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揺れる紫煙

「よぉ」
「・・・よぉ」

アスマが喫煙所に行くとそこには珍しい先客がいた。
カカシは備え付けられているスタンドテーブルにもたれかかり紫煙を吐き出す。
その顔は顰めっ面でとても好んでタバコを吸っているようには見えなかった。

「珍しいな、お前がここにいるなんで。タバコ辞めたんじゃなかったか?」
「まぁ、ね・・・ちょっと吸いたくなったんだよ」
「・・・ほー」

どこかイライラしているカカシにアスマはほくそ笑みながら紫煙を燻らせる。
カカシがこんな顔の時の原因は必ずあの少女だということを知っているからだ。
アスマの顔にカカシは更に機嫌が悪くなってタバコを灰皿に押し付けてドアへと向かうのをアスマは呼び止める。

「カカシ」
「・・・なんだよ」

カカシが嫌々振り返ると、アスマはどこに隠し持ってたのか芳香剤を吹きかけてきた。

「ぶっ!何すんだ」
「煙の匂いを身体中に付けてたらバレるぞ」
「・・・さんきゅ」

カカシは礼だけ言って部屋を出て行った。


喫煙所を出てからカカシは行く当てもなくとぼとぼ歩く。
サクラと付き合うようになってからカカシは時々吸っていたタバコを辞めた。
それはサクラに健康に悪い、そして臭いと言われたから。
嫌そうな顔で後退りしながら臭いと言われた時はショックで暫く落ち込んだものだ。
そんなことがあったにも関わらずカカシがタバコを吸っているのには訳がある。
それは・・・。

「カカシ先生!」
「──サクラ」

後ろから声をかけられて振り返ると、満面の笑みで駆け寄ってくる元教え子で部下であり、恋人であるサクラ。
サクラはポケットに手を突っ込んでいる腕に飛びついてくる。
可愛らしく見上げてくるサクラの唇が目に入り息を飲んで目を逸らす。

「先生も帰り?」
「うん」
「じゃあスーパー寄って帰りましょ。今日は何食べたい?」
「そうだねー・・・」

カカシは考えるふりをしながら空を見上る。
そうしてないと腕に当たる柔らかいものに意識が行ってしまうから。
カカシとサクラは付き合って半年経つが未だキス止まり。
まだ幼いサクラに負担をかけない為にもう少し成長するまでえっちはしないと決めている。
そんなカカシの決意を知らないサクラは外でも家でも甘えてくっ付いてくるのだ。
下忍時代と違って至るところが成長しているのに昔と同じようにくっ付いてくるので、カカシはいつも頭の中で念仏を唱えて余計なものを追い出すようになった。

今も空を見ながら念仏を唱えていると、何を思ったのかサクラはいきなりカカシの胸ぐらを引き寄せて鼻を埋めた。

「さ、サクラ?」

戸惑うカカシの声を無視してサクラはしきりに鼻を鳴らし、暫くして顔を離したのだがその顔は顰み、鼻をつまみながら距離を取った。

「・・・タバコ、また吸ったでしょ」
「・・・バレた?」

はは、と愛想笑いをして誤魔化すもサクラの機嫌は良くなることはない。

「職業柄匂いには敏感なのよ。タバコ、辞めたんじゃなかったの」
「んー・・・ちょっと吸いたくなってね。でも2本ぐらいしか吸ってないし」
「・・・先生って昔からストレス溜まるとタバコ吸うわよね。私に話せないこと?」
「あー、えーと・・・」

お前のことだ、とは言えず口篭っているとサクラは不満そうに口を尖らせている。
どうしたものか、と思いながらその赤い唇に目が奪われる。
もう我慢せずに襲ってしまえばサクラの心配ごとも解消されるんだけどな、とそんなことに頭が支配されかけているとサクラが顔を上げるのでドキッとした。

「私は先生の恋人なんだから、私に出来ることはちゃんと言ってよ」
「・・・うん。ありがとね、サクラ」

優しい恋人に微笑みながら頭を撫でると、サクラはその手を掴んで自分の頬に擦り寄せた。
愛おしそうにする表情が16歳とは思えない色気があり、思わず喉を鳴らす。
カカシが自分の欲と葛藤しているとサクラは満足そうに手を離して指を絡ませて繋ぎ直す。

「さ、早くスーパー行きましょう。今日は暑いから冷奴とかどう?」
「・・・いいね」

カカシが頷くのを見てサクラは手を引きながら歩みを進めた。
カカシは半歩遅れて連れられように歩きながら、サクラに気づかれないように小さくため息を吐いた。


──あと数年の辛抱だ。
せめて18になる、2年後までの。


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