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◉ススキ

カカシ46歳、サクラ32歳。
はたけ家に待望の長男、はたけススキが誕生した。
今まで女の子しか産まれたかった上、見た目が薄紅色、翡翠の瞳、猫のようにクリッとした目とまさにサクラそのもので、両親と歳の離れた姉たち、そしてナルトに溺愛されて育った。


月日は流れ、ススキはすくすくと育ち5歳になった。

「待ちなさいって、ススキ!」
「やだよー!」

すっかり甘やかされて育ったススキは我儘のやんちゃ小僧に。
そしてカカシに対して反抗的だった。
ススキが物心がついたときにはカカシは火影の座をナルトに譲り渡して隠居の身となり、ほとんど家でだらだらとしているカカシしか見ていない。
サクラはもちろん、ナルトやサスケ、姉たちがどれだけカカシが偉大だったのかを伝えても、ススキには全く響かないのだ。
あのはたけカカシが息子に舐められ振り回されているなど、彼に屠られた敵たちが草葉の陰で泣いていることだろう。



****



木ノ葉神社で毎年開かれる木ノ葉祭り。
はたけ家も浴衣を着て全員でお祭りに来ていた。
まだ5歳児のススキはたくさんの出店に目移りしながらサクラに手を引かれて歩く。

「わ、ママあれ見て」
「なにー?」

ハルカがある出店を指差し、サクラの気がそれたのを見たススキはニシシと笑って手を離した。

「え、あ、ちょっと!ススキ待ちなさい!!」

サクラが追いかけようとするも、お祭りで訪れた人々によってすぐにススキを見失ってしまった。




「どこにかくれよっかなー!」

ススキは神社から抜け出し、裏の人気のない林の中に入る。
まだ夕方なのに薄暗い場所。
危ないから入ったらダメだとサクラに言われているが、ここならサクラたちに見つかりそうにない。
最近のススキはかくれんぼがマイブーム。
しかし忍である両親や姉たちにすぐ見つかってしまうのが不満だった。
今日はお祭りで人もたくさんいるし、この中にいるとは思わないだろう。
叱られるなど全く頭にないススキはちょうど良い隠れ場所を探していると、近くの草陰が大きく揺れた。

「だぁれ・・・?」

その方向に問いかけると、そこからボロボロの身なりの男が現れる。

「ちっ・・・こんなガキに見つかるとはな・・・」

木ノ葉のマークではない額当てを付けた男は、ススキに殺気を飛ばしてクナイを向けてくる。

「悪いなガキ。オレはまだこんなとこで捕まるわけにはいかないんだよ」
「ひっ・・・!」

ススキは小さく悲鳴を上げて逃げようにも足が動かない。

「じゃあな!!」
「ママ・・・パパーーーー!!」

ススキに飛びかかってくる男。
ススキは目を瞑り2人の名前を叫んだ時、目の前から「ガッ!!」と変な声が聞こえた。
恐る恐る目を開けると、男は地面に押さえつけられ、その上にはカカシがいた。

「オレの息子に何してんの」
「は、はたけカカシ!?」

地の底から這い上がったかのような低い声と殺気に抜け忍は目を丸くする。
かつて他里のビンゴブックに名が乗り、この里の長にまでなった男がいきなり現れただけでも驚くというのに、今、目の前の子供のことをなんと言った・・・?

「このガキが、息子だと・・・!?」
「そうだよ。オレの大事な息子」
「っ!!」

男の頭を掴んだカカシの手から紫の雷が放たれ、男は声にならない悲鳴を上げてグッタリと動かなくなった。
よいしょ、と男の上から立ち上がったカカシはススキの側に行き、目が合うようにしゃがみ込む。

「怪我はないか?ススキ」
「う、うん・・・」

一瞬の出来事と、さっきまでのカカシの雰囲気に動けずただ頷くことしか出来ないでいると、カカシはいつものように笑って頭を撫でてくれた。



「ススキ!!」

それから犯人を縛っていると、3人を呼びに行っていたパックンとサクラたちが慌てて走ってくる。
呼ばれて振り向いたススキが「ママ」と呼ぶとと同時にサクラがススキを掻き抱く。

「心配かけて、この子は・・・!」
「ごめんなさい、ママ・・・」

自分を抱きしめる手が震えていることに気づき、ススキは素直に謝る。
その頭をハルカは小突く。

「この馬鹿」
「心配したよ、ススキ」
「ごめんなさい、ハルねえ、ツクねえ・・・」

いつも生意気な弟が素直になっていることに姉2人は顔を見合わせて苦笑した。
今回のことは相当堪えたのだろう。
ススキは落ち込んだ顔から、ぱっと顔を上げてカカシを見る。

「ありがとう、パパ。かっこよかった!」

初めて聞く褒め言葉にカカシは目を瞬かせ、嬉しそうに笑ってススキの頭を撫でた。



****


それからススキはカカシにべったりになり、暇さえあれば忍術を教えろと言う。

「パパー!またあのバチバチみせてよー!」
「ちょっと待って・・・休憩させて・・・」

カカシは地面に膝を付いて肩で息をしている。
今日だけで何回紫電を使わされていることやら。
チャクラ量が少ないカカシはナルトみたいにバンバン使えるわけではない。

「パパおじいちゃんみたい!」
「ぐはっ!」

カカシを見下ろすススキからの渾身の一撃にカカシはその場に倒れる。
ススキはどうしてカカシが倒れたのか分からず首を傾げていると、見かねたハルカが2人に近づいてくる。

「スス!そんなに見たいならお姉ちゃんが見せてあげようか」
「え〜?パパのほうがすごいよ」
「う!そ、そりゃ紫電はパパの技だけど・・・お姉ちゃんだってすごいのよ?」
「パパのがいい」

ぷいっと顔を逸らしてカカシを急かすススキ。
若干ブラコン気味のハルカは肩を落として落ち込んでいるとツクシがハルカの後ろから現れる。

「ススキ、お姉ちゃんの見てあげてよ」
「えー・・・?ツクねえがいうならいいよ」

ススキは渋々といった感じに頷く。
何故か昔からススキはハルカよりツクシの言うことを聞く。
そんなことを気にしないハルカは嬉しそうに笑ってススキの手を繋いで3人離れた場所に向かった。
1人残されたカカシの元に一部始終見ていたサクラが近づいてくる。

「ふふ。あの木ノ葉一の忍と言われた人とは思えないわね?先生」
「しょうがないでしょ・・・オレもう50過ぎてるんだぞ?5歳児の体力には付いていけないって・・・」

はぁ、とため息をカカシ。
サクラでもあの子に付いていくのは大変なのだから、隠居の身となったカカシからしたらもっと大変なのだろう。
カカシの銀の髪には白髪が増え、顔の皺も深くなった。
それだけ長く一緒にいるのよね、とサクラは感慨深くなる。

「夜の時はあんなに体力持て余してるのにね?」
「そりゃサクラが可愛いのが悪いよね。今日もしちゃう?」

目が合うようにしゃがんでいたサクラの手をカカシは手に取り、指先に口付けながら色気を醸し出す。
歳を取れば取るほどカカシの色気は増していき、そしてそっちの方も昔から変わらず元気だ。
ススキがお腹に宿った時、知らせを聞いたナルトとサスケはカカシの相変わらずの元気さに呆れていたほど。
それはサクラもで、掴まれていない手でカカシの頭にげんこつを落とす。

「そんな体力あるならススキの相手してきなさい!」
「はい・・・」

サクラに背中を叩かれたカカシは背中を丸めながら子供たちのところに向かう。
来たカカシにススキは嬉しそうに足に飛びつき、ハルカはカカシから紫電の修行を付けてもらうのを見て、昔、同じような光景を見たことを思い出す。
あれはサクラ達が下忍のとき。
演習場でカカシに修行を付けてもらい、クタクタでお昼休憩をして、すぐに体力が回復したナルトとサスケに強請られて渋々修行を付けてあげる背中を木陰で休みながら見ていたことを。
その横顔は嫌々そうにしながらもどこか嬉しそうで。
その顔が昔と変わらなくて、何年経ってもカカシはカカシのまんまで。
変わらない日常が愛おしいと、サクラはこちらに手を振る4人を見てそう思ったのだった。


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