎に当てる。
「強いて言うなら、呼び方かな」
「呼び方?」
「サクラが先生って呼ぶから他の人が見てた感じはあったけどね」
「う・・・」
それはこの旅行より前から思ってたこと。
恋人になってもカカシ先生の呼び方を変えることが出来なかった。
恋人だけど先生は先生で、名前だけだと気恥ずかしくて。
でもそれで見られるなんて思わなかった・・・。
「サクラ?」
俯いて悩んでいると、先生が声をかけてくる。
私はガバッと顔を上げる。
「カ・・・」
「ん?」
「カ、カ、カカシ・・・」
いざ言おうとしたら緊張で思うように言えず、挙動不審になってしまう。
先生は私が何を言いたいのか分かっているようで笑うのを我慢しているようだった。
私は思い切り息を吸って吐き出して。
「──カカシ、さん・・・」
蚊が鳴くような小さい声でようやく呼べた。
ちゃんと聞こえたかなってチラッと先生を見ると、今まで見たことのない程の満面の笑みで。
「うん」
先生はぎゅーと私を強く抱きしめてくれる。
身長差から私の耳が先生の胸元に来る。
そこからはいつもより早く脈打つ音が聞こえる。
私は嬉しくなって抱きしめ返した。
****
それから部屋に帰ると、豪華な夕飯が運ばれきて舌鼓を打った。
それから温かいお茶を飲んでゆっくり2人で過ごしていると。
「部屋に露天風呂が付いてるみたいだな」
「そうだった!入ってこようかしら」
「じゃあ一緒に入ろうか」
「・・・・・・え!?」
****
「はぁー・・・気持ちいいねぇ」
先生は湯に浸かって気持ちよさそうに息を吐く。
私はというと。
「ね、サクラ」
「う、ん・・・」
裸の先生に後ろから抱きしめられる形で浸かっていた。
せっかくの温泉なのに、先生のせいで全然落ち着けない。
心臓がバクバクしてること、絶対気づかれてる。
「サクラ、なんでそんな緊張してるわけ?」
「だ、だって!裸で抱きしめられたら落ち着けるわけないじゃない!」
「もうベッドの上で何回もシテるでしょ」
「それでもよ!!」
先生の顔を見れないでいると、後ろから喉の奥で面白そうに笑う声が聞こえた。
それから色んな話をして少し緊張が解れたのか、だんだん気が緩んで周りを見る余裕が出てきた。
「あ、先生。星空が綺麗よ」
「先生、じゃないでしょ?」
「う・・・でも2人きりだし・・・」
「まぁいいか」
慣れない呼び方に顔を真っ赤にすると、先生は嬉しそうにそう言った。
それからはお互い温泉を堪能する。
「そういえば、サクラ」
「なに?」
「親御さん、よく旅行許してくれたね。お父さんなんかサクラにデレデレだからダメかと思ったのに」
その言葉に肩がピクリと揺れる。
先生はその小さな反応を見逃してくれなかった。
「──サクラ?」
さっきまで甘々に呼んでくれてたのに、その言葉は甘さを無くした。
「まさか、嘘ついたのか」
「だ、だって!本当のこと言ったら、お母さんは誰と行くのかって根掘り葉掘り聞くだろうし、お父さんは絶対許してくれないもの!」
先生から旅行に誘われた時に言われたこと。
『ちゃんと御両親の許可を取るように』
私は「任せて!」と胸を叩いたけど、結局言えなくて、いのに口裏を合わせて貰ったのだ。
「それはそうでしょ。サクラのこと大好きなんだし」
「それに、私もう中忍だから親の許可なんか・・・」
「確かに中忍は一人前とされてるけど、それでもサクラは未成年なんだから親御さんの許可は必要でしょうが」
「うー・・・」
だんだん先生が彼氏から教師モードに入る。
先生の言ってることが正しいから反論が出来ずに唸るしかない。
せっかくの旅行が自分の嘘で台無しになってきて、情けなくて涙で瞳が潤み出す。
それを感じ取った先生は小さくため息を吐いて、私の頭を撫でる。
「全部サクラに任せたオレが悪かったな。オレがちゃんと挨拶に行けば良かったのに」
私は後ろの先生の顔が見れず、頭を横に思い切り振る。
サクラ、と優しく呼ぶ先生の声に恐る恐る振り返る。
「明日、オレも謝りにいくから。一緒に怒られよう」
先生は頬を流れる涙を指で拭って微笑む。
その優しさに我慢出来なくなってボロボロと涙が溢れだす。
私は体を捻って先生に抱きつく。
「ごめんなさい〜!」
「うんうん。オレもごめんな」
子供のように泣く私の頭を先生はポンポンと撫でてくれる。
それはまだ付き合う前、下忍時代に思い出させる撫で方で、だんだん心が落ち着いてくる。
「ごめんなさい、迷惑かけて」
「別にいいよ。どっちみち挨拶に行くつもりだったし」
「え?なんで?」
「ん?結婚の許しをもらう時に好印象の方がいいでしょ」
「え?」
「ん?」
とんでもない爆弾発言が落とされた気がする。
それを問い詰めたいのに、先生によって唇を塞がれたのでそれは出来なかったのだった。
任務が立て続けに入りデートらしいデートもしたことがなかった。
それもようやく落ち着き、休みを取って2人で旅行に行くことに。
「わぁー!先生見てみて!庭すごい綺麗よ!」
「サクラ、少しは落ち着きなさいって」
女将に部屋を案内されて私はテンションが上がって部屋のあちこちを探索している。
そんな私を先生は呆れたように笑って、1人お茶を啜っていた。
「だってこんな高そうな旅館初めてだもの!本当に私、払わなくていいの・・・?」
こんな格式が高そうで綺麗なんだからきっと相当なお値段がするはず。
急に心配になっておずおずと聞くと。
「大丈夫だよ、そんなに高くないし。オレの方が年も階級も上なんだから、サクラは気にせず甘えなさい」
先生はそう言って手招きするので、私は思い切り先生の胸に飛び込む。
先生の膝の上に抱き抱えられ、館内マップを一緒に見る。
「そういえば紅葉がちょうど見頃だって女将さんが言ってたな」
「行ってみたい!」
キラキラした目で先生を見ると、先生は嬉しそうに笑って額にキスをする。
「じゃあ浴衣に着替えて行こうか」
****
お揃いの浴衣を着て下駄を履いて。
館内の中庭にある紅葉を見に行くと、そこには何組かの客も紅葉を愛でていた。
「すごい・・・」
「ね」
私は綺麗に真っ赤に染まった紅葉から目を離せずにいた。
すると、風に吹かれて1枚の紅葉が手元に落ちてくる。
「先生、これ!」
「記念に持って帰ったらいいよ」
「うん!」
それからまたテンションが上がって1人紅葉の絨毯を駆け回り、「先生」と呼ぶとゆっくり付いてくる先生が手を振ってくれる。
暫く1人で紅葉を堪能していると、気づいたら先生がすぐ隣に立っていて腰に手を回してくる。
顔を見上げるが、先生は別の方向を見ていた。
少し眉間に皺を寄せて。
私も同じ方向を見ると、近くにいた男の2人組が視線に気づいて背を向けて去っていった。
「先生?どうかした?」
「ん?いいや」
私が聞くと、先生は何事もなかったように笑いかけてくる。
そういえばさっきから他のお客さんから視線を感じていた。
駆け回って子供っぽかったからだろうか。
「私どこか変だった?時々視線を感じるの」
「特に何も・・・」
不安そうに見上げると、先生は空いてる片手を顎に当てる。
「強いて言うなら、呼び方かな」
「呼び方?」
「サクラが先生って呼ぶから他の人が見てた感じはあったけどね」
「う・・・」
それはこの旅行より前から思ってたこと。
恋人になってもカカシ先生の呼び方を変えることが出来なかった。
恋人だけど先生は先生で、名前だけだと気恥ずかしくて。
でもそれで見られるなんて思わなかった・・・。
「サクラ?」
俯いて悩んでいると、先生が声をかけてくる。
私はガバッと顔を上げる。
「カ・・・」
「ん?」
「カ、カ、カカシ・・・」
いざ言おうとしたら緊張で思うように言えず、挙動不審になってしまう。
先生は私が何を言いたいのか分かっているようで笑うのを我慢しているようだった。
私は思い切り息を吸って吐き出して。
「──カカシ、さん・・・」
蚊が鳴くような小さい声でようやく呼べた。
ちゃんと聞こえたかなってチラッと先生を見ると、今まで見たことのない程の満面の笑みで。
「うん」
先生はぎゅーと私を強く抱きしめてくれる。
身長差から私の耳が先生の胸元に来る。
そこからはいつもより早く脈打つ音が聞こえる。
私は嬉しくなって抱きしめ返した。
****
それから部屋に帰ると、豪華な夕飯が運ばれきて舌鼓を打った。
それから温かいお茶を飲んでゆっくり2人で過ごしていると。
「部屋に露天風呂が付いてるみたいだな」
「そうだった!入ってこようかしら」
「じゃあ一緒に入ろうか」
「・・・・・・え!?」
****
「はぁー・・・気持ちいいねぇ」
先生は湯に浸かって気持ちよさそうに息を吐く。
私はというと。
「ね、サクラ」
「う、ん・・・」
裸の先生に後ろから抱きしめられる形で浸かっていた。
せっかくの温泉なのに、先生のせいで全然落ち着けない。
心臓がバクバクしてること、絶対気づかれてる。
「サクラ、なんでそんな緊張してるわけ?」
「だ、だって!裸で抱きしめられたら落ち着けるわけないじゃない!」
「もうベッドの上で何回もシテるでしょ」
「それでもよ!!」
先生の顔を見れないでいると、後ろから喉の奥で面白そうに笑う声が聞こえた。
それから色んな話をして少し緊張が解れたのか、だんだん気が緩んで周りを見る余裕が出てきた。
「あ、先生。星空が綺麗よ」
「先生、じゃないでしょ?」
「う・・・でも2人きりだし・・・」
「まぁいいか」
慣れない呼び方に顔を真っ赤にすると、先生は嬉しそうにそう言った。
それからはお互い温泉を堪能する。
「そういえば、サクラ」
「なに?」
「親御さん、よく旅行許してくれたね。お父さんなんかサクラにデレデレだからダメかと思ったのに」
その言葉に肩がピクリと揺れる。
先生はその小さな反応を見逃してくれなかった。
「──サクラ?」
さっきまで甘々に呼んでくれてたのに、その言葉は甘さを無くした。
「まさか、嘘ついたのか」
「だ、だって!本当のこと言ったら、お母さんは誰と行くのかって根掘り葉掘り聞くだろうし、お父さんは絶対許してくれないもの!」
先生から旅行に誘われた時に言われたこと。
『ちゃんと御両親の許可を取るように』
私は「任せて!」と胸を叩いたけど、結局言えなくて、いのに口裏を合わせて貰ったのだ。
「それはそうでしょ。サクラのこと大好きなんだし」
「それに、私もう中忍だから親の許可なんか・・・」
「確かに中忍は一人前とされてるけど、それでもサクラは未成年なんだから親御さんの許可は必要でしょうが」
「うー・・・」
だんだん先生が彼氏から教師モードに入る。
先生の言ってることが正しいから反論が出来ずに唸るしかない。
せっかくの旅行が自分の嘘で台無しになってきて、情けなくて涙で瞳が潤み出す。
それを感じ取った先生は小さくため息を吐いて、私の頭を撫でる。
「全部サクラに任せたオレが悪かったな。オレがちゃんと挨拶に行けば良かったのに」
私は後ろの先生の顔が見れず、頭を横に思い切り振る。
サクラ、と優しく呼ぶ先生の声に恐る恐る振り返る。
「明日、オレも謝りにいくから。一緒に怒られよう」
先生は頬を流れる涙を指で拭って微笑む。
その優しさに我慢出来なくなってボロボロと涙が溢れだす。
私は体を捻って先生に抱きつく。
「ごめんなさい〜!」
「うんうん。オレもごめんな」
子供のように泣く私の頭を先生はポンポンと撫でてくれる。
それはまだ付き合う前、下忍時代に思い出させる撫で方で、だんだん心が落ち着いてくる。
「ごめんなさい、迷惑かけて」
「別にいいよ。どっちみち挨拶に行くつもりだったし」
「え?なんで?」
「ん?結婚の許しをもらう時に好印象の方がいいでしょ」
「え?」
「ん?」
とんでもない爆弾発言が落とされた気がする。
それを問い詰めたいのに、先生によって唇を塞がれたのでそれは出来なかったのだった。
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