◉ハルカ
「サクラ。お前、結婚してからカカシを甘やかしすぎじゃないか」
皆が休みの日、はたけ家にナルトとサスケを誘ってゆっくりとした時間を過ごしていたのだが。
徐にサスケが口を開き、その言葉に目を丸くする。
「え、そう?」
「付き合ってた時は人前で抱きつかれたら殴ってただろ」
サスケは床に座りハルカと遊ぶサクラを後ろから抱きしめて座るカカシを一瞥する。
サクラは指摘されるまでカカシに抱え込まれていることに気づかないほどにこれが当たり前になっていた。
同じようにハルカと遊んでいたナルトは首が取れそうなほどに強く頷く。
「あ、確かに!最近殴ってるサクラちゃん見てないかも」
「ちょっとお前ら。人の奥さんに変なこと言わないでくれる?これがうちでは当たり前なの。なー、サクラー?」
「・・・確かに」
「・・・サクラ?」
後ろから笑いかけるも、サクラはこちらを見ずに顎に指を当てて何やら不穏なことを呟く。
呼びかけてようやくこちらを見たサクラの瞳には変な意志が籠っていて・・・すごく嫌な予感がした。
そして次の日から、カカシが甘えようとすると昔に戻ったかのように邪険に扱われるようになった。
「サクラ〜」
「邪魔!」
洗濯物を畳むサクラを後ろから抱きしめようとするとぺちんと腕を叩かれ、カカシは頬を膨らませてむくれる。
「それが夫にすること?」
「私サスケくんの言葉で目が覚めたの。すっかり緩み切ってたんだわ。これからは厳しくいきます!」
「えー・・・」
それから宣言通り今までの甘々イチャイチャタイムがなくなり、だんだんカカシの機嫌が悪くなる。
「サクラ・・・」
「だめ」
顔を近づけてキスをしようとしてもふい、と顔を逸らされ、さすがのカカシも我慢の限界だった。
「・・・分かった。サクラがそうするならオレにも考えがある」
それからカカシはサクラに触れなくなった。
行ってきますもただいまのキスも、抱きついてくることもなくなった。
別に無視しているわけでもなく、今まで通り会話はするものの、どこか雰囲気が違っていて、産まれてからずっとイチャイチャしている2人しか見てきていないハルカはどうしたらいいのか戸惑っていた。
サクラはというとまさかこんなふうになると思っておらず、意固地になっていた自分に後悔していた。
当たり前だったことが当たり前じゃなくなって、寂しくてしょうがなかった。
夜、サクラは勇気を振り絞って、ベッドで隣で眠っているカカシに話しかける。
「か、カカシ先生・・・」
「・・・ん〜?どうした〜?」
目だけこちらに向けるカカシにサクラは緊張で次の言葉を紡げない。
いつもカカシからしてくれるから自分からだなんて初めてで何て言ったらいいのか・・・。
「あ、あのね・・・」
「眠れないのか?」
こちらに体を向けるカカシに、サクラは意を決して少し顔を上に向けて目を瞑る。
夜目が聞くカカシならサクラがどうして欲しいのか分かるだろうと行動に出ることにした。
──しかし。
カカシの唇が触れたのはサクラの唇ではなく額だった。
驚いて目を開けるとカカシは微笑を浮かべている。
「ほら、明日も仕事なんだから早く寝なさい」
「・・・・・・うん」
おやすみ、とカカシはまた仰向けになってすぐに寝息が聞こえる。
今までカカシに拒否られたことがなく、じわりと涙が滲んできてカカシに背中を向けて涙を拭った。
次の日、サクラはアカデミーを歩くナルトを引き止める。
「・・・ナルト」
「あれ、サクラちゃん、どしたの?」
「うん・・・あのね、お願いがあるの」
「ただーいま」
カカシが仕事を終えて帰ると、部屋の奥から走ってくる音がする。
ハルカかな、って思っていると現れたのはサクラで、カカシに思い切り飛びかかった。
「・・・サクラ?どうした」
聞いてもギューっと首に回す腕に力を入れるだけで離れない。
しょうがない、とそのまま抱え上げて部屋の中に入ると愛娘のハルカの姿がなかった。
「ハルカは?」
「・・・ナルトにお願いしてお泊まりしてもらってる」
「それまた急だな」
「うん・・・」
ソファーに座りサクラを膝から下ろして横に座らせるも、それでも離れようとしないサクラにカカシはほくそ笑む。
「オレの気持ち分かった?」
「うん・・・ごめんなさい・・・」
見上げてくる翡翠の瞳が涙で潤んで綺麗で、瞼にキスをする。
「ハルカは明日まで帰ってこないんでしょ?」
「うん・・・」
見つめ合う2人の瞳には同じ熱が籠っている。
サクラがまたカカシの首に腕をまわし、カカシがサクラを抱き抱えて寝室へと向かった。
次の日の朝、ナルトがハルカを連れてインターホンを鳴らす。
「はーい」とインターホン越しに聞こえてきたサクラの声はいつもと同じでほっとしているとドアが開き、現れたサクラの横にはカカシが手をサクラの腰に回しピッタリとくっ付いていた。
それはいつも通りの光景で、ハルカは嬉しそうにサクラの足に飛びつく。
「ありがとうナルト。ごめんね、急に」
「楽しかったから大丈夫だってばよ!・・・それより元に戻ったんだ」
「サクラが寂しがっちゃってさー。朝も起き上がれなくなっちゃて、イテッ」
ハルカから見えないように腰に回る手を顔を真っ赤にしてつねる。
ナルトからはバッチリと見えており、元々のイチャイチャ夫婦に戻っていて遠い目をする。
サクラは恥ずかしそうに咳払いをしてナルトに微笑みかける。
「お礼にお茶でも飲んでいってよ」
「いや・・・お腹いっぱいだから帰るってばよ」
「そう?」
「ナルト、ばいばーい!またね!」
「ばいばい!」
元気に手を振るハルカに同じようにナルトは手を大きく振って家路を歩きながら空を見上げる。
綺麗な青色の空は独り身には眩しくて、旅に出ているサスケに愚痴の手紙を出そうと決めたのだった。
皆が休みの日、はたけ家にナルトとサスケを誘ってゆっくりとした時間を過ごしていたのだが。
徐にサスケが口を開き、その言葉に目を丸くする。
「え、そう?」
「付き合ってた時は人前で抱きつかれたら殴ってただろ」
サスケは床に座りハルカと遊ぶサクラを後ろから抱きしめて座るカカシを一瞥する。
サクラは指摘されるまでカカシに抱え込まれていることに気づかないほどにこれが当たり前になっていた。
同じようにハルカと遊んでいたナルトは首が取れそうなほどに強く頷く。
「あ、確かに!最近殴ってるサクラちゃん見てないかも」
「ちょっとお前ら。人の奥さんに変なこと言わないでくれる?これがうちでは当たり前なの。なー、サクラー?」
「・・・確かに」
「・・・サクラ?」
後ろから笑いかけるも、サクラはこちらを見ずに顎に指を当てて何やら不穏なことを呟く。
呼びかけてようやくこちらを見たサクラの瞳には変な意志が籠っていて・・・すごく嫌な予感がした。
そして次の日から、カカシが甘えようとすると昔に戻ったかのように邪険に扱われるようになった。
「サクラ〜」
「邪魔!」
洗濯物を畳むサクラを後ろから抱きしめようとするとぺちんと腕を叩かれ、カカシは頬を膨らませてむくれる。
「それが夫にすること?」
「私サスケくんの言葉で目が覚めたの。すっかり緩み切ってたんだわ。これからは厳しくいきます!」
「えー・・・」
それから宣言通り今までの甘々イチャイチャタイムがなくなり、だんだんカカシの機嫌が悪くなる。
「サクラ・・・」
「だめ」
顔を近づけてキスをしようとしてもふい、と顔を逸らされ、さすがのカカシも我慢の限界だった。
「・・・分かった。サクラがそうするならオレにも考えがある」
それからカカシはサクラに触れなくなった。
行ってきますもただいまのキスも、抱きついてくることもなくなった。
別に無視しているわけでもなく、今まで通り会話はするものの、どこか雰囲気が違っていて、産まれてからずっとイチャイチャしている2人しか見てきていないハルカはどうしたらいいのか戸惑っていた。
サクラはというとまさかこんなふうになると思っておらず、意固地になっていた自分に後悔していた。
当たり前だったことが当たり前じゃなくなって、寂しくてしょうがなかった。
夜、サクラは勇気を振り絞って、ベッドで隣で眠っているカカシに話しかける。
「か、カカシ先生・・・」
「・・・ん〜?どうした〜?」
目だけこちらに向けるカカシにサクラは緊張で次の言葉を紡げない。
いつもカカシからしてくれるから自分からだなんて初めてで何て言ったらいいのか・・・。
「あ、あのね・・・」
「眠れないのか?」
こちらに体を向けるカカシに、サクラは意を決して少し顔を上に向けて目を瞑る。
夜目が聞くカカシならサクラがどうして欲しいのか分かるだろうと行動に出ることにした。
──しかし。
カカシの唇が触れたのはサクラの唇ではなく額だった。
驚いて目を開けるとカカシは微笑を浮かべている。
「ほら、明日も仕事なんだから早く寝なさい」
「・・・・・・うん」
おやすみ、とカカシはまた仰向けになってすぐに寝息が聞こえる。
今までカカシに拒否られたことがなく、じわりと涙が滲んできてカカシに背中を向けて涙を拭った。
次の日、サクラはアカデミーを歩くナルトを引き止める。
「・・・ナルト」
「あれ、サクラちゃん、どしたの?」
「うん・・・あのね、お願いがあるの」
「ただーいま」
カカシが仕事を終えて帰ると、部屋の奥から走ってくる音がする。
ハルカかな、って思っていると現れたのはサクラで、カカシに思い切り飛びかかった。
「・・・サクラ?どうした」
聞いてもギューっと首に回す腕に力を入れるだけで離れない。
しょうがない、とそのまま抱え上げて部屋の中に入ると愛娘のハルカの姿がなかった。
「ハルカは?」
「・・・ナルトにお願いしてお泊まりしてもらってる」
「それまた急だな」
「うん・・・」
ソファーに座りサクラを膝から下ろして横に座らせるも、それでも離れようとしないサクラにカカシはほくそ笑む。
「オレの気持ち分かった?」
「うん・・・ごめんなさい・・・」
見上げてくる翡翠の瞳が涙で潤んで綺麗で、瞼にキスをする。
「ハルカは明日まで帰ってこないんでしょ?」
「うん・・・」
見つめ合う2人の瞳には同じ熱が籠っている。
サクラがまたカカシの首に腕をまわし、カカシがサクラを抱き抱えて寝室へと向かった。
次の日の朝、ナルトがハルカを連れてインターホンを鳴らす。
「はーい」とインターホン越しに聞こえてきたサクラの声はいつもと同じでほっとしているとドアが開き、現れたサクラの横にはカカシが手をサクラの腰に回しピッタリとくっ付いていた。
それはいつも通りの光景で、ハルカは嬉しそうにサクラの足に飛びつく。
「ありがとうナルト。ごめんね、急に」
「楽しかったから大丈夫だってばよ!・・・それより元に戻ったんだ」
「サクラが寂しがっちゃってさー。朝も起き上がれなくなっちゃて、イテッ」
ハルカから見えないように腰に回る手を顔を真っ赤にしてつねる。
ナルトからはバッチリと見えており、元々のイチャイチャ夫婦に戻っていて遠い目をする。
サクラは恥ずかしそうに咳払いをしてナルトに微笑みかける。
「お礼にお茶でも飲んでいってよ」
「いや・・・お腹いっぱいだから帰るってばよ」
「そう?」
「ナルト、ばいばーい!またね!」
「ばいばい!」
元気に手を振るハルカに同じようにナルトは手を大きく振って家路を歩きながら空を見上げる。
綺麗な青色の空は独り身には眩しくて、旅に出ているサスケに愚痴の手紙を出そうと決めたのだった。