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short.2

カカシ先生が好き。
こんな子供相手なんてされるわけない、見るだけで我慢しようとしていた。
任務が終わり、さっさと帰ろうとしたら先生に呼ばれて何か任務でやらかしただろうか、と内心焦っていると。

「サクラさ、オレのこと好きでしょ」
「・・・・・・え」

思いもよらぬ言葉に言葉を失った。
誰にも言ったことないのに。
親友のいのにさえ。
なんで、どうしてとその二言が頭の中でグルグル回っていると前から小さい笑う声が聞こえた。

「目は口ほどに物を言うって言うけど本当だな。あんだけ熱い視線向けられたら流石に先生だって気づくぞ?」
「!!」

私の顔は瞬間湯沸かし器のように一瞬で顔が熱くなる。
とりあえず逃げようとジリジリ後ろに下がっているとそんなことを見抜いている先生に手を掴まれる。
いつも触ってほしいと思っている手なのに今はすぐにでも振り払いたい。
触れているところから私の気持ちが伝わってしまいそうで怖い。

「で、どうする?」
「・・・どうって?」

先生が何を言いたいのか分からず顔を上げると、先生は微笑んでのぞいてくる。

「オレ達付き合う?」
「っっ!?つき、つきあ・・・!?」
「なーに?そんなに驚くこと?」

おかしそうに喉の奥で笑う先生。
その間も手を離してくれなくて落ち着かない。

「で、でも、私たち師弟関係だし、歳も離れてるし・・・」
「そうねー」
「そ・・・!?そ、それに、私なんかじゃカカシ先生には釣り合わないわ・・・」

自分で言ってて落ち込む。
片や里一の忍と言われ、片や中忍になりたてのぺーぺーの医療忍者。
文武不相応じゃないか。

「んー・・・周りの評価なんて気にしなくてもいいと思うけど。サクラが気になるなら内緒のお付き合いでも良いんじゃないか?」
「・・・カカシ先生って私のこと好きなの?」
「え、いまさら?」
「だって、言ってくれないし・・・」

そうだ、先生は私のことをどう思っているのか言ってくれていない。
私の気持ちはバレて付き合うかって話をされているのに片方の気持ちは伝えられていないって不平等だ。
チラッと顔を見ると先生は困った顔をしている。

「好きじゃなきゃ教え子にこんな話しないでしょ」
「それでも!ちゃんと聞きたいのよ!」

今度は私が逃さないと掴まれている腕を掴むと、先生は片方の手で頭を掻いて、その手を私の頭の後ろに回す。
近くなる顔に狼狽えていると、先生は顔を傾けて息がかかる位置で止まり。

「──好きだよ。誰よりも」

初めてのキスで覚えているのは、冷たいと思っていたカカシ先生の唇は思ったより温かかったことだった。



それから付き合うことになったが、私の自信が付くまで周りには内緒のお付き合いということになった。
一応班員である3人と親友には内密にとお願いをして伝えた。
ナルトとヤマト隊長は顎が外れそうなほど口をあんぐりと開け、サイは何考えているか分からない顔で笑っていた。
いのには「やっとくっついたわけ?」と呆れたように言われた。
私が先生ばかり見ていたのに気づいていたのに気づいていたらしい。
昔から表情が顔に出やすいと言われることはあったけど。
こんなにも恥ずかしいことはない。


付き合うようになって数日が経ったある日。
師匠のお手伝いで大量の書類を手に廊下を歩いていると、通りかかった部屋から声が聞こえた。

「そういえばはたけ上忍、恋人がいるんだって」

突然の恋人の名前とワードに足がピタリが止まり、ドアに耳を当てて盗聞きする。

「うそ!え、誰?」
「それが恋人が恥ずかしがるから秘密ってはぐらかされたんですって」
「えー?それって断る口実じゃないの?」
「やっぱりそう思う?私アタックしてみようかしら」

1人が告白宣言をして応援する声が聞こえてくる。
それからはどうやって告白するか、どこに呼ぶかなどと、どんどん話が進んでいき、私はそこから動けずにいた。


それから夕方、私はさっきの部屋のドアにまた耳を当てていた。
中から聞こえる声は2つ。

「はたけ上忍が好きです。付き合ってください」
「ありがとう。でもごめんね。恋人いるから」
「それって誰なんですか?」
「悪いけど秘密」
「それって本当にいるんですか?周りに隠すって、付き合っているのが恥ずかしい相手なんですか」

顔は見たことないけど口振り的に気の強そうな女の人だ。
詰め寄ってくる相手に先生が困っていることが伝わってくるのに今ドアを開けて自分から出ていく勇気はない。
どうしよう、とドアの前で固まっていると徐に目の前のドアが開きカカシ先生が見下ろしていた。

「サクラ」
「か、かし、せんせ・・・」
「おいで」

固まる私の手を先生を引っ張って部屋の中に入れる。
いきなり現れた私に女の人も困惑した顔で先生を見ている。

「?この子、はたけさんの生徒さんですよね」
「そう。それでオレの彼女」
「「え!?」」

私と女の人の驚いた声が重なる。
目を丸くして先生を見上げると、優しく微笑んで頭を撫でてくれる。

「サクラがオレの彼女だと言う自信がないっていうから黙ってたんだけどね。さすがに毎回詰め寄られると面倒だからバラしちゃった」

ごめんね、とこっちに謝るも悪びれもない顔に私は口をパクパクと鯉のように動かすしかない。

「だから悪いんだけど周りの子達にも伝えてくれる?オレにはサクラっていう可愛い恋人がいるから呼び出されてももう行かないって」
「え、あ、はい・・・」

女性は呆然としながら部屋を出て行った。
部屋の中には私とカカシ先生だけが取り残される。

「カカシ先生・・・」
「これで堂々とイチャつけるね」

ちゅっ、と額にキスをする先生の目は何かから解放されたような感じがして狼狽えてしまう。

「で、でも、告白避けに生徒を使ったって思われるかも・・・」
「んー、それも出てくるかもねぇ」
「それなら私の出番よね!」

先程女の人が出て行った時に閉めたドアが勢いよく開いて現れたのはいのだった。

「い、いの!?」
「私が2人はラブラブイチャイチャのカップルだって広めれば一瞬で里に広まるわよ」
「イチャ!?」

恥ずかしい言葉に顔が熱くなる。
そんな恥ずかしい言葉にもいちいち反応してしまう自分が恥ずかしい。

「あぁ、それがいいね」
「ちょっとカカシ先生!」

清々しい笑顔でとんでもないことを了承する男に度肝を抜かされる。
この女が口を開けば一瞬でこの里に広まってしまうというのに。

「それじゃそういうことでぇ〜」
「ちょ、待ちなさいいのー!」

軽やかなステップで廊下の窓から降り立つ親友を慌てて呼び止めるもヤル気に満ちた彼女は一瞬のうちに姿をくらませていた。
後ろで聞こえる笑い声に手を置く窓のサッシから変な音がした。


そして次の日の朝には私たちが付き合っていることと人目も憚らずイチャつくバカップルという噂が広まっていた。


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