short.2
サクラのストーカー問題が解決した数日後、暇な夜にヤマトに誘われて居酒屋に来た。
誘われた理由は何となく分かっている。
「サクラから聞きました。ストーカー撃退したらしいですね」
「あー、うん。まあね」
「やっぱり先輩に相談して良かった。あいつ、ずっと遠くからサクラのこと見てたから何かしそうで・・・」
「ていうかさ、最初っからこうすれば良かったんじゃないのか?何で彼氏役なんてまどろっこしいことを・・・」
「それは面白そうだったので」
「・・・・・・」
ははは、と悪びれもなく笑う後輩に言葉が出ない。
人を使ってどういう楽しみ方をしてるんだ。
こいつの育て方間違えたのかねぇ、と酒を煽る。
「ところでもう1つ、先輩に聞きたいことがあって」
「・・・なに?」
「サクラに本当の彼氏になってほしいって言われたんですよね」
「ぶっ!!」
ヤマトの言葉に含んでいたお酒を吹き出してしまい、机いっぱいに飛んでしまった。
「あー、もう。何やってるんですか」
「げほっげほっ!何は、こっちのセリフなんだけど。誰から聞いたんだよ」
「サクラからに決まってるじゃないですか。報告された時に相談もされまして。カカシ先輩の好みを聞かれました」
「・・・で、お前は何て答えたのよ」
「好みは分からないけど、いつもメリハリのある大人の女性と一緒にいるのを見るって言っときましたよ」
「・・・・・・・・・」
意味ありげの顔でこちらを見てくるヤマトの視線から逃げるように顔を背ける。
彼女ではなく女性を主張したのはオレが特定の相手を作らず、言い寄ってきた相手ばかり関係を作っていることへの嫌味だろう。
オレばかりモテるのは不公平だといつも文句を言ってくるからな。
しかし、ヤマトはよくサクラに殴られなかったな。
あの子が自分の身体の、ある部分に対して不満を持っているのは見れば分かるものだが。
オレとしては無駄に大きい胸より手のひらサイズの方が好ましい。
感度は小さい方が良いというし、それにアレを自分が育てるというのも・・・
ガンッ
「わ、どうしたんですか先輩。いきなり机に頭打ちつけて」
「・・・別に。眠くなっただけだよ」
「先輩が酔うなんて珍しいですね。じゃあお会計しますね。すみませーん」
ヤマトが店員に声をかける。
オレは冷たい水を飲んでおかしなことを考えた頭を冷やした。
****
次の日、溜まった書類仕事を片付けて建物を出ると、門のとこに体を預けて立っているサクラがいた。
視線に気づいたサクラがオレの姿を見てパァ、と花が咲くような笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
「カカシ先生!」
「・・・サクラ」
いかにも待ってました、というサクラ。
あの日、サクラの告白に対してオレは考えさせてほしいと言った。
サクラのことは誰よりも大事な女の子だが、それは生徒としてで異性としてサクラを見たことはなかった。
だから返事は保留にしてもらったのだが、それからサクラはこんなふうにオレを待っていたりご飯に誘ったりとアピールをするようになった。
「先生、もうお仕事は終わり?」
「あぁ」
「なら、あの、買い物に付き合ってほしいの」
「買い物?オレとでいいのか?」
「うん!カカシ先生とがいいの!」
「・・・いいよ、行こうか」
「やったぁ!」
サクラから伝わってくる気迫に思わず了承してしまう。
いつも元気だが、今日は更に元気というか熱量がすごい。
「ほら、早く行きましょ先生」
そう言ってサクラはオレの手を掴んで歩き出す。
サクラが下忍時代からこうやって手を繋いできた。
だから当たり前の行動なのに、今は気になってしょうがない。
サクラは別に気にしていないというのに。
「・・・ここ?」
「うん」
サクラに手を引かれて連れてこられたのは商店街の中にあるお店。
その店の看板を見て思わず足を一歩引く。
別にあやしいお店ではない、普通のお店。
そう、女にとっての。
そのお店のショーウィンドウには女のマネキンが綺麗な下着を身につけてポーズを取っていた。
ここは女性下着だけを扱った、ランジェリーショップだ。
店員も客も女しかいない空間に男が入るのはとてつもなく度胸がいる。
しかも恋人ではない元教え子と。
今すぐにでも逃げ出したいのにオレの手を掴むサクラの手は逃さないというばかりに強くに握りしめてくる。
「・・・なぁ、本当に入るのか」
「そうよ。ほら、早く」
往生際の悪いオレを無理やり引っ張ってサクラは店のドアを開けた。
いらっしゃいませー、と店員はオレたちに声をかける。
店の中には他に数人女性の客がいて、入ってきた異物のオレをチラチラと見てくる。
今すぐにでも出て行きたいがそれを許さないのがサクラの手だ。
並べられた華やかな下着を見て回っている時もオレの手を離そうとしない。
しかも。
「ねぇ、これはどう?」
気になった下着を胸元に当ててオレに感想を求めてくる。
そして必ず黒の布が少ないものを選ぶのだ。
何故オレに感想を求めるのか。
こういうのは女同士で来るものではないのか。
そしてサクラはそういうのよりピンクとか白の可愛いほうが似合うと思う。
そんなことを思っても口に出せるはずもなく。
曖昧に返事をするとサクラは不満そうな顔をして手に持っていた物を戻してまた探す。
サクラがオレに何を求めているのか分からなくてただ付いていくしかなかった。
暫くそんなことを繰り返していると、ある下着が目に入る。
口に出すのも躊躇われるが、きっと口にしないとこの苦行は終わらない。
「・・・なぁ、サクラ」
「なに?」
空いている方の手でハンガーを手に取る。
「サクラには、こういうのが似合うよ」
それは白に淡いピンクのリボンが付いた、さっきからサクラが手に取っていたのは真逆のブラジャー。
出された下着を見てオレを見て、また下着を見る。
何を言われるのかとドキドキしていると、サクラは嬉しそうに頬を緩ませてそれを手に取る。
「・・・じゃあこれ買ってくるね」
「あ、あぁ・・・オレ外に出てるから」
「うん」
そのままレジに向かうサクラを見届けてドアに向かいながら内心ドキドキしていた。
なぜなら、サクラはサイズを確認していない。
だが問題ないだろう。
ずっと同じサイズのハンガーを手に取るのを見ていたから。
気持ち悪いと言われる前に足早に店を出た。
「・・・お待たせしました」
暫くしてサクラが店から出てくる。
顔を向けると袋を大事そうに抱えてこちらを見ようとしない。
恐らく店員にサイズの確認をされて、オレがピッタリのを手に取っていたから気恥ずかしさにこちらを見れないのだろう。
オレも掘り下げるつもりはない。
「用事はこれで終わりか?」
「う、うん」
「じゃ、帰るか」
「・・・うん」
寂しそうに小さく頷くサクラに胸が痛む。
足を進めるとサクラは半歩遅れて付いてくる。
来る時はあれだけ喋っていたのに、今はずっと俯いて黙ったまま。
横からビシビシと帰りたくないというオーラが伝わってくる。
オレもまだサクラと歩いていたい。
ただ素直にそれを言えないのは告白の返事を保留してしまっているから。
サクラは真っ直ぐに伝えてくれたというのに。
14も上の男が何をグダグダとしているのだろうか。
恋人役だって別にヤマトにさせても良かったんだ。
今は実質ヤマトが隊長なのだからいつだって側で守ってくれる。
それなのに自分から買って出たのは、サクラの隣に他の男が並んで欲しくなかったから。
──何が異性として見たことないだ。
空を見上げてふぅ、と息を吐く。
もうここまで答え出てるんだからこれ以上待たせるのも失礼だろう。
「サクラ」
「・・・?」
止まって振り向くと同じように止まって見上げてくるサクラ。
その腕には大事そうに抱えたオレが選んだ下着。
これが他の男の目に晒されるかもしれないと思ったらはらわたが煮えくり返る。
もう、手に入れてしまおう。
この何色にも染まっていない少女を。
「まだ時間あるか?」
「え?うん・・・」
「ならもうちょっと歩こう」
「あ、せ、先生・・・」
サクラの手を掴んで、サクラの家とは別の方向へと歩いていく。
返事をするなら夕日が綺麗に見れるところに連れていきたい。
自分にこんなロマンチストなところがあるとは思わなかった。
そんなことを考えていると、握る手が熱いことに気づいた。
肩越しにサクラを見れば耳まで真っ赤に染めて困った顔でずっと下を見ている。
どうしたのかと思ったがすぐに理由が分かり、繋いでいる手をぎゅっと更に握ると「ひゃあ!」とヘンテコな声が聞こえて喉の奥で笑う。
さっきは自分から握ってきたくせに、オレからされるとこんなふうになるのか。
本当可愛いくてしょうがなくて、早く自分のものにしてしまいたい。
返事をしたらどんな顔をするだろうか。
好きだと思った途端にこんなことを考えてしまうのだがら、本当どうしようようもない生き物だ。
誘われた理由は何となく分かっている。
「サクラから聞きました。ストーカー撃退したらしいですね」
「あー、うん。まあね」
「やっぱり先輩に相談して良かった。あいつ、ずっと遠くからサクラのこと見てたから何かしそうで・・・」
「ていうかさ、最初っからこうすれば良かったんじゃないのか?何で彼氏役なんてまどろっこしいことを・・・」
「それは面白そうだったので」
「・・・・・・」
ははは、と悪びれもなく笑う後輩に言葉が出ない。
人を使ってどういう楽しみ方をしてるんだ。
こいつの育て方間違えたのかねぇ、と酒を煽る。
「ところでもう1つ、先輩に聞きたいことがあって」
「・・・なに?」
「サクラに本当の彼氏になってほしいって言われたんですよね」
「ぶっ!!」
ヤマトの言葉に含んでいたお酒を吹き出してしまい、机いっぱいに飛んでしまった。
「あー、もう。何やってるんですか」
「げほっげほっ!何は、こっちのセリフなんだけど。誰から聞いたんだよ」
「サクラからに決まってるじゃないですか。報告された時に相談もされまして。カカシ先輩の好みを聞かれました」
「・・・で、お前は何て答えたのよ」
「好みは分からないけど、いつもメリハリのある大人の女性と一緒にいるのを見るって言っときましたよ」
「・・・・・・・・・」
意味ありげの顔でこちらを見てくるヤマトの視線から逃げるように顔を背ける。
彼女ではなく女性を主張したのはオレが特定の相手を作らず、言い寄ってきた相手ばかり関係を作っていることへの嫌味だろう。
オレばかりモテるのは不公平だといつも文句を言ってくるからな。
しかし、ヤマトはよくサクラに殴られなかったな。
あの子が自分の身体の、ある部分に対して不満を持っているのは見れば分かるものだが。
オレとしては無駄に大きい胸より手のひらサイズの方が好ましい。
感度は小さい方が良いというし、それにアレを自分が育てるというのも・・・
ガンッ
「わ、どうしたんですか先輩。いきなり机に頭打ちつけて」
「・・・別に。眠くなっただけだよ」
「先輩が酔うなんて珍しいですね。じゃあお会計しますね。すみませーん」
ヤマトが店員に声をかける。
オレは冷たい水を飲んでおかしなことを考えた頭を冷やした。
****
次の日、溜まった書類仕事を片付けて建物を出ると、門のとこに体を預けて立っているサクラがいた。
視線に気づいたサクラがオレの姿を見てパァ、と花が咲くような笑顔でこちらに駆け寄ってくる。
「カカシ先生!」
「・・・サクラ」
いかにも待ってました、というサクラ。
あの日、サクラの告白に対してオレは考えさせてほしいと言った。
サクラのことは誰よりも大事な女の子だが、それは生徒としてで異性としてサクラを見たことはなかった。
だから返事は保留にしてもらったのだが、それからサクラはこんなふうにオレを待っていたりご飯に誘ったりとアピールをするようになった。
「先生、もうお仕事は終わり?」
「あぁ」
「なら、あの、買い物に付き合ってほしいの」
「買い物?オレとでいいのか?」
「うん!カカシ先生とがいいの!」
「・・・いいよ、行こうか」
「やったぁ!」
サクラから伝わってくる気迫に思わず了承してしまう。
いつも元気だが、今日は更に元気というか熱量がすごい。
「ほら、早く行きましょ先生」
そう言ってサクラはオレの手を掴んで歩き出す。
サクラが下忍時代からこうやって手を繋いできた。
だから当たり前の行動なのに、今は気になってしょうがない。
サクラは別に気にしていないというのに。
「・・・ここ?」
「うん」
サクラに手を引かれて連れてこられたのは商店街の中にあるお店。
その店の看板を見て思わず足を一歩引く。
別にあやしいお店ではない、普通のお店。
そう、女にとっての。
そのお店のショーウィンドウには女のマネキンが綺麗な下着を身につけてポーズを取っていた。
ここは女性下着だけを扱った、ランジェリーショップだ。
店員も客も女しかいない空間に男が入るのはとてつもなく度胸がいる。
しかも恋人ではない元教え子と。
今すぐにでも逃げ出したいのにオレの手を掴むサクラの手は逃さないというばかりに強くに握りしめてくる。
「・・・なぁ、本当に入るのか」
「そうよ。ほら、早く」
往生際の悪いオレを無理やり引っ張ってサクラは店のドアを開けた。
いらっしゃいませー、と店員はオレたちに声をかける。
店の中には他に数人女性の客がいて、入ってきた異物のオレをチラチラと見てくる。
今すぐにでも出て行きたいがそれを許さないのがサクラの手だ。
並べられた華やかな下着を見て回っている時もオレの手を離そうとしない。
しかも。
「ねぇ、これはどう?」
気になった下着を胸元に当ててオレに感想を求めてくる。
そして必ず黒の布が少ないものを選ぶのだ。
何故オレに感想を求めるのか。
こういうのは女同士で来るものではないのか。
そしてサクラはそういうのよりピンクとか白の可愛いほうが似合うと思う。
そんなことを思っても口に出せるはずもなく。
曖昧に返事をするとサクラは不満そうな顔をして手に持っていた物を戻してまた探す。
サクラがオレに何を求めているのか分からなくてただ付いていくしかなかった。
暫くそんなことを繰り返していると、ある下着が目に入る。
口に出すのも躊躇われるが、きっと口にしないとこの苦行は終わらない。
「・・・なぁ、サクラ」
「なに?」
空いている方の手でハンガーを手に取る。
「サクラには、こういうのが似合うよ」
それは白に淡いピンクのリボンが付いた、さっきからサクラが手に取っていたのは真逆のブラジャー。
出された下着を見てオレを見て、また下着を見る。
何を言われるのかとドキドキしていると、サクラは嬉しそうに頬を緩ませてそれを手に取る。
「・・・じゃあこれ買ってくるね」
「あ、あぁ・・・オレ外に出てるから」
「うん」
そのままレジに向かうサクラを見届けてドアに向かいながら内心ドキドキしていた。
なぜなら、サクラはサイズを確認していない。
だが問題ないだろう。
ずっと同じサイズのハンガーを手に取るのを見ていたから。
気持ち悪いと言われる前に足早に店を出た。
「・・・お待たせしました」
暫くしてサクラが店から出てくる。
顔を向けると袋を大事そうに抱えてこちらを見ようとしない。
恐らく店員にサイズの確認をされて、オレがピッタリのを手に取っていたから気恥ずかしさにこちらを見れないのだろう。
オレも掘り下げるつもりはない。
「用事はこれで終わりか?」
「う、うん」
「じゃ、帰るか」
「・・・うん」
寂しそうに小さく頷くサクラに胸が痛む。
足を進めるとサクラは半歩遅れて付いてくる。
来る時はあれだけ喋っていたのに、今はずっと俯いて黙ったまま。
横からビシビシと帰りたくないというオーラが伝わってくる。
オレもまだサクラと歩いていたい。
ただ素直にそれを言えないのは告白の返事を保留してしまっているから。
サクラは真っ直ぐに伝えてくれたというのに。
14も上の男が何をグダグダとしているのだろうか。
恋人役だって別にヤマトにさせても良かったんだ。
今は実質ヤマトが隊長なのだからいつだって側で守ってくれる。
それなのに自分から買って出たのは、サクラの隣に他の男が並んで欲しくなかったから。
──何が異性として見たことないだ。
空を見上げてふぅ、と息を吐く。
もうここまで答え出てるんだからこれ以上待たせるのも失礼だろう。
「サクラ」
「・・・?」
止まって振り向くと同じように止まって見上げてくるサクラ。
その腕には大事そうに抱えたオレが選んだ下着。
これが他の男の目に晒されるかもしれないと思ったらはらわたが煮えくり返る。
もう、手に入れてしまおう。
この何色にも染まっていない少女を。
「まだ時間あるか?」
「え?うん・・・」
「ならもうちょっと歩こう」
「あ、せ、先生・・・」
サクラの手を掴んで、サクラの家とは別の方向へと歩いていく。
返事をするなら夕日が綺麗に見れるところに連れていきたい。
自分にこんなロマンチストなところがあるとは思わなかった。
そんなことを考えていると、握る手が熱いことに気づいた。
肩越しにサクラを見れば耳まで真っ赤に染めて困った顔でずっと下を見ている。
どうしたのかと思ったがすぐに理由が分かり、繋いでいる手をぎゅっと更に握ると「ひゃあ!」とヘンテコな声が聞こえて喉の奥で笑う。
さっきは自分から握ってきたくせに、オレからされるとこんなふうになるのか。
本当可愛いくてしょうがなくて、早く自分のものにしてしまいたい。
返事をしたらどんな顔をするだろうか。
好きだと思った途端にこんなことを考えてしまうのだがら、本当どうしようようもない生き物だ。
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