このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

short.2

◯苗字

カカシ先生と結婚して暫く経った頃。
最近書き慣れてきたとはいえ長年使ってきた癖には勝てなくて、無意識で「春野サクラ」と書いてしまったのを先生に見咎められてしまった。

「サクラちゃん、君の苗字はもう春野じゃないよね?」
「・・・・・・」
「もしかしてサクラと結婚したと思ったのは全部オレの妄想?この左手で輝く指輪を付けてるのもオレの痛々しい行動?」

先生は左手を掲げてグスグスと態とらしく鼻を啜る。

「あー、もう!私が悪かったわよ!」
「じゃあお名前は?」
「はたけサクラです!」
「ごーかく!」
「本当性格ねちっこすぎよ、先生・・・」

嬉しそうに抱きついてくる先生の腕の中で大きくため息を吐いた。






◯消毒

「うぶ!」

石に躓いたサクラが顔面から転けて鼻の頭と膝を怪我した。
依頼人との待ち合わせまで時間がないのでナルトとサスケに先に行かせて、サクラを岩に座らせて医療パックで治療する。

「サクラちゃんはドジだねぇ。忍なのにあんなふうに転ぶなんて」
「煩いわね・・・」

鼻に絆創膏を貼るとサクラはむくれた顔をしてそっぽを向く。
こんな顔をサスケに見られるのが嫌なんだとさっきまで文句を言っていたので、子供ぽい言動に喉の奥で笑う。
もう少し揶揄いたいが任務もあるのでテキパキと消毒をして膝に絆創膏を貼る。

「ありがと、せん・・・」

素早い行動に関心しながらお礼をしようとした時、何を思ったのかカカシは今貼った絆創膏の上から膝にキスをしてきた。
突然のことに一瞬思考が止まり、理解した瞬間にサクラの顔は一気に真っ赤に染まる。

「な、な、な・・・!」
「最後の消毒」


遅れてやってきたカカシの頬には口布を付けていても分かるほどの真っ赤な手形があったとか。






◯おいで

先生と付き合うようになって今までしていたことが出来なくなった。
それは人前で抱きつくこと。
今日もナルトが先生に抱きついている。
羨ましいけど恥ずかしさの方が勝ってしまって私は未練がましく見ることしかできなかった。

任務が終わり手を繋いで先生の部屋に帰る。
明日は休みだからお泊まりで、途中でスーパーに行ったからこれから一緒にご飯を作ることになっている。
といっても料理が下手な私はお手伝いだけだけど。
この間買ってもらったエプロンを付けていると後ろから「サクラ」と呼ばれた。

「なに?」

振り向くと先生は腕を広げて微笑んでいる。

「おいで」

私は思い切り先生に飛びついた。






◯忘れないこと

「カカシさん!あの、この間の任務ではお世話になったのでご飯でも一緒出来たらなって・・・」
「・・・誰だっけキミ」
「そんなぁ・・・!」

見知らぬ、いや知っているだろうが頭から全く抜け落ちている女は泣きそうな顔をするも、オレはそれを無視して歩き出す。
昔から任務のことになればちゃんと覚えていられるのだが、終われば一緒に任務に行った人のことを忘れてしまう。
悪いところだな、とは思うが別に支障がないから構わない。

「・・・ん、そういえばこの時間はサクラが図書館に行ってるな。顔を見に行きますかね」

足取り軽やかに方向を変えて人混みを歩く。
どうもサクラのことに関しては1つ1つ脳細胞に染み込んで忘れないらしい。






◯手紙に想いを乗せて

カカシが長期任務に出て半年経った頃、突然寂しい気持ちに襲われて手紙を書いて伝書鳥の足に付けて飛ばした。
少しでも自分のこの気持ちがあの人に届くようにと。

そんなことを思いながら1人寂しくベッドで眠り、朝、執務室に行くとそこには毎日思い浮かべている人物の背中があった。

「カカシ先生!?」
「おー、サクラー。ただーいま」
「おかえりなさい・・・え、帰還ってまだ先じゃなかったですか?」
「そうなんだけどね。思ったより早く片付いてさっき帰ってきたんだ」
「そうだったんですか・・・」

身なりはボロボロだが特に大きな怪我もしてなさそうで一安心。

「仕事終わったらオレの部屋来てよ。ご飯食べに行こう」
「分かりました」

頷くと久しぶりに撫でられて寂しかった部分が溶けて無くなった。
それからいつもより頑張って仕事を終わらせ、カカシの家の呼び鈴を鳴らす。
出てきたカカシは変にご機嫌で何故だか嫌な予感がした。

「お疲れーサクラ」
「お疲れ様です・・・何かご機嫌ですけど何かあったんですか」
「んー?さっきね、これが届いたんだ」

ペラっとカカシが見せてきたのは、すごく見覚えのある紙にすごく見覚えのある文字で。

『寂しい』

その文字を見た瞬間、瞬間湯沸かし器のように顔から火が出そうなほど熱くなる。
どうやら昨日自分が送りだした鳥が引き返して先生のところに来たらしい。
私はその紙を取り返そうとするも、カカシは手を高く掲げてサクラが届かない位置に持っていく。
元からの身長差に加えて腕の長さから、とてもじゃないが取り返すことができない。

「ちょ、先生!もうそれ必要じゃないでしょ!返してください!」
「だーめ。これはもうオレのものだよ。返して欲しかったらこの言葉をその口で言ってごらん」
「もーー!!」

それから1時間、満面の笑みで揶揄うカカシによって遊ばれたのだった。


97/159ページ