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ピンポーン、ピンポーン

「はーい・・・だれ・・・こんな朝早くから・・・」

せっかくの休みの今日、昼まで惰眠を貪るつもりだったのに来客を知らせる呼び鈴に無理やり起こされる。
ベッドからそのまま寝ぼけ頭で玄関のドアを開けると、

「パパ!」
「へっ」

予想だにしていない呼び声に素っ頓狂な声が出てしまった。
顔を下げるとそこには2つの薄紅色が。

「サクラ?・・・とナデシコちゃん?」
「パパ!あいたかった!」

困った顔をしているサクラと、サクラの手を離してカカシの足に飛びつくのは前に面倒を見たサクラの従妹のナデシコだ。
パパと言われているが断言して自分の娘ではない。
前に遊んだときに何故かパパという呼び方で定着してしまったのだ。

「え、何。どういうこと」

寝起きの頭では目の前の状況が全く理解できず、困惑しているカカシにサクラは眉を下げて経緯を話す。

「それがね・・・」



「──つまり、オレと会ってからナデシコちゃんが本当のパパのことをパパって呼ばなくなって、そのせいで親御さんが喧嘩になったと」
「そう。それで今は仲直りのデート中だからナデシコの面倒見てくれって言われたんだけど・・・この子が先生のところに行きたいって我儘言い出したのよ」

はぁ、とため息を吐いたサクラは隣に座る、嬉しそうにジュースを飲んでいるナデシコを見た。
この子のせいで親が大変なことになったことを分かっているのだろうか。

「ねー、パパ。あそぼ?」
「んー?いいよ」

カカシもカカシだ。
パパと呼ばれて普通に返事するのはどういうつもりなのだろうか。
サクラは椅子に座りながら、床でナデシコが持ってきたおもちゃで遊ぶ2人を眺めた。



「ん〜・・・」

2人で遊んでいると、ナデシコが何度も目を擦りシュパシュパさせている。

「眠い?」
「ん〜・・・」

カカシが問うとナデシコは素直に頷き、カカシの元に近づいて足を枕にして眠りについた。
やっぱり女の子は可愛いな、と薄紅色の髪を撫でながら後ろを見る。

「サクラ、ナデシコちゃん寝ちゃったよ・・・、ってあらら」

後ろの椅子に座っているサクラに話しかけると、サクラも自分の腕を枕に机に俯して気持ちよさそうに寝息を立てていた。
朝から子供の相手をしていたから緊張疲れしていたのだろう。
カカシはナデシコをベッドの壁側に寝かし、サクラをお姫様抱っこで運んでその横に寝かせる。
騒がしい2人が一気に静かになるとやる事無くなるな、とカカシは先ほどまでサクラが座っていた椅子に腰掛けてイチャパラを開いた。




ピンポーン

「ん。誰だ?」

静かな部屋に呼び鈴が響く。
2人は音に気づかないほど爆睡しているらしく、音を立てないように玄関に向かいドアを開けると、そこには同期のアスマと紅が立っていた。

「よぉ」
「お揃いで何か用か?」
「あなた達の次の任務のことで火影様から巻物預かったから持ってきてあげたのよ」
「それはどうも」

カカシは紅から巻物を受け取り中身を確認する。
その間、紅は目ざとくカカシの足元の靴に気づく。

「あら、誰か来てるの?」
「え?あ、あぁ、サクラがね」
「本当あなた達って仲が良いわよね」

羨ましいわ、と言う紅にカカシは愛想笑いする。
紅はもう1つの小さい靴には気づいていないらしい。
安堵していると部屋の奥から物音がして体が強張る。

「・・・先生?誰か来てるって、あ、アスマ先生と紅先生!こんにちは!」
「こんにちは。寝てたの?寝癖付いてるわよ」
「あと涎な」
「うそ!!」

顔を真っ赤にして洗面所に駆け込むサクラを見て「可愛いわね」と笑う紅。
一気に部屋が賑やかになったことで油断してしまったのが悪かった。

「──パパ?」

サクラより高い、子供の呼ぶ声に慌てて振り返ると、そこには目を擦りながらこちらを覗くナデシコの姿が。

「な、ナデシコちゃん・・・」
「えっ!もう起きちゃったの!?」

ナデシコの名に慌ててサクラが洗面所から出てくる。
2人は壊れたロボットのように首を動かしてアスマと紅を見ると、2人はこれでもかというように目と口を開けていた。

「ぱ、パパ・・・だと・・・」

アスマは口からタバコを落とし、震える指でナデシコを指さしてカカシを見る。
そりゃアスマ以外に男がオレしかいないのだから必然的にオレがパパと呼ばれたことになる。
そしてその見た目はサクラにそっくりで、しかも今ここにサクラもいる。
どう話せばいいのか、と考えていると紅がアスマの指を下ろして首を横に振る。

「アスマ・・・ここは帰りましょう」
「え゛、ちょ、紅?」

カカシが2人を引き止めようとすると、紅は何かを悟った顔で微笑する。

「大丈夫。分かってるわ。でも1つだけ言わせて」
「な、何を・・・」

カカシの口布は汗で色が変わってしまっている。

「避妊はちゃんとしなさいよ」
「!!!」

じゃあね、と紅は呆然としているアスマの背中を押して部屋を後にした。
絶対勘違いしやがった・・・
しかもとんでもない爆弾まで落として。
恐る恐る後ろを振り返ると、サクラは今まで見たことのないほどに顔を真っ赤にしていた。
まさに爆発寸前といったところか。
そして元凶であるナデシコは分かっておらず首を傾げている。
この場を納めれるのはカカシしかいないということだ。

「あー・・・サクラ」
「・・・・・・・・・」
「だいじょーぶ。本当にする時はちゃんとするから」


「何言ってんのよ!この馬鹿変態教師ーー!!」



次の日の朝、任務の待ち合わせ場所の橋の上で待っていたナルトとサスケが見たのは、口布を付けていても分かるほど頬が腫れているカカシと、膨れっ面のサクラとその真ん中で2人と手を繋いで満面の笑みでこちらに歩いてくるナデシコの姿だった。










****



ピンポーン

「はーい」

呼び鈴の音に玄関を開けると、そこには12、13歳ぐらいの薄紅色の女の子が立っていた。

「いらっしゃい、ナデシコ」
「お邪魔しまーす」

サクラに促されてナデシコは家に入りリビングに進むと、赤子を抱っこしているカカシがナデシコに気づいて微笑む。

「いらっしゃい。ナデシコちゃん」
「お久しぶりです、カカシさん」
「見ないうちにまた大きくなったね」
「えへへ。その内サクラちゃんより大きくなるかもね」
「それは何とも言えないわね・・・ナデシコのおばさん、身長高いから」

「おねえちゃん!」

3人で話してると足元から話しかけられる。
目線を下せば自分と同じ薄紅色の髪と灰青の瞳の少女がこちらを見上げていた。

「ハルカちゃーん!久しぶり!」
「ぎゅーして、ぎゅー!」
「ぎゅー!」

サクラと見た目がそっくりな少女たちは楽しそうにはしゃいでいる。
サクラ好きのカカシからしたらほっこりする場面だ。

「ね、ね、あかちゃんみて!」
「そうだった、そうだった」

ハルカの可愛さにここに来た目的を危うく忘れるところだった。
ナデシコはカカシに抱っこされた生まれたばかりの銀髪の赤ちゃんを見て自然と頬が緩む。

「わ、可愛い・・・」
「ツクシって言うんだ。抱っこしてみる?」
「わ、いいんですか?温かい・・・」

カカシからツクシを受け取り、まだ見えないであろう緑色の瞳がこちらをじっと見つめていた。
ナデシコの中にある母性がむくむくと湧いてきてしまう。

「ね、おねえちゃん。ハルカともあそぼうよ」
「あ、うん」
「ハルカ。お姉ちゃん来たばかりで疲れてるから後にしてあげて」
「えー・・・」
「ハルカ、パパと遊ぼうか」
「パパとー?いいけど、パパはくまさんのぬいぐるみね!」
「はいはい」

カカシはハルカに手を引かれて床に座り、くまの大きなぬいぐるみを渡されてお姫様の人形を持ったハルカとお人形遊びが始まる。
ツクシをサクラに渡し、椅子に座って2人を観察する。

「そういうば私も、カカシさんのことパパって呼んでたよね」
「そうよー。周りの人に勘違いされて大変だったんだから」
「あはは、ごめんなさーい。でもまさか本当に2人が結婚するなんて思わなかった。もしかして私恋のキューピッド?」
「調子に乗らないの!」
「あたっ」

サクラがナデシコの頭を軽く小突く。
でもこの二人の距離を縮めたのは自分な気がするんだけどな、と思いながらナデシコは思い出したかのようにカバンから封筒を取り出す。

「そうだった。これ、うちの親からご祝儀です」
「あ、ありがとう。おばさん達元気?」
「うん。相変わらずだよ。今日も私に行かせてデート行くんだって」
「ふふ。仲良いわよね」
「ほんと。見てるこっちがうんざりしちゃう。あーん、私もここの家の子になろうかなぁ」
「何言ってんのよ」
「えー、いいでしょーパパ〜」

久しぶりにその名を呼ぶと少し気恥ずかしい。
ナデシコがパパと呼び、すぐにハルカは反応する。
なぜナデシコがカカシをそう呼ぶのか分からず首を傾げているのが可愛い。
カカシはというと、ナデシコの見てにっこり微笑む。

「いいよー。ナデシコちゃんはうちの長女みたいなものだから」
「やった!」
「もう!カカシ先生!」

サクラがカカシを諌めるとカカシは「ははっ」と笑う。
昔と変わらない2人。
それが昔から大好きで、2人が結婚してくれて良かったとナデシコは1人微笑んだ。


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