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◉ツクシ

サクラのサプライズから数ヶ月後の秋晴れが続く9月。
木ノ葉病院の一室で呻り声が響く。


「うう〜〜〜!!!!」

サクラが分娩室にある椅子に座り脚を広げ、椅子に付いている棒を掴んで力む。
助産師に綱手といのが入り、産まれてくる子を取り上げてくれようとしている。

「サクラ、あともう少しよ」
「うぅーー!しゃーんなろーー!!」
「叫んでないで力みな!」

涙目で出産に挑むサクラの横で、里の長であるカカシは眉を下げてサクラの横で狼狽えていた。

「さ、サクラ頑張れ!」
「頑張ってるわよーー!!」
「ごめん!」
「カカシ、お前は邪魔だ!どっか端にでも行ってろ!」
「はい!!」

2人に怒鳴られてカカシは部屋の隅で気配を消して見守る。
その光景が数年前と同じだわ、といのは苦笑していた。




分娩室の外では、ナルトが眠るハルカを抱っこして部屋の前を行ったり来たりしていた。
早朝に、産まれるからハルカ預かってくれとナルトの家にカカシが眠るハルカを連れて来て、慌てて病院まで駆けつけた。
そういえばハルカのときもこうやって1人で行ったり来たりして看護師に変な目で見られてたなー、と感慨深くしていると、部屋の中から大きな赤子の泣き声が響いてきて足が止まる。
暫くしてドアが開き、そこからいのが出てきて晴れやかに笑う。

「産まれたわよ、女の子!」

ナルトといのはハルカを挟んで抱き合った。



****



次の日、ナルトはハルカと手を繋いでカカシと3人で病院に向かう。
病院に入り着いたドアの札には"はたけサクラ"と書かれていた。
カカシがドアをノックすると中から声が聞こえて開ける。

「ママ!」

ハルカはナルトと手を離して、ベッドに座るサクラに飛びつく。

「おはよう。いい子にしてた?」
「うん!」

お腹に頬を摺り寄せるハルカの頭を愛おしそうに撫でる。

「おはよう。寝れた?」
「いのが寝てる間見てくれてたからぐっすり」

ピースをするサクラにカカシはほっとしていると、サクラの前にあるベッドから小さな声が上がる。

「あ、起きたかな」

カカシがベッドの中から抱き上げたのは、カカシの片腕に収まる大きさの小さな赤子。
カカシ譲りの銀髪の赤ん坊は翡翠の瞳でじっ、とカカシの顔を見ている。

「パパのおかおみてるね」
「ね。まだ見えてないはずだけどパパって分かるのね」

カカシは愛おしそうに娘を見つめ、サクラも嬉しそうに笑う。

「ねー、パパ。ハルカにもあかちゃんみせて」
「なら抱っこしてみるか?」
「え!・・・うん」
「ならちゃんと座って」

不安そうに頷くハルカにサクラはベッドの上に座るよう促し、ハルカの腕に赤ちゃんをゆっくり乗せる。

「ふわ・・・ちっちゃいねぇ・・・」

初めて触れる赤子に、おっかなびっくりではあるがしっかり抱っこしている。
少し離れたところで見ていたナルトは思い出したようにポーチからインスタントカメラを取り出し、赤ちゃんを囲む親子を撮る。

「へへ、ハルカちゃんの記念すべき初抱っこだってばよ!」
「ナルト、後で焼き増ししといて」
「りょーかい!」
「ナルトもだっこしてみてよ」
「え、お、オレも?オレはいいってばよ・・・」
「何言ってんだ。ほら」

何故か遠慮するナルトに、カカシはハルカから赤ん坊を受け取りナルトに渡す。

「わ、わ・・・、頭おっこちそう」
「落ちるわけないでしょ。ハルカの時も抱っこしたじゃない」
「もう4年も前だってばよ・・・」

情けない顔で抱くナルトにサクラはおかしそうに笑う。
不安な気持ちが伝わったのか、赤ちゃんは眉を下げてぐずり出す。

「な、泣きそうだってば!カカシ先生・・・」

オロオロとナルトも泣きそうになっていると、ノックと共に病室のドアが開く。
現れたのは黒髪の青年。

「サスケくん!」

ハルカは満面の笑みになり、ベッドから降りてサスケの足にしがみつく。

「サスケちょうど良かった!」
「お、おい」

天からの助けとナルトはサスケに赤子を無理やり渡す。
突然のことにサスケも情けない顔をするも、赤ん坊は翡翠の瞳を潤ませていたが何故か泣き止んでじっ、サスケの顔を見る。

「え、泣き止んだ」
「ナルトみせて!」

ハルカは両腕を上げて抱っこを強請る。
軽々とハルカを抱っこし、赤ちゃんを観察していると。

「あ、わらった!」
「え!」

ハルカの言葉に驚いたカカシが顔を覗き込むと、笑ってはいなかったがどこか機嫌が良かった。

「ね、ナルト、わらったよね」
「うん。口が少し上がってた」
「え〜・・・何でサスケなんだ・・・」

初めての笑顔をサスケに奪われ肩を落として落ち込むカカシ。

「もしかしたらサスケくんが好きなのかしら」
「な、なにー!!」

サクラの言葉にカカシは大声で叫び、その声にビックリして赤ちゃんが泣き出す。

「・・・おい」
「わ、悪い。変わるぞ」
「あ、また泣き止みそう」

サスケが体を揺らしてあやすと、体全体で泣いていたのがしゃくり泣くまでに落ち着く。
右手はサスケの服を掴み、側から見たらサスケが父親のようだった。

「すげー。サクラちゃんのサスケ好き、ちゃんと引き継がれてるのな」
「私もビックリ」
「うぅ・・・は、ハルカはパパが好きだよな?」
「ハルカもサスケくんのほうがすきー」
「そんなぁ・・・」

カカシの方を見ずに妹の手を触りながらの爆弾発言に、カカシは眉を下げて目尻に涙を浮かべてベッドに座るサクラに抱きつく。

「サクラ〜〜」
「よしよし」

床に膝を付いてサクラの腰に抱きつくカカシをサクラは頭を撫でて慰める。
これがかつての師か、と2人はカカシを蔑んだ目で見ていた。


「それで名前は決まったのか」
「え?あ、うん。昨日顔を見てようやく50個の中から決められたよ」

多すぎないか、とサクラを見ると肩を竦めている。
気にしないカカシは胸元のポケットから紙を取り出し、「コホン」と咳払いをする。

「えー、発表します。・・・なんか効果音か何か欲しいよね」
「さっさとしろ」

サスケが舌打ちをし、カカシは不満そうな顔をしながらまた咳払いをする。

「この子の名前は、ツクシです」

命名と書かれた紙には"ツクシ"と書かれていた。

「ツクシちゃん?」

ナルトの腕から降りたハルカはカカシに手を伸ばし、名前の紙を貰う。

「そ、はたけツクシ。オレとサクラから一文字ずつ取ったんだ。どう?」

カカシはサクラに伺うと、サクラはカカシの手を取りながら満面の笑みで頷く。

「すごく素敵。さすがカカシ先生ね」
「でしょ?」

満足気に笑い、2人の世界に入り出す。
そんな2人を見ないようにしていると、ハルカがまたナルトに向かって腕を上げてくるので抱えあげる。
ハルカはサスケに抱かれているツクシの手を触ると、ツクシはハルカの顔を見ながら指を握る。

「これからよろしくね、ツクシ」

ハルカの顔はもうお姉ちゃんになっていた。


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