short.2
「カカシ先生が好き」
この日、ずっと秘めていた想いをカカシ先生に告げた。
先生は最初は驚いたように目を丸くしていたけど、眉間に皺を寄せて首を横に振った。
受け入れられるとは思ってはいなかったけど。
やはり辛いものは辛い。
「・・・理由を聞いてもいいですか」
「オレは人を殺しすぎた。誰かと幸せになる気はないよ」
「それは任務だからでしょ?仕方ないじゃないですか」
先生はまた首を横に振る。
「オレは友をこの手で殺した。お前と同じようにオレを好きだと言った奴を。オレは地獄に落ちる」
苦しげに笑う先生に胸が締め付けられる。
だって、そんなの──
「その人が可哀想」
「え?」
「そうしなきゃいけなかった事情があったんでしょ?その人、きっと先生に殺されて良かったって思ってる。なのに先生がその人を侮辱してる」
だんだんぼやけてくる視界の中、先生を真っ直ぐ見つめる。
「その人は先生にずっと苦しんで欲しいって願う人なの?」
「・・・いや」
「でしょ。私と同じで先生のことが好きな人なら、好きな人には幸せでいてほしいもの。自分のせいで苦しんでいる姿なんて見たくないもの」
私は先生の手を取り、両手で包み込むように握る。
「先生はその人の分まで幸せになろうって思わないの?ずっと自分を戒めなきゃいけないの?私はずっと先生が苦しんでるのを見てきた。だから、私はその人の分まで先生まで幸せにしてあげたいの」
私の中にある気持ちを先生にぶつけて顔を上げると、先生は静かに一筋の涙を流していた。
初めて見た、先生の泣くところ。
いつも本心を隠して他人を遠ざけて笑顔の仮面を貼り付けている先生の本当の涙。
すごく綺麗だと思った。
強いのに本当は弱い先生のことを守ってあげたいと思ったんだ。
「私、地獄だって先生についていく。先生と一緒にいたいの。カカシ先生が好きなの」
もう一度自分の気持ちを伝えて震える手を隠すように先生に抱きつく。
もしこれで拒否られたら潔く諦める。
ぎゅっと目を瞑っていると、先生は躊躇いながら、それでも強く抱きしめてくれた。
頭の上で鼻を啜る音と「ありがとう」の声が落ちてきて。
私たちは涙が止まるまでずっと抱きしめあった。
次の日、カカシ先生はその人のお墓に連れて行ってくれた。
名前は野原リンさん。
リンさんが生前好きだったというリンドウを供えて手を合わせる。
私の知らない先生のことを知っていて、ずっと先生の心の中いる人。
一生勝てない人。
これからはリンさんの分もカカシ先生のこと幸せにするので見守っていてください。
目を開けるとリンドウが優しく揺れたような気がした。
立ち上がって横を見ると先生は目を伏せてお墓を見ていて、暫くしてゆっくり目を閉じ、そして私を見て微笑む。
「帰るか」
「・・・うん」
私たちは手を繋いでお墓を後にする。
歩きながら後ろを見ると、リンドウが手を振っているように揺れているみたいだった。
この日、ずっと秘めていた想いをカカシ先生に告げた。
先生は最初は驚いたように目を丸くしていたけど、眉間に皺を寄せて首を横に振った。
受け入れられるとは思ってはいなかったけど。
やはり辛いものは辛い。
「・・・理由を聞いてもいいですか」
「オレは人を殺しすぎた。誰かと幸せになる気はないよ」
「それは任務だからでしょ?仕方ないじゃないですか」
先生はまた首を横に振る。
「オレは友をこの手で殺した。お前と同じようにオレを好きだと言った奴を。オレは地獄に落ちる」
苦しげに笑う先生に胸が締め付けられる。
だって、そんなの──
「その人が可哀想」
「え?」
「そうしなきゃいけなかった事情があったんでしょ?その人、きっと先生に殺されて良かったって思ってる。なのに先生がその人を侮辱してる」
だんだんぼやけてくる視界の中、先生を真っ直ぐ見つめる。
「その人は先生にずっと苦しんで欲しいって願う人なの?」
「・・・いや」
「でしょ。私と同じで先生のことが好きな人なら、好きな人には幸せでいてほしいもの。自分のせいで苦しんでいる姿なんて見たくないもの」
私は先生の手を取り、両手で包み込むように握る。
「先生はその人の分まで幸せになろうって思わないの?ずっと自分を戒めなきゃいけないの?私はずっと先生が苦しんでるのを見てきた。だから、私はその人の分まで先生まで幸せにしてあげたいの」
私の中にある気持ちを先生にぶつけて顔を上げると、先生は静かに一筋の涙を流していた。
初めて見た、先生の泣くところ。
いつも本心を隠して他人を遠ざけて笑顔の仮面を貼り付けている先生の本当の涙。
すごく綺麗だと思った。
強いのに本当は弱い先生のことを守ってあげたいと思ったんだ。
「私、地獄だって先生についていく。先生と一緒にいたいの。カカシ先生が好きなの」
もう一度自分の気持ちを伝えて震える手を隠すように先生に抱きつく。
もしこれで拒否られたら潔く諦める。
ぎゅっと目を瞑っていると、先生は躊躇いながら、それでも強く抱きしめてくれた。
頭の上で鼻を啜る音と「ありがとう」の声が落ちてきて。
私たちは涙が止まるまでずっと抱きしめあった。
次の日、カカシ先生はその人のお墓に連れて行ってくれた。
名前は野原リンさん。
リンさんが生前好きだったというリンドウを供えて手を合わせる。
私の知らない先生のことを知っていて、ずっと先生の心の中いる人。
一生勝てない人。
これからはリンさんの分もカカシ先生のこと幸せにするので見守っていてください。
目を開けるとリンドウが優しく揺れたような気がした。
立ち上がって横を見ると先生は目を伏せてお墓を見ていて、暫くしてゆっくり目を閉じ、そして私を見て微笑む。
「帰るか」
「・・・うん」
私たちは手を繋いでお墓を後にする。
歩きながら後ろを見ると、リンドウが手を振っているように揺れているみたいだった。
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