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short.2

カカシが自分のベッドに寝転がり、手の中のものを転がす。
それは先日、殉職したアスマの執務室を片付けていた際にポロリと出てきた将棋の王将。
アスマの妻であり同期の紅に見せると、彼女は寂しそうに笑ってカカシに形見として貰ってほしいと言ってきた。
自分が持ってても将棋など分からないし、カカシの元に出たならそれはアスマから何かのメッセージではないかと言った。
紅の言葉に甘えそれだけを貰った自室に戻ってからも、その駒を弄り心ここにあらず。
それは夕飯を食べている時もで、遊びに来ていた恋人が不審な目を向けても気づきはしない。

「カカシ先生。何見てるの?」

片付けを終えたサクラが声をかけてくるので、カカシは寝たまま体をずらしてベッドに座るように促す。
サクラも素直に隣に座って手元を覗いてくる。

「これだよ」
「それって将棋の駒よね?」
「そう。玉将」

カカシは指でそれをクルクルと回し弄る。
別にあいつと将棋はしたことはない。
奴の教え子の1人と将棋相手として勝負をしているのだが1回も勝てないと愚痴を何回も聞かされる感じで。
駒を見ていると今はもう居ない悪友であり兄貴のような存在を思い出して胸が苦しくなる。
そういえばつい最近アスマとした会話を思い出す。

「なぁサクラ」
「なに?」
「玉って誰のことだと思う?」
「何それ、謎かけ?」
「良いから」

理由も聞かされず、眉間に皺を寄せたサクラは顎に手を当てて暫く考え、

「やっぱり火影様じゃない?1番偉いし」
「ま、そう思うよな」
「なに?違うの?」

カカシは曖昧に笑うと、自信満々に答えたサクラはカカシの返事に不満そうに頬を膨らませる。

「教えてよ!」
「こればかりは自分で考えなきゃダメなんだよね〜」
「なにそれー」

サクラは答えを導こうと自慢の頭脳を働かせてブツブツ言っているが、どんなに考えてもまだ分からないだろう。
自分たちだってようやく分かったのだから。
カカシは難しい顔をするサクラの頭に手を伸ばして優しく撫でる。

「ま、急いで答えることじゃないから、ゆっくり探しなさい。ちゃんとお前にも火の意志は受け継がれてるんだから」
「・・・火の意志?」
「そ」

カカシのヒントに更に頭をこんがらせてしまったのか、サクラはもうお手上げと寝転がるカカシの胸元に倒れてくる。
カカシが頭を撫でると気持ちよさそうにするので、サクラの髪にキスをして幸せなひとときを過ごした。


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