short.2
朝起きたとき、何か違和感があった。
部屋は自分の部屋だし、服だっていつものお気に入りのパジャマ。
いつもと同じなのに。
何故かすごく虚無感を感じた。
「サスケくん、おはよー!」
朝、少し遅れて待ち合わせの橋の上に行くと、既にナルトとサスケくんが居た。
私は頬を染めて大好きなサスケに挨拶をしながら近づく。
「・・・おす」
チラッとこちらを見てすぐに目を逸らすサスケくん。
あぁ、今日もかっこいい。
「・・・サクラちゃ〜ん。オレもいるんだけど」
「あぁ。いたの。おはようナルト」
「扱いが雑すぎるってばよぉ・・・」
肩を落とすナルトを無視してサスケくんとお喋りをして──。
私が橋の上に着いて1時間後。
「やーやー、諸君。おはよう」
「「遅い!!」」
呑気に現れたカカシ先生に私とナルトは指を指して怒鳴る。
毎回毎回遅刻して。人としてどうなわけ?
私がやっぱり起こしに行かないと。
──何で?
自分の中で起きた疑問に首を傾げる。
そりゃ遅刻するのは許せないけど、私が行く必要はない。
それに起こしに行くなら断然サスケくんの方が良い。
何でそんなことを思ってしまったのか。
腕を組んで考えていると、後ろから頭に手を置かれる。
振り返るといつの間にか後ろにいたカカシ先生。
「サクラ。さっきから1人で何唸ってるんだ?」
「え?あ、何でもないです」
「そ?アイツらもう任務先に向かったぞ」
「嘘!」
サスケくんと行こうと思っていたのに、気づいたらだいぶ先を歩いていた。
「もー!先生早く言ってよ!」
「えー、先生のせいなのか?」
責任転嫁されても先生はいつものように笑う。
その笑顔に胸が高鳴って胸をさする。
「どうかしたか?」
「・・・ううん。早く行きましょ、先生」
私はまた不思議な感覚に囚われたが、気づかないふりをして先生の手を取って2人の後を追いかけた。
その日、不思議な夢を見た。
私はある人を呼び出した。
目の前に立つその人は私の言葉を待っていて、じっと私を見下ろしてくる。
その目に見つめられるだけで心臓が煩いほど高鳴って、顔も耳も熱い。
言ったって結果は分かってる。
それでも、もうこの気持ちは抑えられない。
私は大きく息を吐いて、その人への想いを口にした。
****
「カカシ先生、少しいいですか」
次の日の任務が終わったタイミングでアカデミーに向かおうとする先生を呼び止める。
私のただならぬ雰囲気にナルトとサスケくんが心配そうにこちらを見ていた。
当の本人は驚くそぶりもなく、いつものように微笑む。
「いいよ。ここで?」
「・・・2人になれるところが良いです」
「分かった。おいで」
カカシ先生は歩き出し、私は2人に手を振ってその背中を追いかけた。
「オレを呼び出したってことは思い出したんだ?」
人気のない公園に連れて行かれ、先生は手すりに腰掛けて私に向き合う。
私はギュッと手を握りしめる。
「・・・やっぱり、私の記憶を消したのはカカシ先生だったのね」
私の質問に先生は曖昧に微笑むだけで答えない。
でもその無言は肯定をいうこと。
私はカッとなって先生に詰め寄る。
「何で?何で私の先生を好きだって記憶を消したのよ!!」
襟首を掴んで両目から大粒の涙を溢すも先生は表情を変えない。
「・・・サクラのその気持ちはサクラにとって邪魔なものだよ」
「!!私の、私の気持ちを勝手に決めつけないでよ!」
ドンっと先生を突き飛ばす。
絶対受け入れられないとは思ってはいたけど。
こんなふうに無かったことにされるなんて。
溢れる涙を擦っていると先生が手を伸ばしてくる。
「やっ!」
その手をかわそうとするも腕を掴まれて逃げられない。
その目はあの日、私の記憶を消した時と同じだった。
また、私の記憶を消すつもりなんだ。
私は先生を睨みつける。
「・・・何度消したって、私は何度だってまた好きになるんだから」
最後に見た記憶は、先生の少し寂しそうな笑顔だった。
記憶を消したことで深い眠りについたサクラ。
頬に残る涙の跡を指で拭う。
こんな自分に恋をしてくれた、何よりも大事な少女。
カカシは眠る少女の紅い唇に自分のを重ねる。
「また思い出してくれたなら、その時は──」
部屋は自分の部屋だし、服だっていつものお気に入りのパジャマ。
いつもと同じなのに。
何故かすごく虚無感を感じた。
「サスケくん、おはよー!」
朝、少し遅れて待ち合わせの橋の上に行くと、既にナルトとサスケくんが居た。
私は頬を染めて大好きなサスケに挨拶をしながら近づく。
「・・・おす」
チラッとこちらを見てすぐに目を逸らすサスケくん。
あぁ、今日もかっこいい。
「・・・サクラちゃ〜ん。オレもいるんだけど」
「あぁ。いたの。おはようナルト」
「扱いが雑すぎるってばよぉ・・・」
肩を落とすナルトを無視してサスケくんとお喋りをして──。
私が橋の上に着いて1時間後。
「やーやー、諸君。おはよう」
「「遅い!!」」
呑気に現れたカカシ先生に私とナルトは指を指して怒鳴る。
毎回毎回遅刻して。人としてどうなわけ?
私がやっぱり起こしに行かないと。
──何で?
自分の中で起きた疑問に首を傾げる。
そりゃ遅刻するのは許せないけど、私が行く必要はない。
それに起こしに行くなら断然サスケくんの方が良い。
何でそんなことを思ってしまったのか。
腕を組んで考えていると、後ろから頭に手を置かれる。
振り返るといつの間にか後ろにいたカカシ先生。
「サクラ。さっきから1人で何唸ってるんだ?」
「え?あ、何でもないです」
「そ?アイツらもう任務先に向かったぞ」
「嘘!」
サスケくんと行こうと思っていたのに、気づいたらだいぶ先を歩いていた。
「もー!先生早く言ってよ!」
「えー、先生のせいなのか?」
責任転嫁されても先生はいつものように笑う。
その笑顔に胸が高鳴って胸をさする。
「どうかしたか?」
「・・・ううん。早く行きましょ、先生」
私はまた不思議な感覚に囚われたが、気づかないふりをして先生の手を取って2人の後を追いかけた。
その日、不思議な夢を見た。
私はある人を呼び出した。
目の前に立つその人は私の言葉を待っていて、じっと私を見下ろしてくる。
その目に見つめられるだけで心臓が煩いほど高鳴って、顔も耳も熱い。
言ったって結果は分かってる。
それでも、もうこの気持ちは抑えられない。
私は大きく息を吐いて、その人への想いを口にした。
****
「カカシ先生、少しいいですか」
次の日の任務が終わったタイミングでアカデミーに向かおうとする先生を呼び止める。
私のただならぬ雰囲気にナルトとサスケくんが心配そうにこちらを見ていた。
当の本人は驚くそぶりもなく、いつものように微笑む。
「いいよ。ここで?」
「・・・2人になれるところが良いです」
「分かった。おいで」
カカシ先生は歩き出し、私は2人に手を振ってその背中を追いかけた。
「オレを呼び出したってことは思い出したんだ?」
人気のない公園に連れて行かれ、先生は手すりに腰掛けて私に向き合う。
私はギュッと手を握りしめる。
「・・・やっぱり、私の記憶を消したのはカカシ先生だったのね」
私の質問に先生は曖昧に微笑むだけで答えない。
でもその無言は肯定をいうこと。
私はカッとなって先生に詰め寄る。
「何で?何で私の先生を好きだって記憶を消したのよ!!」
襟首を掴んで両目から大粒の涙を溢すも先生は表情を変えない。
「・・・サクラのその気持ちはサクラにとって邪魔なものだよ」
「!!私の、私の気持ちを勝手に決めつけないでよ!」
ドンっと先生を突き飛ばす。
絶対受け入れられないとは思ってはいたけど。
こんなふうに無かったことにされるなんて。
溢れる涙を擦っていると先生が手を伸ばしてくる。
「やっ!」
その手をかわそうとするも腕を掴まれて逃げられない。
その目はあの日、私の記憶を消した時と同じだった。
また、私の記憶を消すつもりなんだ。
私は先生を睨みつける。
「・・・何度消したって、私は何度だってまた好きになるんだから」
最後に見た記憶は、先生の少し寂しそうな笑顔だった。
記憶を消したことで深い眠りについたサクラ。
頬に残る涙の跡を指で拭う。
こんな自分に恋をしてくれた、何よりも大事な少女。
カカシは眠る少女の紅い唇に自分のを重ねる。
「また思い出してくれたなら、その時は──」
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