short.2
休みの日にカカシ先生と偶然会って、それから甘味処であんみつを奢ってもらって。
何も変哲もなかったと思ったんだけど。
「サクラの彼氏になるよ」
「・・・は?」
別れ際に先生は頭がおかしいことを言い出した。
その提案は断ったにも関わらず、先生は暇さえあれば側にいるようになった。
側から見たら恋人のように、隣を歩く。
いのに「カカシ先生と付き合ってんの?」と茶化されたり、先生に恋慕を抱く女たちから睨まれたり嫌がらせをされたり。
鬱陶しくて何度振り払ってもいつも側から離れなくて。
毎日朝に私の家に迎えに来て、毎日任務や修行が終われば私の家まで送る。
全然自由の時間がなくてだんだん虫の居所も悪くなるってもんよ。
「今日は送ってやれないから真っ直ぐ帰りなさい」
目の前に現れたと思ったらそれだけ言ってすぐに消えた。
「・・・・・・」
あれだけうざかったのに、居てくれないと思ったら急に寂しくなってくるのは何なんだろう。
先生には真っ直ぐ帰れって言われたけど、ここ最近自由な時間がなかったらウロチョロしたくなってしまって・・・
私はお気に入りのお店や商店街にある本屋を覗く。
それから時間を忘れて満喫していると、外はすっかり暗くなっていた。
「やば・・・早く帰らないと」
こういう時お母さん煩いからな、と私は家への近道の路地裏を進む。
街灯がないから日が落ちるとほとんど見えないし、人とすれ違うことがない。
だから後ろから足音が聞こえて珍しいなって思った瞬間、いきなり後ろから腕を掴まれた。
「きゃっ・・・!」
忍らしからぬ判断能力の低さ。
慌てて振り向くと全く知らない男の人が鼻息を荒くして私に顔を近づけてくる。
思わぬ出来事に恐怖で体が動かないでいると、
気づいたら目の前にカカシ先生の背中があった。
「せんせ・・・」
呼んでも先生は振り向かず、男の手を掴む。
「──失せろ」
殺気を込めた言葉に恐怖を覚えた。
男も悲鳴を上げて尻餅を吐きながら逃げていった。
とりあえず一安心と息を吐くも、振り向いた怒気を含んだ先生の瞳にまた体を強張らせる。
「何してんだ。早く帰れって言ったよな」
「・・・ごめんなさい」
大きくため息を吐く先生に、私は潤む瞳を隠すように俯く。
「・・・でも先生、何でここに・・・」
「ヤマトとサイからお前がストーカーに合ってるって相談受けてたんだよ」
「え?」
「ただ見てるだけで実害はないしどうしたらいいかってね。だからオレが彼氏役としてずっと側にいれば諦めると思ったんだけどね」
全く気づかなかった・・・。
自分の疎さに辟易しつつ、守ってくれてたことに嬉しさが込み上げてくる。
「ごめんなさい。そしてありがとうございます」
「ん。何もなくて良かったよ」
「・・・先生は女の子がストーカーに遭ってた誰にでもこういうことするの?」
「しないよ」
「ならなんで・・・」
「サクラが大事だから」
サラッと言うからこっちが恥ずかしくなる。
先生は優しく私の頭を撫でてくれて家まで送ってくれた。
「これで彼氏役も御免だな」
少し寂しそうに笑って先生が去ろうとするので、私は慌ててその背中を掴む。
私の行動に驚く先生。
私だって自分の行動に驚いている。
でも言いたいことは決まってる。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「ま、まだ彼氏続けてよ。役、じゃなくて・・・」
先生は目を丸くしてきっと暗闇でも分かるほど真っ赤になっているだろう私の顔を見ている。
側にいてくれると鬱陶しくも安心感を覚え、居ないと寂しくて寂しくて。
この気持ちの答えを私はどこか心の隅で分かっていた。
何も変哲もなかったと思ったんだけど。
「サクラの彼氏になるよ」
「・・・は?」
別れ際に先生は頭がおかしいことを言い出した。
その提案は断ったにも関わらず、先生は暇さえあれば側にいるようになった。
側から見たら恋人のように、隣を歩く。
いのに「カカシ先生と付き合ってんの?」と茶化されたり、先生に恋慕を抱く女たちから睨まれたり嫌がらせをされたり。
鬱陶しくて何度振り払ってもいつも側から離れなくて。
毎日朝に私の家に迎えに来て、毎日任務や修行が終われば私の家まで送る。
全然自由の時間がなくてだんだん虫の居所も悪くなるってもんよ。
「今日は送ってやれないから真っ直ぐ帰りなさい」
目の前に現れたと思ったらそれだけ言ってすぐに消えた。
「・・・・・・」
あれだけうざかったのに、居てくれないと思ったら急に寂しくなってくるのは何なんだろう。
先生には真っ直ぐ帰れって言われたけど、ここ最近自由な時間がなかったらウロチョロしたくなってしまって・・・
私はお気に入りのお店や商店街にある本屋を覗く。
それから時間を忘れて満喫していると、外はすっかり暗くなっていた。
「やば・・・早く帰らないと」
こういう時お母さん煩いからな、と私は家への近道の路地裏を進む。
街灯がないから日が落ちるとほとんど見えないし、人とすれ違うことがない。
だから後ろから足音が聞こえて珍しいなって思った瞬間、いきなり後ろから腕を掴まれた。
「きゃっ・・・!」
忍らしからぬ判断能力の低さ。
慌てて振り向くと全く知らない男の人が鼻息を荒くして私に顔を近づけてくる。
思わぬ出来事に恐怖で体が動かないでいると、
気づいたら目の前にカカシ先生の背中があった。
「せんせ・・・」
呼んでも先生は振り向かず、男の手を掴む。
「──失せろ」
殺気を込めた言葉に恐怖を覚えた。
男も悲鳴を上げて尻餅を吐きながら逃げていった。
とりあえず一安心と息を吐くも、振り向いた怒気を含んだ先生の瞳にまた体を強張らせる。
「何してんだ。早く帰れって言ったよな」
「・・・ごめんなさい」
大きくため息を吐く先生に、私は潤む瞳を隠すように俯く。
「・・・でも先生、何でここに・・・」
「ヤマトとサイからお前がストーカーに合ってるって相談受けてたんだよ」
「え?」
「ただ見てるだけで実害はないしどうしたらいいかってね。だからオレが彼氏役としてずっと側にいれば諦めると思ったんだけどね」
全く気づかなかった・・・。
自分の疎さに辟易しつつ、守ってくれてたことに嬉しさが込み上げてくる。
「ごめんなさい。そしてありがとうございます」
「ん。何もなくて良かったよ」
「・・・先生は女の子がストーカーに遭ってた誰にでもこういうことするの?」
「しないよ」
「ならなんで・・・」
「サクラが大事だから」
サラッと言うからこっちが恥ずかしくなる。
先生は優しく私の頭を撫でてくれて家まで送ってくれた。
「これで彼氏役も御免だな」
少し寂しそうに笑って先生が去ろうとするので、私は慌ててその背中を掴む。
私の行動に驚く先生。
私だって自分の行動に驚いている。
でも言いたいことは決まってる。
「あ、あの・・・」
「ん?」
「ま、まだ彼氏続けてよ。役、じゃなくて・・・」
先生は目を丸くしてきっと暗闇でも分かるほど真っ赤になっているだろう私の顔を見ている。
側にいてくれると鬱陶しくも安心感を覚え、居ないと寂しくて寂しくて。
この気持ちの答えを私はどこか心の隅で分かっていた。
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