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short.2


ピンポーン

「・・・」

ピンポーン、ピンポーン

「・・・・・・」

自分の部屋で寛いでいると部屋のインターホンが鳴る。
なのに私はベッドで横になり毛布を被る。
来客だから出ないといけないんだけど隠そうとしない気配に気づいているから。
だから私は出ない。
煩いインターホンに毛布を頭まで被った時。


ガラッ


「よっ」
「・・・・・・」

ベッドの近くにある窓の鍵を勝手に開けて当たり前のように挨拶をしてくる。
無視しようと思ったけど、靴を脱いで当たり前のように部屋に入るから諦めて体を起こす。

「先生・・・」
「ん?」
「別れたんだから来ないでよ」

そう、私たちは付き合っていた。
2年という月日を共に過ごしてきた。
だがそれは唐突に終わりを迎えたのだ。
原因は──この男の浮気。
それも1度じゃない。3度目だ。
最初は私に原因があったのかと自分を責めて積極的に先生にくっ付いたりキスをしたりした。
なのに先生は浮気を止めなくて、時々香る香水の匂いに1人で泣いていた。
それも2人目までだ。
3つ目の新たな香水の匂い、先生の唇の端に赤いルージュが残っているのを見つけて・・・。
私の中で何かが切れた。
それから別れを切り出して、先生の部屋にある自分の荷物を纏めてそれから私は先生の家に行かなくなった。
それなのに、この男は毎日のように私の家に無断侵入するようになった。
無視してても勝手に朝まで居座って私の家から任務に出るという、意味の分からない行動。

「だってまだサクラのこと好きだし」
「好きなら浮気しないわ」
「好きだから浮気した」
「意味わかんない!」

先生の返答にカッとなり右手を上げて頬を叩こうとするも、その手を掴まれて先生の腕に抱きしめられる。

「サクラ」

耳元に口を寄せて囁いてくるその声に、付き合っていた頃の思い出が蘇って無理やり頭から追い出す。

「・・・やだ」
「サクラ」
「やだってば!」
「サクラ」
「帰ってよ!!」

腕の中で暴れる私を逃さないと言うように更に強く抱きしめられる。

「・・・・・・サクラ」

私の肩に顔を埋めて名前を呼ぶ先生。
顔は見えないけど泣いているような気がして。
私はどんなに怒ってもこの人を突き放せない。
目の前の緑のベストに顔を埋めて涙を滲ませた。


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