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◯愛のおしおき

カカシには悩みがあった。
恋人のサクラはとても可愛く優しい。
その優しさに男達が惚れてサクラとお近づきになろうとするのだ。
サクラには散々男には気をつけろと言うのに自分の魅力を分かっていないサクラは「大丈夫よ」しか言わない。
だからその甘さが今回のカカシの苛立ちの原因、男に告白をされて手を握られるというシーンを引き起こしたのだ。
それをバッチリ目撃したカカシによってサクラは部屋に連れ込まれる。

「気をつけろって言ったでしょ」
「でも、手しか触られてないし・・・断ったじゃない」
「甘すぎなんだよサクラは」

表情は崩さないが気配から相当怒ってるのが伝わったのかサクラは居心地が悪そうに目が泳ぐ。
カカシは無理やり顔を掴んで目を合わせ、にこりと微笑む。
笑ってるのに目は笑ってなくてサクラの背中がゾクリとした。

「おしおき、しようか?」






◯パジャマと本体

カカシ先生が任務に出て1週間。
夜は先生の部屋に来ていつも一緒に眠るベッドで先生の匂いが残ったパジャマを抱きしめて眠る。
そうしてると寂しさが安らぐから。
今日もパジャマに顔を埋めて残り香を堪能していたその時。

ガチャ

玄関の扉が開く音とよく知ってる気配に、慌ててベッドから降りて走る。
玄関にはこの部屋の持ち主で上司で私の恋人のカカシ先生が私を見てにこりと微笑む。

「サークラ。ただーいま」
「せ、先生、まだあと数日は帰ってこないはずじゃ」
「いやね、思ったより早く終わったからサクラ驚かせようと思って。驚いた?」
「驚いたわよ・・・おかえりなさい、カカシ先生」
「うん。ただいま。ところでさ、サクラ」
「なに?」
「何でオレのパジャマ持ってんの?」
「・・・え」

先生の言葉に自分の手を見ると、先ほど匂いを嗅いでいたパジャマをしっかり持ってお出迎えしていた。
バッチリ見られてるのに条件反射で背中に隠して先生から目を逸らす。
顔を見なくても分かる。
絶対ニヤニヤ笑ってるに決まってるんだから。

「そんなに寂しかったのかー。可愛いなぁサクラちゃんは」
「うるさい!」

私は真っ赤な顔を見られたくなくて背中を向ける。
後ろから「サクラ」とずっと聞きたかった声で呼ばれ、嫌なフリをしながら肩越しに見ると先生は微笑んで両腕を広げていた。

「パジャマじゃなくて、本体抱きしめたら?」

私は思い切り胸に飛び込んでいた。






◯構ってほしい

七班が復活してヤマト隊長がカカシ先生の代わりに入るようになってから先生は上忍として任務に入ることが多くなって一緒にいる時間が少なくなった。
せっかくの休みの日に遊びにきても先生は次の任務の資料とずっと睨めっこしていて構ってもらえなくて・・・。
くっつくことも、キスもしてくれないし。

──つまらない。

「サクラ明日任務でしょ。オレまだ時間かかるから先に寝てなさい」
「・・・うん」

机に座る先生はこちらを見ずに「おやすみ」と挨拶をする。
その背中にムッとして、私は後ろから先生の肩に手を置く。
そして振り向いた先生の薄い唇を塞ぐ。

「──っん」

驚いた先生のこもった声に心の中でほくそ笑みながら、いつもされるように舌を絡ませる。
肩に手が置かれて離されそうになるも負けるかと私も強く唇を押し付ける。

「・・・はっ。サクラ、明日も早いでしょ」
「もうちょっとだけ・・・」
「もう、止まれないから覚悟しなさいよ」

火の灯った瞳に見つめられ、私は頬を緩ませた。






◯ダイキライ

「カカシ先生なんて大っ嫌い!!」

好意を向けてくる顔見知り程度のくノ一に話しかけられて、面倒だったが世間話に付き合うことにした。
何故ならもうすぐ彼女がここに現れるから。
暫くしてよく知ってる気配が近づいてきて、口布の付けていることを良いことにほくそ笑む。
そして角から現れた彼女はオレを見て満面の笑みになり、その隣にいたくノ一を見て一瞬でオレを睨んできた。
あぁ、本当よくコロコロ表情が変わるな。
それからサクラが背を向けて去っていくので名残惜しそうにするくノ一に断ってサクラの後を付いていく。
そしてずっとオレへの罵詈雑言を吐きまくっている。
変態、腐れ上忍、ロリコン、大嫌い。
可愛い声でそんなことを言われてもオレからしたら『愛してる、好き』としか聞こえない。
それにどれだけオレの悪口を言っても『別れる』とは言わないのだ。

──あぁ、何で彼女はこんなにも可愛くて愛おしいんだろう。

オレの怒りを地面にぶつけ、そしてちゃんとオレが付いてきているかと確認している嫉妬深い幼い恋人。
そんな君にこれからたっぷりと愛を語ろうじゃないか。






◯縛る呪い

『死なないで』

それは残されたサクラとの約束の言葉。

『絶対死なないよ』

忍に絶対などないのに。
オレの嘘にサクラは安心したように笑い。
あの日に置いていかれたオレたちの歪んだ関係の始まりだった。


それから数年後。
暁が木ノ葉を襲撃し、オレはそこで命の灯火が消えた。
暗闇を進んでいると焚き火を見つけ、オレを待つ父と再会した。
話を終えた時、オレの体は緑の光に包まれ──

オレは命を吹き返していた。
詳しい話は分からなかったが、ナルトのおかげでこの戦いで死んだ人間が全員息を吹き返したのだ。
それから崩壊した木ノ葉に仮設テントを立て、一度死んだ人間が入れ込まれた。
死んだ人間が蘇るなど今までにない。
体に異変が起きてないか調べることになった。
綱手様は意識不明、シズネもこちら側なので今はサクラが指揮を取っていた。
その姿は今まで見たことないほど凛々しく、一人前の忍になっていて先生として誇らしく思っていた。

皆が寝静まった深夜。
啜り泣く音だけが響いていた。
ベッドに腰掛けるオレの腰に縋り付く少女。
暗闇の中でも映える薄紅の髪の少女は昼間の勇ましさはどこへやら。
今いるのは数年前のサクラだった。
非力な自分に憤り、泣くことしか出来なかった小さなサクラ。
忍になるなら強くあれと、先生ならこの子のために突き放さないといけないのに。
この子を見ていると昔の自分を思い出して出来ない。

あの日の約束は呪いのようにオレたちを縛り付けていた。


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