short.2
今年のバレンタインはいつも違った。
カカシ先生への恋慕を気づいてチョコを作れなくて。
そしてキスをされて、恋人同士になった。
色んなことが一気に押し寄せてきて私の頭はパンク状態になったけど。
たぶん今年のバレンタインは一生忘れないと思う。
「失礼しまーす・・・」
バレンタインの次の日、私は執務室を訪れた。
それは1日遅れのチョコを恋人に渡すため・・・
「サクラ」
書類から顔を上げた先生は私を見て微笑む。
その顔を見ただけで私の心臓は高鳴ってしまうのだからしょうがない。
「あれ、シカマルはいないの?」
同期で火影補佐の役職を与えられた元面倒くさがりの男がいつもの定位置にいない。
部屋には私とカカシ先生の2人だけだ。
「あぁ。シカマルはもう帰したよ」
また書類に目を落としてハンコを押し、済と書かれた箱の中に入れて片付け始める。
私たちには定時はあるけど、火影とその補佐はその忙しさに日付が変わるまで仕事してることが多い。
だから今日もシカマルがいると思ったし、先生もまだ仕事をするのだと思っていた。
「珍しい・・・この後何かあるの?」
「ん?そりゃ今からでしょ」
「え?」
「えっ、て・・・サクラ、チョコ持ってきてくれたんじゃないのか?」
「え、あ、うん!はい、どうぞ・・・」
そんな一大イベントみたいに扱われるとは思っていなくて、慌ててチョコを差し出すも恥ずかしさに先生の顔が見れない。
多分明日あたりにシカマルから聞いたいのがちょっかいかけてきそうだわ。
先生は緑色のラッピングをされた箱を受け取って嬉しそうに笑う。
蓋を開けると、中にはココアでコーティングされたトリュフチョコが入っている。
「すごいな・・・美味しそうだ」
「お口に合ったらいいけど・・・」
「サクラのチョコで今まで合わなかったことはないよ。食べてもいい?」
「う、うん・・・」
先生は箱から1つ指で持って口に運ぶ。
不安からドキドキしていると、先生は味わってにこりと笑う。
「うん、すごく美味しい」
「良かった・・・」
先生の言葉にほっと胸を撫で下ろす。
人に食べてもらうときはこの時が一番緊張する。
それが好きな人なら尚更。
「これお酒入ってる?」
「あ、うん、ボンボンショコラっていうの。ウイスキーなんだけど、大丈夫?酔った?」
「これぐらいだったら酔わないよ。先生は強いほうなんだから」
もう1つ口に入れて美味しそうに食べる先生に、色々あったけど今年も渡せて良かったとほっとしていると、じっとチョコを見て固まっている先生にまた不安がよぎる。
「え、なに。やっぱり美味しくなかった?」
「いや・・・」
不安過ぎて先生の側に近づくと、チョコから私を見た先生が微笑む。
こういうふうに笑う時の先生はすごく嫌なことが起きる。
「食べさせて」
「・・・え?」
「サクラが食べさせて」
はい、と私にチョコが入って箱を差し出してニコニコ笑う先生。
・・・予感的中。
「何で私が・・・」
「サクラに食べさせてもらった方が何十倍も美味しくなると思ったから」
はい、と箱をまた差し出して、目を瞑り口を開けている。
その姿は親鳥から餌をもらうのを待っている雛鳥のよう。
これはあげないと諦めないな、と諦めてチョコを1つ掴んで先生の口に運ぶ。
これで終わりと安心していると、いきなり手を掴まれた。
「ちょっ!」
引っ込めようとするも力の差からそれは叶わず、先生は何を考えたのか私の指を口に含んだ。
口の中で私の指を舐める舌の熱さにカァ、と全身が熱くなる。
「や、やめてよ!」
「ん〜?」
「カカシ先生!」
強く怒るのに先生は指を舐めながら私の様子を見ている。
その瞳が挑発的で、火影でも師でもない、知らない先生に心臓が破裂しそうだった。
暫く私の指を好き勝手に舐めていた先生は満足したのか手を離してくれた。
「ごちそう様」
「・・・私は食べ物じゃないわ」
「ん?オレはチョコのことを言ったんだけどなぁ」
「!!」
ふっ、と目を細めて揶揄うように笑う先生にかぁ、と顔が熱くなる。
「・・・先生の馬鹿」
「ごめーんね?サクラがあんまりにも可愛かったから」
「・・・ふん!」
褒められて許しそうになったけど、心を鬼にする。
べつに可愛いって言われて嬉しくなってないんだから。
私は先生の手からチョコが入って箱を奪いとる。
「サクラ?」
いきなり自分のチョコを取られて不思議そうにする先生をキッと睨む。
「意地悪なカカシ先生にはもうチョコあげません!」
「え゛」
ぷいっと背を向けると慌てた声が後ろから聞こえる。
「ご、ごめん、サクラ。ちょっと揶揄いすぎた」
「・・・ちょっと?」
「・・・いや、かなり。ごめんなさい。だからチョコください・・・」
情けなく頭を下げて懇願してくる先生に、ぷっと吹き出す。
普段はあんなにも頼りになるのに、時々こうやって情けなくなるのがおかしくて。
火影になっても昔と変わらないカカシ先生にほっとした。
「次また揶揄ってこんなことしたら許さないからね」
「え〜・・・・・・じゃあ本気だったら良いってことだ」
「え?」
その言葉に先生の顔を見てドキッとした。
先生の瞳にまた知らない熱が込められていたから。
「サクラこの後空いてる?」
「え、と・・・一応、空いてはいるけど・・・」
「そっか。それじゃあこれからオレの家に行こうか」
「!!」
その言葉の意味することは。
もう子供ではない私は分かっている。
先生はまた私の手を掴み、口元に運んで指先に口付けをする。
キザなのに、先生がしたらすごくかっこよく見えてしまうのは何でなんだろう。
「バレンタインの続き、楽しみにしてるよ」
チョコのように甘い夜はまだまだ続きそうだ。
カカシ先生への恋慕を気づいてチョコを作れなくて。
そしてキスをされて、恋人同士になった。
色んなことが一気に押し寄せてきて私の頭はパンク状態になったけど。
たぶん今年のバレンタインは一生忘れないと思う。
「失礼しまーす・・・」
バレンタインの次の日、私は執務室を訪れた。
それは1日遅れのチョコを恋人に渡すため・・・
「サクラ」
書類から顔を上げた先生は私を見て微笑む。
その顔を見ただけで私の心臓は高鳴ってしまうのだからしょうがない。
「あれ、シカマルはいないの?」
同期で火影補佐の役職を与えられた元面倒くさがりの男がいつもの定位置にいない。
部屋には私とカカシ先生の2人だけだ。
「あぁ。シカマルはもう帰したよ」
また書類に目を落としてハンコを押し、済と書かれた箱の中に入れて片付け始める。
私たちには定時はあるけど、火影とその補佐はその忙しさに日付が変わるまで仕事してることが多い。
だから今日もシカマルがいると思ったし、先生もまだ仕事をするのだと思っていた。
「珍しい・・・この後何かあるの?」
「ん?そりゃ今からでしょ」
「え?」
「えっ、て・・・サクラ、チョコ持ってきてくれたんじゃないのか?」
「え、あ、うん!はい、どうぞ・・・」
そんな一大イベントみたいに扱われるとは思っていなくて、慌ててチョコを差し出すも恥ずかしさに先生の顔が見れない。
多分明日あたりにシカマルから聞いたいのがちょっかいかけてきそうだわ。
先生は緑色のラッピングをされた箱を受け取って嬉しそうに笑う。
蓋を開けると、中にはココアでコーティングされたトリュフチョコが入っている。
「すごいな・・・美味しそうだ」
「お口に合ったらいいけど・・・」
「サクラのチョコで今まで合わなかったことはないよ。食べてもいい?」
「う、うん・・・」
先生は箱から1つ指で持って口に運ぶ。
不安からドキドキしていると、先生は味わってにこりと笑う。
「うん、すごく美味しい」
「良かった・・・」
先生の言葉にほっと胸を撫で下ろす。
人に食べてもらうときはこの時が一番緊張する。
それが好きな人なら尚更。
「これお酒入ってる?」
「あ、うん、ボンボンショコラっていうの。ウイスキーなんだけど、大丈夫?酔った?」
「これぐらいだったら酔わないよ。先生は強いほうなんだから」
もう1つ口に入れて美味しそうに食べる先生に、色々あったけど今年も渡せて良かったとほっとしていると、じっとチョコを見て固まっている先生にまた不安がよぎる。
「え、なに。やっぱり美味しくなかった?」
「いや・・・」
不安過ぎて先生の側に近づくと、チョコから私を見た先生が微笑む。
こういうふうに笑う時の先生はすごく嫌なことが起きる。
「食べさせて」
「・・・え?」
「サクラが食べさせて」
はい、と私にチョコが入って箱を差し出してニコニコ笑う先生。
・・・予感的中。
「何で私が・・・」
「サクラに食べさせてもらった方が何十倍も美味しくなると思ったから」
はい、と箱をまた差し出して、目を瞑り口を開けている。
その姿は親鳥から餌をもらうのを待っている雛鳥のよう。
これはあげないと諦めないな、と諦めてチョコを1つ掴んで先生の口に運ぶ。
これで終わりと安心していると、いきなり手を掴まれた。
「ちょっ!」
引っ込めようとするも力の差からそれは叶わず、先生は何を考えたのか私の指を口に含んだ。
口の中で私の指を舐める舌の熱さにカァ、と全身が熱くなる。
「や、やめてよ!」
「ん〜?」
「カカシ先生!」
強く怒るのに先生は指を舐めながら私の様子を見ている。
その瞳が挑発的で、火影でも師でもない、知らない先生に心臓が破裂しそうだった。
暫く私の指を好き勝手に舐めていた先生は満足したのか手を離してくれた。
「ごちそう様」
「・・・私は食べ物じゃないわ」
「ん?オレはチョコのことを言ったんだけどなぁ」
「!!」
ふっ、と目を細めて揶揄うように笑う先生にかぁ、と顔が熱くなる。
「・・・先生の馬鹿」
「ごめーんね?サクラがあんまりにも可愛かったから」
「・・・ふん!」
褒められて許しそうになったけど、心を鬼にする。
べつに可愛いって言われて嬉しくなってないんだから。
私は先生の手からチョコが入って箱を奪いとる。
「サクラ?」
いきなり自分のチョコを取られて不思議そうにする先生をキッと睨む。
「意地悪なカカシ先生にはもうチョコあげません!」
「え゛」
ぷいっと背を向けると慌てた声が後ろから聞こえる。
「ご、ごめん、サクラ。ちょっと揶揄いすぎた」
「・・・ちょっと?」
「・・・いや、かなり。ごめんなさい。だからチョコください・・・」
情けなく頭を下げて懇願してくる先生に、ぷっと吹き出す。
普段はあんなにも頼りになるのに、時々こうやって情けなくなるのがおかしくて。
火影になっても昔と変わらないカカシ先生にほっとした。
「次また揶揄ってこんなことしたら許さないからね」
「え〜・・・・・・じゃあ本気だったら良いってことだ」
「え?」
その言葉に先生の顔を見てドキッとした。
先生の瞳にまた知らない熱が込められていたから。
「サクラこの後空いてる?」
「え、と・・・一応、空いてはいるけど・・・」
「そっか。それじゃあこれからオレの家に行こうか」
「!!」
その言葉の意味することは。
もう子供ではない私は分かっている。
先生はまた私の手を掴み、口元に運んで指先に口付けをする。
キザなのに、先生がしたらすごくかっこよく見えてしまうのは何でなんだろう。
「バレンタインの続き、楽しみにしてるよ」
チョコのように甘い夜はまだまだ続きそうだ。
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