揺れる紫煙
カカシ先生が何か隠している。
付き合うことになってから暫くして気づいた。
そしてストレスが溜まると普段はあまり吸わないタバコを吸うことも知っている。
なのに先生は私に何も言ってくれない。
「どう思う、いの〜・・・」
「知らないわよ。私も店番で忙しいんだからさっさと帰りなさいよね」
「ひどいー!親友がこんなに悩んでるのにー」
いのは任務や仕事が休みの日はこうやって親の店のやまなか花店の手伝いをしている。
そして私は愚痴という営業妨害をしているのだ。
「あんなんでも上忍なんだから隠し事とかたくさんあるんじゃないの〜?」
「私も最初はそう思ったけど、どうも私に関するような気がするのよね・・・」
「その根拠は?」
「私が抱きついたらきごちなくなるし、少し距離取ろうとするし」
「・・・ふ〜ん?私分かっちゃったかも」
「え、なに?」
「ズバリ。カカシ先生は浮気してるわ」
「!!」
いのの言葉に目と口をこれでもかと開き、目と眉を釣り上げていのを睨む。
「そ、そんなわけないじゃない!」
「そう〜?あんた達付き合って半年経つけど、もちろんえっちしてるのよね?」
「・・・・・・してないけど」
「ほらー。あの先生が半年もセックス我慢するわけないし。他に女がいるんじゃないの?」
「・・・・・・・・・」
「ってちょっとサクラ!本気にならないでよ!」
だんだん視界がボヤけてくると目の前のいのが慌てて謝ってくる。
「いつもサクラにデレデレのカカシ先生が浮気なんてするわけないでしょ」といのが励ましてくれたけど私は弱々しく頷いて店を出た。
「はぁ・・・」
私は大きなため息を吐きながら1人トボトボ歩く。
いのにはそんなことないって言ったけど、前から時々思っていたことを言われて動揺してしまった。
だって昔から子供の前で18禁本を読んでいた人だもん。
性欲がないって言うほうがおかしい。
なのに先生はいつもキス止まり。
やっぱりこんな身体じゃえっちしたいって思わないんだろうか。
「でも、どうしようもないじゃない・・・」
「何が?」
独り言に質問がきて驚いて後ろを振り返るといつの間にかカカシ先生が立っていた。
「せ、先生、いつの間に・・・」
「だいぶ前から。全然気づかないんだもんなー。里の中だからって気を抜きすぎじゃないのか?」
「う・・・ごめんなさい・・・」
「ま、それは冗談として。何か悩み事か?ずっとため息吐いてたけど」
顔を覗いてくる先生。
あなたのことです、とは言えなくて私は愛想笑いする。
「・・・ううん、大丈夫。修行で疲れちゃったみたい」
私の嘘に何も思わなかったのか「そ?」と先生は顔を戻した。
「先生はもう帰り?」
「あぁ」
「じゃあ一緒に帰ってもいい?」
「もちろん」
にこ、と微笑む先生にいつもは安心するのに、今の私の頭の中でいのの言葉が何回も繰り返して落ち着かなかった。
──大丈夫、大丈夫・・・
私はその言葉を繰り返しながら、ポケットに手を入れている腕に触れる。
すると明らかに先生の腕が跳ねて少し距離を取った。
「・・・今日はどっか外で食べていこうか。何か食べたいものあるか?」
「・・・うん」
先生は私の手について何も言わずに関係ないことを喋り出す。
大丈夫だって思い込ませてもやっぱり無理みたい。
項垂れて曖昧に返事をすると先生が顔を覗いてくる。
「・・・サクラ?どうした?」
心配そうに見てくる先生の顔が見れなくて顔を背けて手で目尻を拭う。
「な、なんでもな・・・わっ!」
無理に笑おうとすると、いきなり掬い上げられるように抱き抱えられた。
そうするといつもは見上げる先生の顔が見下ろす位置にあって、いつもと違うというだけで胸が高鳴る。
「お、重いから!」
「重くないよ。それで?泣いてる理由はオレには言えないこと?」
抱き上げられて騒ぐ私を通りかかる人々が見てくる。
恥ずかしくて周りを見ているとよそ見は許さないというように顎に手をかけて至近距離に先生の顔がくる。
灰青の瞳にジッと見つめられるとどうしてか隠しごとが出来ない。
たぶん下忍時代からの名残だろう。
私は覚悟を決めて口を開く。
「・・・先生は」
「うん」
「私のこと、どう思ってる・・・?」
「は?」
目を見開いて見上げてくる先生に耳が赤くなる。
「・・・好きに決まってるでしょ」
真っ直ぐ見つめて言ってくれて、嬉しくなるもすぐに落ち込んでしまう。
「なら・・・なんでえっち、してくれないの・・・?」
「・・・え?」
周りの目が気になってある単語の部分だけちいさくなってしまって聞こえたか不安になったけど、先生の目がこれでもかというぐらい見開かれて固まっているから多分聞こえてる。
何も言ってくれないこの時間が怖くて「やっぱり何でもない」と先生の胸を押して腕が緩んだ隙に後ろに宙返りしてこの場から逃げ出そうとしたけど、さすがは上忍。
一瞬で先生に捕まって脇に抱えられた状態で先生は屋根に飛んだ。
そしてすぐに先生のアパートの部屋の前に付いて、先生は私を抱えたまま鍵を開けて中に入ってようやく降ろされた。
「・・・あんなこと言うなんて、急にどうしたんだ?」
「・・・急じゃないもの」
ぎゅっ、スカートを握りしめる。
「ずっと思ってた。なんでいつもキスしかしてくれないのかって。それに半年も付き合ってるのにえっち、してないのはおかしいって、いのが・・・」
「・・・・・・・・・」
俯いていると先生が大きくため息を吐くのが聞こえて肩が跳ねる。
怖くて1歩下がろうとしたら腕を強く掴まれて無理やり上を向かされる。
私を見下ろす先生の瞳は今まで見たことのない色を浮かべていた。
「──オレが、どれだけ我慢してるか分かるか?」
「せん、せ・・・」
「16のお前に無理させないように抱きたい気持ちをずっと抑えてきたんだよ。なのにお前は無邪気に抱きついてきてさぁ」
「え、と、その・・・ごめ」
「でも」
とりあえず謝ろうとするもそれを遮られ、先生は満面の笑みで笑っていた。
なぜだかその笑顔が怖いと思ってしまった。
「サクラが良いならもう我慢しなくても良いってことだよねー。いやー、良かった良かった」
「あの、ちょっと待っ」
「んー?オレはもうじゅーーぶん待ったけど?」
「あの、あの・・・」
目が泳いでいるとぐいっ、と掴まれている腕を引き寄せられ、腰にその腕が回り体がピッタリくっ付く。
「明日いのちゃんに会ったら言っといてよ」
「な、何を・・・」
「解決しましたってね」
最後に見たのは今まで見たことのないほどの嬉しそうな顔だった。
付き合うことになってから暫くして気づいた。
そしてストレスが溜まると普段はあまり吸わないタバコを吸うことも知っている。
なのに先生は私に何も言ってくれない。
「どう思う、いの〜・・・」
「知らないわよ。私も店番で忙しいんだからさっさと帰りなさいよね」
「ひどいー!親友がこんなに悩んでるのにー」
いのは任務や仕事が休みの日はこうやって親の店のやまなか花店の手伝いをしている。
そして私は愚痴という営業妨害をしているのだ。
「あんなんでも上忍なんだから隠し事とかたくさんあるんじゃないの〜?」
「私も最初はそう思ったけど、どうも私に関するような気がするのよね・・・」
「その根拠は?」
「私が抱きついたらきごちなくなるし、少し距離取ろうとするし」
「・・・ふ〜ん?私分かっちゃったかも」
「え、なに?」
「ズバリ。カカシ先生は浮気してるわ」
「!!」
いのの言葉に目と口をこれでもかと開き、目と眉を釣り上げていのを睨む。
「そ、そんなわけないじゃない!」
「そう〜?あんた達付き合って半年経つけど、もちろんえっちしてるのよね?」
「・・・・・・してないけど」
「ほらー。あの先生が半年もセックス我慢するわけないし。他に女がいるんじゃないの?」
「・・・・・・・・・」
「ってちょっとサクラ!本気にならないでよ!」
だんだん視界がボヤけてくると目の前のいのが慌てて謝ってくる。
「いつもサクラにデレデレのカカシ先生が浮気なんてするわけないでしょ」といのが励ましてくれたけど私は弱々しく頷いて店を出た。
「はぁ・・・」
私は大きなため息を吐きながら1人トボトボ歩く。
いのにはそんなことないって言ったけど、前から時々思っていたことを言われて動揺してしまった。
だって昔から子供の前で18禁本を読んでいた人だもん。
性欲がないって言うほうがおかしい。
なのに先生はいつもキス止まり。
やっぱりこんな身体じゃえっちしたいって思わないんだろうか。
「でも、どうしようもないじゃない・・・」
「何が?」
独り言に質問がきて驚いて後ろを振り返るといつの間にかカカシ先生が立っていた。
「せ、先生、いつの間に・・・」
「だいぶ前から。全然気づかないんだもんなー。里の中だからって気を抜きすぎじゃないのか?」
「う・・・ごめんなさい・・・」
「ま、それは冗談として。何か悩み事か?ずっとため息吐いてたけど」
顔を覗いてくる先生。
あなたのことです、とは言えなくて私は愛想笑いする。
「・・・ううん、大丈夫。修行で疲れちゃったみたい」
私の嘘に何も思わなかったのか「そ?」と先生は顔を戻した。
「先生はもう帰り?」
「あぁ」
「じゃあ一緒に帰ってもいい?」
「もちろん」
にこ、と微笑む先生にいつもは安心するのに、今の私の頭の中でいのの言葉が何回も繰り返して落ち着かなかった。
──大丈夫、大丈夫・・・
私はその言葉を繰り返しながら、ポケットに手を入れている腕に触れる。
すると明らかに先生の腕が跳ねて少し距離を取った。
「・・・今日はどっか外で食べていこうか。何か食べたいものあるか?」
「・・・うん」
先生は私の手について何も言わずに関係ないことを喋り出す。
大丈夫だって思い込ませてもやっぱり無理みたい。
項垂れて曖昧に返事をすると先生が顔を覗いてくる。
「・・・サクラ?どうした?」
心配そうに見てくる先生の顔が見れなくて顔を背けて手で目尻を拭う。
「な、なんでもな・・・わっ!」
無理に笑おうとすると、いきなり掬い上げられるように抱き抱えられた。
そうするといつもは見上げる先生の顔が見下ろす位置にあって、いつもと違うというだけで胸が高鳴る。
「お、重いから!」
「重くないよ。それで?泣いてる理由はオレには言えないこと?」
抱き上げられて騒ぐ私を通りかかる人々が見てくる。
恥ずかしくて周りを見ているとよそ見は許さないというように顎に手をかけて至近距離に先生の顔がくる。
灰青の瞳にジッと見つめられるとどうしてか隠しごとが出来ない。
たぶん下忍時代からの名残だろう。
私は覚悟を決めて口を開く。
「・・・先生は」
「うん」
「私のこと、どう思ってる・・・?」
「は?」
目を見開いて見上げてくる先生に耳が赤くなる。
「・・・好きに決まってるでしょ」
真っ直ぐ見つめて言ってくれて、嬉しくなるもすぐに落ち込んでしまう。
「なら・・・なんでえっち、してくれないの・・・?」
「・・・え?」
周りの目が気になってある単語の部分だけちいさくなってしまって聞こえたか不安になったけど、先生の目がこれでもかというぐらい見開かれて固まっているから多分聞こえてる。
何も言ってくれないこの時間が怖くて「やっぱり何でもない」と先生の胸を押して腕が緩んだ隙に後ろに宙返りしてこの場から逃げ出そうとしたけど、さすがは上忍。
一瞬で先生に捕まって脇に抱えられた状態で先生は屋根に飛んだ。
そしてすぐに先生のアパートの部屋の前に付いて、先生は私を抱えたまま鍵を開けて中に入ってようやく降ろされた。
「・・・あんなこと言うなんて、急にどうしたんだ?」
「・・・急じゃないもの」
ぎゅっ、スカートを握りしめる。
「ずっと思ってた。なんでいつもキスしかしてくれないのかって。それに半年も付き合ってるのにえっち、してないのはおかしいって、いのが・・・」
「・・・・・・・・・」
俯いていると先生が大きくため息を吐くのが聞こえて肩が跳ねる。
怖くて1歩下がろうとしたら腕を強く掴まれて無理やり上を向かされる。
私を見下ろす先生の瞳は今まで見たことのない色を浮かべていた。
「──オレが、どれだけ我慢してるか分かるか?」
「せん、せ・・・」
「16のお前に無理させないように抱きたい気持ちをずっと抑えてきたんだよ。なのにお前は無邪気に抱きついてきてさぁ」
「え、と、その・・・ごめ」
「でも」
とりあえず謝ろうとするもそれを遮られ、先生は満面の笑みで笑っていた。
なぜだかその笑顔が怖いと思ってしまった。
「サクラが良いならもう我慢しなくても良いってことだよねー。いやー、良かった良かった」
「あの、ちょっと待っ」
「んー?オレはもうじゅーーぶん待ったけど?」
「あの、あの・・・」
目が泳いでいるとぐいっ、と掴まれている腕を引き寄せられ、腰にその腕が回り体がピッタリくっ付く。
「明日いのちゃんに会ったら言っといてよ」
「な、何を・・・」
「解決しましたってね」
最後に見たのは今まで見たことのないほどの嬉しそうな顔だった。
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