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short.2

「別れてほしいの」
「・・・理由を聞く権利は、ある?」

サクラの部屋に呼ばれたカカシは着いて早々別れ話を切り出された。
ドアが開いた時からサクラの重々しい表情に何かあるなとは思ってはいたが。
カカシが問いかけてもサクラは俯いたまま何も言わない。
暫く2人の間に気まずい空気が流れていたが、カカシが「分かった」と言って部屋を出て行った。
もっと何か言われるかと思っていたのにあっさりとした別れ。
ジワリとサクラの瞳が滲み、夜が明けるまで1人泣いていた。

カカシとサクラはお互いに告白したわけではなく、ただ2人でいることが居心地がよくて休みの日はどちからの部屋に遊びに行き過ごすというのが当たり前になっていた。
そして気づいたら体を重ねていて恋人の関係に収まっていた。
口にしなくてもお互いのことを分かり合えている。
でもサクラはそれが寂しかった。
もしかしたらカカシは初めてのサクラを抱いてしまったことに責任を感じて一緒にいるのではないかと。
他人に執着をしないが、仲間は大事にする人。
元教え子で部下という面倒な立ち位置にいるサクラを突き放すこともできなくて。
現に2人で外で並んで歩いている時もカカシの手はずっとポケットの中にあって手を繋いだことがない。
甘えていいのかも分からず、ずっと微妙な関係が続いているのだ。
この距離が続くと思うと耐えられない。
それほどにサクラはカカシのことが好きで、自分ばかり好きになっていくのが辛かった。
だからカカシから別れを切り出される前にあの人から別れることを決めた。
傷つくのが怖かったから。
しかし救いだったのが、サクラが別れを切り出した時に「付き合ってたっけ?」と言われなかったこと。
それが出なかったということはカカシもサクラのことを恋人だと思っていてくれたのだと、それが密かに嬉しかった。


それから1ヶ月、お互いがお互いを避け、毎日会っていたのが嘘のように顔を合わせなくなった。
これで良かったのだと、サクラは新しい恋人を作ろうともせず仕事に没頭していた。
サクラから特に話はなかったが、いつも一緒にいた2人ここ1ヶ月いるところを見ておらず、何となく別れたのだろうといのは察していた。
それに今まで以上に仕事に没頭するサクラに、いのは見かねて合コンに誘った。

女性のもう1人は病院の同期、男性側は同期の知り合いの6人で集まり、みんなで楽しく話していたけどそう簡単にカカシ以上に良い人なんて見つかるはずもなく。
合コンの後に二次会に誘われたけどいのに断って1人帰ろうとすると、合コンに参加していたチャラ男に捕まり、2人でどこかに行こうと無理やり連れて行かれそうになる。

「やめて、ください・・・!」
「いいから、いいから」
「もう・・・!いい加減に・・・!」

サクラは踏ん張って拒むも、サクラの堪忍袋はすぐに切れる。
一般人だからと我慢していた拳にチャクラを溜めていると、後ろから強く引っ張られてバランスを崩して後ろにいた人の胸に倒れる。
その時に香った匂いは草木のような安心する匂い。

「ほ、火影様・・・!?」

突然目の前に現れたカカシに男は驚いた顔をしている。
それはサクラもで、心臓が跳ねまくり動けずにいた。
カカシは何も言わずに男ににこりと微笑みかける。
その笑顔に恐怖を覚え、男は慌てて逃げ去った。
サクラも逃げたかったが、未だに腕を掴むその力に逃げることを許さないというのが伝わってきて足が動けなかった。
カカシはそんなサクラの手を引っ張り、近くの公園に連れて行く。
そしてサクラを木に押し付け無理やりキスをしようとするので、サクラは顔を背けて抵抗する。

「や、やめて先生・・・!」

顎を掴まれ無理やり前を向かされて、強引にキスをされる。
離れようと肩を押すけど、久しぶりカカシのキスにだんだんと力が抜けていく。
されるがまま唇を貪られ、離れていくカカシを見るとその顔は今まで見たことのないほどに怒っていた。

「あの男のことが好きなのか?」
「ち、ちが・・・」
「だよねぇ。嫌がってたし」

カカシは徐にサクラのショーツの中に手を突っ込み、無理やり奥まで指を入れる。

「いたい・・・っ!」
「じゃあ誰が好きなんだ。ナルト?サイ?それともやっぱりサスケか」
「好きな人なんて・・・」
「じゃあ何で別れるなんて言ったんだ。誰が好きな奴が出来たからだろ!!」

今まで感じたことのないカカシの怒気に、サクラは恐怖から何も言えずボロボロと泣き出す。
サクラの泣き顔に正気を取り戻したカカシはゆっくりと指を引き抜き、反対の手で頬を撫でながら涙を拭う。

「・・・ごめん」

カカシの泣きそうな声にまた苦しくなって涙が止まらない。
それから暫く無言が続いたが、カカシがポツリと喋り出す。

「あの日、サクラが別れたいって言った時。とうとうこの日が来たんだなって思った。サクラに好きなやつが出来たら潔く身を引くつもりだったから」

カカシの言葉にサクラは目を丸くして顔を上げると、カカシは辛そうに笑う。

「ずっとそうするつもりだった。なのに、いざその時が来たらサクラを手放したくないって思ったんだ」

カカシはさっきとは違って、いつもの優しいキスをくれる。
その優しさが心に染み込んできてまた泣きそうになる。

「なぁ・・・サクラ。ヨリを戻さないか」

久しぶりに見るカカシの灰青の瞳に縋られ胸が締めつけられるが顔を横に振る。

「・・・どうして」
「だって、怖いの・・・」
「怖い・・・?」
「私ばっかり先生のこと好きになっていくから」
「え?」
「先生がどんどん欲しくなっていく自分が怖いの。でもそんなこと言っちゃいけないから」
「なんで?」
「だって・・・」

サクラは潤む瞳でチラッとカカシを見て目を逸らす。

「だって、先生、好きって言ってくれないから」
「え?」
「もしかしたら私だけ恋人だって思ってるのかなって・・・勘違いしてるのかなって・・・だから、もっと好きになる前に、離れなきゃって・・・」

今まで我慢していた気持ちが一気に溢れてきてまたサクラの瞳から涙が溢れ出し、カカシは慌ててサクラを思い切り抱きしめる。

「ごめん。ずっと悩ませてたんだな。オレはサクラに甘えてた。何も言わなくてもサクラはずっと側に居てくれるって思ってた・・・ずっとなんてないのにな」

何とか顔を上げると泣きそうな、弱々しい顔。
母親に置いていかれまいと子供みたいに縋ってくるカカシ。
初めて見るカカシに不覚にもときめいてしまった。

「サクラが好きだ。サクラに好きな奴が出来たのかって思った時、嫉妬で相手の男を殺してまたサクラの側にいたいと思うほどにお前に溺れてる」
「せんせ・・・」
「お願いだから側にいてよサクラ・・・」

背中を曲げてサクラの肩に顔を埋めてくる。
頼りになるのにだらしなくて。
大人なのに子供みたいで。
あれだけ離れようと決めていたのに。
もうこの手を離すことはできそうにない。
サクラは大きな背中に手を回す。

「私もカカシ先生が好き。誰よりも好き。愛してる」

眉を下げて情けなくこちらを見てくるカカシに涙を流しながら満面の笑みを向ける。

「先生も私を愛してくれる?」
「当たり前だろ・・・死ぬまで、いや、死んでもずっとお前を愛してるよ」

もう何も言わなくても分かり合えている。
2人はゆっくりと顔を近づけて愛を込めてキスをした。


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