short.2
綱手に弟子入りをしてから、医療に関してはあんなに丁寧で細かい仕事をするのにその他に関してはてんでダメなことを知った。
資料やらなんやら、一通り目を通したら物置部屋に適当に放り込むので、いざ必要になった時にどこに何があるのか全く把握出来ていない状態になる。
だから新米弟子のサクラが空き時間に部屋の片付けをするようになった。
今日も任務の前に片付けをしていると、棚の上に箱が乗っていることに気づいた。
何だろうと背伸びをして取ろうとするも届かない。
ここで椅子なり脚立なりあれば良かったんだけど無くて。
「せーの・・・」
足の裏にチャクラを溜めてジャンプするとギリギリ箱を掴めた。
「やった!た、た、た、た!」
喜んだのも束の間、着地した時にバランスを崩してしまい、そのまま埃だらけの床に倒れてしまった。
「いたぁ・・・!服が汚れちゃ・・・た・・・なんか、目眩が・・・」
体を起こすと、急に視界が歪んでくる。
やばい、と思ってももう体に力が入らなくて、そのまま意識を失った。
こん、こん、
「サクラー?いるかー?」
物置部屋を訪れたカカシは部屋を覗く。
任務の報告で執務室に行くとサクラがここにいると言われ、どれ顔を見にいこうと思って来たのだがノックをしても返事がない。
行き違いにでもなっただろうか、と部屋の中を見渡せば、散らかった部屋の真ん中でサクラが倒れているのが目に入り慌てて駆け寄る。
「サクラ!」
近くにきて分かる、頬の赤さと息の荒さ。
普通ではない状況に、カカシは周りを見渡すとサクラの近くに割れた瓶と開封厳禁と書かれた箱が落ちていた。
これが原因か?と思っていると瞼が震えてゆっくりのサクラの目が開く。
「せん、せ・・・」
「大丈夫かサクラ。すぐに綱手様のところに──」
サクラの背中に腕を回して抱え起こし、虚な瞳を覗くとサクラの腕がゆっくりと上がり、
「カカシ先生大好き!!」
首に手を伸ばしたサクラはカカシに抱きついて突然告白をしてきたのだ。
「・・・は?」
それからその状態のサクラを抱き抱えて執務室に飛び込み、驚く綱手とシズネにサクラの状態と近くにあった割れた瓶を見せた。
どうやら昔、偉い人に惚れ薬を作って欲しいと頼まれた綱手は断ることもできず、試行錯誤の末に完成して依頼主に持って行ったのだが、その時にはすでに想い人と上手くいった後だったらしい。
だから薬はいらないと言われたものの、使い道などあるもはずなくそのまま放置していた、ということらしい。
そしてそれをサクラが割れた時に吸ってしまい、最初に目に入ったカカシに惚れてしまったということらしい。
「はっはっは!ちゃんと成功していて良かった良かった!」
「良くないですよ・・・早く元に戻してください」
「それがな、私がまだ若い頃に作ったやつで何を入れたのか覚えてなくてな」
「はい!?それって」
「ああ、安心しろ。1日時間をくれれば明日には解毒薬用意してやるから今日は頑張れ。それと、大事な私の弟子に手を出そうとするんじゃないよ」
「出しませんよ・・・」
ずっと背中にくっついてくるサクラに肩を落とす。
「経緯は分かりましたけど、任務はどうするんですか」
綱手にサクラを見せている間にシズネにヤマトを連れてきてもらい、一通り説明を受けたヤマトは困った顔をする。
これからヤマト率いる七班で任務に行くことになっていたのだ。
ヤマト、ナルト、サイの3人だけでも問題なく行える任務内容にはなってはいるが。
「オレも行くしかないでしょ、サクラは離れないし。本当はオレ行かなくても良い任務だったんだけどなぁ・・・」「まぁ、ボクとしては助かりますけどね。ナルトは多分、役に立たないと思うので・・・」
「・・・そうだな」
カカシとヤマトは顔を見合わせて苦笑した。
2人の予想通り、待ち合わせ場所に現れたカカシにべったりなサクラを見てナルトはその場に泣き崩れる。
前にはナルト、背中にはサクラ。
これからの任務の成功の鍵は頼りになる後輩のヤマトと、表情が分からないサイしかいなかった。
それから任務はヤマトとサイが頑張ってくれたおかげで無事終わった。
一応サクラもカカシに褒めてもらおうと頑張ってくれていたので、その懸命な姿は微笑ましかったのだが、その度にナルトが泣き崩れるので面倒極まりなかった。
里に帰って解散になったにも関わらず、サクラはカカシにべったりだった。
「サクラ、家まで送るから」
「いや」
「嫌って、お前ね・・・」
「嫌ったら嫌!!」
絶対離すものかとサクラは前からカカシに抱きつく。
カカシは頭を悩ませるものの、いつもはしっかり者のサクラがこうやって我儘を言う姿は下忍時代を彷彿とさせて懐かしく思えた。
結局サクラはカカシの部屋に来たのだが、そこでもまた帰らないと我儘を言い出して泊めることになった。
もちろんサクラの両親には連絡済みだ。
本当の理由は誤魔化して。
こんな状態の娘が男の部屋に泊まると聞いたら心配してしまうだろうから。
そんなカカシの心情など知らないサクラは呑気にシャワーを浴びてカカシの服に着替えて。
カカシの服を上下を渡したのだが大きくて落ちてしまうとズボンを返された。
つまり、サクラは上だけしか着ていない。
上だけでも太ももまで隠れているから良かったのだが、普段は隠された白い太ももに思わず喉を鳴る。
邪な考えを頭から追い出し、クローゼットから予備の布団を取り出して床に敷く。
「せんせ、何してるの?」
「何って・・・お前泊まるんだろ?サクラはベッド使いなさい。オレは床で寝るから」
「ダメ!」
「また・・・今度は何がダメなんだ」
「先生も一緒にベッドで寝るの!!」
「・・・・・・・・・」
サクラの爆弾発言に頭を抱える。
あの薬はここまで知的な人の性格を変えてしまうのか。
サクラはカカシの腕を引っ張って無理やりベッドに連れていこうとする。
こうなったら言う通りにしないとダメらしい。
カカシは大きくため息を吐いた。
連れ込まれるようにベッドで隣同士で横になる。
恋仲でもない、教え子と同じベッドで眠るというのは不道徳でしかなく居心地が悪い。
背を向けて時間が経つのを待っていると、サクラはカカシの腰に腕を回してピッタリくっ付いてくる。
その時に背中に当たる2つの柔らかいもの。
昔と違って押し付けられる感触に背中に全意識がいって全く落ち着かない。
「ねぇ、先生。お願いがあるの」
「・・・なぁに?」
「キスして」
サクラの予想もしていなかった言葉に唾が気管に入り思い切り咳き込む。
「先生、大丈夫?」
「げほ・・・あのね、お前は今薬でおかしくなってるだけで、オレのことが本当に好きなわけじゃ」
「好きよ」
その真っ直ぐで強い言葉に振り向くと、サクラの大きな翡翠の瞳と目が合って逸せない。
ゆっくりとサクラの顔が近づいて、あと少し、あと少しで唇と唇が合わさるというときにサクラが突然眠りについた。
「はぁ・・・」
カカシは胸元に倒れて眠るサクラを見てため息を吐く。
唇が合わさる直前、写輪眼でサクラを眠らせたのだ。
強く術をかけたから朝まで起きることはないだろう。
自分は眠ることはできないだろうが。
「──ということがあったんだけどね、覚えてるかい」
「・・・ぼんやりと」
次の日、約束通り解毒剤ができてそれを飲んで気を取り戻したサクラは綱手の説明を聞いてうなじまで真っ赤になっている。
それを傍らでカカシが見ていたのだが、サクラは恥ずかしさにこちらを見ようとしない。
まぁしょうがないよな。
「じゃ、ちゃんと元に戻ったみたいでなんでオレはこれで・・・」
「あ、か、カカシ先生!」
それだけ言って執務室を出たカカシをサクラが慌てて追いかけてくる。
「あ、あの・・・迷惑かけて、ごめんなさい」
「・・・いや。薬のせいなんだ。気にするな」
「そう、ね・・・」
いつもの癖で安心させるようにサクラの頭を撫でようとするも、昨日のことを思い出して触れるのを躊躇いて触れずに手を下ろす。
それを見てサクラは寂しそうにカカシの目を見る。
ようやく目が合った瞳は昨日の夜の熱は感じない。
「あのね、私・・・」
「サクラはサスケが好き。昨日のは気の迷い。そうだろ?」
「・・・うん」
「よし。それじゃ、また任務で」
カカシはこれ以上何かが起きてはいけないと、言いくるめて逃げるようにその場から去った。
サクラは胸元を握りしめ、カカシが見えなくなるまでその背中を見つめていた。
資料やらなんやら、一通り目を通したら物置部屋に適当に放り込むので、いざ必要になった時にどこに何があるのか全く把握出来ていない状態になる。
だから新米弟子のサクラが空き時間に部屋の片付けをするようになった。
今日も任務の前に片付けをしていると、棚の上に箱が乗っていることに気づいた。
何だろうと背伸びをして取ろうとするも届かない。
ここで椅子なり脚立なりあれば良かったんだけど無くて。
「せーの・・・」
足の裏にチャクラを溜めてジャンプするとギリギリ箱を掴めた。
「やった!た、た、た、た!」
喜んだのも束の間、着地した時にバランスを崩してしまい、そのまま埃だらけの床に倒れてしまった。
「いたぁ・・・!服が汚れちゃ・・・た・・・なんか、目眩が・・・」
体を起こすと、急に視界が歪んでくる。
やばい、と思ってももう体に力が入らなくて、そのまま意識を失った。
こん、こん、
「サクラー?いるかー?」
物置部屋を訪れたカカシは部屋を覗く。
任務の報告で執務室に行くとサクラがここにいると言われ、どれ顔を見にいこうと思って来たのだがノックをしても返事がない。
行き違いにでもなっただろうか、と部屋の中を見渡せば、散らかった部屋の真ん中でサクラが倒れているのが目に入り慌てて駆け寄る。
「サクラ!」
近くにきて分かる、頬の赤さと息の荒さ。
普通ではない状況に、カカシは周りを見渡すとサクラの近くに割れた瓶と開封厳禁と書かれた箱が落ちていた。
これが原因か?と思っていると瞼が震えてゆっくりのサクラの目が開く。
「せん、せ・・・」
「大丈夫かサクラ。すぐに綱手様のところに──」
サクラの背中に腕を回して抱え起こし、虚な瞳を覗くとサクラの腕がゆっくりと上がり、
「カカシ先生大好き!!」
首に手を伸ばしたサクラはカカシに抱きついて突然告白をしてきたのだ。
「・・・は?」
それからその状態のサクラを抱き抱えて執務室に飛び込み、驚く綱手とシズネにサクラの状態と近くにあった割れた瓶を見せた。
どうやら昔、偉い人に惚れ薬を作って欲しいと頼まれた綱手は断ることもできず、試行錯誤の末に完成して依頼主に持って行ったのだが、その時にはすでに想い人と上手くいった後だったらしい。
だから薬はいらないと言われたものの、使い道などあるもはずなくそのまま放置していた、ということらしい。
そしてそれをサクラが割れた時に吸ってしまい、最初に目に入ったカカシに惚れてしまったということらしい。
「はっはっは!ちゃんと成功していて良かった良かった!」
「良くないですよ・・・早く元に戻してください」
「それがな、私がまだ若い頃に作ったやつで何を入れたのか覚えてなくてな」
「はい!?それって」
「ああ、安心しろ。1日時間をくれれば明日には解毒薬用意してやるから今日は頑張れ。それと、大事な私の弟子に手を出そうとするんじゃないよ」
「出しませんよ・・・」
ずっと背中にくっついてくるサクラに肩を落とす。
「経緯は分かりましたけど、任務はどうするんですか」
綱手にサクラを見せている間にシズネにヤマトを連れてきてもらい、一通り説明を受けたヤマトは困った顔をする。
これからヤマト率いる七班で任務に行くことになっていたのだ。
ヤマト、ナルト、サイの3人だけでも問題なく行える任務内容にはなってはいるが。
「オレも行くしかないでしょ、サクラは離れないし。本当はオレ行かなくても良い任務だったんだけどなぁ・・・」「まぁ、ボクとしては助かりますけどね。ナルトは多分、役に立たないと思うので・・・」
「・・・そうだな」
カカシとヤマトは顔を見合わせて苦笑した。
2人の予想通り、待ち合わせ場所に現れたカカシにべったりなサクラを見てナルトはその場に泣き崩れる。
前にはナルト、背中にはサクラ。
これからの任務の成功の鍵は頼りになる後輩のヤマトと、表情が分からないサイしかいなかった。
それから任務はヤマトとサイが頑張ってくれたおかげで無事終わった。
一応サクラもカカシに褒めてもらおうと頑張ってくれていたので、その懸命な姿は微笑ましかったのだが、その度にナルトが泣き崩れるので面倒極まりなかった。
里に帰って解散になったにも関わらず、サクラはカカシにべったりだった。
「サクラ、家まで送るから」
「いや」
「嫌って、お前ね・・・」
「嫌ったら嫌!!」
絶対離すものかとサクラは前からカカシに抱きつく。
カカシは頭を悩ませるものの、いつもはしっかり者のサクラがこうやって我儘を言う姿は下忍時代を彷彿とさせて懐かしく思えた。
結局サクラはカカシの部屋に来たのだが、そこでもまた帰らないと我儘を言い出して泊めることになった。
もちろんサクラの両親には連絡済みだ。
本当の理由は誤魔化して。
こんな状態の娘が男の部屋に泊まると聞いたら心配してしまうだろうから。
そんなカカシの心情など知らないサクラは呑気にシャワーを浴びてカカシの服に着替えて。
カカシの服を上下を渡したのだが大きくて落ちてしまうとズボンを返された。
つまり、サクラは上だけしか着ていない。
上だけでも太ももまで隠れているから良かったのだが、普段は隠された白い太ももに思わず喉を鳴る。
邪な考えを頭から追い出し、クローゼットから予備の布団を取り出して床に敷く。
「せんせ、何してるの?」
「何って・・・お前泊まるんだろ?サクラはベッド使いなさい。オレは床で寝るから」
「ダメ!」
「また・・・今度は何がダメなんだ」
「先生も一緒にベッドで寝るの!!」
「・・・・・・・・・」
サクラの爆弾発言に頭を抱える。
あの薬はここまで知的な人の性格を変えてしまうのか。
サクラはカカシの腕を引っ張って無理やりベッドに連れていこうとする。
こうなったら言う通りにしないとダメらしい。
カカシは大きくため息を吐いた。
連れ込まれるようにベッドで隣同士で横になる。
恋仲でもない、教え子と同じベッドで眠るというのは不道徳でしかなく居心地が悪い。
背を向けて時間が経つのを待っていると、サクラはカカシの腰に腕を回してピッタリくっ付いてくる。
その時に背中に当たる2つの柔らかいもの。
昔と違って押し付けられる感触に背中に全意識がいって全く落ち着かない。
「ねぇ、先生。お願いがあるの」
「・・・なぁに?」
「キスして」
サクラの予想もしていなかった言葉に唾が気管に入り思い切り咳き込む。
「先生、大丈夫?」
「げほ・・・あのね、お前は今薬でおかしくなってるだけで、オレのことが本当に好きなわけじゃ」
「好きよ」
その真っ直ぐで強い言葉に振り向くと、サクラの大きな翡翠の瞳と目が合って逸せない。
ゆっくりとサクラの顔が近づいて、あと少し、あと少しで唇と唇が合わさるというときにサクラが突然眠りについた。
「はぁ・・・」
カカシは胸元に倒れて眠るサクラを見てため息を吐く。
唇が合わさる直前、写輪眼でサクラを眠らせたのだ。
強く術をかけたから朝まで起きることはないだろう。
自分は眠ることはできないだろうが。
「──ということがあったんだけどね、覚えてるかい」
「・・・ぼんやりと」
次の日、約束通り解毒剤ができてそれを飲んで気を取り戻したサクラは綱手の説明を聞いてうなじまで真っ赤になっている。
それを傍らでカカシが見ていたのだが、サクラは恥ずかしさにこちらを見ようとしない。
まぁしょうがないよな。
「じゃ、ちゃんと元に戻ったみたいでなんでオレはこれで・・・」
「あ、か、カカシ先生!」
それだけ言って執務室を出たカカシをサクラが慌てて追いかけてくる。
「あ、あの・・・迷惑かけて、ごめんなさい」
「・・・いや。薬のせいなんだ。気にするな」
「そう、ね・・・」
いつもの癖で安心させるようにサクラの頭を撫でようとするも、昨日のことを思い出して触れるのを躊躇いて触れずに手を下ろす。
それを見てサクラは寂しそうにカカシの目を見る。
ようやく目が合った瞳は昨日の夜の熱は感じない。
「あのね、私・・・」
「サクラはサスケが好き。昨日のは気の迷い。そうだろ?」
「・・・うん」
「よし。それじゃ、また任務で」
カカシはこれ以上何かが起きてはいけないと、言いくるめて逃げるようにその場から去った。
サクラは胸元を握りしめ、カカシが見えなくなるまでその背中を見つめていた。
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