このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

short.2

「今日は缶蹴りするぞ」

待ち合わせ場所に2時間遅れでやってきたカカシ先生は来て早々そう言った。

「えー?缶蹴りぃ?」

ナルトは頭の後ろで腕を組み、不満気そうに文句を言う。
サスケくんも待たされた上に子供のような遊びに眉間に皺を寄せていた。

「おいおい、缶蹴りを舐めるなよ?いかに上手く気配を消して、相手にバレずに意表を突いて缶を蹴る。忍としての術をこれでもかと発揮出来るんだ」

先生は人差し指を立てて説明するも、2人は興味なさそうに話を流していたが・・・。

「オレから缶を奪えたら一楽のラーメンを奢ってやろう」
「やる!やるってばよ!!」

ラーメンといえキーワードにナルトのヤル気は炎のように燃え上がり、いつの間にか缶蹴りをするということが決まっていた。



****



「よーし始めるぞー。散!」

先生の合図に条件反射で私たちは森の中に隠れる。
すっかり躾られてるなぁ、と葉っぱの隙間から様子見る。
先生は缶を地面に置き、左足に重心を傾けて気怠そうに立っている。
見た目はボーとしている感じなのに、実際は常に気を張っていて隙など全くない。
こういうところを見るとやっぱり上忍なんだなって実感させられる。

「・・・サクラ」

呼ばれて振り向くと、そこにサスケくんとナルトがいた。

「で、どうすんだってばよ」
「闇雲に突っ込んでもヤツにすぐに捕まる」
「・・・缶蹴りだから、誰かが捕まっても誰かが蹴れば良いのよね」

私の言葉に2人が頷く。

「なら私が囮になるわ」
「え!ならオレが!」
「あんたじゃ無駄に終わる未来しか見えないっての。大丈夫。私ならいけるわ」
「何する気だ?」
「色仕掛けで気を引くのよ」


「何か言いたいことでもあるわけ?」

私が睨むと2人は気まずそうに目を逸らす。
口に出さなくても目は口ほどに語ってるっての。
そりゃヒナタと比べて胸が平たいけど、これからだもの!

「とにかくそういうことだから!缶は頼んだわよ!」
「あ、サクラちゃん!」

ナルトの呼び止める声を無視して隠れながら先生に近づく。
先生からは死角で顔が見える位置に回り、ジリジリと近づく。
先生はボケーとして空を見ていて、本当はやっぱり気を抜いているんじゃないだろうか。
もしかしたら缶を取れるかもしれない。
そう思いながら1歩、2歩と近づいている時。

「ふぅ・・・」

先生は片足に重心をかけたままため息を吐いた。
空を見るその瞳が遠くを見ていて。
その顔を見ていると、目の前のカカシ先生が風に吹かれて消えてしまいそうで──。
私は気づいたらカカシ先生の背中に飛びついていた。

「お?」

先生は驚いた素振りを見せて振り向き、微笑む。

「サクラ、みーつけた」

いつものように笑いながら缶を踏む先生に私はほっとする。
すると後ろから「おい、バカ・・・!」と声が聞こえて振り向くと、地面に倒れたナルトとその肩を掴むサスケくんの姿が。
私が作戦と違うことをして見つかったからナルトが慌てて飛び出してサスケくんが止めに入った、といった感じで。
私は申し訳なさでいっぱいになった。
そんなことを知らない先生はニコニコ笑う。

「ナルトとサスケもみっけ」

先生はまた缶を踏むと、ナルトとサスケくんは口喧嘩をしながら近づいてくる。
「喧嘩するなよー」と呆れたように先生は2人に声をかける。
私は先生の手をどこにも行かないように強く握ると先生は目を丸くして私を見ると、微笑んで握り返してくれた。



135/159ページ