ファミリー(長編)
「ハルカちゃんのパパって、かっこいいよね!」
「え?」
幼稚園の授業中。
同じ机で絵を描いてる子から話しかけられる。
「きのう、サツキちゃんがころんじゃってないちゃったの」
サツキと呼ばれる少女の隣に座る別の少女が話に混ざる。
「ハルカちゃんのパパがおこしてくれたんだけど、こわくてないたらね」
「そしたらマスクとってわらってくれたんだよ」
「かっこよくてビックリしちゃった!」
ねー、と目の前の少女たちは頬を染めて父のことを話している。
クレヨンを握りしめているハルカに気づかず。
****
「パパきらい!!」
仕事が終わり我が家のドアを開けるとハルカがちょうど玄関の近くにいた。
目が合って顔を綻ばせるカカシと対照的に頬を膨らませるハルカ。
何かあったのかと心配していると先ほどの嫌い発言。
ご飯を作っていたサクラは何事かと玄関を覗くと、部屋に逃げ込むハルカと玄関で呆然と立ち尽くすカカシ。
そしてボロボロ泣き出す一回り年上の夫を見て、サクラはため息を吐いたのだった。
****
「ハルカ、入るわよ」
サクラは子供部屋をノックしてドアを開ける。
部屋を見渡すと、ベッドの上で布団が小さく膨らんでいた。
サクラはその膨らみの横に座り優しく撫でる。
「ハルカ」
もう一度呼びかけると、小さく揺れて鼻水を啜る音が聞こえる。
「なんであんなこと言ったの?」
「だって・・・」
布団がモゾモゾと動いたと思ったら、泣き顔の可愛い顔がひょこりと出てくる。
「サツキちゃんが・・・」
「サツキちゃん?」
ハルカの友人の名前が出てきて、何か喧嘩でもしたのだろうかと頭をよぎる。
「サツキちゃんが、パパのかお、みたって」
「え?」
「パパのかお、かっこいいって」
そこまで言ってまたハルカの瞳が潤み出す。
「パパのかおみれるの、ママとハルカだけなのに・・・」
涙が留まれなくなって柔らかい頬を流れる。
サクラはその言葉に頬が緩む。
「ハルカは、他の子がパパのマスク外した顔を見たのが嫌だったのね?」
サクラの言葉に啜り泣くハルカは頷く。
「ですって」
「え?」
ハルカは顔を上げると、サクラはこっちを見ておらず部屋の外に向かって声をかけていた。
ハルカも同じ方向を見ると、そこからカカシが顔を覗かせる。
どうやら部屋の外で話を聞いていたらしい。
カカシは泣きながら笑ってハルカを抱きしめる。
「もうマスク外さない!!」
****
次の日の幼稚園。
子供たちは迫る父の日に向けて、お父さんにあげる絵を描いていた。
「あら、ハルカちゃん」
絵を描いていると、頭の上から担任の先生に呼ばれて顔をあげる。
「上手に描けたわね」
「うん!」
「でもマスク付けたお顔でいいの?」
そう。
ハルカが描いたカカシの絵は、いつもの口布をつけてにこやかに笑っていた。
「うん!あのね、パパのおかおはね、ママとハルカのだから!」
ハルカは嬉しそうに笑ってまた絵の続きを描き始める。
その言葉に先生たちは内心ガッカリしていた。
里の女性たちで噂になっているカカシの美形説。
サツキたちがカカシの顔を見たと聞いて、父の日の絵でハルカが素顔を描いてくれると期待していたのだ。
しかしその期待が裏切られ、先生たちはこっそりため息を吐いていたのだった。
****
にこにこにこ
「・・・・・・」
にこにこにこ
「・・・先輩」
「何?」
「・・・何かいいことでもあったんですか」
ヤマトが執務室に入ると、カカシが珍しくにこにこと笑っていたのだ。
そんな風に笑うカカシに嫌な予感を感じていたヤマトだったが、話を聞けオーラを飛ばしてくるので我慢出来ずに話しかける。
すると、カカシはパァと嬉しそうに笑う。
「聞きたい?聞きたい?」
「・・・いえ」
「昨日、オレがハルカの友達に素顔見せたことにハルカがヤキモチ焼いちゃってさ。もー、可愛くて」
ヤマトの言葉を無視して喋り出すカカシの顔は憧れの先輩の頃の面影がどこにもないほどのデレデレで。
あの冷血と呼ばれたカカシはどこに行ったのかと遠い目をするヤマト。
それでもカカシの口は止まらない。
「でさ、血って争えないんだなって思ったよ」
意識が過去に言っていたヤマトはその言葉に現実に戻ってくる。
「何のことですか?」
「ん?いやね、昔サクラにも同じこと言われたことがあってさ。入院中に口布外して寝こけてたら、見舞いに来たサクラに『先生は私のものなんだから他の人に見せないで!』って。あれは胸を鷲掴みされたねー」
「はぁ・・・」
またカカシの顔がデレデレしはじめる。
ヤマトの部下だったピンク色の少女。
その少女は女性となり、目の前の男の妻となった。
ヤマトは彼女に少なからず恋慕を抱いていた。
しかし大人の男として、上司としてそれは隠し通し、第七班は恐らく誰も知らない。
──目の前の男以外は。
カカシは自分のサクラがどれだけ可愛いのか惚気てくるのだ。
嫌がらせで。
「昨日サクラにもその話したら顔真っ赤にしちゃってさ。可愛くてつい張り切っちゃったよ」
「・・・・・・」
何が、と聞くのはカカシの思う壺ということだと長年の付き合いで分かっている。
それに、先程廊下でサクラとすれ違ったときに腰を摩っていたのを見た。
ヤマトは昨夜のことを思い出してニヤニヤしてるカカシに気づかれないように小さくため息を吐く。
「ほんと、うちの子たちは可愛いよねー」
「え?」
幼稚園の授業中。
同じ机で絵を描いてる子から話しかけられる。
「きのう、サツキちゃんがころんじゃってないちゃったの」
サツキと呼ばれる少女の隣に座る別の少女が話に混ざる。
「ハルカちゃんのパパがおこしてくれたんだけど、こわくてないたらね」
「そしたらマスクとってわらってくれたんだよ」
「かっこよくてビックリしちゃった!」
ねー、と目の前の少女たちは頬を染めて父のことを話している。
クレヨンを握りしめているハルカに気づかず。
****
「パパきらい!!」
仕事が終わり我が家のドアを開けるとハルカがちょうど玄関の近くにいた。
目が合って顔を綻ばせるカカシと対照的に頬を膨らませるハルカ。
何かあったのかと心配していると先ほどの嫌い発言。
ご飯を作っていたサクラは何事かと玄関を覗くと、部屋に逃げ込むハルカと玄関で呆然と立ち尽くすカカシ。
そしてボロボロ泣き出す一回り年上の夫を見て、サクラはため息を吐いたのだった。
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「ハルカ、入るわよ」
サクラは子供部屋をノックしてドアを開ける。
部屋を見渡すと、ベッドの上で布団が小さく膨らんでいた。
サクラはその膨らみの横に座り優しく撫でる。
「ハルカ」
もう一度呼びかけると、小さく揺れて鼻水を啜る音が聞こえる。
「なんであんなこと言ったの?」
「だって・・・」
布団がモゾモゾと動いたと思ったら、泣き顔の可愛い顔がひょこりと出てくる。
「サツキちゃんが・・・」
「サツキちゃん?」
ハルカの友人の名前が出てきて、何か喧嘩でもしたのだろうかと頭をよぎる。
「サツキちゃんが、パパのかお、みたって」
「え?」
「パパのかお、かっこいいって」
そこまで言ってまたハルカの瞳が潤み出す。
「パパのかおみれるの、ママとハルカだけなのに・・・」
涙が留まれなくなって柔らかい頬を流れる。
サクラはその言葉に頬が緩む。
「ハルカは、他の子がパパのマスク外した顔を見たのが嫌だったのね?」
サクラの言葉に啜り泣くハルカは頷く。
「ですって」
「え?」
ハルカは顔を上げると、サクラはこっちを見ておらず部屋の外に向かって声をかけていた。
ハルカも同じ方向を見ると、そこからカカシが顔を覗かせる。
どうやら部屋の外で話を聞いていたらしい。
カカシは泣きながら笑ってハルカを抱きしめる。
「もうマスク外さない!!」
****
次の日の幼稚園。
子供たちは迫る父の日に向けて、お父さんにあげる絵を描いていた。
「あら、ハルカちゃん」
絵を描いていると、頭の上から担任の先生に呼ばれて顔をあげる。
「上手に描けたわね」
「うん!」
「でもマスク付けたお顔でいいの?」
そう。
ハルカが描いたカカシの絵は、いつもの口布をつけてにこやかに笑っていた。
「うん!あのね、パパのおかおはね、ママとハルカのだから!」
ハルカは嬉しそうに笑ってまた絵の続きを描き始める。
その言葉に先生たちは内心ガッカリしていた。
里の女性たちで噂になっているカカシの美形説。
サツキたちがカカシの顔を見たと聞いて、父の日の絵でハルカが素顔を描いてくれると期待していたのだ。
しかしその期待が裏切られ、先生たちはこっそりため息を吐いていたのだった。
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にこにこにこ
「・・・・・・」
にこにこにこ
「・・・先輩」
「何?」
「・・・何かいいことでもあったんですか」
ヤマトが執務室に入ると、カカシが珍しくにこにこと笑っていたのだ。
そんな風に笑うカカシに嫌な予感を感じていたヤマトだったが、話を聞けオーラを飛ばしてくるので我慢出来ずに話しかける。
すると、カカシはパァと嬉しそうに笑う。
「聞きたい?聞きたい?」
「・・・いえ」
「昨日、オレがハルカの友達に素顔見せたことにハルカがヤキモチ焼いちゃってさ。もー、可愛くて」
ヤマトの言葉を無視して喋り出すカカシの顔は憧れの先輩の頃の面影がどこにもないほどのデレデレで。
あの冷血と呼ばれたカカシはどこに行ったのかと遠い目をするヤマト。
それでもカカシの口は止まらない。
「でさ、血って争えないんだなって思ったよ」
意識が過去に言っていたヤマトはその言葉に現実に戻ってくる。
「何のことですか?」
「ん?いやね、昔サクラにも同じこと言われたことがあってさ。入院中に口布外して寝こけてたら、見舞いに来たサクラに『先生は私のものなんだから他の人に見せないで!』って。あれは胸を鷲掴みされたねー」
「はぁ・・・」
またカカシの顔がデレデレしはじめる。
ヤマトの部下だったピンク色の少女。
その少女は女性となり、目の前の男の妻となった。
ヤマトは彼女に少なからず恋慕を抱いていた。
しかし大人の男として、上司としてそれは隠し通し、第七班は恐らく誰も知らない。
──目の前の男以外は。
カカシは自分のサクラがどれだけ可愛いのか惚気てくるのだ。
嫌がらせで。
「昨日サクラにもその話したら顔真っ赤にしちゃってさ。可愛くてつい張り切っちゃったよ」
「・・・・・・」
何が、と聞くのはカカシの思う壺ということだと長年の付き合いで分かっている。
それに、先程廊下でサクラとすれ違ったときに腰を摩っていたのを見た。
ヤマトは昨夜のことを思い出してニヤニヤしてるカカシに気づかれないように小さくため息を吐く。
「ほんと、うちの子たちは可愛いよねー」