ファミリー(長編)
木ノ葉の里の季節が秋から冬になり、暦が師走と1年で1番忙しい月がやってきた。
「ただ〜いまぁ・・・」
木ノ葉の長であるカカシも例外ではなく、ただでさえ忙しい通常の何倍もの忙しさで1週間ぶりの帰宅となった。
久しぶりの我が家の玄関を開けながら声をかける。
「パパおかえり!」
「ハルカ・・・ただいまぁ」
パジャマ姿の愛娘がちょうどトイレから出たようで、嬉しそうにお出迎えしてくれる。
死にそうなほど疲れてても妻と娘の顔を見れば一瞬で癒されてしまう。
まだハルカが寝るまで時間があるので久しぶりにお喋りしようかと考えていると。
「じゃ、おやすみなさい!」
「え」
ハルカはそのまま自分の部屋に入っていった。
え、もう?、とポカンとしていると遅れてサクラが出迎えてくれる。
「おかえりなさい、パパ」
「ただいま・・・ハルカもう寝るの?」
「ここ最近早く寝てるのよ」
クスクスと笑うサクラに、全く理解できていないカカシだけが取り残されていた。
「はい、これ」
1人遅めの夕食を食べていると、向かいに座るサクラから紙を渡される。
白米を飲み込んで受け取ると、2つに折り畳まれた紙の表紙に「サンタさんへ」と書かれていた。
「・・・あぁ、もうクリスマスか」
「本当先生ってイベント毎に疎いわよね」
「これでも最近は気をつけてるんだけどねぇ」
イベント好きのサクラとハルカは何かと色々するので、昔に比べたら反応出来るようにはなったが。
ペラっと紙を巡り、書かれている内容に頬が緩む。
「最近夜更かしするようになって困ってたの。それで早く寝て良い子にしてないとサンタさん来ないわよって言ったら」
「早く寝るようになったのか」
「そう。サンタさんには助かっちゃった」
テヘッと笑うサクラに、あることを思いつく。
「よし、ならサクラとハルカの為にオレも一肌脱ごうかな」
「え?」
首を傾げるサクラに、カカシはニコリと微笑んだ。
****
12月24日。
世界中の子供の誰しもが楽しみにする日。
ハルカも、サクラお手製の豪華な夕飯とケーキをたらふく食べて、いつものように早めに布団に入った。
しかしプレゼントのことが気になってなかなか寝付けずに何回も寝返りをする。
日付が変わる頃。
部屋の中で物音が聞こえ、浅い睡眠だったせいかハルカは目を覚ます。
ボーと部屋の中を見ると、窓の付近でゴソゴソと何かが動いていた。
「だれぇ・・・?」
目を擦りながら体を起こすと、動いていたものが月明かりに照らされてこちらを向く。
その人物にハルカは目を見開く。
赤い服と帽子を被り、白い髭をたくわえた小太りのおじいさん。
まさに本で何回も見たサンタそのものだった。
「・・・サンタさん?」
「ふぉっふぉっふぉ、見つかってしまったね」
問いかけると、サンタはよく本で見た笑い方をしてこちらに近づいてくる。
「ハルカちゃんだね?初めまして」
「サンタさんだぁ・・・!」
初めて見たサンタにハルカは目を輝かせて満面の笑みになる。
「パパとママからハルカちゃんが良い子にしているとお手紙を貰ってね。プレゼントを持ってきたよ」
「やったー!」
わーい!と喜ぶハルカにサンタは口に指を当てて静かにするよう促す。
「こらこら。君は今寝てることになってるんだから静かにしないとパパとママが来ちゃうよ」
サンタの言葉にハルカは両手で口を塞ぐ。
「さぁ、おやすみ。プレゼントは朝になるまで開けたらダメだよ」
毛布を被ってコクコクと頷くハルカにサンタは頭を撫でる。
「本当に良い子だね。そんなハルカちゃんのお願いごとを聞いてあげよう。何かあるかい?」
え!、と驚いたハルカは暫く考えて。
「・・・あのね、さいきんね、パパかえってこないときがあるの」
ハルカの寂しそうな顔にサンタも辛そうな顔をする。
「そしたらね、ママがかなしそうなおかおするの。ママみてるとね、ハルカもかなしくなるの。だからね、パパにはやくかえってきてほしいの」
「そうか・・・ハルカちゃんはママに悲しい顔をしてほしくないんだね。本当ハルカちゃんは良い子だね」
「だってハルカ、ママだいすきだもん!あ、パパもすきよ?でもうっとうしいときもあるんだけど」
ニシシ、とサクラ譲りの笑い方にサンタは苦笑するしかなかった。
「じゃあパパが早く帰ってくるようにサンタさんからもお願いしてあげようね」
「うん!おねがい!」
「それじゃあそろそろ行くよ。良い夢を」
「またね」
サンタが窓から出ようとして、ハルカの言葉にニコリと笑って窓から出た。
ハルカは窓からベッドの横に吊り下げている靴下の膨らみに目線を移し、ドキドキしながら目を閉じた。
****
コン、コン
ベランダに通じる窓がノックされ、サクラが窓を開ける。
そこには赤い服を着たサンタのおじいさんが。
「お疲れ様」
サクラがそう言うと、サンタは太い指で印を組むとボンッと煙が立ち込め、カカシの姿になる。
「ふー・・・」
カカシはため息を吐きながらソファーに沈むのでサクラも隣に座る。
「ハルカ喜んでた?」
「うん、目を輝かせてた。こういう時、忍者で良かったってつくづく思うよ」
「ふふ、良かったわね」
サクラはカカシに甘えるようにくっ付く。
その表情は恋人の頃を思い出させる。
カカシはハルカの言葉を思い出して腰に腕を回し、唇に軽くキスをする。
「次はサクラのサンタさんになろうかな。サクラちゃんは何が欲しい?」
ふっ、と意地悪く笑うと、サクラはカカシの首に腕を回し、
「・・・カカシ先生が欲しい」
サクラからもキスをしてそう呟く。
こっちから仕掛けるつもりだったのに今日は珍しくサクラから。
カカシは目を丸くしてすぐに満面の笑みになり、頬を染めるサクラをお姫様抱っこして寝室に向かう。
今宵は聖なるクリスマスの奇跡を──
****
「パーパ!パパおきて!!」
「ん〜・・・」
寝ていると毛布の上からバシバシ叩かれて起こされる。
目を擦って目を開けると、昨日サンタに会った時のように目を輝かせているハルカが横に立っていた。
「みて!サンタさんからしゅりけんもらったの!」
「お〜・・・良かったねぇ」
「うん!ごはんたべたらおしえてね!」
ハルカはプレゼントの箱を大事そうに抱えて部屋を出ていった。
今年のハルカのプレゼントのリクエストは手裏剣とクナイだった。
日頃、忍具の手入れをしている2人を見ているからか興味が湧いたのだろう。
しかしまだアカデミーに入っていないハルカに本物はまだ危ないので、プレゼントは子供用のゴム製のおもちゃ。
将来、忍になると言い出した時のために練習しといて損はない。
カカシは欠伸をしながら上半身を起こし、お腹をポリポリ掻く。
昨日は久しぶりの甘い夜に思ったより盛り上がってしまった。
今は朝の7時で数時間しか寝れていない。
まだ寝てたいが、ハルカが起こしに来たということはそろそろ朝ごはんだろう。
横を見れば当たり前だがサクラはいない。
同じぐらい、いやもっと疲労しているだろうに。
申し訳ないことをしたなぁ、と思いつつも、サクラの乱れる姿を見てしまえばしょうがないことだ、と昨夜のサクラを思い出してまた息子が勃ちそうになる。
食卓に向かう前に落ち着かせねばサクラに白い目で見られるのは確実だ。
とりあえずシャワー浴びるか、と毛布を捲ると素肌に突き刺さる寒さにまた毛布に包まる。
取り敢えず着る物、と床を見るも昨夜脱ぎ散らかした服はなく、近くの椅子に新しい下着と服が綺麗に畳まれて置かれていた。
本当に14も年下とは思えないほどしっかり者の奥さんに、そっくりな可愛い愛娘もできて。
二十年分のクリスマスプレゼントを一気に貰ったようだとカカシは毎年そう思う。
まだ見ぬ本物のサンタに感謝をしながら、愛おしい2人におはようのキスをしに行こうと服を着て2人の待つリビングへと向かった。
「ただ〜いまぁ・・・」
木ノ葉の長であるカカシも例外ではなく、ただでさえ忙しい通常の何倍もの忙しさで1週間ぶりの帰宅となった。
久しぶりの我が家の玄関を開けながら声をかける。
「パパおかえり!」
「ハルカ・・・ただいまぁ」
パジャマ姿の愛娘がちょうどトイレから出たようで、嬉しそうにお出迎えしてくれる。
死にそうなほど疲れてても妻と娘の顔を見れば一瞬で癒されてしまう。
まだハルカが寝るまで時間があるので久しぶりにお喋りしようかと考えていると。
「じゃ、おやすみなさい!」
「え」
ハルカはそのまま自分の部屋に入っていった。
え、もう?、とポカンとしていると遅れてサクラが出迎えてくれる。
「おかえりなさい、パパ」
「ただいま・・・ハルカもう寝るの?」
「ここ最近早く寝てるのよ」
クスクスと笑うサクラに、全く理解できていないカカシだけが取り残されていた。
「はい、これ」
1人遅めの夕食を食べていると、向かいに座るサクラから紙を渡される。
白米を飲み込んで受け取ると、2つに折り畳まれた紙の表紙に「サンタさんへ」と書かれていた。
「・・・あぁ、もうクリスマスか」
「本当先生ってイベント毎に疎いわよね」
「これでも最近は気をつけてるんだけどねぇ」
イベント好きのサクラとハルカは何かと色々するので、昔に比べたら反応出来るようにはなったが。
ペラっと紙を巡り、書かれている内容に頬が緩む。
「最近夜更かしするようになって困ってたの。それで早く寝て良い子にしてないとサンタさん来ないわよって言ったら」
「早く寝るようになったのか」
「そう。サンタさんには助かっちゃった」
テヘッと笑うサクラに、あることを思いつく。
「よし、ならサクラとハルカの為にオレも一肌脱ごうかな」
「え?」
首を傾げるサクラに、カカシはニコリと微笑んだ。
****
12月24日。
世界中の子供の誰しもが楽しみにする日。
ハルカも、サクラお手製の豪華な夕飯とケーキをたらふく食べて、いつものように早めに布団に入った。
しかしプレゼントのことが気になってなかなか寝付けずに何回も寝返りをする。
日付が変わる頃。
部屋の中で物音が聞こえ、浅い睡眠だったせいかハルカは目を覚ます。
ボーと部屋の中を見ると、窓の付近でゴソゴソと何かが動いていた。
「だれぇ・・・?」
目を擦りながら体を起こすと、動いていたものが月明かりに照らされてこちらを向く。
その人物にハルカは目を見開く。
赤い服と帽子を被り、白い髭をたくわえた小太りのおじいさん。
まさに本で何回も見たサンタそのものだった。
「・・・サンタさん?」
「ふぉっふぉっふぉ、見つかってしまったね」
問いかけると、サンタはよく本で見た笑い方をしてこちらに近づいてくる。
「ハルカちゃんだね?初めまして」
「サンタさんだぁ・・・!」
初めて見たサンタにハルカは目を輝かせて満面の笑みになる。
「パパとママからハルカちゃんが良い子にしているとお手紙を貰ってね。プレゼントを持ってきたよ」
「やったー!」
わーい!と喜ぶハルカにサンタは口に指を当てて静かにするよう促す。
「こらこら。君は今寝てることになってるんだから静かにしないとパパとママが来ちゃうよ」
サンタの言葉にハルカは両手で口を塞ぐ。
「さぁ、おやすみ。プレゼントは朝になるまで開けたらダメだよ」
毛布を被ってコクコクと頷くハルカにサンタは頭を撫でる。
「本当に良い子だね。そんなハルカちゃんのお願いごとを聞いてあげよう。何かあるかい?」
え!、と驚いたハルカは暫く考えて。
「・・・あのね、さいきんね、パパかえってこないときがあるの」
ハルカの寂しそうな顔にサンタも辛そうな顔をする。
「そしたらね、ママがかなしそうなおかおするの。ママみてるとね、ハルカもかなしくなるの。だからね、パパにはやくかえってきてほしいの」
「そうか・・・ハルカちゃんはママに悲しい顔をしてほしくないんだね。本当ハルカちゃんは良い子だね」
「だってハルカ、ママだいすきだもん!あ、パパもすきよ?でもうっとうしいときもあるんだけど」
ニシシ、とサクラ譲りの笑い方にサンタは苦笑するしかなかった。
「じゃあパパが早く帰ってくるようにサンタさんからもお願いしてあげようね」
「うん!おねがい!」
「それじゃあそろそろ行くよ。良い夢を」
「またね」
サンタが窓から出ようとして、ハルカの言葉にニコリと笑って窓から出た。
ハルカは窓からベッドの横に吊り下げている靴下の膨らみに目線を移し、ドキドキしながら目を閉じた。
****
コン、コン
ベランダに通じる窓がノックされ、サクラが窓を開ける。
そこには赤い服を着たサンタのおじいさんが。
「お疲れ様」
サクラがそう言うと、サンタは太い指で印を組むとボンッと煙が立ち込め、カカシの姿になる。
「ふー・・・」
カカシはため息を吐きながらソファーに沈むのでサクラも隣に座る。
「ハルカ喜んでた?」
「うん、目を輝かせてた。こういう時、忍者で良かったってつくづく思うよ」
「ふふ、良かったわね」
サクラはカカシに甘えるようにくっ付く。
その表情は恋人の頃を思い出させる。
カカシはハルカの言葉を思い出して腰に腕を回し、唇に軽くキスをする。
「次はサクラのサンタさんになろうかな。サクラちゃんは何が欲しい?」
ふっ、と意地悪く笑うと、サクラはカカシの首に腕を回し、
「・・・カカシ先生が欲しい」
サクラからもキスをしてそう呟く。
こっちから仕掛けるつもりだったのに今日は珍しくサクラから。
カカシは目を丸くしてすぐに満面の笑みになり、頬を染めるサクラをお姫様抱っこして寝室に向かう。
今宵は聖なるクリスマスの奇跡を──
****
「パーパ!パパおきて!!」
「ん〜・・・」
寝ていると毛布の上からバシバシ叩かれて起こされる。
目を擦って目を開けると、昨日サンタに会った時のように目を輝かせているハルカが横に立っていた。
「みて!サンタさんからしゅりけんもらったの!」
「お〜・・・良かったねぇ」
「うん!ごはんたべたらおしえてね!」
ハルカはプレゼントの箱を大事そうに抱えて部屋を出ていった。
今年のハルカのプレゼントのリクエストは手裏剣とクナイだった。
日頃、忍具の手入れをしている2人を見ているからか興味が湧いたのだろう。
しかしまだアカデミーに入っていないハルカに本物はまだ危ないので、プレゼントは子供用のゴム製のおもちゃ。
将来、忍になると言い出した時のために練習しといて損はない。
カカシは欠伸をしながら上半身を起こし、お腹をポリポリ掻く。
昨日は久しぶりの甘い夜に思ったより盛り上がってしまった。
今は朝の7時で数時間しか寝れていない。
まだ寝てたいが、ハルカが起こしに来たということはそろそろ朝ごはんだろう。
横を見れば当たり前だがサクラはいない。
同じぐらい、いやもっと疲労しているだろうに。
申し訳ないことをしたなぁ、と思いつつも、サクラの乱れる姿を見てしまえばしょうがないことだ、と昨夜のサクラを思い出してまた息子が勃ちそうになる。
食卓に向かう前に落ち着かせねばサクラに白い目で見られるのは確実だ。
とりあえずシャワー浴びるか、と毛布を捲ると素肌に突き刺さる寒さにまた毛布に包まる。
取り敢えず着る物、と床を見るも昨夜脱ぎ散らかした服はなく、近くの椅子に新しい下着と服が綺麗に畳まれて置かれていた。
本当に14も年下とは思えないほどしっかり者の奥さんに、そっくりな可愛い愛娘もできて。
二十年分のクリスマスプレゼントを一気に貰ったようだとカカシは毎年そう思う。
まだ見ぬ本物のサンタに感謝をしながら、愛おしい2人におはようのキスをしに行こうと服を着て2人の待つリビングへと向かった。