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◉ハルカ

ある日の朝。
土曜でサクラは仕事が休みで、仕事のカカシは珍しく早く起きてゆっくり3人で過ごしていると家のチャイムが鳴る。
「はーい」とサクラは玄関に向かい、暫く話し声が聞こえたと思ったらサクラの驚く声が部屋の中まで聞こえた。
カカシとハルカは顔を合わせて首を傾げていると、サクラが難しい顔をして顎に手を当てて戻ってくる。

「どうした?」
「さっき任務から帰還した忍が何人も重傷負ってて人手が足らないから私も来てくれって・・・でもハルカが・・・先生今日休めないわよね?」
「たぶん無理だろうね。その任務で呼び出される」
「だよね・・・ナルトは?」
「別の任務で里の外」
「幼稚園は土曜で空いてないし・・・お母さんたちはこういう時に旅行で居ないし・・・」
「どうかしたの?ママ?」

2人で難しい顔をしていると、朝ごはんを食べていたハルカが聞いてくる。

「ママとパパ、これからお仕事行かなくちゃいけなくなったの。ハルカも急いで準備して・・・」
「ハルカ、ひとりでおるすばんする!」
「「え!?」」

ハルカの言葉に2人は瞠目する。

「でもハルカを1人にすることは出来ないわ。ね、ママと一緒に行きましょう?」
「やだ!ハルカもうおねえさんだからできるもん!」

ハルカは目を吊り上げて頬を膨らませる。
これは絶対に譲らない顔だ。
一体誰に似たのやら・・・。

「どうするパパ・・・」

お手上げと困った顔をするサクラに、カカシは腕を組んで暫く唸り・・・。

「ならアイツらに頼むか」



****



「いいかハルカ。何かあったらこの番号を押してこれを取る。そしたらパパかシカマルが出るから」
「わかった!」

カカシが受話器を取りながら説明すると、執務室の番号が書かれた紙を受け取ったハルカは力強く返事をする。

「ハルカ、絶対外出ちゃダメよ。それに誰か来ても絶対出ちゃダメ!」
「うん!」

1人でお留守番出来ることが嬉しくてニコニコ笑いながら頷くハルカに本当に分かっているのかと心配になる。
カカシはそんなサクラの肩を叩いて促す。

「じゃあ行ってくるわね。出来るだけ早く帰ってくるから」
「オレも時間見つけて帰ってくるから」
「うん!いってらっしゃい!」

お気に入りのうさぎのぬいぐるみを抱えて心配そうにする2人を見送る。
初めてのお留守番にハルカはウキウキと浮かれ、好きな番組を見たりこっそりおやつを食べたり。
お留守番を思う存分満喫していたが、眠気に襲われてそのままソファーで眠ってしまう。



それからどのくらい時間が経ったのか。
目を擦りながら目覚めると、部屋の中はシンと静かで自分以外誰も居ないことが分かる。
寝るまでは平気だったのに。
いつも目が覚めたら誰かしら居てくれたから、一気に寂しくなって大きな灰青の瞳が潤み出した時。

「くしゅん!」

廊下から声が聞こえて涙が引っ込む。
自分しかいないはずなのに。
ハルカはその音の発生源を探そうとぬいぐるみを抱えて1つ1つの部屋のドアを開け、最後に自分の部屋を開ける。
部屋にはカカシが買い与えてくれたくさんのぬいぐるみ。
その中に見覚えのない大中小の犬のぬいぐるみがあった。
もしかしてカカシが買ってくれたんだろうか、と再び居ない2人のことを思い出してまた瞳が潤み出した時。

「あ、泣きそう!」
「これグルコ!」

目の前の中の大きさの犬のぬいぐるみが喋り、小さいぬいぐるみが叱る。
突然ぬいぐるみが喋ったことにハルカは目をパチクリさせてぬいぐるみに近づいて床に座る。

「・・・わんちゃん?喋れるの?」

ハルカは恐る恐る触ると温かくて本物だった。
パックンはため息を吐く。

「お主のパパに言われてここにおったのじゃ。喋る犬は怖くないか?」
「ぜんぜん!おしゃべりできるわんちゃんはじめて!」

ハルカは嬉しそうに笑ってグルコとパックンを抱きしめる。
普通は怖い顔で喋る犬など怖いだろうに。
カカシ譲りの犬好き、そして度胸はサクラ譲りか。

「このこもわんちゃん?」

ハルカはずっと動かない大きな黒い犬を見る。

「ブル、もういいぞ。グルコのせいでバレた」
「ごめんねー」

ブルはハルカが少しでも怖がらないように伏せる。

「おおきいねぇ!かわいいねぇ!」

ハルカはブルに抱きつく。
忍犬の中でも大きく強面のブルは子供に泣かれることが多い。
初対面で初めて可愛いと言われたブルは嬉しそうに尻尾を振る。

「小娘。ブルに乗るか?」
「うん!」



****



「ただいまー!」

同じタイミングでカカシとサクラが帰ってくる。
サクラが奥に向かって声をかけるも返事はなく、部屋の中を探しているとハルカの部屋の中で嬉しそうに眠るハルカと、寄り添うように眠る3匹。


ハルカとカカシは微笑み合い、幸せそうに眠る4人が起きるまで側で見守っていた。


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