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short.2

「あれ、サクラ」

珍しく早く仕事が終わり、いきつけの居酒屋に入った時だった。
カウンター席に座ろうとした時、そこに元教え子が1人寂しく飲んでいたのだ。
呼ばれて振り向いたサクラの頬は赤く、どれだけ飲んだのか。
いつもの聡明さはどこへやら、サクラはへにゃっと笑いかけてくる。

「カカシ先生、こんばんわ〜」
「こんばんわ。隣いい?」
「どうぞ〜」

カカシはサクラの隣な椅子に腰掛けて店員にいつものを頼む。
すぐにお酒が渡されて、サクラの飲みかけのコップとカチンと音を鳴らして合わせる。

「珍しいね、1人で飲むなんて。彼氏は一緒じゃないのか?」
「・・・別れた」

酒を煽りながら聞いて、サクラの言葉に酒が変なところに入りそうになる。

「・・・別れたって、この間付き合い始めたばっかって言ってなかったか?前の彼氏と別れてすぐぐらいに」

1ヶ月前。
今みたいに1人で飲んでるサクラに話しかけたら彼氏と別れたと落ち込んでいて慰めたのを鮮明に覚えている。
つい先日、新しい男と仲良く歩いているのを見て安心していたのに。

「そうよ。私が振ったの」
「何でまた・・・」

ふん、と鼻を鳴らして顔を逸らすサクラに眉を下げる。
師としての信頼関係からか、よくサクラから惚気話を聞かされていた。
聞いてる限りでは好青年な感じだったし、サクラも心底惚れている様子だった。

「・・・のよ」
「え?」

サクラは顔を背けたまま小さな声で喋る。
周りは酔っ払いが大声で喋って聞き取れなくて耳を近づけると。

「・・・アレの!相性が悪かったの・・・」

サクラは先程とは違う頬の染め方で言いにくそうに濁した。
何となく言いたいことが分かり体を離す。
昔と違ってサクラもお酒を飲める大人になったのだがら、身体の関係もあるだろう。
ましてや恋人同士なのだから。

「まぁ・・・うん、そういう時もあるんじゃないか?次のやつとは上手くやれると思うよ」

男なら下世話なことを言えるのだが、相手はサクラだから変なこと言えない。
可愛がってきた教え子にセクハラとか言われたら当分立ち直れそうにない。
カカシの上っ面の慰めにサクラは頬を膨らませ不機嫌そうな顔をする。

「今回の人だけじゃないもの・・・何やっても、その、あんまり気持ち良くないって言うか・・・」
「・・・・・・」

教え子の性事情ほど気まずいものはない。
それにこの2人は普通の男女とは違って──。

「これもカカシ先生のせいよ」
「・・・オレ?」

突然悪く言われてサクラを見ると、頬を膨らませてこちらを睨んでいた。

「・・・私の初めてが、先生だったから」

少し視線を落とすサクラは残り少ないお酒のコップを揺らすのを横目で見る。


サクラが中忍になる少し前。
くノ一としてやっていくなら色任務は必ず通る道だ。
その為には通過儀礼、色任務を受けたことがある上忍、あるいは特別上忍に講習を受け破瓜をしなくてはいけない。
通常は担当上忍師に頼むもので、サクラもカカシを希望してカカシも承諾した。
それからカカシによって処女ではなくなり、その後も何度か講習を受けてそれっきりサクラはカカシに抱かれていない。

あれから何年も経って彼氏も何人も出来た。
大人のお付き合いだからえっちもする。
・・・なんだけど。
何度えっちしても気持ちいいと思えなくてイけたことがない。
それからすれ違いで喧嘩が多くなって別れて。
暫くして新しく出来た恋人とのえっちも気持ちいいと思えなかった。
そこで自分は不感症なんだと分かった。
カカシとした時はいつも気持ちよくなってたのに。
つまり、こうなったのは──。


「私が不感症になったのはカカシ先生のせいよ!!」

ドン!とサクラは追加で頼んだお酒を一気に煽ってコップを机に叩きつける。
ガヤついて声が聞こえにくいとはいえ、そんなに大きな声でそんな言葉を言えば近くに座る人たちは何事かいったようにこちらを見てくる。

「サクラ落ち着きなさいって・・・ほら、水飲んで」
「いらないわよ!もー!カカシ先生のバカ!えっち!変態!!」

完全に酔いが回ったのかサクラは虚な瞳で机を何度も叩く。
綱手と師弟関係とはいえ、酒乱まで似なくてもいいのではないだろうか。

「先生が、えっちが上手いから、何人もの女の人を、泣かせたから悪い、のよ・・・」
「うんうん、ソーネー」

舟を漕ぐサクラにカカシは頬杖をついて適当に相槌をつく。
もうこうなったら明日には記憶には残らないだろう。
それにしてもカカシに何人ものオトモダチがいたことをサクラが知っていたことに動揺してしまった。
上手く隠していたつもりだったが。
サクラはキッとカカシを睨んで指差す。

「カカシ先生!」
「はぁい?」
「私とえっちして!」
「・・・はぁ?」

突拍子もないことを言う教え子に変な声が出る。
サクラは目を吊り下げて机をバシバシ叩く。

「だから!私と!セックスしてって言ってるの!」
「サクラ。少し声のボリューム落として」

カカシはサクラの口を手で塞ぐ。
お互い気づいたら里の中で有名人になってしまったから明日には2人の噂が広まるだろう。

「・・・なーんで変なとこに行きつくのかね、この子は」
「変じゃないわよ。私が感じなくなったのはカカシ先生のえっちが上手過ぎて、他の人とじゃ感じれなくなったのよ。だから先生が責任取るべきだわ」

サクラは饒舌に語って鼻を鳴らす。
自分は間違っていないといった自信満々なところは昔から変わらないらしい。
サクラは水を一気に飲んで立ち上がり
カカシも立ち上がらせようと引っ張る。
翡翠の瞳はお酒で赤く潤み、色っぽく映る。
カカシは諦めてその手を取って立ち上がった。



****



「ん、んぅ・・・」

晒された白い肩に冷たい風が吹き抜け、寒さに身を震わせて目を覚ます。
そこは知らない天井で顔を横に向けると、窓辺で座りタバコを吹かすカカシの姿。
身じろぎをすると気づいたカカシが顔を向ける。

「──おはよう。それでどうだった・・・なんて聞かなくても分かるか。思う存分乱れてくれたみたいだし?」

ふ、とカカシが意地悪く目を細めて笑うとサクラは真っ赤に頬を染め上げる。

あれからカカシの部屋に連れて行かれ、シャワーを浴びることもなくそのまま抱かれた。
全く快感を感じることのなかった行為。
それが180度ひっくり返ったかのようにサクラはカカシによって乱れまくった。
挿れる前から何度もイかされ、挿入てからもイかされ。
今夜だけで何回イかされたのかも覚えていない。
覚えているのは、初めての時には見せてくれなかったカカシの情欲を浮かべた男の顔。
あの時は師としてサクラを抱き、今夜は男としてサクラを抱いた。
その変化がサクラはすごく嬉しかった。
それなのに今は何事もないみたいな顔で窓の外を見て黄昏ている男。
サクラは体を起こして何も身に纏わずにうつ伏せになりカカシを見る。
自分で言うのも何だが、結構美人に成長したのにこっちを見ないというのは何なんだろうか。

「・・・ねぇ、カカシ先生」
「んー?」

それでもこちらを見ない。

「私の彼氏になってよ」

男はようやくこっちを見て、目をパチクリさせている。

「・・・今日限りじゃなかったのか」
「そんなこと言ってないわ。いいの?運命の相手を探すのに色んな男に抱かれても。そしたら私に変な悪名が付くわよ。そうなったら『カカシ先生に遊ばれて捨てられたせい』って言ってやるんだから」

サクラの言い草に、カカシは苦笑する。
こうと決めたら譲らないサクラの性格を知っているカカシは諦めたように笑いながらタバコを灰皿で消して、立ち上がってサクラに近づく。

「たく。しょうがないねぇ、お前は」

カカシはサクラの肩に手を添えてベッドに押し倒し、嬉しそうに笑うサクラの唇を塞いだ。


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