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short.2

「カカシ先生が、風邪?」

朝、橋の上で3人で先生を待っていると、現れたのはイルカ先生だった。

「そうなんだよ。代わりの上忍の先生が捕まらなかったから、今日はお前らは休み。それじゃあオレは授業があるから!」

じゃ、とイルカ先生は矢継ぎ早に去っていった。
突然やることが無くなった私たちは顔を見合わせる。

「なぁなぁ、サクラちゃん!これからオレと・・・」
「ごめん、私帰るから!またねナルト、サスケくん!」

ナルトが頬を染めて誘ってきたけど、私はそれを遮って2人と別れて走った。
それは走っていった人を追いかけるため。


「イルカ先生!」



****



ピンポーン

「・・・出ない」

私はある部屋のインターホンを鳴らす。
急ぐイルカ先生を追いかけて、看病をするからカカシ先生の部屋の住所を教えてくれと聞いた。
優等生である私の邪な考えをイルカ先生は気づくはずもなく、逆に「カカシ先生は良い生徒を持ったなぁ」と涙ぐみだして心が痛んだ。
それから途中でお店で食べれそうなのを買って、教えてもらったアパートに着いた。
一呼吸ついて先生の家のインターホンを押すも、待っても応答がない。
どうしよう、と思いながらドアノブに手をかけて回すと、それは簡単に開いた。

「・・・不用心すぎるわ」

私はそろり、と部屋の中に入る。
中はカーテンが締め切られていて電気も付いていない為暗い。
ゆっくりと歩くと、ベッドで私に気づかずに寝ている先生。
暗くても辛そうなのが分かり、起こさないように前髪を掻き分けて額に手を当てる。
まだ熱は高く、机を見ると木ノ葉病院のマークが入った袋が置いてあった。
ちゃんと飲んだのかしら、とキッチンを見るも綺麗で、何かを食べた感じがしなかった。
私は先生の家には何もないだろうと見込んで、買ってきたレンジで作れるお粥のレトルトやスポーツドリンクをキッチンに置いて先生の元に戻る。

「先生。お粥買ってきたから食べてちゃんと薬飲んでね?」
「・・・・・・うん」

意識が曖昧なまま返事をする先生が可哀想と思うのと、可愛いという2つの気持ちの天秤が揺れ動く。
いつからだろう。だらしなくて、でも頼りがいのあるこの男のことを好きになったのは。
休みの日でも顔が見れたら心臓が跳ねて、今日みたいに会えない時はずっとこの人のことを考えてしまう。
私の小さな心臓が先生のことで一喜一憂していることをこの男は知らないだろう。

それにしても、口布付けたまま寝ているけど寝苦しくないのかしら。

・・・うん、これはしょうがないのよ。呼吸を確保するのは大事なことなんだから。

私は自分の中で言い訳をして、眠る先生の口布をそっと下げる。

「わ・・・」

現れた端正な顔立ちに思わず声が漏れた。
鼻が高く、薄い唇にその横にあるホクロ。
私は中身と外見共にこの人に惚れてしまった。
私は眠る先生に顔を近づけて、そっとキスをする。
軽く唇を合わせて顔を離しても先生は起きる気配はない。


私は先生に気づかれる前に家を後にした。



****



「ごほっ、げほっ」

次の日、私は熱が出て任務を休んだ。
夕方、任務を終えたナルトとサスケくん、いのとヒナタがお見舞いに来てくれた。
嬉しかったけど後ろめたいところもあって。
だって、確実に先生にキスをしたから風邪を貰ってるんだもの。
こんなことみんなには言えない。
みんなが帰った後、夕飯にお粥を食べて薬を飲んで、早く治るためにベッドで横になる。
薬のおかげでもう眠気が来てウトウトし始めながら、カカシ先生お見舞い来てくれなかったな、と少し寂しく感じながら夢の世界に入っていった。








おでこに何か冷たくて柔らかいものを感じる。
お母さんかな、と思いながら薄っすら目を開けると、暗闇の中に浮かぶシルエットに顔は見えなくても自然と声が出た。

「・・・カカシ、せんせ・・・」
「悪い、起こしたか?」

申し訳なさそうな声に首を振ろうとしたけど、動かすのも辛かった。
頭から何かが離れるのを感じて、あの冷たいのは先生の手だったのかと分かった。
もう少し触れていて欲しかったけど我儘は言えない。
ベッドが軋み、先生の声が近くなる。

「体調はどうだ?」
「うん・・・」

体が治そうとしているからまた寝てしまいそう。
せっかく先生が来てくれたのに・・・。

「・・・ぱり、ゆめじゃなか・・・のか」
「・・・え?」

先生が何か呟いたような気がした。
頑張って聞き返したけど返事はなくて、布の音がした。

「風邪、返してもらうよ」

耳のすぐ側で声がして、唇を何かで塞がれた。
それはあの日と同じ柔らかさで。

──あぁ、これはきっと夢だ。先生が恋しすぎて先生が会いに来てくれた夢を見たのね。

朦朧とする意識の中、その柔らかさに身を委ねた。


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