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ファミリー(長編)

忙しい師走を乗り越え、3人で初詣に行こう約束をしていた。
しかし、最近サクラの体調が芳しくなく、今日も朝から体調が悪かった。
心配そうにするカカシとハルカに、サクラは「お土産買ってきて」と力なく笑って見送った。



「ママ、だいじょーぶかな・・・」

カカシと手を繋いで初詣に行こうとする人波に付いて歩く。
大好きなママが心配でハルカは全く楽しめていない。
そんなハルカを見ているとカカシもずっと眉を下げていた。

「早くお参りして帰ろうか」
「うん・・・」

カカシの手をぎゅっと握り、去年も行った神社に着く。
色々屋台が並ぶ中、全く目移りせず俯きながらカカシに手を引かれて歩いていると、

「あ、カカシ先生!」

よく知っている声に顔を上げると、前からナルトとヒナタが近づいてくる。

「ハルカちゃんも。あけましておめでとー!!」
「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。カカシ先生、ハルカちゃん」
「おめでとう。ナルトは新年早々元気だな」
「それだけが取り柄だってばよ!・・・あれ、ハルカちゃん元気なくない?」

邪魔になるので人の列から外れたところに移動すると、ナルトがすぐにハルカに気づく。
そして周りを見渡す。

「そういえばサクラちゃんは?」
「サクラは最近体調悪くてな。家で留守番してる」
「え!大丈夫なのか!?」
「本人は大丈夫って言ってるんだけどね。今日も3人で行こうって約束してたから、ハルカが落ち込んでるんだよ」

カカシがハルカの頭をポン、と撫でるとカカシの足にしがみついてくる。

「そっか・・・心配だね・・・」

ヒナタがハルカと目線が合うようにしゃがむと、ハルカは泣きそうな顔で頷く。
そこでようやくヒナタの格好に気づいた。
白の振袖に白の花、紺の帯はヒナタの黒髪と相まってすごく似合っていた。

「ヒナタちゃん、きれいね」
「ありがとう。私のお気に入りなの」

落ち込んでても女の子。
少しだけ元気になって目を輝かせてヒナタの着物を興味津々に見ていた。
その様子にカカシはほっ、とする。
すると徐にハルカはナルトとヒナタの顔を交互に見てくるので、2人は首を傾げると、

「ナルトとヒナタちゃんはデート?」

「・・・・・・え!?」

ハルカの質問にヒナタの顔は一瞬で真っ赤になった。
白の着物を着ていることで、いつもより顔が赤く見える。

「え、えっと、あ、あのね・・・」

じー、と顔を見てくるハルカにヒナタは狼狽えていると、反対にナルトは大きく笑う。

「違うってばよ。シカマルとキバとで待ち合わせしてて、そこで偶然ヒナタと会ったんだよ。な?」
「う、うん・・・」
「ふーん?そうなのね?」

偶然ってすごいよなー、と笑うナルトと反対に落ち込むヒナタ。
きっとヒナタの事だから偶然を装ってナルトが現れるのを待っていたのだろう。
相変わらずヒナタの好意に疎いナルトにカカシは苦笑する。
ふと、神社に備え付けられている時計を見ると思ったより時間が経っていた。

「ハルカ。そろそろお参りして帰ろうか。ママが待ってる」
「うん・・・」

生返事にハルカを見ると、ずっとヒナタの裾を触って動かない。
どうしたのか、とカカシは思っていると、ハルカの考えていることが分かったヒナタは微笑みんで顔を上げる。

「カカシ先生」
「ん?」
「少しハルカちゃんお借りしてもいいですか?」



****



「ただーいまー」

ソファーで横になっていたサクラは、カカシの声に目を覚まして体を起こす。

「おかえりなさい。ってあら、ナルト?」

屋台で買ってきた大量の袋持ったカカシの後にナルトが続いて部屋に入ってきた。

「お邪魔しまーす!カカシ先生、これテーブルの上でいい?」
「あぁ」

ナルトはたこ焼きやら綿飴やら、大量の食べ物をテーブルに置く。
カカシも同じように荷物をテーブルに置き、ソファーに座るサクラの前にしゃがむ。

「体調はどうだ?」
「もう大丈夫よ。心配かけてごめんなさい」
「そうか。良かった」

カカシはほっ、としてサクラの頭を撫でる。
その気持ちよさにサクラは目を細めてカカシの手を頬に添える。
突然イチャつき始めた師と友に、ナルトは気まずさから気配を消した。

「あ、そういえばハルカは?」

カカシと一緒に出たハルカが見当たらず聞くと、カカシは困ったように笑う。

「ハルカはヒナタのとこにいるんだ」
「ヒナタ?」

思いもよらぬ人物の名前にサクラは目を丸くする。

「お参りに行ったらナルトとヒナタに会ってね。そしたら何でかハルカがヒナタから離れなくて。それで今ヒナタが預かってくれてる」
「どうしたのかしら、気になるわね・・・それでナルト。ヒナタと居たってことはデートしてたの?」

顎に手を当てて目線を落としていたサクラは、気配を消していたナルトに気になっていたことを聞く。
弄ってやろうとほくそ笑むサクラに、ナルトは手を上下に振って大声で笑う。

「もー、それハルカちゃんにも聞かれたってばよ!ただ偶然会っただけだって」

親子だなぁ、と楽しそうに笑うナルトに、カカシとサクラは目を合わせて苦笑した。
その時、


ピンポーン


訪問者を知らせるインターホンが鳴る。

「あ、オレが出るってば」

勝手知ったる他人の家。
ナルトは慣れたように玄関に向かって暫くすると「あれ!」と驚く声が聞こえた。
カカシとサクラがお互い首を傾げていると、足音が増えてこっちに向かってくる。


「ママ!」

ナルトの後ろからハルカが部屋に入って、ソファーに座るサクラに飛びつく。
その格好は家と出た時とは違い、華やかなピンクの振袖を着ていた。

「ハルカ、それどうしたの」
「ヒナタちゃんがきせてくれたの!」

目を丸くするサクラにハルカは体を離して見せるように目の前でクルッと回る。

「どう?」
「すごく可愛いわ」

微笑んで褒めるとハルカは嬉しそうに笑って、今度はカカシに「パパどう?」と聞くとカカシは蕩けそうな顔で「すごい可愛い!」とハルカを抱えて頬擦りしている。
そんな2人を最後に部屋に入ってきたヒナタが微笑ましく見ているので手招きする。

「どういうこと?ヒナタ」
「ハルカちゃん、私がこの着物着てたら気になったみたいで。着てみたそうだったから私の家にある着物を着せてみたんだけど、迷惑だったかな?」
「ううん・・・ありがとうヒナタ。私がこんな調子だから何も準備出来てなくて。ずっとハルカに我慢させてたから、久しぶりに嬉しそうな顔を見れて嬉しい」
「良かった。ならあの着物貰ってくれる?」
「え!?だ、ダメよ。あんな高そうなもの!」
「いいの。ハナビも大きくなって着れないし。それだったら着てくれる子が貰ってくれた方が着物も嬉しいはずだから」
「でも・・・」

日向が着る物ならそれなりに良い物のはず。
困ってカカシを見ると、話を聞いていたカカシも流石に即決出来なくて唸っていた。
ヒナタはカカシに降ろされたハルカと目が合うようにしゃがむ。

「ハルカちゃん」
「なあに?」
「その着物、気に入ってくれた?」
「うん!すごくすき!」
「なら貰ってくれるかな?」
「いいの?ありがとーヒナタちゃん!」

ハルカは嬉しそうにヒナタに抱きつき、ヒナタは微笑みながらサクラを見てくるので、カカシとサクラは諦めて笑う。
それから2人はハルカの着物に描かれた花を見ていたのだが、ご飯の準備をし始めたカカシとナルトに興味が移ったらしく離れていく。


「ありがとう、ヒナタ」
「ううん」

腰を横にずらして座っていたところを叩くとヒナタが座る。
そしてじっ、とヒナタを見つめる。
白い着物が奥ゆかしいヒナタに合っていて、長い黒髪も白い花飾りで結い上げている。
自分は淡い色は似合わないから羨ましい、とサクラは至近距離でヒナタを見ているからヒナタは落ち着かずソワソワ目を動かしている。

「な、何?サクラさん」
「ヒナタ、すごく綺麗」

そう言うと、ヒナタはおかしそうに口に手を当てて笑う。

「それ、ハルカちゃんにも同じこと言われたわ」
「あら、当然よ。半分は私なんだから」
「ふふ。あ、体調は大丈夫?すぐにお暇するから」
「あぁ、もう大丈夫だから・・・」

心配そうにするヒナタにサクラは微笑んで、徐に何か考えるように顎に手を当てるサクラに首を傾げていると、手招きされるので顔を近づける。
サクラはヒナタの耳に口を近づけて──。


「えっ!」

思わず大きな声が出てしまい、準備をしていた3人の視線がヒナタに集まる。

「なになに?どうしたのヒナタちゃん」

近づいてきたハルカは座るヒナタの足に手を乗せて見上げてくる。

「え、えっと・・・」
「着物が綺麗だから、ハルカと一緒に写真撮らせてって言ったのよ」

どうしよう、困った顔をしていたヒナタに、隣からサクラが助け舟を出す。

「とりたい!」
「じゃあハルカからもお願いして?」
「ね〜ヒナタちゃん、いっしょにおしゃしん、とろ?」
「う、うん・・・」
「やったー!」

ね、ね?とヒナタの腰に抱きついてお願いしてくるので頷くと、ハルカは嬉しそうに万歳をする。

「じゃあカメラ取ってこないと」
「ハルカがとってくる!」

ソファーから立ちあがろうとするサクラをハルカは両手を前に出して止める。

「場所分かる?」
「うん!パパのおへや!」
「袖引っ掛けないでよ」
「はーい!」

着物を着ていることも忘れて元気に走っていくハルカ。
その後ろ姿を見送り、サクラは微笑んで口に人差し指を当てて内緒とジェスチャーをしてくるので、ヒナタも同じように口に指を当てる。



クスクス、と笑い合う2人を離れたところから見ていた男たちは首を傾げ、楽しそうに笑うサクラをカカシは微笑ましく見ていた。

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