short.2
いつからかその人のことを好きになったのか分からない。
だっていつも側にいてくれたから。
不安で泣く私の隣で何も言わずに泣き止むまでずっといてくれたから。
任務でもいつも私を助けてくれたから。
いつも私を安心させてくれる笑みで見守ってくれていたから。
困らせると分かってはいるけど。
この気持ちを抑えることが、もう出来なくなってしまった。
「カカシ先生が好きです」
いつもの演習場にカカシ先生を呼び出して告白をした。
私の突然の告白に、先生は最初目を真ん丸に見開いていたけど、すぐにいつもの笑顔になって首を横に振った。
そう、いつもの笑顔。
なのに今の先生からは壁を感じる。
完全な拒絶。
それを感じ取った時、膝が震えて立っていることがキツかった。
私はなんとか足を踏ん張り、泣かないように顎にも力を入れて無理やり笑顔を作った。
「そっか、そうよね。ごめんなさい変なこと言って!それじゃまたね、カカシ先生!」
私は今起きたことがなかったかのように、いつものように別れの挨拶をしてその場から逃げ走った。
呼び止める声もなく、演習場を出て阿吽の門から里に入り、人の視線を集めながら駆け走った。
家に帰りつき、夕飯も食べずに部屋に引き篭もって声を殺して一晩中泣いた。
この気持ちが消えるように。
ハンカチ代わりに使っていたタオル全体が湿ってきた頃、部屋の外が明るくなっていることに気づいた。
結局一睡もすることはできず、心配する両親に適当な理由を言って朝食を食べ、任務に向かうべく待ち合わせ場所の橋へと向かった。
そこにはすでにナルトとサイがいた。
目の腫れはチャクラで直したが、赤みが取れなくて、ナルトは心配そうに声をかけてきた。
私は本の読み過ぎと嘘の理由を話し、安心するナルトの隣にいたサイからは悟ったような顔をされた。
なんだかんだで人の変化には機敏だ。
「おはよう。3人とも」
遅れてヤマト隊長と一緒にカカシ先生が現れた。
「やっときた!なぁなぁ、早く行こうってばよ!」
「たく。少しは落ち着きなさいって。でかくなっても相変わらずだねぇ、お前は」
早く早くと催促するナルトと落ち着かせる先生の会話が聞こえてくる。
私は昨日のこともあって先生のことが見れない。
3人とも行くよ、とヤマト隊長の合図で私たちは門の外へと足を進めた。
背中に感じる視線に振り向かないようにしながら。
「じゃあここで少し休憩にしようか」
またヤマト隊長の合図で枝の上を飛んでいた私たちは足を止めて地面に降りる。
今日の任務は国境付近で警備。
近頃怪しい人影を見ると連絡を受けた。
もしかしたら他里の忍か抜け忍かもしれない。
それでなくても危ない人物かもしれない。
依頼を受けて昨日から警備をしている他の隊との交代をするために向かっており、途中にある川で休憩をすることにした。
スケジュール的に遅れはないから焦る必要はない。
走っている間は任務のことだけを考えれていたけど、何もすることがなくなると昨日のことを思い出してしまい、枯れたと思っていた涙がまた溢れそうになる。
「・・・っ。すみ、ません隊長。ちょっと散歩してきます」
「分かった。遠くまで行かないようにね」
「はい」
カカシ先生ではなく隊長に伝えて私は足早にみんながいる場所から離れた。
これから任務なのにこんな気持ちじゃダメだ。
そう思っても一度緩んだ栓を閉めることができない。
ならみんなから見えない、林の中で全部出し切ってしまおう。
そしていつもの自分に戻るのだ。
「っふ・・・う・・・」
川のせせらぎで聞こえないだろうが、声を殺して涙を流す。
あれだけ泣いたというのにまだこんなにも出るのか。
早く止めないとみんなが心配して探しにくるかもしれない。
──早く、早く・・・
パキッ
「!!」
後ろから木の枝が折れる音が聞こえてバッと勢いよく振り返った。
そこには、
「カカシ、先生・・・」
泣いている原因の人物が気配もなく立っていた。
木ノ葉一といわれた上忍が気配を隠して近づいてきていたなら私なんかが気付けるわけがない。
私は足早に去ろうとするも、腕をすぐに掴まれて動けない。
「・・・離してください」
振り返らずに懇願するも、掴む手は緩まない。
それどころか更に強く掴まれる。
「・・・せんせ」
「お前が泣いてるのは見逃せない」
──カカシ先生のせいじゃない・・・
その言い方に一人隠れているのがバカバカしくて、私は赤い目を隠そうともせずに後ろを振り向いて思い切り先生を睨みつけた。
「・・・カカシ先生のせいでしょ」
「うん。でも慰めるのもオレの役目だったでしょ」
先生はいつものように微笑む。
そう。
サスケくんとナルトが里から居なくなって、何もできなかった自分の不甲斐なさにこの数年、毎日のように泣いていた。
誰にも見られないようにこっそり泣いているのに、何故かすぐに先生は私を見つけて側に居てくれた。
一度、何で見つけれるのかと聞いたことがある。
すると、「サクラのことなら何でも分かるよ」と言われた。
そんなことを言われたら惚れないほうがおかしい。
なのに、好きでいることを許してくれない。
「・・・ずるいわ。私の気持ち受け入れるつもりないくせに」
「ごめんね」
絶対悪いと思ってないくせに簡単に謝る。
そして先生は私の肩に手を置いて引き寄せ、私は抗えずそのまま先生の胸の中に収まる。
私が少しでも抵抗を見せればすぐにこの手は離れるだろう。
だけど私がそれをしないことを分かっているから簡単に私に触れてくる。
この人は私を幸せにはしない。
それでも私はこの手を引き離せない。
どんな形でも私の側にいてくれるなら。
私は縋るように大きな背中に手を回して、胸の中で静かに涙を流した。
だっていつも側にいてくれたから。
不安で泣く私の隣で何も言わずに泣き止むまでずっといてくれたから。
任務でもいつも私を助けてくれたから。
いつも私を安心させてくれる笑みで見守ってくれていたから。
困らせると分かってはいるけど。
この気持ちを抑えることが、もう出来なくなってしまった。
「カカシ先生が好きです」
いつもの演習場にカカシ先生を呼び出して告白をした。
私の突然の告白に、先生は最初目を真ん丸に見開いていたけど、すぐにいつもの笑顔になって首を横に振った。
そう、いつもの笑顔。
なのに今の先生からは壁を感じる。
完全な拒絶。
それを感じ取った時、膝が震えて立っていることがキツかった。
私はなんとか足を踏ん張り、泣かないように顎にも力を入れて無理やり笑顔を作った。
「そっか、そうよね。ごめんなさい変なこと言って!それじゃまたね、カカシ先生!」
私は今起きたことがなかったかのように、いつものように別れの挨拶をしてその場から逃げ走った。
呼び止める声もなく、演習場を出て阿吽の門から里に入り、人の視線を集めながら駆け走った。
家に帰りつき、夕飯も食べずに部屋に引き篭もって声を殺して一晩中泣いた。
この気持ちが消えるように。
ハンカチ代わりに使っていたタオル全体が湿ってきた頃、部屋の外が明るくなっていることに気づいた。
結局一睡もすることはできず、心配する両親に適当な理由を言って朝食を食べ、任務に向かうべく待ち合わせ場所の橋へと向かった。
そこにはすでにナルトとサイがいた。
目の腫れはチャクラで直したが、赤みが取れなくて、ナルトは心配そうに声をかけてきた。
私は本の読み過ぎと嘘の理由を話し、安心するナルトの隣にいたサイからは悟ったような顔をされた。
なんだかんだで人の変化には機敏だ。
「おはよう。3人とも」
遅れてヤマト隊長と一緒にカカシ先生が現れた。
「やっときた!なぁなぁ、早く行こうってばよ!」
「たく。少しは落ち着きなさいって。でかくなっても相変わらずだねぇ、お前は」
早く早くと催促するナルトと落ち着かせる先生の会話が聞こえてくる。
私は昨日のこともあって先生のことが見れない。
3人とも行くよ、とヤマト隊長の合図で私たちは門の外へと足を進めた。
背中に感じる視線に振り向かないようにしながら。
「じゃあここで少し休憩にしようか」
またヤマト隊長の合図で枝の上を飛んでいた私たちは足を止めて地面に降りる。
今日の任務は国境付近で警備。
近頃怪しい人影を見ると連絡を受けた。
もしかしたら他里の忍か抜け忍かもしれない。
それでなくても危ない人物かもしれない。
依頼を受けて昨日から警備をしている他の隊との交代をするために向かっており、途中にある川で休憩をすることにした。
スケジュール的に遅れはないから焦る必要はない。
走っている間は任務のことだけを考えれていたけど、何もすることがなくなると昨日のことを思い出してしまい、枯れたと思っていた涙がまた溢れそうになる。
「・・・っ。すみ、ません隊長。ちょっと散歩してきます」
「分かった。遠くまで行かないようにね」
「はい」
カカシ先生ではなく隊長に伝えて私は足早にみんながいる場所から離れた。
これから任務なのにこんな気持ちじゃダメだ。
そう思っても一度緩んだ栓を閉めることができない。
ならみんなから見えない、林の中で全部出し切ってしまおう。
そしていつもの自分に戻るのだ。
「っふ・・・う・・・」
川のせせらぎで聞こえないだろうが、声を殺して涙を流す。
あれだけ泣いたというのにまだこんなにも出るのか。
早く止めないとみんなが心配して探しにくるかもしれない。
──早く、早く・・・
パキッ
「!!」
後ろから木の枝が折れる音が聞こえてバッと勢いよく振り返った。
そこには、
「カカシ、先生・・・」
泣いている原因の人物が気配もなく立っていた。
木ノ葉一といわれた上忍が気配を隠して近づいてきていたなら私なんかが気付けるわけがない。
私は足早に去ろうとするも、腕をすぐに掴まれて動けない。
「・・・離してください」
振り返らずに懇願するも、掴む手は緩まない。
それどころか更に強く掴まれる。
「・・・せんせ」
「お前が泣いてるのは見逃せない」
──カカシ先生のせいじゃない・・・
その言い方に一人隠れているのがバカバカしくて、私は赤い目を隠そうともせずに後ろを振り向いて思い切り先生を睨みつけた。
「・・・カカシ先生のせいでしょ」
「うん。でも慰めるのもオレの役目だったでしょ」
先生はいつものように微笑む。
そう。
サスケくんとナルトが里から居なくなって、何もできなかった自分の不甲斐なさにこの数年、毎日のように泣いていた。
誰にも見られないようにこっそり泣いているのに、何故かすぐに先生は私を見つけて側に居てくれた。
一度、何で見つけれるのかと聞いたことがある。
すると、「サクラのことなら何でも分かるよ」と言われた。
そんなことを言われたら惚れないほうがおかしい。
なのに、好きでいることを許してくれない。
「・・・ずるいわ。私の気持ち受け入れるつもりないくせに」
「ごめんね」
絶対悪いと思ってないくせに簡単に謝る。
そして先生は私の肩に手を置いて引き寄せ、私は抗えずそのまま先生の胸の中に収まる。
私が少しでも抵抗を見せればすぐにこの手は離れるだろう。
だけど私がそれをしないことを分かっているから簡単に私に触れてくる。
この人は私を幸せにはしない。
それでも私はこの手を引き離せない。
どんな形でも私の側にいてくれるなら。
私は縋るように大きな背中に手を回して、胸の中で静かに涙を流した。
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