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この世界には忍や侍がいる国の他に、遠い遠い異国の地がある。
その国には王族という、大名のように国を納めている一族がいるらしい。
そして王族が火の国の、忍に興味を持ったらしい。
前に綱手がその国に行ったことがあるらしく、その関係で王様の子供である王子とお姫様が木ノ葉隠れに遊びに来た。
身分の高い人たちの警護を誰がするか。
吟味に吟味を重ね、木ノ葉一の忍がいるはたけカカシがいる第七班が選ばれた。
副隊長のヤマトも実力はあり、ナルト、サイや医療忍者であるサクラもいる。
これほど適任の人材たちは居ないだろう。


そして姫たちが木ノ葉に来る当日。
七班全員で到着を待っていると、馬車が着く。
従者の手を借りてきて綺麗な金髪と青い瞳の美形な男女が降りてきてサクラは頬を染めて見惚れた。
隊長であるカカシがいつもは曲がっている背を伸ばして、一歩前に出て2人に話しかける。

「姫、王子。ようこそ木ノ葉隠れの里へ。この度お二人の護衛を務めるのは私、隊長のはたけカカシと副隊長のヤマト。他3名で──」
「きゃー!イケメンよ!!」
「!?」

カカシの言葉を遮ってカカシに抱きつくお姫様に全員が驚き固まる。
しかも自分の恋人に女が抱きついているのを目の当たりにしたサクラは唖然とする。

「え、あの・・・」
「姉さん、いきなり何してるの」
「よく見なさいテイラー。この人、すごいイケメンよ」
「ほとんど顔を隠してるじゃないか」
「馬鹿ね。イケメンは顔を隠してても分かるものよ」

カカシに抱きついたまま話す姉のマリーと弟のテイラーに、カカシはどうしたらいいか分からない。
身分も高い2人に何かしてはいけないとカカシはただお得意の愛想笑いを浮かべて。

「いた!?痛いってばよサクラちゃん!」

そんな恋人の反応にサクラは怒りで頭がいっぱいだったが、賓客の手前、頬を引き攣らせながら笑いながら隣に立つナルトのお尻を2人から見えない位置でギリギリ摘んでいるとナルトから悲鳴が上がる。
サクラの苛立ちにもちろんカカシは気づいていて、サクラの方を苦笑しながら見つめるカカシの瞳の意味にマリーは気づく。

「・・・テイラー。私はこの方に護衛してもらいます。貴方はそこの彼女に守っていただきなさい。他の方は結構です。お疲れ様でした」
「え!ひ、姫様、それはちょっと・・・」

マリーのまさにお姫様発言にヤマトは慌ててカカシを見る。
もし2人だけで護衛になって何かあれば国際問題になってしまう。
カカシはマリーの肩に手を置いて自分から離す。

「姫様。何かあっては火影に叱られます。ここにいる全員で護衛させていただきます」
「姉さん、『郷に入っては郷に従え』とこっちの言葉であるんだ。我儘を言って何かあったら父様に叱られるよ」
「・・・テイラーがそう言うなら仕方ありません。ただしカカシは私の護衛に回ってもらいますよ」
「かしこまりました」

微笑んで見つめ合う2人はまるで絵画のようだった。
マリーはサクラより年上で、側から見たらお似合いの2人だ。
14も年下で子供の自分では絶対なれない。
視界が潤んでくるのを我慢していると、テイラーがサクラにハンカチを差し出してくる。

「大丈夫かい?」
「え、あ、大丈夫です。すみません」
「いや、こちらこそごめん。姉が我儘を言って」
「いえ。任務ですから。えっと、はたけ隊長が姫様に付くということは・・・」
「ボクとしては君がそばに居てくれたら嬉しいけど。だめかな?」

マリーと同じように端正な顔立ちのテイラーの顔が至近距離にきてお願いしてきて、イケメン好きのサクラは条件反射でときめいてしまう。

「は、はい。王子様が私で良ければ・・・」
「テイラー」
「え?」
「その呼び方は好きじゃないんだ。テイラーって呼んでくれないか?」
「は、はい・・・」

サクラが頷くとニコッとテイラーは微笑む。
カカシの時にも思ったが、イケメンの笑顔は破壊力が強い。

「それで、君の名前を教えてくれるかな?」
「失礼しました!春野サクラといいます」
「サクラ・・・こっちの代表的な花と同じだね。君にすごく似合ってる」
「ありがとうございます、テイラー様・・・」

真っ直ぐに褒められ、その顔立ちも相まってテイラーの顔を見れずにいると、こちらを見るカカシと目が合った。
別にやましいところなんてないのに、思わず顔を逸らしてしまった。

「サクラ?どうかした?」
「あ、いえ、なんでもないです!」

テイラーの心配する声に愛想笑いをして誤魔化す。
自分に突き刺さる視線を感じながら。



****



それから姉弟は別々に行動をし、カカシにはサイとナルト、サクラにはヤマトが付くことになった。
ナルトとサイが付いていると言っても離れた距離。
隣を歩き楽しそうに話している2人の後ろ姿を見ると辛くてしょうがなかった。

テイラーがご両親にお土産を買っていきたいということで、伝統工芸品を見ている時だった。

「王子覚悟!!」

後ろから聞こえた声に驚いて振り返ると、黒ずくめの男がこちらに突っ込んでこようとしていて、その手に銀色に光る刃物が握られていた。
ヤマトはすぐに木の壁を王子の前に作り、サクラはその前に出て男を殴ろうと拳にチャクラを溜めて振りかぶろうとしたのだが、男は突然目の前でぐらついて倒れてしまった。
何もせずに倒れてしまった男に驚いていると、男が立っていた後ろにはいつの間にかカカシが立っていた。
その手で青白い光と共にチチチチチとチャクラが音を立てている。

「カカシ先生・・・」
「ヤマトは男を確保。サクラは王子を連れて姫のところに」
「は、はい!テイラー様・・・」
「うん」

心臓がバクバクしている中、慣れているのかテイラーは平然な顔をして頷いて姉の元へと向かった。




それから後始末が終わり、襲ってきた理由は尋問のプロであるイビキによって犯人はすぐに吐いたらしい。
犯人は王子様たちと同じ国の人で、王に反発する組織の人物らしい。
王位継承権1位の王子を次の王にさせまいと暗殺を計画している情報を国王の耳に入り、刺客を炙り出すために姫と王子を木ノ葉に送り込んだということだ。
無事に炙り出せたので、姫と王子は自国に帰ることとなった。
馬車が門に着くまでの間に別れの挨拶をする。

「世話になったね、サクラ」
「いえ、私は何も・・・」
「そんなことはないよ。身を挺してボクを守ろうとしてくれた。そんな勇敢は女の子は知らない。かっこよかったよ」
「・・・ありがとうございます」

敵を捕まえたのはカカシなのだが、自分も少なからず役に立ててたのかな、と嬉しくなる。
テイラーは含み笑いをしながらサクラの耳に顔を近づける。

「あのカカシ先生という彼が、何故あんなに早く助けに入れたと思う?」
「え?」

カカシ先生?
そりゃ上忍だから・・・

「彼、ずっと君を見てたんだよ」
「・・・え?」
「ボクが不要に君に近づかないようにね。笑みを浮かべながら何度彼に殺気を向けられたことか。ボク、王子なのにね」
「えぇ!?」

ははは、と何でもないみたいにテイラーは笑うが、相手は王子様なのにカカシは一体何を考えているのか。

「大丈夫、誰にも言わないよ。ボクはどうやら彼には勝てないみたいだし。」

でもこれぐらいは許してもらわないとね。
テイラーはそう言うと、サクラの頬にキスをした。
突然頬に触れた柔らかい感触にサクラは顔を真っ赤にする。

「て、テイラー様!?」
「じゃあねサクラ。今度ボクの国に遊びにおいで」

タイミングよく馬車が到着して、テイラーは手を振りながらマリーの後から馬車に乗り込み行ってしまった。
全く頭が追いついていないサクラは頬に手を当てて惚けていると、気づいたら隣に立っていたカカシが服の裾でテイラーにキスをされた頬をゴシゴシ拭いてくる。

「い、痛い。痛いってば」
「油断大敵。だからあんなに近くに近寄られてるんでしょ」

サクラの頬を拭きながらぶつぶつと眉間に皺を寄せて呟くカカシがおかしくて思わず笑ってしまうと、カカシが不満そうに膨れた。

「なに。何がおかしいわけ」
「ううん。カカシ先生は私が好きなんだなーって分かったから」
「?当たり前でしょーよ」

どういうこと?、と首を傾げるカカシにサクラは「何でもない」と首を振って、カカシの手を引いて里の中へと歩いていった。



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