short.2
カカシ先生が任務で里を離れてからもう少しで季節が一周しようとしている。
最初は2、3ヶ月の簡単な任務だと言っていたのに。
アクシデントがアクシデントを呼び、ずるずると気づけば1年が経とうとしていた。
"帰れなくなった。ごめん"
たった一文の手紙が何回届いたことか。
忍の任務が予定通り行くことはない。
早く終わることも、延びることも。
しかもカカシ先生は上忍だから私と違って危険で難しい任務ばかりで。
だからしょうがないのだ、と無理やり納得させるしかない。
****
「サクラちゃーーん!」
師匠の手伝いが終わって一人暮らしをする我が家に帰ろうとしていると後ろから大声で名前を呼ばれる。
振り返らなくてもこんなふうに呼ぶやつは1人しかいない。
私はため息を吐きながら振り返ると、そいつは嬉しそうに笑う。
「ナルト、恥ずかしいからやめてよ」
「えー?」
頭の後ろで悪びれもなく笑うナルト。
大きくなってもこういうところは変わらない。
「これから帰るの?」
「うん。一人分だけどちゃんと作らないと。ナルトもラーメンばっかりじゃなくて・・・なに?」
偏食気味の友に説教しようとするも、何故か目をパチクリさせてこちらを見ている。
「・・・サクラちゃんまだ知らないの?」
「何が?」
お互い首を傾げ、ナルトは腕を組んで唸る。
「なによ。気になるじゃない」
「いやー・・・オレが言ったって知られたら多分明日ぐらいに絞られそうだからなぁ・・・」
「はぁ?」
本当にナルトが何を言っているのか分からない。
それなのにナルトは1人納得した顔をして立ち去ろうとする。
「じゃ、また明日!」
「え、あ、ちょっと!さっきのは何なのよ!」
「それはこれからのお楽しみだってばよー!」
ナルトは私に捕まる前に颯爽と走り去った。
手を伸ばす私は一人残されて。
モヤモヤした気持ちを埋め込まれてしまった。
「たく・・・ナルトのやつ何だったのよ」
ナルトと別れた後、軽くスーパーで買い物をしてカカシ先生の部屋の玄関の前に立つ。
先生と付き合うようになって自分の部屋よりこっちに帰ってくる方が多くなって習慣となり、そして先生がいないあいだ換気も兼ねて。
というのもあるけど、本当はただ先生のいない間、先生の部屋で寂しさを埋めたいだけ。
微かに残る先生の匂いを感じていたいのだ。
ポーチから鍵を取り出し、2つのうち1つの鍵を差し込んで回す。
簡単に解除したアパートのドアを開ける。
「お邪魔しまーす・・・」
誰もいないけど声をかける。
記憶の中のカカシ先生が返事をした気分になるから。
スーパーの袋をキッチンに置き、手洗いをしっかりしてソファーで一休み。
「はぁ・・・」
この部屋で1人過ごすようになって1年経ってもこの静けさには慣れない。
何もしてないと気が滅入ってしまう。
少しの休憩から夕飯を作ろうとソファーから立ちあがろうとした時、部屋の呼び鈴が鳴る。
誰だろう、と玄関に向かう。
「はい。どちら様ですか?」
「宅急便です」
そんな予定があるとは先生からの手紙には書いていなかった。
首を傾げながらドアを開けると、そこには──
「よっ」
「か・・・!」
そこには片手を上げるカカシ先生が立っていた。
予想もしていなかった人物の登場に言葉が紡げなくて、鯉のように口をパクパクさせる。
「まぁ、まぁ。こんなところじゃなんだから入った入った」
先生は私の体を押して玄関に入る。
そりゃここは先生の部屋なんだけど、招き入れたのは私なのに。
先生は部屋の奥に進み、大きなリュックとベストを置いて肩を回して息を吐く。
目の前にいる先生が本物なのか、いまだに実感が湧かずにいると先生は振り向いて微笑んで腕を広げる。
「ただーいま、サクラ」
「っ!」
1年ぶりのその微笑みに我慢出来なくなって腕の中に飛び込んだ。
先生がぎゅっと強く抱きしめてくれる。
久しぶりの大好きな安心する草木の匂いに、ようやく先生が帰ってきたんだと嬉しくなる。
「ごめんな、遅くなって」
「・・・ううん。おかえりなさいカカシ先生」
胸の中で顔を上げると先生は顔を近づけてきて軽くキスをする。
少し顔を離し、私たちはお互いに照れ笑いする。
先生は私を抱えてソファーに座る。
「いつ帰ってきたの?」
「今日の昼ぐらいかな」
「何で早く会いにきてくれないのよ。それにさっきの宅急便ってなに?」
不満気に口を尖らせると先生はおかしそうに笑う。
「どうせならサクラの驚いた顔がみたいなーと思ってね」
「帰ってきただけで驚くわよ!」
ぷいっと顔を逸らすと「ごめんごめん」と謝ってくる先生。
こんなふうなやり取りが久しぶりすぎてどこかむず痒い。
チラッと先生を見るといつものように優しく微笑んでくれる。
ふと、先のほどのナルトの反応を思い出す。
「もしかして・・・帰ってきてからナルトに会った?」
「え?うん。綱手様に報告した時にばったりね」
「・・・・・・・・・」
「サクラ?」
頬を膨らまして顔を逸らす私を先生は不思議そうにしている。
偶然、偶々。
先生が言うからその通りなんだろうけど、カカシ先生に会うことをナルトに先に取られたのは気に食わない。
このままじゃ腹の虫が治らないわ。
「・・・あんみつ」
「ん?」
「デラックスあんみつ!一番最初に私に会いに来なかったこと、これで許してあげる!」
ビシッと指を指すと、先生は目をパチクリさせて吹き出す。
「はいはい。りょーかい、お姫様」
嬉しそうに笑った先生は額と額をピッタリくっ付けてくる。
大好きな人の体温。
もう離れたくないと、大きな背中に腕を回してギュッと抱きしめた。
最初は2、3ヶ月の簡単な任務だと言っていたのに。
アクシデントがアクシデントを呼び、ずるずると気づけば1年が経とうとしていた。
"帰れなくなった。ごめん"
たった一文の手紙が何回届いたことか。
忍の任務が予定通り行くことはない。
早く終わることも、延びることも。
しかもカカシ先生は上忍だから私と違って危険で難しい任務ばかりで。
だからしょうがないのだ、と無理やり納得させるしかない。
****
「サクラちゃーーん!」
師匠の手伝いが終わって一人暮らしをする我が家に帰ろうとしていると後ろから大声で名前を呼ばれる。
振り返らなくてもこんなふうに呼ぶやつは1人しかいない。
私はため息を吐きながら振り返ると、そいつは嬉しそうに笑う。
「ナルト、恥ずかしいからやめてよ」
「えー?」
頭の後ろで悪びれもなく笑うナルト。
大きくなってもこういうところは変わらない。
「これから帰るの?」
「うん。一人分だけどちゃんと作らないと。ナルトもラーメンばっかりじゃなくて・・・なに?」
偏食気味の友に説教しようとするも、何故か目をパチクリさせてこちらを見ている。
「・・・サクラちゃんまだ知らないの?」
「何が?」
お互い首を傾げ、ナルトは腕を組んで唸る。
「なによ。気になるじゃない」
「いやー・・・オレが言ったって知られたら多分明日ぐらいに絞られそうだからなぁ・・・」
「はぁ?」
本当にナルトが何を言っているのか分からない。
それなのにナルトは1人納得した顔をして立ち去ろうとする。
「じゃ、また明日!」
「え、あ、ちょっと!さっきのは何なのよ!」
「それはこれからのお楽しみだってばよー!」
ナルトは私に捕まる前に颯爽と走り去った。
手を伸ばす私は一人残されて。
モヤモヤした気持ちを埋め込まれてしまった。
「たく・・・ナルトのやつ何だったのよ」
ナルトと別れた後、軽くスーパーで買い物をしてカカシ先生の部屋の玄関の前に立つ。
先生と付き合うようになって自分の部屋よりこっちに帰ってくる方が多くなって習慣となり、そして先生がいないあいだ換気も兼ねて。
というのもあるけど、本当はただ先生のいない間、先生の部屋で寂しさを埋めたいだけ。
微かに残る先生の匂いを感じていたいのだ。
ポーチから鍵を取り出し、2つのうち1つの鍵を差し込んで回す。
簡単に解除したアパートのドアを開ける。
「お邪魔しまーす・・・」
誰もいないけど声をかける。
記憶の中のカカシ先生が返事をした気分になるから。
スーパーの袋をキッチンに置き、手洗いをしっかりしてソファーで一休み。
「はぁ・・・」
この部屋で1人過ごすようになって1年経ってもこの静けさには慣れない。
何もしてないと気が滅入ってしまう。
少しの休憩から夕飯を作ろうとソファーから立ちあがろうとした時、部屋の呼び鈴が鳴る。
誰だろう、と玄関に向かう。
「はい。どちら様ですか?」
「宅急便です」
そんな予定があるとは先生からの手紙には書いていなかった。
首を傾げながらドアを開けると、そこには──
「よっ」
「か・・・!」
そこには片手を上げるカカシ先生が立っていた。
予想もしていなかった人物の登場に言葉が紡げなくて、鯉のように口をパクパクさせる。
「まぁ、まぁ。こんなところじゃなんだから入った入った」
先生は私の体を押して玄関に入る。
そりゃここは先生の部屋なんだけど、招き入れたのは私なのに。
先生は部屋の奥に進み、大きなリュックとベストを置いて肩を回して息を吐く。
目の前にいる先生が本物なのか、いまだに実感が湧かずにいると先生は振り向いて微笑んで腕を広げる。
「ただーいま、サクラ」
「っ!」
1年ぶりのその微笑みに我慢出来なくなって腕の中に飛び込んだ。
先生がぎゅっと強く抱きしめてくれる。
久しぶりの大好きな安心する草木の匂いに、ようやく先生が帰ってきたんだと嬉しくなる。
「ごめんな、遅くなって」
「・・・ううん。おかえりなさいカカシ先生」
胸の中で顔を上げると先生は顔を近づけてきて軽くキスをする。
少し顔を離し、私たちはお互いに照れ笑いする。
先生は私を抱えてソファーに座る。
「いつ帰ってきたの?」
「今日の昼ぐらいかな」
「何で早く会いにきてくれないのよ。それにさっきの宅急便ってなに?」
不満気に口を尖らせると先生はおかしそうに笑う。
「どうせならサクラの驚いた顔がみたいなーと思ってね」
「帰ってきただけで驚くわよ!」
ぷいっと顔を逸らすと「ごめんごめん」と謝ってくる先生。
こんなふうなやり取りが久しぶりすぎてどこかむず痒い。
チラッと先生を見るといつものように優しく微笑んでくれる。
ふと、先のほどのナルトの反応を思い出す。
「もしかして・・・帰ってきてからナルトに会った?」
「え?うん。綱手様に報告した時にばったりね」
「・・・・・・・・・」
「サクラ?」
頬を膨らまして顔を逸らす私を先生は不思議そうにしている。
偶然、偶々。
先生が言うからその通りなんだろうけど、カカシ先生に会うことをナルトに先に取られたのは気に食わない。
このままじゃ腹の虫が治らないわ。
「・・・あんみつ」
「ん?」
「デラックスあんみつ!一番最初に私に会いに来なかったこと、これで許してあげる!」
ビシッと指を指すと、先生は目をパチクリさせて吹き出す。
「はいはい。りょーかい、お姫様」
嬉しそうに笑った先生は額と額をピッタリくっ付けてくる。
大好きな人の体温。
もう離れたくないと、大きな背中に腕を回してギュッと抱きしめた。
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