short.2
里の周辺で怪しい術を使う抜け忍がいると、遭遇した木ノ葉の忍から連絡があった。
討伐任務が発令され、上忍と中忍の小隊が向かうことになった。
中忍クラスでも太刀打ち出来ないのだから下忍の3人が勝てるはずもない。
ナルトは文句を言っていたがカカシ率いる第七班や他の下忍班はその忍が現れたという場所から離れた場所で任務を行っていた。
のだが。
4人がその敵に遭遇したのは想定外だった。
簡単な任務の帰り、女が4人の前に飛び出してきた。
慌てた様子で身なりもボロボロで、恐らく木ノ葉の忍から逃げてきたのだろう。
カカシはすぐさま手裏剣を敵に飛ばし戦闘を始める。
ナルト達3人も慌ててクナイを手に取り応戦する。
1対4。
数ではこちら側が有利だが戦闘能力は桁違い。
抜け忍は3人を軽くあしらいながらカカシの攻撃を避ける。
女ではあるがカカシと対等にやり合い、下手に手を出したらカカシの邪魔になってしまう。
ナルトのような瞬発力もなく、サスケのように戦闘能力も洞察力もない。
手裏剣を飛ばしながらサクラは敵の動きを見ていると、ふと視界の端に気になるものが目に入った。
ほんの数秒、敵から目を離したとき。
「サクラ!!」
カカシの叫ぶ声に慌てて目の前を見ると、すごい速さで紫の球が飛んできていた。
避けられない、目を瞑る瞬間、こちらに手を伸ばすカカシの顔が見えた。
気づいたらサクラは真っ白な世界にいた。
どこだろうと周りを見ていると、白い世界で頭から白いマントを被った人物が現れる。
(あなたの願いは何?)
(・・・願い?)
普通なら怪しい人物に警戒をするところをサクラは疑問に思わず聞き返す。
頭がボーとしてまともに考えられないからかもしれない。
(そう。一番叶えたい願い)
(それなら──)
サクラの答えに目の前の"オンナ"が微笑んだように見えた。
──面白い子ね。いいわ。叶えてあげる。でも叶える代わりこれを貰うわ。
「サクラ!」
「カカシ、先生・・・」
目を開けるとそこは白い天井で、目を覚ましたことに気づいたカカシがサクラの顔を覗き込んで安心した笑みを浮かべる。
「・・・くんは?」
「え?」
まだボーとしているサクラが小さく声を発して聞き返す。
そのタイミングでナルトとサスケがベッドに近寄る。
「サクラちゃん!」
「大丈夫かサクラ」
カカシと同じようにサクラを覗き込んでくる2人の顔を見て、虚だったサクラの瞳に光が灯り、
「・・・サスケくん!」
サクラはいきなり体を起こして近くに立つサスケの首に腕を回して抱きついた。
突然のことにサスケは目を見開いて固まり、カカシとナルトも同じように目を丸くしていた。
そんな3人には気付かずにサクラは「良かった」と目尻に涙を浮かべていた。
医師によると一時的な記憶障害らしく、それ以外は特に問題もないと言うことでサクラはすぐに退院して前と同じように任務や修行に励んでいた。
そう、前と同じように。
サクラはあれからサスケに付き纏うようになった。
カカシと恋人だったことも忘れて。
「サクラー」
「なに?」
「これからあんみつ食べに行かないか?」
「だめ!これからサスケくんとデートなの!」
デートと言ってもサクラがただサスケに付き纏うだけなのだが、サクラの中では一緒にいるだけでデートなのだ。
カカシをあしらって去ろうとするサクラの腕をカカシが強く掴むのでサクラは顔を顰める。
「痛!ちょっとせんせ・・・どうしたの、先生」
「え?」
「泣きそうな顔してる」
「・・・いや、なんでもないよ。ごめん」
カカシは眉を下げて謝り、手を離して去って行った。
サクラはその背中から目が離せなくて、見えなくなってもその場から動けなかった。
それからサクラは変な夢を見るようになった。
何故かカカシと手を繋いで、休みの日には部屋に遊びに行って、キスをして、そして──。
ガバッと飛び起きたサクラの心臓はバクバクと跳ねまくり、顔も真っ赤になっていた。
すごく生々しくて、夢なのに夢じゃないような・・・何か、大事なことを忘れてるような・・・
サクラは急に不安に感じて胸元を掴んだ。
それからサクラはサスケの側にいてもカカシを目で追うようになった。
先生としての優しい顔ではない、夢のような特別な人を見る目で見てほしいと思ってしまったから。
最近まで自分を見ていたサクラの目が別の男を見ていることに気づいたサスケは、任務終わりにサクラを呼び出して告白をした。
サクラは飛び跳ねそうになるほど嬉しくなったのに、どこか引っかかって返事ができないでいるとサスケは苦笑する。
「カカシが気になるんだろ。行ってこいよ」
動けないでいるサクラをサスケは肩を押して促し、その力を借りてサクラは全力で走った。
里の中を駆け回り、いつも使う第三演習場に行くと、カカシが丸太に寄りかかっていた。
「カカシ先生!!」
思ったより大きな声で呼ぶと、カカシは目を丸くしてこちらを見る。
「サクラ?どうした?」
肩で息をするサクラを心配するカカシがサクラの肩に触れる前に勢いよく顔を上げる。
「私、カカシ先生が好きよ!」
「・・・え?」
カカシの丸い目を最後にサクラの意識が途切れた。
気づくとサクラはまた白い世界にいて、目の前にはあの敵の姿があった。
(恋ってすごいわね。記憶を失っても好きな人を思い出せるんだから)
(・・・あなたのせいだったの)
(そう。私の術は願いを叶える代わりにあなたの大事な記憶を奪うこと。でも面白い結果になって楽しかったわ。それじゃあ私は行くわ)
(あ、待って!)
目を覚ますとそこはカカシの部屋で、横になるサクラを心配そうな顔で覗き込むカカシに微笑む。
「サクラ・・・?」
「カカシ先生・・・」
サクラは体を起こし、カカシの首に腕を回して薄い唇にキスをする。
「カカシ先生大好き。ずっと、死ぬまで私といて」
──カカシ先生と死ぬまでずっと側にいたい。
討伐任務が発令され、上忍と中忍の小隊が向かうことになった。
中忍クラスでも太刀打ち出来ないのだから下忍の3人が勝てるはずもない。
ナルトは文句を言っていたがカカシ率いる第七班や他の下忍班はその忍が現れたという場所から離れた場所で任務を行っていた。
のだが。
4人がその敵に遭遇したのは想定外だった。
簡単な任務の帰り、女が4人の前に飛び出してきた。
慌てた様子で身なりもボロボロで、恐らく木ノ葉の忍から逃げてきたのだろう。
カカシはすぐさま手裏剣を敵に飛ばし戦闘を始める。
ナルト達3人も慌ててクナイを手に取り応戦する。
1対4。
数ではこちら側が有利だが戦闘能力は桁違い。
抜け忍は3人を軽くあしらいながらカカシの攻撃を避ける。
女ではあるがカカシと対等にやり合い、下手に手を出したらカカシの邪魔になってしまう。
ナルトのような瞬発力もなく、サスケのように戦闘能力も洞察力もない。
手裏剣を飛ばしながらサクラは敵の動きを見ていると、ふと視界の端に気になるものが目に入った。
ほんの数秒、敵から目を離したとき。
「サクラ!!」
カカシの叫ぶ声に慌てて目の前を見ると、すごい速さで紫の球が飛んできていた。
避けられない、目を瞑る瞬間、こちらに手を伸ばすカカシの顔が見えた。
気づいたらサクラは真っ白な世界にいた。
どこだろうと周りを見ていると、白い世界で頭から白いマントを被った人物が現れる。
(あなたの願いは何?)
(・・・願い?)
普通なら怪しい人物に警戒をするところをサクラは疑問に思わず聞き返す。
頭がボーとしてまともに考えられないからかもしれない。
(そう。一番叶えたい願い)
(それなら──)
サクラの答えに目の前の"オンナ"が微笑んだように見えた。
──面白い子ね。いいわ。叶えてあげる。でも叶える代わりこれを貰うわ。
「サクラ!」
「カカシ、先生・・・」
目を開けるとそこは白い天井で、目を覚ましたことに気づいたカカシがサクラの顔を覗き込んで安心した笑みを浮かべる。
「・・・くんは?」
「え?」
まだボーとしているサクラが小さく声を発して聞き返す。
そのタイミングでナルトとサスケがベッドに近寄る。
「サクラちゃん!」
「大丈夫かサクラ」
カカシと同じようにサクラを覗き込んでくる2人の顔を見て、虚だったサクラの瞳に光が灯り、
「・・・サスケくん!」
サクラはいきなり体を起こして近くに立つサスケの首に腕を回して抱きついた。
突然のことにサスケは目を見開いて固まり、カカシとナルトも同じように目を丸くしていた。
そんな3人には気付かずにサクラは「良かった」と目尻に涙を浮かべていた。
医師によると一時的な記憶障害らしく、それ以外は特に問題もないと言うことでサクラはすぐに退院して前と同じように任務や修行に励んでいた。
そう、前と同じように。
サクラはあれからサスケに付き纏うようになった。
カカシと恋人だったことも忘れて。
「サクラー」
「なに?」
「これからあんみつ食べに行かないか?」
「だめ!これからサスケくんとデートなの!」
デートと言ってもサクラがただサスケに付き纏うだけなのだが、サクラの中では一緒にいるだけでデートなのだ。
カカシをあしらって去ろうとするサクラの腕をカカシが強く掴むのでサクラは顔を顰める。
「痛!ちょっとせんせ・・・どうしたの、先生」
「え?」
「泣きそうな顔してる」
「・・・いや、なんでもないよ。ごめん」
カカシは眉を下げて謝り、手を離して去って行った。
サクラはその背中から目が離せなくて、見えなくなってもその場から動けなかった。
それからサクラは変な夢を見るようになった。
何故かカカシと手を繋いで、休みの日には部屋に遊びに行って、キスをして、そして──。
ガバッと飛び起きたサクラの心臓はバクバクと跳ねまくり、顔も真っ赤になっていた。
すごく生々しくて、夢なのに夢じゃないような・・・何か、大事なことを忘れてるような・・・
サクラは急に不安に感じて胸元を掴んだ。
それからサクラはサスケの側にいてもカカシを目で追うようになった。
先生としての優しい顔ではない、夢のような特別な人を見る目で見てほしいと思ってしまったから。
最近まで自分を見ていたサクラの目が別の男を見ていることに気づいたサスケは、任務終わりにサクラを呼び出して告白をした。
サクラは飛び跳ねそうになるほど嬉しくなったのに、どこか引っかかって返事ができないでいるとサスケは苦笑する。
「カカシが気になるんだろ。行ってこいよ」
動けないでいるサクラをサスケは肩を押して促し、その力を借りてサクラは全力で走った。
里の中を駆け回り、いつも使う第三演習場に行くと、カカシが丸太に寄りかかっていた。
「カカシ先生!!」
思ったより大きな声で呼ぶと、カカシは目を丸くしてこちらを見る。
「サクラ?どうした?」
肩で息をするサクラを心配するカカシがサクラの肩に触れる前に勢いよく顔を上げる。
「私、カカシ先生が好きよ!」
「・・・え?」
カカシの丸い目を最後にサクラの意識が途切れた。
気づくとサクラはまた白い世界にいて、目の前にはあの敵の姿があった。
(恋ってすごいわね。記憶を失っても好きな人を思い出せるんだから)
(・・・あなたのせいだったの)
(そう。私の術は願いを叶える代わりにあなたの大事な記憶を奪うこと。でも面白い結果になって楽しかったわ。それじゃあ私は行くわ)
(あ、待って!)
目を覚ますとそこはカカシの部屋で、横になるサクラを心配そうな顔で覗き込むカカシに微笑む。
「サクラ・・・?」
「カカシ先生・・・」
サクラは体を起こし、カカシの首に腕を回して薄い唇にキスをする。
「カカシ先生大好き。ずっと、死ぬまで私といて」
──カカシ先生と死ぬまでずっと側にいたい。
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