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◉ツクシ

「あれ、サクラ?」

幼稚園と保育園に預けている愛娘2人を迎えに行こうとした時、妻であるサクラが火影棟の出入り口に立っていた。
カカシに気づいたサクラは可愛らしく微笑み近づいてくる。

「今日はオレが迎えに行く日じゃなかったっけ」
「うん。そうなんだけど、早く仕事終わったから」
「そっか。じゃあ一緒に行きますか」

嬉しそうに笑って手を差し出すカカシに、サクラは笑顔の仮面を貼り付けてその手を取った。

 

「こんにちはー。はたけです」
「六代目!お帰りなさい・・・って、あ、今日はお母様もご一緒なんですね」

カカシが声をかけると幼稚園の先生は頬を染めて出迎える。
しかし横にいるサクラに気づいて気まずそうに笑うのでサクラはそのまま仮面を貼り付けて笑った。

「ハルカちゃーん。パパとママがお迎えにきてくれたよー」
「え!パパとママ?ほんとうだ!」

先生に呼ばれて教室で遊んでいたハルカが顔を出す。
2人の顔を見てハルカは満面の笑みになり、サクラの足に飛びつく。

「ハルカ。良い子にしてた?」
「うん!きょうはパパのひじゃなかったの?」
「・・・ママもハルカ迎えにきたかったから」
「んふふー!」

嬉しそうにするハルカの頭を撫でていると、1歳児クラスの先生がツクシをカカシに渡すときに頬を染めているのを見逃さなかった。
しかもその後ろには他のクラスの先生たちもいて、同じような顔をしてカカシを見つめている。
その本人は気づいているのかいないのか、カカシは抱えるツクシとイチャイチャしているし。

先生たちに名残惜しい感じで見送られ、4人はハルカを真ん中に手を繋いで歩く。
ツクシはカカシに片手で抱えられたまま。
ハルカは両手で2人の手と繋いで楽しそうに鼻歌を歌っている。

「ご機嫌だねぇ」
「うん!だってパパもママもいるから!」
「パパもママといれて嬉しいよ」

にこにこと笑う2人に釣られてツクシも笑顔になる。
そんなみんなに、罪悪感から胸が痛くなった。


「・・・ねぇハルカ」
「なぁに?」

家に帰り着いて夕ご飯の準備をする。
野菜を切りながら背伸びをして覗いてくるハルカに話しかける。

「パパがお迎えに来た日ってどんな感じ?」
「どんな?」
「えーと、例えば、ママが来た時と違うなーとか」
「・・・ハルカわかんない」
「だよね・・・」

サクラの質問の意味が分からなくて眉を下げるハルカにサクラも同じような顔をする。
するとハルカは「あっ」と声を出す。

「でも、パパがきたら、ほかのおへやのせんせいもくるよ」
「!・・・そう」
「?ママ、おやつたべていい?」
「・・・だめ。もうすぐご飯よ」
「ブー!」

ハルカが棚にある自分のおやつを指さしておねだりの顔をするも、サクラは頭を横に振る。
頬を膨らませてブーブー鳴らすハルカに苦笑しながら、気づかれないように小さくため息を吐いた。



心がこんなにも乱れているのは、いのの一言だった。

『うちの子迎えに行ったらさ、カカシ先生が幼稚園の先生たちに囲まれてたのよ。本当あの人モテるわよねー』

そんなことを知らなかったサクラはカカシが迎えに行く日は落ち着かなかった。
それなら仕事を早く終わらせて火影棟の前でカカシを待ち、一緒に2人を迎えに行って牽制する。
この人は自分のものなのだと。

そんな日々が続けばさすがのカカシも不審がり、夜、子供たちを寝かした後にサクラを捕まえて問い詰める。

「サクラ。何かオレに隠し事してるよね」
「・・・してないわよ」
「ならオレの目を見て言いなさい」

ぐい、とサクラの頬を掴んで無理やり目を合わせる。
言わないと離さないと、灰青の両目に見つめられて言葉に詰まる。
こんなふうに命令口調で言われると昔を思い出して逆らうことなんかできない。

「・・・先生が悪いのよ」
「・・・ん?」
「いのに、幼稚園でカカシ先生が先生たちに囲まれてたって聞いたの。女の人たちに囲まれてさぞ良い気分だったんでしょうね」

ふん!と鼻を鳴らし、顔を掴まれて動かせないから目だけを逸らすサクラに、カカシは喉の奥で笑う。

「・・・私怒ってるんですけど」
「うん。サクラはお母さんになってもやっぱり可愛いって分かった。嫉妬してくれたんだ?」

ちゅっ、とカカシはサクラの頬にキスをするも、サクラは頑としてこちらを見ない。
しかしカカシの手が意志を持って動き出して、慌ててカカシを見る。

「ちょ、ちょっと・・・!ここじゃハルカが起きてくるかもだし、寝室にはツクシが・・・」
「うん。最後まではしないからさ、可愛い奥さん愛させて?」

微笑むカカシに頬を膨らませるも、その先を期待してしまうサクラはゆっくりと目を閉じた。


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