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short.2

それはいのといつもの甘味所であんみつを食べている時だった。

「サクラって六代目のことカカシ先生って呼ぶわよね」
「え?うん。六代目とか火影様って言うと嫌がるから」
「ふ〜ん?まぁ、あんた達第七班は六代目にとって特別だもんね。でもあんたはもっと特別だけどー?」
「・・・何が言いたいのよ」

ニヤニヤ笑う悪友の顔を睨む。
絶対顔が赤いのはバレているだろう。

「別に〜?恋人になっても前と変わらないなぁ〜って思って〜」
「だ、だって、今までカカシ先生って呼んでたのに今更変えるなんて・・・」
「まぁ、それは分かるけどね。でも先生って呼ばれたらやっぱ一歩引くもんじゃない?悪いことしてる気がして」
「えっ」

思いもよらない言葉にサクラは唖然とする。

「そ、そうなの?」
「やっぱり恋人には特別に呼ばれたいものじゃない?まぁあの人がどう思ってるかは私は知らないけどー」

いのは揶揄うようにお茶を飲む中、サクラはあることで頭がいっぱいだった。



****



いのと別れてから火影棟に向かって執務室をノックする。
中から聞こえた声にドアを開けると、中にはカカシしか居なかった。
書類から顔を上げたカカシは驚いたように目を丸くしている。

「あれ、サクラどうしたの。今日休みだったよね?」
「うん。ちょっと先生の顔見たくて」
「嬉しいこと言ってくれちゃって。ちょっと待って。これだけ終わらせるから」
「うん。・・・シカマルは?」
「オレのお使いちゅー」
「そう・・・」

ペラペラと紙を振るカカシに頷く。
真剣な表情で書類を読んでいる姿はかっこよくて胸が高鳴る。
普段は不真面目なのに不意打ちでこんな顔をするものだから、この人は何回ときめかせれば気が済むのだろうか。
顔を盗み見て見惚れていると、いのと話していたことが頭をよぎる。

「・・・カカシ先生」
「ん?」
「六代目。火影様」
「なーに?」

ふざけて呼んでいると思ったのか、カカシは笑いながら書類から顔をあげてくれない。
ごくっ、と喉を鳴らして息を吸い込む。

「・・・カカシ、さん」

緊張から虫の声のような小さい声が出た。
それでも聞こえたのか、書類にサインをしていたカカシの手が止まり、目を丸くして顔を上げてサクラを見てくる。
急に自分のしたことに恥ずかしくなってしまい、カカシに背を向ける。

「え、えっと、やっぱり私帰る!!」

サクラは急いでドアノブを捻るも、何故か開かないドア。

「何で!?」
「印で閉じたから」

いつの間にか後ろに立っていたカカシがトン、とドアに手を伸ばす。
視界に入る筋張った大きな手、そして血管の浮いた腕にサクラの心臓はバクバクと脈打つ。

「・・・どうしたの急に」
「な、何が・・・」
「何がって。今まで『カカシ先生』って呼んでたじゃない」

耳元で聞こえる低く囁く声に背中がゾクゾクする。

「もしかして誘ってる?」
「さ!?こ、こんなことでそんなことするわけないじゃない馬鹿!!」
「でもさぁ。いきなり名前で呼ばれたらこうなるのは仕方ないよね?」

カカシはサクラのお尻に硬くなったのをグリグリ押し付けてきて、それにサクラの耳は熱を帯びて真っ赤に染まる。

「ねぇ、サクラ?」

カカシに真っ赤な耳を甘く噛まれ、体を固くする。

「や、ちょ、やめて・・・!いつ人が入ってくるか・・・!」
「そうなんだよねぇ。そろそろシカマル戻ってきそうだし」
「なら、離してよぉ・・・!」

そう抗議するので聞いてくれないカカシは耳から首元に唇を下ろしていく。
何度もキスをしていく唇に思考が奪われ、身体を這うその大きな手に頭がぼやけてきたその時。

ガチャッ

「!!」

目の前のドアノブが回り、一気に頭が冴える。

「・・・あれ、あかねぇ」

ドアの外から聞こえてきた同期にして火影補佐の声に冷や汗が止まらない。

「せ、せんせ、離れて・・・!」

小声で後ろのカカシにお願いするも、何故か更にくっついてくる。
優秀な同期がこの程度の印を解くなど簡単だということを分かっているのだろうかこの火影は!

「んー、また名前で呼んでくれたら」
「う・・・!か、カカシさん!」

首まで真っ赤にして涙目でお願いを聞いてくれる恋人に、カカシの中の悪戯心が膨れ上がる。

「いいねぇ。じゃあ次は旦那様なんて──」
「調子に乗んな!しゃーーんなろー!!」

サクラは調子に乗るカカシのドアを押さえる腕を掴み、背負い投げよろしくと自慢の馬鹿力でカカシをドアに向かって投げ飛ばした。
その勢いでドアが開き、突然飛んできた上司と肩で息をする同期の顔をシカマルは驚いたように交互に見る。

「・・・サクラいたのか」
「まあね!もう帰るけど!!」

ぷりぷりと顔を真っ赤にして部屋を出て行くサクラを見送り、床に寝転がっている上司であり火影の長である男を見下ろす。
あの怒りよう。
この部屋で何をしていたのか簡単に想像ができる。

「・・・ここでイチャつくのは止めてくださいよ、六代目」
「そうだねぇ。今日は早く帰って思う存分イチャつくからよろしく」
「・・・めんどくせぇ」

よっこいしょ、とカカシは起き上がって肩を揉みながら自分の机に向かっていく。
あれはわざと投げられたな。
よくカカシはサクラの怒った顔が一番好きなのだと惚気話を何回も聞かされた。
そして今夜、恋人を部屋に連れ込んでイチャつくつもりだ。
面倒くさい上司と同期に、シカマルは大きくため息を吐いた。


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