ファミリー(長編)
「ハルカ、チョコ作ろうか」
幼稚園が休みの今日。
カカシは案の定仕事で居らず、ソファーに座ってTVを見ていたハルカにサクラがキッチンから声をかける。
「チョコ!?チョコってつくれるの?」
母親譲りの甘党のハルカは大好きなチョコの名に、飛び跳ねながらキッチンに来る。
「そうよ。それに今日はバレンタインだから」
「ばれんたいん?」
首を傾げるハルカにサクラは頷く。
「女の子が好きな人にチョコをあげる日よ。サスケくんにチョコあげたくない?」
「あげたい、あげたい!サスケくんにチョコあげるー!!」
一気にテンションが上がったハルカに「手洗ってきて」と言ったら走って洗面所に向かうのをサクラはおかしそうに笑った。
今日作るのはチョコトリュフ。
溶かしたチョコと生クリームを混ぜて、冷やしたのを手の上で丸く転がして、最後にココアの上でフォークで転がして完成。
歪の形でも愛嬌。
頑張って作ったのが伝わってくるから。
ハルカはサスケの分、サクラはカカシと、ハルカの頭の中に全くない可哀想なナルトの分も。
楽しそうに箱にチョコを入れて、青のリボンを選ぶハルカにサクラも一緒にバレンタインを楽しんだ。
****
「ただ〜いまぁ」
夕飯の準備をしていると、カカシの声が聞こえてハルカが玄関に向かう。
元気に走ってくるハルカにカカシは満面の笑みで両腕を広げ、
「ハルカ〜、ただい──」
「サスケくん!」
ハルカはカカシを無視して、その後ろで靴を脱いでいたサスケの足に飛びついた。
「サスケくん、はやくはやく!!」
「お、おい、まて・・・」
ハルカに手を引っ張られ、落ち着く暇もなくサスケは部屋の中に連れて行かれた。
両腕を広げたまま固まるカカシを置いて。
「あのね、ハルカはじめてチョコつくったの。もらってくれる・・・?」
頬を染めて上目遣いで綺麗にラッピングされた箱を差し出してくるハルカに、サスケは既視感を覚えていた。
あぁ、あれは七班が結成されて初めてのバレンタイン。
頬を染めて同じように箱を差し出してくるサクラの顔が思い出された。
──血は争えないな。
サスケは小さく笑い、ハルカと目が合うようにしゃがんで、ハルカの手からチョコを受け取る。
「ありがとう。大事に食べる」
サスケが微笑むと、ハルカは満面の笑みでサクラの元に走り、「んふふ〜」と嬉しそうな声を出しながらサクラの背中に顔を埋める。
カカシはというと、のろのろと部屋に入ってきて最初に見たものは、恥ずかしそうにチョコをサスケに渡しているハルカの姿だった。
先程の玄関の出来事でただでさえショックだったのに、初めてのチョコを男に奪われたことでカカシの心は立ち直れないほどまで傷つけられて。
その場に泣き崩れたカカシをサクラは慰めていた。
「先生、元気出してよ」
「無理・・・愛娘の初めてを目の前で奪われて立ち直れない」
「おい、人聞きの悪いことを言うな」
「そうよ。処・・・1番大切なのじゃないんだから」
「もしそんなことがあったらオレはお前を殺してオレも死ぬ!」
「大袈裟よ・・・」
もう何言っても聞き入れないと言ったカカシにサクラは呆れ、当のハルカは浮かれてそれどころではなかった。
サクラはため息を吐いて、泣くカカシに箱を差し出す。
先程ハルカがサスケに渡していたものと瓜二つの物に、カカシはポカンとした表情でそれを見る。
「私からカカシ先生へのバレンタインチョコです」
サスケの箱には青色のリボンが付いていたが、サクラが差し出す箱には緑のリボンが付いていた。
カカシは泣きながら笑い、チョコとサクラと後ろに張り付いていたハルカごと抱きしめた。
「ちょ、ちょっとパパ!」
「パパくるしいよぉ〜」
愛する2人から文句を言われてもカカシは離そうとせず、そんな3人をサスケは呆れたように笑っていた。
それからカカシとサスケが2人から貰ったチョコを食べていると、来客を知らせる呼び鈴が鳴る。
ハルカが玄関に走りドアを開けると、そこには疲れた顔をしたナルトが立っていた。
先程任務を終えたナルトは遅れてやってきたのだ。
しかしそんなことは知らないハルカはポカンと口を開けて、
「ナルト、なにしにきたの?」
「な、何しに!?ハルカちゃんひどいってばよー!!」
今日のハルカはサスケのことしか頭になく、言葉のナイフによってナルトも泣きながら部屋に入ってきた。
「ナルト、お疲れ様。って、何で泣いてるのよ」
「いやちょっとね・・・」
肩を落とすナルトに首を傾げながら、サクラはオレンジのリボンでラッピングをされた箱をナルトに差し出す。
「えっ!」
「バレンタインチョコ」
「あ、ありがとうサクラちゃん!オレってば大事にするから!」
「いや、日持ちしないからちゃんと食べてよ?」
大事そうにチョコを抱えるナルトに呆れていると、ナルトの目がサクラから後ろに向けられたのが分かり、振り向くとカカシが真後ろに立っていて悲鳴が出そうなほどサクラは驚く。
「か、パパ、ビックリするでしょ!」
「・・・ちょこ」
「へ?」
「チョコ、オレだけじゃなかった・・・」
「だってナルトにはハルカのこととかお世話になってるんだからあげないとじゃない」
「サクラの・・・サクラの・・・」
「先生?」
プルプルと体を震わせるカカシにサクラが顔を覗き込むと、カカシの目尻に涙が滲んでいて。
「サクラの浮気者ーーー!!」
カカシは泣き叫びながら自室に閉じこもった。
教え子3人は元上忍師の子供っぽい言動に呆れて物も言えず。
「サクラちゃん・・・」
「・・・もう知らない」
「うわきもの、ってなに?」
ハルカに綺麗な瞳でそう聞かれたサスケはどう答えたらいいのか、眉間に皺を寄せて唸っていた。
幼稚園が休みの今日。
カカシは案の定仕事で居らず、ソファーに座ってTVを見ていたハルカにサクラがキッチンから声をかける。
「チョコ!?チョコってつくれるの?」
母親譲りの甘党のハルカは大好きなチョコの名に、飛び跳ねながらキッチンに来る。
「そうよ。それに今日はバレンタインだから」
「ばれんたいん?」
首を傾げるハルカにサクラは頷く。
「女の子が好きな人にチョコをあげる日よ。サスケくんにチョコあげたくない?」
「あげたい、あげたい!サスケくんにチョコあげるー!!」
一気にテンションが上がったハルカに「手洗ってきて」と言ったら走って洗面所に向かうのをサクラはおかしそうに笑った。
今日作るのはチョコトリュフ。
溶かしたチョコと生クリームを混ぜて、冷やしたのを手の上で丸く転がして、最後にココアの上でフォークで転がして完成。
歪の形でも愛嬌。
頑張って作ったのが伝わってくるから。
ハルカはサスケの分、サクラはカカシと、ハルカの頭の中に全くない可哀想なナルトの分も。
楽しそうに箱にチョコを入れて、青のリボンを選ぶハルカにサクラも一緒にバレンタインを楽しんだ。
****
「ただ〜いまぁ」
夕飯の準備をしていると、カカシの声が聞こえてハルカが玄関に向かう。
元気に走ってくるハルカにカカシは満面の笑みで両腕を広げ、
「ハルカ〜、ただい──」
「サスケくん!」
ハルカはカカシを無視して、その後ろで靴を脱いでいたサスケの足に飛びついた。
「サスケくん、はやくはやく!!」
「お、おい、まて・・・」
ハルカに手を引っ張られ、落ち着く暇もなくサスケは部屋の中に連れて行かれた。
両腕を広げたまま固まるカカシを置いて。
「あのね、ハルカはじめてチョコつくったの。もらってくれる・・・?」
頬を染めて上目遣いで綺麗にラッピングされた箱を差し出してくるハルカに、サスケは既視感を覚えていた。
あぁ、あれは七班が結成されて初めてのバレンタイン。
頬を染めて同じように箱を差し出してくるサクラの顔が思い出された。
──血は争えないな。
サスケは小さく笑い、ハルカと目が合うようにしゃがんで、ハルカの手からチョコを受け取る。
「ありがとう。大事に食べる」
サスケが微笑むと、ハルカは満面の笑みでサクラの元に走り、「んふふ〜」と嬉しそうな声を出しながらサクラの背中に顔を埋める。
カカシはというと、のろのろと部屋に入ってきて最初に見たものは、恥ずかしそうにチョコをサスケに渡しているハルカの姿だった。
先程の玄関の出来事でただでさえショックだったのに、初めてのチョコを男に奪われたことでカカシの心は立ち直れないほどまで傷つけられて。
その場に泣き崩れたカカシをサクラは慰めていた。
「先生、元気出してよ」
「無理・・・愛娘の初めてを目の前で奪われて立ち直れない」
「おい、人聞きの悪いことを言うな」
「そうよ。処・・・1番大切なのじゃないんだから」
「もしそんなことがあったらオレはお前を殺してオレも死ぬ!」
「大袈裟よ・・・」
もう何言っても聞き入れないと言ったカカシにサクラは呆れ、当のハルカは浮かれてそれどころではなかった。
サクラはため息を吐いて、泣くカカシに箱を差し出す。
先程ハルカがサスケに渡していたものと瓜二つの物に、カカシはポカンとした表情でそれを見る。
「私からカカシ先生へのバレンタインチョコです」
サスケの箱には青色のリボンが付いていたが、サクラが差し出す箱には緑のリボンが付いていた。
カカシは泣きながら笑い、チョコとサクラと後ろに張り付いていたハルカごと抱きしめた。
「ちょ、ちょっとパパ!」
「パパくるしいよぉ〜」
愛する2人から文句を言われてもカカシは離そうとせず、そんな3人をサスケは呆れたように笑っていた。
それからカカシとサスケが2人から貰ったチョコを食べていると、来客を知らせる呼び鈴が鳴る。
ハルカが玄関に走りドアを開けると、そこには疲れた顔をしたナルトが立っていた。
先程任務を終えたナルトは遅れてやってきたのだ。
しかしそんなことは知らないハルカはポカンと口を開けて、
「ナルト、なにしにきたの?」
「な、何しに!?ハルカちゃんひどいってばよー!!」
今日のハルカはサスケのことしか頭になく、言葉のナイフによってナルトも泣きながら部屋に入ってきた。
「ナルト、お疲れ様。って、何で泣いてるのよ」
「いやちょっとね・・・」
肩を落とすナルトに首を傾げながら、サクラはオレンジのリボンでラッピングをされた箱をナルトに差し出す。
「えっ!」
「バレンタインチョコ」
「あ、ありがとうサクラちゃん!オレってば大事にするから!」
「いや、日持ちしないからちゃんと食べてよ?」
大事そうにチョコを抱えるナルトに呆れていると、ナルトの目がサクラから後ろに向けられたのが分かり、振り向くとカカシが真後ろに立っていて悲鳴が出そうなほどサクラは驚く。
「か、パパ、ビックリするでしょ!」
「・・・ちょこ」
「へ?」
「チョコ、オレだけじゃなかった・・・」
「だってナルトにはハルカのこととかお世話になってるんだからあげないとじゃない」
「サクラの・・・サクラの・・・」
「先生?」
プルプルと体を震わせるカカシにサクラが顔を覗き込むと、カカシの目尻に涙が滲んでいて。
「サクラの浮気者ーーー!!」
カカシは泣き叫びながら自室に閉じこもった。
教え子3人は元上忍師の子供っぽい言動に呆れて物も言えず。
「サクラちゃん・・・」
「・・・もう知らない」
「うわきもの、ってなに?」
ハルカに綺麗な瞳でそう聞かれたサスケはどう答えたらいいのか、眉間に皺を寄せて唸っていた。