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short.2

カカシ先生がいつものようにチャクラ切れで入院したと綱手様から聞いて。
里にいる唯一の教え子としてお見舞いに行ってやろうといののところでお花を買い、どうせ暇してるだろうから私がお気に入りの本も持って行った。
病院に着いて受付で部屋を聞いて廊下を歩いていると、先生の部屋の前で看護師が何やら楽しそうにたむろしていた。

「こんにちは」
「あら春野さん。はたけさんのお見舞い?」
「はい」
「そ、そう。邪魔しちゃ悪いから私たちは仕事に戻るわね」

看護師たちは愛想笑いをしながら去っていく。
何だ?、と首を傾げて病室の中を見て目を丸くする。
そこにはベッドの上で眠っているカカシ先生。
何もおかしいことはない、そう、顔以外は。
いつも外そうとしない口布を外して寝こけているのだ。
昔、ナルトとサスケくんで何度も見ようとして見ることが出来なかった素顔を惜しげもなく晒して。
そしてそれを他の人たちが見ていたのに気づいていない先生に。
私の機嫌はすぐに悪くなった。
すぐそばに立っても起きない先生の顔に持ってきた本を高い位置から落とす。
気持ちよく寝ていた先生は変な声を出して、顔から本を退けて寝起きの目で睨んでくる。

「なにすんの」
「何でもない!」

私は鼻を鳴らして踵を返して病室を出た。
せっかく持ってきたお花を渡しそびれたまま。


それから先生のお見舞いに行きづらくなり、代わりに図書館に行くようになった。
図書館の窓から先生の病室が見えるから。
本を見ては窓を見てため息を吐く。
ちゃんと大人しくしているか、好き嫌いせずにご飯食べているか。
勝手に怒ってしまったから呆れてるだろうか。
会いたいけど会いずらい。
またため息を吐いていると机を挟んだ前の席に人が座った。

「その本好きなの?」
「え?」

いきなり話しかけられて顔を見ると、歳の変わらない笑顔が爽やかな青年だった。

「僕も好きなんだ、その本。マイナーだから読んでる人に会ったことなくて、君がそれ読んでて思わず声かけちゃった」

ごめんね、と眉を下げて笑う顔がどこか先生に似ていて、私たちは一気に打ち解けた。


それから先生のお見舞いは行かなくなり、毎日図書館で青年とお喋りをする日々を送る。
先生と違って色んな本を読んでいてしかも趣味も似ているから話が絶えなかった。

そんなある日、図書館で青年を待っている間に修行の疲れから眠気が襲ってきていつの間にか机の上で寝てしまった。
どのくらい眠ったのか、すぐ側で話し声がする。

「──してんの」

意識が浮上する中聞こえた静かに怒る声。
目を開けなくても誰か分かるほど聞き慣れた声。
ゆっくり目を開けて顔を上げると、目の前でカカシ先生と青年が対峙するように立っていた。
目を擦りながら起きた私に青年は気まずそうな顔をして去っていった。

「な、なに?どうしたの?」
「サクラはもう少し周りに気をつけなさい。キスされそうだったよ」
「え、うそ・・・」
「ほんと」

時折好意的な視線を向けられることには気づいていたが、まさかキスをされそうになるとは。
横目で先生を見ると、久しぶりの顔は不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。

「何怒ってるんですか」
「別に」

目を合わせず図書館を出て行こうとする先生に慌てる。

「先生嫉妬してるの?」

私の言葉に先生は足を止める。
思わず口を滑らせてしまい、この場の空気をどうにかしようとから笑いする。

「そ、そんなわけないですよね。まさか先生が・・・」
「そうだったら」
「・・・え?」
「そうだったら、どうする」

振り向いてこちらを真っ直ぐ見てくる先生。
瞳に篭る初めて見る熱に目が逸らせなかった。


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