ファミリー(長編)
ハルカお気に入りのアニメ番組が終わり、ボーとTVを見ていた時。
『今年の母の日は5月◯日です。』
CMで子供がお母さんに花を渡している映像にハルカは釘付けになっていた。
「パパ〜」
「んー?」
今日はサクラがいのと出掛けていて、カカシと2人きりの休日。
ソファーから顔をひょっこり出し、キッチンでお皿を洗っているカカシに話しかける。
「ははの日、ってなに?」
その言葉にカカシは止まり、ハルカを見て唸る。
「お母さんにありがとうって言う日、かな?」
カカシは物心つく前に母親を亡くして父親と2人暮らしだった。
その父親ともそういうことをしたことがなく、忍として育ったため記念日には無頓着に育ってきた。
サクラと結婚しても母の日をしてこなかった。
カカシにとっては母ではなく妻だからだ。
「じゃあママの日!?」
「そうだね」
カカシの説明を理解したハルカはダークグレーの瞳をキラキラ輝かせ、カカシもにこりと笑いかける。
「ママの日は何するの?」
「んー、お花あげたり好きなものあげたり?」
「じゃあ、ハルカもあげる!」
「え?」
フンフンと鼻を鳴らし異様に張り切っているハルカに、カカシは首を傾げていた。
****
「ハルカ〜・・・本当に大丈夫か?」
「だいじょうぶだってば!パパしつこい!」
玄関の前でリュックを背負うハルカに心配そうにしているカカシ。
今日は母の日。
サクラの母に頼んでサクラと出かけてもらった。
今日はハルカにとって一大決心の日。
1人であんみつを買いに行く。
「まだ1人で買いに行くのは無理だって。パパと行こう?」
「や!ハルカが1人でいくの!」
キッとカカシを睨むハルカに、サクラの面影を感じる。
サクラもこうと決めたら絶対譲らず、下忍時代もそんなサクラに何度も悩まされてきた。
ハルカはしっかりサクラの性格も受け継いだらしい。
こうなったらカカシが諦めるしかない。
「・・・分かった。このお金、あんみつ分しかないから、別のもの買ったらあんみつ買えないからね。それと、寄り道しない、変な人についていかない、困ったら女の人に頼ること。いいね」
「うん!」
嬉しそうに頷くハルカに、カカシは眉を下げて笑いながら頭を撫でる。
「それじゃあ、行っておいで」
「いってきます!」
ハルカは元気に手を振って歩き出す。
そんなハルカに、カカシは不安そうに見送った。
****
「あら、はたけさん家のハルカちゃんじゃない。今日は1人?」
いつもの道を歩いていると、見知ったおばちゃんに話しかけられる。
「うん!ママの日なの!あんみつかいにいくの!」
「あらそう。頑張ってね」
「うん!」
ハルカの満面の笑みにほっこりしているおばちゃんは、その彼女の後ろをついていく影を見つけて苦笑した。
****
ハルカは顔見知りの人々に話しかけられながら商店街をくぐり、いつもサクラと来る甘栗甘に無事たどり着く。
「ついた!」
ハルカは駆け出してお店に入ろうとすると、お店から出てきた人に思いきりぶつかって尻餅をついてしまった。
「ふぇ・・・」
お尻の痛みでさっきまでのテンションは駄々下がり、大きな瞳が潤み出す。
「大丈夫!?・・・て、ハルカちゃん」
聞き覚えのある声に顔をあげると、頬にひげのようなものがある両親の友達。
「なるとぉ・・・」
「ごめんってばよ!怪我は?」
ナルトはハルカを立ち上がらせて体を見る。
「おしりが痛いだけ・・・」
「ごめん。あとでサクラちゃんに見てもらって」
頷くと、ナルトはハルカの頭を撫でる。
「ハルカちゃん1人?パパとママは?」
ナルトはそこでようやくハルカが1人でいることに気づく。
そこでハルカも当初の目的を思い出す。
「ハルカ、ママにあんみつかいにきたんだった!」
ハルカはナルトの隣を通り抜けて、レジにいる顔馴染みの定員に話しかけている。
「あんみつ?」
状況が分かっていないナルトが首を傾げていると、後ろから強烈な殺気を感じとる。
慌ててその方向を見ると、電柱の後ろによく知った人物が。
「か、カカシ先生・・・?」
何してるのかと近づこうとすると、更に殺気を飛ばされて立ち止まる。
するとその口が声を出さずに動き、読み取ると。
『あとで覚えてろよ』
カカシはハルカを転ばせたことを言っているのだと分かり、背筋が凍る。
暫くトンズラすることを考えていると、後ろから可愛らしい声が聞こえる。
「えへへ!初めておつかいできた!」
あんみつが入った袋を大事そうに抱えて店から出てくるハルカ。
チラッとカカシがいた電柱を見ると、その姿はもうなかった。
さすが上忍。
「ハルカちゃん、送ってくってばよ」
「ううん、だいじょーぶ!」
「でも」
「パパがいるから」
「え?」
「じゃーね、ナルトー!」
ナルトがまた首を傾げていると、ハルカは大きく手を振って駆け出した。
「──侮れねーってばよ・・・」
腐っても木ノ葉一の忍と、その教え子であり綱手仕込みのくノ一の子供。
その血はちゃんと受け継がれているらしい。
「パパー!ただいまー!!」
「おかえりハルカ!」
ハルカが家の玄関を開けると、勢いよくハルカを抱き上げるカカシ。
息を切らしておらず、一見ずっと家にいたように見えるがちゃんとハルカはわかっていたのだ。
安心できる気配がずっといることに。
****
「ただいまー」
「ママー!おかえりー!」
夜、サクラが帰ってくるとサクラの足元に抱きつくハルカ。
「ただいまハルカ。ちゃんと良い子にしてた?」
「うん!」
瓜二つの顔が同じように笑う。
ハルカの後ろからカカシが歩いてくる。
「サクラおかえりー。ゆっくり出来た?」
「ただいま。うん、ちゃんと休めました。ありがとう」
「いーえ」
カカシは顔を近づける。
サクラは背伸びをしてキスをする。
それが2人の行ってきますとただいまの習慣。
「ママ、きてきて!」
慣れているハルカはサクラの手を引っ張ってリビングに連れて行く。
「なになにー?」
****
「え、これどうしたの?」
「ハルカが1人でかってきたの!」
リビングに連れてこられたサクラは、置いてあるあんみつを手に取る。
「ハルカが?1人で?」
「うん!今日はね、ママの日だから、ママにありがと〜!って言いたかったの!」
「ハルカ〜!ママこそありがとうだよー!!」
サクラはハルカをぎゅー、と抱きしめて顔中にキスをする。
ハルカはくすぐったそうにして、カカシはそんな2人を愛おしく見つめる。
「あのね、お店の人がね、ハルカがおりこうだからって、ハルカの分もくれたの!」
「そうなの?良かったね!」
「うん!」
ハルカは満面の笑みでサクラに抱きつく。
本当は、ハルカはお金がまだ分かっていないので財布の中身を全部出すと思い、カカシが2人分のお金を入れていたのだ。
ちゃんと店員にも根回しして。
そしてサクラはそのこともちゃんと分かっていて、カカシとサクラは見つめ合い微笑む。
****
「はい」
ハルカを寝かしつけ、2人きりの晩酌タイム。
横に座るサクラにカカシは1本のカーネーションを渡す。
「これ、どうしたの?」
「いのちゃんの所に頼んでサイに持ってきてもらった」
山中家に婿養子となったサイは、手が空いたときに花屋の手伝いをしている。
「ありがとう・・・嬉しい」
初めて貰った母の日のプレゼント。
サクラは頬を染めてカカシを見上げる。
カカシがサクラの指を絡めて握ると、サクラも握り返す。
「サクラありがとう。ハルカを産んでママになってくれて」
「そんなの、こっちこそパパになってくれてありがとうよ。1ヶ月早いけど」
額を合わせて笑い合い、軽くキスをする。
「父の日かー。ハルカ、完全燃焼してスルーしそう」
「そんなことないわよ。忘れてても私が教えてあげる」
「それは楽しみだな。」
「来年、何が欲しい?」
「先生とハルカがいれば何もいらないわ」
サクラはカカシの体に寄り添い、カカシはサクラの頭を撫でる。
来年の母の日、何を贈ろうか。
『今年の母の日は5月◯日です。』
CMで子供がお母さんに花を渡している映像にハルカは釘付けになっていた。
「パパ〜」
「んー?」
今日はサクラがいのと出掛けていて、カカシと2人きりの休日。
ソファーから顔をひょっこり出し、キッチンでお皿を洗っているカカシに話しかける。
「ははの日、ってなに?」
その言葉にカカシは止まり、ハルカを見て唸る。
「お母さんにありがとうって言う日、かな?」
カカシは物心つく前に母親を亡くして父親と2人暮らしだった。
その父親ともそういうことをしたことがなく、忍として育ったため記念日には無頓着に育ってきた。
サクラと結婚しても母の日をしてこなかった。
カカシにとっては母ではなく妻だからだ。
「じゃあママの日!?」
「そうだね」
カカシの説明を理解したハルカはダークグレーの瞳をキラキラ輝かせ、カカシもにこりと笑いかける。
「ママの日は何するの?」
「んー、お花あげたり好きなものあげたり?」
「じゃあ、ハルカもあげる!」
「え?」
フンフンと鼻を鳴らし異様に張り切っているハルカに、カカシは首を傾げていた。
****
「ハルカ〜・・・本当に大丈夫か?」
「だいじょうぶだってば!パパしつこい!」
玄関の前でリュックを背負うハルカに心配そうにしているカカシ。
今日は母の日。
サクラの母に頼んでサクラと出かけてもらった。
今日はハルカにとって一大決心の日。
1人であんみつを買いに行く。
「まだ1人で買いに行くのは無理だって。パパと行こう?」
「や!ハルカが1人でいくの!」
キッとカカシを睨むハルカに、サクラの面影を感じる。
サクラもこうと決めたら絶対譲らず、下忍時代もそんなサクラに何度も悩まされてきた。
ハルカはしっかりサクラの性格も受け継いだらしい。
こうなったらカカシが諦めるしかない。
「・・・分かった。このお金、あんみつ分しかないから、別のもの買ったらあんみつ買えないからね。それと、寄り道しない、変な人についていかない、困ったら女の人に頼ること。いいね」
「うん!」
嬉しそうに頷くハルカに、カカシは眉を下げて笑いながら頭を撫でる。
「それじゃあ、行っておいで」
「いってきます!」
ハルカは元気に手を振って歩き出す。
そんなハルカに、カカシは不安そうに見送った。
****
「あら、はたけさん家のハルカちゃんじゃない。今日は1人?」
いつもの道を歩いていると、見知ったおばちゃんに話しかけられる。
「うん!ママの日なの!あんみつかいにいくの!」
「あらそう。頑張ってね」
「うん!」
ハルカの満面の笑みにほっこりしているおばちゃんは、その彼女の後ろをついていく影を見つけて苦笑した。
****
ハルカは顔見知りの人々に話しかけられながら商店街をくぐり、いつもサクラと来る甘栗甘に無事たどり着く。
「ついた!」
ハルカは駆け出してお店に入ろうとすると、お店から出てきた人に思いきりぶつかって尻餅をついてしまった。
「ふぇ・・・」
お尻の痛みでさっきまでのテンションは駄々下がり、大きな瞳が潤み出す。
「大丈夫!?・・・て、ハルカちゃん」
聞き覚えのある声に顔をあげると、頬にひげのようなものがある両親の友達。
「なるとぉ・・・」
「ごめんってばよ!怪我は?」
ナルトはハルカを立ち上がらせて体を見る。
「おしりが痛いだけ・・・」
「ごめん。あとでサクラちゃんに見てもらって」
頷くと、ナルトはハルカの頭を撫でる。
「ハルカちゃん1人?パパとママは?」
ナルトはそこでようやくハルカが1人でいることに気づく。
そこでハルカも当初の目的を思い出す。
「ハルカ、ママにあんみつかいにきたんだった!」
ハルカはナルトの隣を通り抜けて、レジにいる顔馴染みの定員に話しかけている。
「あんみつ?」
状況が分かっていないナルトが首を傾げていると、後ろから強烈な殺気を感じとる。
慌ててその方向を見ると、電柱の後ろによく知った人物が。
「か、カカシ先生・・・?」
何してるのかと近づこうとすると、更に殺気を飛ばされて立ち止まる。
するとその口が声を出さずに動き、読み取ると。
『あとで覚えてろよ』
カカシはハルカを転ばせたことを言っているのだと分かり、背筋が凍る。
暫くトンズラすることを考えていると、後ろから可愛らしい声が聞こえる。
「えへへ!初めておつかいできた!」
あんみつが入った袋を大事そうに抱えて店から出てくるハルカ。
チラッとカカシがいた電柱を見ると、その姿はもうなかった。
さすが上忍。
「ハルカちゃん、送ってくってばよ」
「ううん、だいじょーぶ!」
「でも」
「パパがいるから」
「え?」
「じゃーね、ナルトー!」
ナルトがまた首を傾げていると、ハルカは大きく手を振って駆け出した。
「──侮れねーってばよ・・・」
腐っても木ノ葉一の忍と、その教え子であり綱手仕込みのくノ一の子供。
その血はちゃんと受け継がれているらしい。
「パパー!ただいまー!!」
「おかえりハルカ!」
ハルカが家の玄関を開けると、勢いよくハルカを抱き上げるカカシ。
息を切らしておらず、一見ずっと家にいたように見えるがちゃんとハルカはわかっていたのだ。
安心できる気配がずっといることに。
****
「ただいまー」
「ママー!おかえりー!」
夜、サクラが帰ってくるとサクラの足元に抱きつくハルカ。
「ただいまハルカ。ちゃんと良い子にしてた?」
「うん!」
瓜二つの顔が同じように笑う。
ハルカの後ろからカカシが歩いてくる。
「サクラおかえりー。ゆっくり出来た?」
「ただいま。うん、ちゃんと休めました。ありがとう」
「いーえ」
カカシは顔を近づける。
サクラは背伸びをしてキスをする。
それが2人の行ってきますとただいまの習慣。
「ママ、きてきて!」
慣れているハルカはサクラの手を引っ張ってリビングに連れて行く。
「なになにー?」
****
「え、これどうしたの?」
「ハルカが1人でかってきたの!」
リビングに連れてこられたサクラは、置いてあるあんみつを手に取る。
「ハルカが?1人で?」
「うん!今日はね、ママの日だから、ママにありがと〜!って言いたかったの!」
「ハルカ〜!ママこそありがとうだよー!!」
サクラはハルカをぎゅー、と抱きしめて顔中にキスをする。
ハルカはくすぐったそうにして、カカシはそんな2人を愛おしく見つめる。
「あのね、お店の人がね、ハルカがおりこうだからって、ハルカの分もくれたの!」
「そうなの?良かったね!」
「うん!」
ハルカは満面の笑みでサクラに抱きつく。
本当は、ハルカはお金がまだ分かっていないので財布の中身を全部出すと思い、カカシが2人分のお金を入れていたのだ。
ちゃんと店員にも根回しして。
そしてサクラはそのこともちゃんと分かっていて、カカシとサクラは見つめ合い微笑む。
****
「はい」
ハルカを寝かしつけ、2人きりの晩酌タイム。
横に座るサクラにカカシは1本のカーネーションを渡す。
「これ、どうしたの?」
「いのちゃんの所に頼んでサイに持ってきてもらった」
山中家に婿養子となったサイは、手が空いたときに花屋の手伝いをしている。
「ありがとう・・・嬉しい」
初めて貰った母の日のプレゼント。
サクラは頬を染めてカカシを見上げる。
カカシがサクラの指を絡めて握ると、サクラも握り返す。
「サクラありがとう。ハルカを産んでママになってくれて」
「そんなの、こっちこそパパになってくれてありがとうよ。1ヶ月早いけど」
額を合わせて笑い合い、軽くキスをする。
「父の日かー。ハルカ、完全燃焼してスルーしそう」
「そんなことないわよ。忘れてても私が教えてあげる」
「それは楽しみだな。」
「来年、何が欲しい?」
「先生とハルカがいれば何もいらないわ」
サクラはカカシの体に寄り添い、カカシはサクラの頭を撫でる。
来年の母の日、何を贈ろうか。