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short.2

「カカシ先生が好き」

それは唐突だった。
何かの冗談かと思ったが、瞳にかつての少女と同じものが宿っていることに気づく。

「・・・サクラ、オレは」
「分かってる!」

断ろうとするもサクラに遮られる。

「私まだ子供だからきっと本気にしてもらえないだろうなって。でも私だって諦めないわよ。30日よ、カカシ先生」
「30日?」
「そう。これから30日、毎日先生に告白するわ。それで最後の日、告白してOK貰えたら私の勝ち。ダメだったら潔く諦める。どう?」
「・・・まぁ、サクラがそれでいいならオレは良いよ。どれだけ待ってもオレの気持ちは変わることないしね」
「言ったわね?覚悟しといてよね、カカシ先生!」



****



それからサクラは宣言通り、毎日オレに告白をするようになった。
任務が終わって別れるとき、休みの日はわざわざ探しにきてまで告白をする。
特段何かするでもなく、頬を染めて「好き」だけを伝えてくれるサクラ。

何も変わらないと思っていたのに。
毎日愛を伝えてくれるサクラに心が揺れている自分に戸惑った。





「カカシ先生、今日も好きよ!」
「・・・ありがとー」

解散の合図を出して、サクラはいつものように告白をしてくる。
側にいたナルトとサスケも最初は戸惑っていたが、こうも毎日続けば慣れてしまったらしく帰ってしまった。

「明日で30日ね。楽しみにしててね、先生!」

サクラは嬉しそうに笑って、手を振って走り去っていった。
1人取り残されたオレは、首の後ろに手を当てて息を吐いた。
オレはその足で火影の部屋に向かい、ノックする。

「カカシか。どうした」

筆を動かしていた三代目は突然現れたオレに驚かずいつもの笑みを浮かべる。

「・・・三代目、お願いがあります」



****



あれから三代目に願い出て、夜に任務に出してもらった。
次の日の夜にしか戻れない任務を。
それはサクラから逃げるため。
サクラに会ってしまったら、最後の告白を聞いたらどうなってしまうのか。

自分の気持ちから逃げるように、オレはサクラから逃げた。





「ふぅ・・・」

任務を終えて里に帰ってきた時にはもう少しで日付けが変わろうとしていた。
卑怯なやり方だが、こんな男だったのかとサクラも諦めるだろう。
そう思いながら、心の中がざわついて苛つく。
こんな時はさっさと家に帰って酒飲んで寝るに限る。

アパートの階段を上がって見えた光景に硬直した。
そこにサクラがいたから。
サクラはどこで知ったのかオレの部屋の前で蹲って丸まっていたのだ。
固まるオレに気づいたのか、サクラは顔を上げて微笑む。

「・・・カカシ先生」

サクラは立ちあがろうとするも蹌踉ける。
オレはすぐに駆け寄りサクラの腕に触った時、その腕が氷のように冷たく、小さく震えていることに気づいた。
春とはいえ夜は肌寒い。
どれだけ外で待っていたのか。
いつ帰ってくるかも分からないオレのことを。
眉を顰めるオレにサクラは情けなく笑う。

「あはは・・・ずっと同じ格好で座っていたから上手く力が入らないみたい。えっと、とりあえずお帰りなさい、先生」
「・・・あぁ、ただいま」

オレが返事をすると、サクラは手首に巻かれた腕時計を見る。

「良かった、まだ日付けは変わってないわね」

サクラは胸に手を当てて息を吐き、頬を染めてオレを見上げる。
その表情はいつもより真剣見を帯びていて心臓が脈打つ。


「カカシ先生」
「私は先生のことが好きです。・・・私を彼女にしてください」


夜でも輝く翡翠の瞳がオレを射抜く。

──あぁ、もう逃げられない

オレは諦めて深々と、大きくため息を吐く。

「先生?」

心配そうな顔をするサクラに苦笑いしてちょいちょいと手招きをすると、サクラは満面の笑みでオレの胸に飛び込んだ。


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