short.2
「サクラ」
アカデミーを歩いていると後ろから呼び止められる。
振り向くと、そこには師であり現火影であるカカシ先生が手を上げながら近づいてくる。
「先生。こんなところでどうしたの?」
「ちょっとイルカ先生と話すことがあってね。そういうサクラは?」
「私はアカデミー生の健康診断。忍になるならこの年からちゃんと健康診断を受けることを身につけてもらわないとだし?」
「はは。耳が痛いな」
責めるように見ると、先生は情けなく頭を掻く。
私が綱手様に弟子入りしてから知ったことだが、先生は毎年きちんと健康診断に来たことがない。
痺れを切らした綱手様に言われて先生を探して受けさせるというのが毎年恒例となっていた。
それは火影になっても変わらなくて。
忙しいのは分かるけど里の長として見本になる行動をしてほしいものだ。
まぁ、前火影は堂々と賭け事をしていたけど。
「サクラは働き者だね。先生として誇らしいよ」
「何ですか、それ」
ニコニコ笑いながら先生は私の頭を撫でる。
昔から先生はよく私の頭を撫でてくる。
最初はせっかくセットした髪を乱されるのが嫌で振り払ってたけど、その手の大きさや温かさに、気づいたらその虜になっていた。
今も顔に出さないようにその手を満喫していると、ふとその手が止まる。
「・・・サクラ何歳になったんだっけ」
「へ?」
突拍子のない言葉に変な声が出てしまった。
「いや。なんか撫でる位置が上に来てるな〜って思って」
「なーに、先生。ボケてるの?18よ、18歳」
「じゅう、はち・・・」
何故か目を丸くしてこちらを見てくる先生に、本当に心配になる。
働きすぎ?シカマルに休ませるように言ったほうがいいんだろうか。
「そうか・・・もう、18か・・・」
先生は口に手を当てて私から距離を取ろうとしている。
「先生?」
距離を縮めると何故か合わない目。
「あー、ごめん。イルカ先生に伝え忘れたことがあったんだった。それじゃ」
「あっ」
先生はそれだけ言うと足早に去っていた。
引き止めようとした手は宙を掴み、降ろされた。
****
それから先生は変わった。
変わったというか、私に触らなくなった。
前まで話してたら必ず頭を撫でてくれてたのに、それがなくなった。
それが寂しくて。
なんでそう思うのか、分からなかった。
コン、コン
「はーい。どうぞー」
研究室で書類整理をしているとノックが聞こえてそちらを見ずに返事をする。
ガラッ、とドアが開き。
「よっ」
「カカシ先生。どうかしたんですか?」
現れたのは六火を背負うカカシ先生。
突然の来訪者に作業を止める。
「いやね。この間提出してもらった書類で気になることがあったから」
「それなら私が執務室に行ったのに」
「ずっと部屋に篭ってたら気が滅入るでしょー?抜け出す言い訳だよ」
「もう。シカマルに怒られるわよ?」
はは、と悪びれもなく笑う先生に呆れて笑う。
「そういえばこれ。立案したのサクラなんだろ?よく出来てる。これが通れば医療もだいぶ発展するよ」
「本当?良かった・・・綱手様にずっと相談していたから」
ここずっと頭を悩ませていた事案なだけに、褒められると嬉しくなる。
それがカカシ先生なら尚更。
「自分の生徒がこんなに立派になって先生は誇らしいよ」
先生は嬉しそうに手を私の頭に乗せようとするも、それは触れることもなく宙を彷徨う。
「あー・・・それで、ちょっとここの部分なんだけど・・・」
目を逸らしながらその手で書類を指差そうとするので、私は手を掴んで自分の頭に乗せる。
先生は目を丸くして驚く。
「頑張ったんだからちゃんと褒めてよ!」
頬を膨らませて先生を見ると、何故か口布を付けてても分かるほど先生の頬が赤くなっていく。
えっ、と驚いていると自分の顔が赤くなっていることに気づいたのか、先生は私の髪をグシャグシャに掻き回した。
「わっ!」
突然のことに目を瞑ると、頭を抑えられたまま「じゃあね」と先生は顔を見せないように部屋を出て行った。
「・・・・・・え?」
──なんかあの顔って・・・。
気づいたら先生の赤が私にも移っていた。
アカデミーを歩いていると後ろから呼び止められる。
振り向くと、そこには師であり現火影であるカカシ先生が手を上げながら近づいてくる。
「先生。こんなところでどうしたの?」
「ちょっとイルカ先生と話すことがあってね。そういうサクラは?」
「私はアカデミー生の健康診断。忍になるならこの年からちゃんと健康診断を受けることを身につけてもらわないとだし?」
「はは。耳が痛いな」
責めるように見ると、先生は情けなく頭を掻く。
私が綱手様に弟子入りしてから知ったことだが、先生は毎年きちんと健康診断に来たことがない。
痺れを切らした綱手様に言われて先生を探して受けさせるというのが毎年恒例となっていた。
それは火影になっても変わらなくて。
忙しいのは分かるけど里の長として見本になる行動をしてほしいものだ。
まぁ、前火影は堂々と賭け事をしていたけど。
「サクラは働き者だね。先生として誇らしいよ」
「何ですか、それ」
ニコニコ笑いながら先生は私の頭を撫でる。
昔から先生はよく私の頭を撫でてくる。
最初はせっかくセットした髪を乱されるのが嫌で振り払ってたけど、その手の大きさや温かさに、気づいたらその虜になっていた。
今も顔に出さないようにその手を満喫していると、ふとその手が止まる。
「・・・サクラ何歳になったんだっけ」
「へ?」
突拍子のない言葉に変な声が出てしまった。
「いや。なんか撫でる位置が上に来てるな〜って思って」
「なーに、先生。ボケてるの?18よ、18歳」
「じゅう、はち・・・」
何故か目を丸くしてこちらを見てくる先生に、本当に心配になる。
働きすぎ?シカマルに休ませるように言ったほうがいいんだろうか。
「そうか・・・もう、18か・・・」
先生は口に手を当てて私から距離を取ろうとしている。
「先生?」
距離を縮めると何故か合わない目。
「あー、ごめん。イルカ先生に伝え忘れたことがあったんだった。それじゃ」
「あっ」
先生はそれだけ言うと足早に去っていた。
引き止めようとした手は宙を掴み、降ろされた。
****
それから先生は変わった。
変わったというか、私に触らなくなった。
前まで話してたら必ず頭を撫でてくれてたのに、それがなくなった。
それが寂しくて。
なんでそう思うのか、分からなかった。
コン、コン
「はーい。どうぞー」
研究室で書類整理をしているとノックが聞こえてそちらを見ずに返事をする。
ガラッ、とドアが開き。
「よっ」
「カカシ先生。どうかしたんですか?」
現れたのは六火を背負うカカシ先生。
突然の来訪者に作業を止める。
「いやね。この間提出してもらった書類で気になることがあったから」
「それなら私が執務室に行ったのに」
「ずっと部屋に篭ってたら気が滅入るでしょー?抜け出す言い訳だよ」
「もう。シカマルに怒られるわよ?」
はは、と悪びれもなく笑う先生に呆れて笑う。
「そういえばこれ。立案したのサクラなんだろ?よく出来てる。これが通れば医療もだいぶ発展するよ」
「本当?良かった・・・綱手様にずっと相談していたから」
ここずっと頭を悩ませていた事案なだけに、褒められると嬉しくなる。
それがカカシ先生なら尚更。
「自分の生徒がこんなに立派になって先生は誇らしいよ」
先生は嬉しそうに手を私の頭に乗せようとするも、それは触れることもなく宙を彷徨う。
「あー・・・それで、ちょっとここの部分なんだけど・・・」
目を逸らしながらその手で書類を指差そうとするので、私は手を掴んで自分の頭に乗せる。
先生は目を丸くして驚く。
「頑張ったんだからちゃんと褒めてよ!」
頬を膨らませて先生を見ると、何故か口布を付けてても分かるほど先生の頬が赤くなっていく。
えっ、と驚いていると自分の顔が赤くなっていることに気づいたのか、先生は私の髪をグシャグシャに掻き回した。
「わっ!」
突然のことに目を瞑ると、頭を抑えられたまま「じゃあね」と先生は顔を見せないように部屋を出て行った。
「・・・・・・え?」
──なんかあの顔って・・・。
気づいたら先生の赤が私にも移っていた。
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